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昭和四十七年七月十八日受領
答弁第四号
(質問の 四)

  内閣衆質六九第四号
    昭和四十七年七月十八日
内閣総理大臣 田中(注)榮

         衆議院議長 (注)田 中 殿

衆議院議員大野潔君提出直面する内外の諸問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員大野潔君提出直面する内外の諸問題に関する質問に対する答弁書



一について

 私達の目の前には、解決すべき内外の問題が山積している。政府は全力を傾けて具体的な解決の方途を見出したい。成果がまとまれば国会を召集し、国会を通じ国民にその方策を明示し、十二分に議論をつくしたうえで与野党一致して問題の解決にあたりたい。
 議会制民主主義は戦後のわが国政治の骨格であり、与野党が民意を十分に吸収して国民の要求に形をもつて応えるべきことはいうをまたない。

二について

1、2 一般に米軍機の施設・区域への出入は日米安保条約の目的に合致するものである限り地位協定上認められているところであり、また、今回のB52の一時的飛来は事前協議の対象となるものではないが、政府としては、B52に対する国民感情にかんがみ、米側に対して、かかるわが国の国民感情を十分認識の上悪天候の場合の避難など真に必要やむをえない場合以外にはB52をわが国に飛来させないこと、ヴィエトナム爆撃の帰途に飛来することが定型化することのないようにすること、またB52をヴィエトナム爆撃のため沖繩に常駐させることは絶対にないよう申し入れており、これに対して米側は、B52のわが国への飛来は悪天候その他緊急な場合のみに厳に限ること、B52をわが国から戦闘作戦行動のために発進させることは決してしないことを確約している。

3 政府は、事前協議制度の運用について検討し米側とも話し合う考えであるが、これは、安保条約締結以来十二年を経過し、また、沖繩が復帰したという事情もあり、さらに、しばしば国会でも問題が提起されることを念頭に置き、このような問題を整理したいと考えたからである。
  右の検討及び米側との話合いに際し、政府としては、事前協議制度の主題となるべき三つの項目に手を触れるつもりはなく、主として、この制度の運用面について日米間でその理解の内容を改めて確認することとしたいと考えている。

三について

 御質問の衆議院の決議第二項は、「沖繩米軍基地についてすみやかな将来の縮小整理の措置」をとるべきことにつき述べているところ、政府は、その後行なわれたサン・クレメンテにおける日米首脳会談において本件を提起し、復帰後の沖繩における施設・区域の整理、縮小の要を説いた次第である。
 政府としては、今後の沖繩県の開発計画の推進、民生安定の確保等との関連をも踏まえ、かつ、日米安保条約の目的の達成との調整を図りつつ、米軍施設・区域の整理統合につき米側との話合いを進める考えである。
 かかる考えの下に、政府としては、逐次施設・区域の整理を実施してゆく所存であり、沖繩の復帰時において施設・区域を提供するに当たつても、昨年六月の施設・区域に関する了解覚書A表記載のものにつき若干の削減を行なつた次第であるが、今後ともかかる努力を続ける考えである。

四について

 わが国の防衛力は、複雑な国際情勢のもとで、わが国の独立と平和を守るために必要最小限度の自衛力を憲法の許容する範囲内で整備するものであり、他国に脅威を与えるような攻撃的兵器や核兵器は一切保持しないことは、これまでも、しばしば政府として明らかにしてきたところであつて、わが国の防衛力整備が国際緊張を高め、他国に脅威を与えるような恐れはないと考える。
 先ごろの米中・米ソ首脳会談に続き、朝鮮半島においても、南北接近の動きがみられる等、最近の国際情勢に緊張緩和の兆がみられることは、わが国にとつても非常に好ましいことであると考える。
 しかしながら、わが国の防衛力は、わが国の独立と平和を守るために必要最小限度のものを現在なお段階的に整備しつつある過程にあり、第四次防衛力整備五か年計画もこのために必要なものであるので、国際情勢に緊張緩和の兆がみえ始めたからといつて、先に決定をみた同計画の大綱を再考し直さなければならない性格のものではないと考えるが、その具体的内容の策定にあたつては、国際情勢の変化についても考慮してまいりたい。
 また、新経済社会発展計画の改定については、現在経済企画庁において検討が進められているので、この作業の進捗状況についても十分考慮しつつ第四次防衛力整備五か年計画を策定してゆく方針である。
 シビリアン・コントロールについては、その本質が政治の軍事に対する優先であることは、十分認識しているところであり、その運用については、この原則から逸脱することのないよう細心の注意を払つてゆく所存である。
 また、現在その強化をはかるため、法制、組織、運用方法について慎重に検討を進めている。

五について

1 私達の目の前には解決すべき内外の問題が山積している。政府は全力を傾けて具体的な解決の方途を見出したい。成果がまとまれば国会を召集し、国会を通じ国民にその方策を明示し、十二分に、議論を尽くしたうえで、与野党一致して問題の解決にあたりたい。議会制民主主義は戦後のわが国政治の骨格であり、与野党が民意を十分に吸収して国民の要求に形をもつて応えるべきことはいうをまたない。

2 政府としては、今や日中国交正常化の機が熟しつつあるという認識の下に、国交正常化を着実に推進してゆく方針である。中華人民共和国側が提示したいわゆる国交正常化に関する三原則については、基本的認識としては、政府としても、これを十分理解できるので、広く国民各層の意見も十分考慮しつつ、日中双方が合意し得るような具体案を検討してまいりたいと考えている。

3 政府としては日中国交正常化を実現するためには、政府間交渉が不可欠であると考えており、今後は、政府の責任において、国交正常化のための具体策を着実に進めてゆく考えである。

六について

1(イ) 政府は、日ソ平和条約の締結は、北方領土問題の解決なくしてはありえないと考えている。政府としては、来るべき平和条約交渉においては、北方領土に関しわが国が従来から一貫してとつてきた立場、すなわち、国後島、択捉島は、歯舞群島及び色丹島とともにわが国固有の領土であり、当然わが国に返還されるべきであるとの立場を堅持し、これら諸島の祖国復帰を図り、もつて平和条約の締結を行なう所存である。

 (ロ) 安全操業の問題については、政府としては、北方水域における拿捕事件という不幸な事件の頻発を防止するという点からも、また本邦漁民の困難な事態を改善するという人道的見地からも、本件の早期解決が必要であると考えており、ソ側との話合いの進展に努力したいと考えている。

2(イ) 日ソ漁業問題に関しては、一九五六年に締結された日ソ漁業条約があり、毎年同条約に基づく日ソ漁業委員会の席上、サケ・マス・ニシン等の漁業に関する交渉が行なわれて来ており、カニについても毎年政府間交渉が行なわれている。また本年においては「つぶ」漁業に関する日ソ政府間取極も、新たに結ばれるに至つた。これらの水産資源に対し、わが国は、科学的研究に基づいた然るべき措置を取ることにより、これら資源の保存及び増大を図りつつ、最大の持続的生産性を維持することを基本方針としている。また、日ソ協同によるサケ・マスの人工増殖等、漁業の分野におけるソ連との協力関係を一層拡大することにより、北西太平洋の漁業の長期的安定をも図る所存である。

 (ロ) 日ソ間の経済協力関係については、わが国は、互恵平等の原則に基づき商業ベースを前提としてこれを推進してきたが、今後とも、諸々の計画につき、その具体的内容が国益に沿うものであれば、政府としても、これに協力していく方針である。

七について

1 政府としては、朝鮮問題の解決をもたらし、もつて極東ひいては世界の緊張緩和に、貢献することを念願しており、この方向に向かつて多大の努力を払うことにはやぶさかでない。ただ、いわゆる「招請問題」を含め今秋の国連総会における朝鮮問題に関する具体的対処ぶりについては、以上の立場に立つて関係諸国との緊密な協議の下にこれを決定してゆく所存である。

2 いわゆる韓国条項は、韓国の安全が地理的近接性のゆえにわが国の安全と密接な関連があるとの考え方を示したにすぎないものである。なお、「共同声明」の性質上、あとになつて特定の条項を取消すとか修正するとかいう問題はそもそも起こりえないものと考える。

3 北朝鮮については、国際情勢の推移を見守りつつ、南北会談等にみられる朝鮮半島における緊張緩和の進展ぶりに即応して、人道、文化、スポーツ、経済等の分野における交流を今後とも積み上げてゆく方針である。
  公明党訪朝代表団は政府派遣のものではなく、また、共同声明をめぐる話合いの内容等につき政府としては承知していないので、これに対し見解を示すことは差し控えたい。

八について

 政府は対外均衡の回復を図るため、昨年六月にはいわゆる八項目の対外経済政策、本年五月にはいわゆる七項目の緊急対策を決定し、財政金融政策の機動的展開、経済協力の推進、関税の引下げ、輸出優遇措置の撤廃、輸入割当枠の拡大、資本輸出の促進などに努力してきた。最近においては政策効果もあつて景気は回復しつつあり、また輸出の伸びの鈍化、輸入の伸びの伸長の傾向が見られ、今後黒字幅は次第に縮小の傾向をたどると思われるが、今後とも景気・貿易の動向などを注視しつつ、ひきつづきこれらの施策を機動的かつ強力に推進していく所存である。

九について

 社会保障に関する計画については、国民福祉の充実を最大の課題として本年度において策定を予定している新しい長期経済計画において、費用負担との関連をも考慮し、社会保障の充実のための政策の方向を明らかにすることといたしたい。
 社会保障給付費の対国民所得比については、今後老齢人口の増加、年金制度の成熟等に伴い漸次その比率は高まるものと思われるが、今後とも社会保障制度の充実を一層強力に推進することといたしたい。

十について

 老人対策の柱となる年金制度については、近年、国民各層からその改善を期待する声が急速に高まつてきており、政府としても、安心して老後を託するにたる年金制度の実現をめざし努力しているところである。
 年金制度の中心となる厚生年金、国民年金については、早急に年金額の大幅引上げをはじめとする本格的な制度改善を行なう方向で、目下準備を急いでいるところである。
 なお、財政方式については制度の成熟化の長期的見通しからみて、今ただちに賦課方式を採用することは問題があるが、さらに検討をすることといたしたい。

十一について

 スモン、ベーチェットなどの難病については、現在、原因の究明、治療方法の確立などを急いでいるところであるが、治療費の公費負担については、医療保険のあり方等との関連において検討してまいる所存である。

十二について

1 公共料金については、それが特定のサービスにかかる受益の対価としての性格を有している限り、基本的には受益者がこれに要する適正な費用を負担すべきであると考えるが、政府としても公共料金関係事業の公共性の程度等に応じ経済社会の発展に即応しつつ必要な財政措置を講じてまいる所存である。

2 食料品価格の安定を図るためには、生産性向上を図りつつ需要の動向に即した生産の安定的拡大を図るとともに、流通過程の合理化を図ることが基本的に重要である。

 (イ) 生産の安定を確保するためには、生産性の向上を図る対策を強化するほか、農産物価格政策を整備充実して価格の安定を図ることが必要であり、とくに今後需要が増大する野菜、果実等の畑作物、畜産物等に関する価格安定対策をさらに拡充強化する必要がある。このための施策として野菜の価格補てん事業の拡充、乳用雄子牛の価格安定対策、加工原料用果実の価格補てん事業等価格安定政策を講じているところであるが、今後ともこれら需要の増大する農産物の価格安定については、特に留意してまいりたい。

 (ロ) 生鮮食料品の流通の合理化については、中央および地方を通ずる卸売市場の計画的整備とその取引方法の改善を図るとともに総合食料品小売センターの設置等により小売業の合理化近代化のための諸措置をさらに強力に推進することとする。

 (ハ) また、需給の動向に応じ輸入枠の拡大等輸入政策の弾力的活用に努めるとともに、輸入品の価格追跡調査の実施等により、流通段階の価格形成の実態を把握し所要の指導につとめてまいりたい。

3 管理価格問題については、複雑化した現在の市場構造や企業行動の実態把握がまず基本的に必要であり、関係機関において調査を進めているところである。
  政府としては、いわゆる独占禁止法の厳正な適用等競争維持政策を通じ、寡占産業において不当な価格形成が行なわれることのないよう努めるとともに、寡占の実態調査に即しつつ、監視体制の整備等を含めて、管理価格対策の在り方を検討したい。

十三について

 人口・産業の大都市圏への集中が地価高騰をもたらしているのであるから、人口・産業の大都市への集中を抑制するとともに、これを積極的に地方へ分散させる施策を強力に進める必要がある。
 これにあわせて、公共用地の先行的確保に努めるとともに、投機的土地取引を抑制する方策を講ずる必要がある。
 このため、大規模な土地取引については届出をさせ、規制措置を講ずる等の施策および税制上の有効な措置についても検討してまいりたい。

十四について

(イ) 所得税の減税が国民各層の強い要望であることは十分承知しているところである。
    ただ、所得税減税は、将来の高福祉実現のための財源のあり方という長期的な観点からも検討しなければならない問題であり、所得税減税を景気対策という短期的観点から年内にも行なうかどうかという点については、景気は回復の過程に入つたとみられる折でもあるので、今後の経済情勢、財源事情等をみながら慎重に検討する必要があると考えている。

(ロ) 法人の税負担については、税制調査会の昭和四十六年八月の長期税制のあり方についての答申において「諸外国に比し必ずしも高いとはいえず、今後公共投資、社会福祉等に多大の財源を必要とする事情もあり、法人企業に応分の負担を求めることはやむを得ない。」とされており、今後の法人税の負担率のあり方としては、長期的には、これを引き上げていく余地のあることが示唆されている。
    今後の法人税負担のあり方については、そのときどきの経済財政事情を総合的に勘案して適正な負担水準を維持すべきものと考える。

(ハ) 租税特別措置については、その政策目的の合理性や政策手段としての有効性についてたえず検討を加え、既得権化や慢性化を排除しつつ、租税の誘引的機能を活用して、今後とも真に緊急に必要とされるものについて重点的に措置することとし、随時弾力的な改廃に努めるべきものと考える。

十五について

1(イ) P・C・B対策については、P・C・B生産はすでにさる六月までに停止されており、さらにP・C・Bの使用の停止、製品化されているP・C・Bの回収、処分および管理の適正化等諸般にわたる行政指導を行なうとともに、さる五月にP・C・B汚染対策推進会議を設置し、総合的な施策の検討を行なつてきたところであり、その一環としてP・C・Bによる環境汚染の実態について総点検に着手している。
     全国の休廃止鉱山調査については、重金属等による鉱害発生のおそれがある鉱山千五十について昭和四十五年度から四か年計画で調査を実施しており、必要に応じ鉱害防止工事の推進に当たつてきたところであるが、最近における休廃止鉱山による環境汚染の実態にかんがみ、さらに従来の調査を強化拡充することとし、本年度より水質、土壌、農作物、住民健康等を含めた総合的な環境汚染調査を実施することとしている。
     これらの総点検等の結果、必要に応じ、工場、事業場に対する規制の強化、監督指導の強化を図ること等により汚染の解消に努めてまいりたい。

 (ロ) カドミウム等の微量重金属による環境汚染を未然に防止する観点から、水質汚濁防止法、土壌汚染防止法、大気汚染防止法等で厳しい排出規制等の措置が講ぜられているところであるが、これらの法律の実効を期するため、必要に応じ上乗せ排出基準の設定を促進する等の方法により、汚染の進行を未然に防止することとしている。

 (ハ) 次に、安全な食品の確保は、国民生活上最も重要な問題の一つであり、そのため、食品衛生法をはじめ関係法令に基づき、必要な規制等を行ない、飲食に基因する被害の発生の防止と国民の健康の保護を図つているところであるが、今後、さらに、安全性の再点検、監視の強化、検査の充実等により規制を強化するとともに、食品の生産、製造加工、販売等を行なう者に対する指導等に一層努力してまいりたい。

 (ニ) また、建材や玩具等の製品の安全性の問題については従来から諸法規の適用強化等により対処してきたところであるが、さらに国民が安心して消費生活を送ることができるように製品の安全性の確保、向上を図るため、立法措置を含む総合的な施策を講ずることとしたい。

2 公害による健康被害の救済については、その重要性にかんがみ、逐次その内容の改善を図つてきたところであるが、さらに被害の実情をふまえ、指定地域の拡大、所得制限の緩和等を含め被害救済制度の全般について、一層の充実を図つてまいりたい。

3 現在、公害防止対策については、公害対策基本法等の諸法制によつて各種施策をすすめているところであり、他方、自然環境保全対策については、現行の自然公園法に加えて新たに「自然環境保全法」が制定されたことによつて、自然環境の適正な保全を総合的に推進することができるものと考える。
  今後はこれらの諸法制および関連する諸施策を有機的に関連づけて運用していく所存であり、これらの法体系を環境保全という形に一本化することは必ずしも必要であるとは考えない。

4 現在の公害問題を根本的に解決するためには、生産工程から排出される公害物質を除去するだけでなく、さらに一歩進めて公害源となる物質を生産工程外に出さないような生産システム(クローズド・システム)を開発・採用することが望ましいと考えられる。
  このため、通商産業省工業技術院において、四十七年度から重要技術研究開発費補助金の中に新たにクローズド・プロセス技術開発枠(四十七年度予算・・三億七千万円)を設け、有害な排水を排出しない紙パルプ製造プロセス等三テーマのクローズド生産システムに関する民間研究開発に対して積極的に助成を行なつている。
  さらに、工業技術院傘下の試験研究機関において、すでに、染色工程の非水化、アミノ化・スルホン化工程の無公害化等無公害生産システムの開発研究を鋭意推進している。
  なお、この他大型プロジェクトにおいて公害源となる自動車排出ガス問題の根本的解決を図るべく、電気自動車の開発を進めているところである。

5(イ) 近年の急激な都市化に伴い都市環境を保全整備するとともに、都市を積極的に緑化することは、わが国の重要な課題となつている。
     このことにかんがみて、都市計画において常に緑の保全と良好な都市環境づくりに配意するほか、特に都市の緑化を積極的に推進するため、総合的な都市の緑化対策を実施している。
     この内容としては、

   (一) 都市における公園、緑地等の不足に対処するため、新たに本年度を初年度とする都市公園等整備五か年計画を策定した。
    これにより昭和五十一年度末までに総事業費九千億円をもつて、既存の都市公園二万五千ヘクタールに加え、新たに児童公園、近隣公園、総合公園等一万六千五百ヘクタールの都市公園を増設することとしている。

   (二) 道路改良または、舗装事業の実施に際しては、街路樹等の整備を積極的に推進するほか、緑につつまれた歩行者専用道路の建設を図る。

   (三) 河川敷を活用して公園として整備するほか、公共下水道の整備等により埋立てられる水路敷を都市公園、緑地帯等として積極的に活用する。

   (四) 風致地区内の樹木の伐採等の規制を強化する。
    なお、都市内緑地の保全については、現行制度が必ずしも十分とはいいがたいことから、これらの制度を再検討し、新たな緑地保全に関する制度を創設したいと考えている。

 (ロ) 森林造成等による緑化対策については、水資源のかん養、国民の保健休養等に果たす役割等その重要性にかんがみ、従来から積極的な推進を図つてきたところであるが、近年におけるその緊要性の高まりに対応し、さらに森林造成の促進に関する助成の充実、国民の保健休養等を目的とした森林機能の拡充強化、国土緑化推進事業の強化等を図つてまいることとしている。

十六について

 第二期住宅建設五か年計画は、現存する三百万世帯にのぼる住宅難世帯を解消するとともに、世帯の細分化等によつて生ずる新規の住宅需要を充足するため、計画期間に九百五十万戸もの大量の住宅を建設することとしている。
 この場合、長期的に国民の居住水準の向上を図るため、建設する住宅は、おおむね一人一室の規模を有するものであり、さらに、国民の住居費負担能力をかん案して、九百五十万戸のうち公的資金により三百八十万戸、民間自力により五百七十万戸を供給するものとしたものである。
 したがつて、国民の住宅難が解消していない現段階においては、まず、この計画の目標を確実に達成することが肝要であると考える。
 しかしながら、最近における国民の居住水準向上の要望がきわめて強いことにかんがみ、公営、公団住宅等の規模を、三居住室以上の割合を増加させるなど極力引きあげていくほか、公庫融資の対象規模、融資限度の引きあげ、税制金融措置の拡充などを行なうことにより、住宅事情の改善に努めてまいりたい。

十七について

 今回の災害の主因は異常かつ突発的な豪雨によるものと考えるが、さらに原因を十分に調査し、国土と国民の生命・財産を守るために万全の措置を講ずる所存である。
 ご提案の諸事項に対する見解は、次のとおりである。

 (1) 急傾斜地実態調査は、建設省において、昭和四十一年度に傾斜度三十度以上、高さが五メートル以上であつて対象人家五戸以上(五戸未満であつても官公署、学校、病院、旅館等のあるものを含む。)に著しい被害を及ぼすおそれのある急傾斜地を調査し、さらに四十四年度に再点検を行なつた結果、約一万三千箇所の危険区域のあることが判明した。しかしながら、今回の災害の実態にかんがみ総点検の必要があるので、七月十一日急傾斜地の崩壊等による災害危険箇所の総点検を都道府県知事に対して指示したところである。
     急傾斜地崩壊危険区域の指定は都道府県知事が行なうことになつているが、私権の制限が著しいこと等により指定事務がややもすればおくれがちであり、現在までに指定したものは約二千二百箇所である。
     今回の総点検の結果をもとに積極的に急傾斜地崩壊危険区域の指定を促進するとともに、今後とも一層対策工事の促進並びに警戒避難体制の確立を図るよう都道府県知事を指導して、災害の防止に万全を期してまいりたい。

 (2) 政府は、従来から防災対策予算の充実のためには、特に配慮しており、例えば、四十七年度予算における国土保全、災害復旧等の防災事業予算は七千億円余を計上している。これは四十二年度予算三千六百億円にくらべて約二倍であり、また、過去の増加額は、毎年度四〜五百億円(増加率十〜十二パーセント)であつたのを、四十七年度予算では、前年度に対し千八百億円増額(増加率三十二パーセント)し、予算措置にあたつては、特に配意したところである。
     また、特にその大宗をなす治水事業及び治山事業については、従来の第三次五か年計画(四十三年度〜四十七年度)を改定し、四十七年度を初年度とする第四次五か年計画を策定することとし、治水事業については四兆五百億円(旧計画二兆五百億円)、治山事業については六千八百五十億円(旧計画三千五百億円)と総事業費を約二倍にし、その充実を図つたところである。
     政府としては、今後においても社会経済の推移に対応した財政運営の枠の中で他の財政需要の動向を勘案しつつ、防災関係予算の配分について格段の努力を傾注する所存である。

 (3) 災害による被害者に対する見舞金制度については、衆議院災害対策特別委員会において取りまとめられた「災害弔慰金構想」の趣旨に沿つた国庫補助制度を創設し、今回の災害から適用することとしたところである。
     この制度の概要は、次のとおりである。

     (一) 補助対象市町村は、自然災害により災害救助法適用基準に該当する被害が発生した市町村とする。

     (二) 国は、都道府県が、補助対象市町村が当該災害によつて死亡した者の遺族に対して支給する弔慰金(死者一人につき十万円をこえるときは、十万円)につき四分の三の補助をするときは、当該都道府県に対し、当該補助金額の三分の二を補助するものとする。

     (三) この制度は、行方不明者についても適用するものとする。
     なお、被害者の生活の立直りについては、現在、災害救助法に基づく応急の援護措置のほか、世帯更生資金その他の融資、災害公営住宅の建設等各種の措置がとられているが、今後とも施策の充実について配意してまいりたい。

十八について

1 四十七年産米の生産者米価については、食糧管理法の規定に従い、生産費および物価、需給事情などを考慮し、具体的には米価審議会の議を経て決定することとしているが、どのような水準に決めるかは、現在慎重に検討中である。
  また、本年産米についても従前通り予約制により集荷をすることとしており、七月七日から予約が開始されたところである。
  食糧管理制度は、農家経済、国民消費生活等国民経済の各分野にきわめて大きな関係をもつており、国民食糧を確保し、国民経済の安定を図ることはきわめて重要なことであるから、このため必要な管理を行ない、米の需給および価格の安定を図つていくという考えに変わりはない。
2(イ) 農業の健全な発展なくしては、日本経済の調和ある発展はなく、また、健全な農村と農民を育てていくことは、わが国経済社会の土台を形成確保するうえで、きわめて重要なことであると考えている。

 (ロ) 今日、わが国農業をめぐる内外の諸情勢は経済の国際化、米の過剰、物価問題等きわめて厳しいものがあるが、このような状況に対処して、農業および農村の健全な発展を図るためには、高能率農業の育成と高福祉農村の建設を基本として、農政の強力な推進を図る必要がある。

 (ハ) このため、

   (一) 農業生産については、国民食料の安定的な供給の確保という観点に立つて、生産性の向上を図りつつ、需要の動向に見合つた農業生産の再編成を強力に推進すること、
       また、国民食料の安定的供給と流通、加工の近代化を通じて、消費者価格の安定に努めること、

   (二) 農業構造の改善を進め、高能率・高生産の農業の育成を図り、経済の国際化に対応する体質の強化に努めること、

   (三) さらに農家の生産と生活の場である農村を豊かで近代的な地域社会として確立するとともに、農業・農村のもつ自然保全機能等多面的な役割を十分に活用して、調和のとれた国土の建設と高次福祉社会の実現に資すること、

    を重点として、生産、構造、流通、価格等の各般にわたる施策の一層の推進を図つてまいりたい。

十九について

1(1) 昭和四十七年四月、大学設置基準および学校教育法施行規則を改正し、学生が、外国の大学を含めて、他大学において修得した単位を認めることができるといういわゆる単位の互換制度の実施を図ることとした。
     これは、国の内外にわたる大学間の交流と協力を促進し、大学教育の充実に資することをねらいとしたものであるが、政府としては、大学相互の自主的な努力により、今回の改正の趣旨が十分生かされるよう、この制度の積極的な活用を期待している。

 (2) 大学教育において、私立大学の果たす役割は、とみに高まつてきている反面、その経営は、人件費の高騰等がある一方、学費の値上げに限度があるため、窮迫化し、国、公立に比してその教育研究条件はますます低下してきた。
     そこで、国では昭和四十五年度私立大学等に対して教員の人件費補助を含む経常費補助を行なうこととし、私立大学等経常費補助を創設し、その後毎年大幅な拡充を図つている。当面は、教員の人件費、研究費等おおむね経常費の二分の一を補助することを目標にその拡充を図ることとしたい。
     中央教育審議会の答申にそつて、私学助成の抜本的拡充を図ることは、高等教育計画の策定、特にそのなかにおける私立大学の役割と奨学制度の拡充等の関連をみながら、慎重に検討していきたいと考えている。

2 国立大学の夜間学部は、大学教育をひろく勤労青少年や社会人に開放するために設けられたものであり、その使命の重要性にかんがみ、政府もその育成に努めており、現在、室蘭工業大学など九大学に十二の夜間学部が開設され、また二十大学に夜間短期大学が併設されている。
  今後、夜間学部の取扱いについては、地域社会の要請および母体となる大学の状況等を勘案し、拡充の方向で検討していきたい。
  なお、国立大学協会においても、夜間大学の理念を明確にし、新しい方向づけをすべく検討を進めることとしているので、その検討の状況をも充分に参考としながら検討していきたい。

3 義務教育無償の理念をより広く実現することは望ましいことではあるが、児童生徒が購入している副読本等の副教材および参考書については、各学校にその使用が義務づけられているものでもなく、また、その種類、内容等も各地域の自主性にまかされており、学校の実情に応じ、各種各様のものが使用されている。これを教科書と同様、国費によりただちに無償給与することは、なかなか実現困難なことではないかと考えている。
  しかしながら、例えば学校に備えつけて十分利用させるとか、あるいは全部の児童生徒に対してではなく、貧困家庭の子供達から先ずめんどうをみるとか、必要なものは国または地方公共団体が措置するという方向で、この問題の解決を図るよう、昭和四十七年度予算において、教材費国庫負担金および要保護・準要保護児童生徒に対する学用品費補助金の増額を図つたところである。
  また、学校給食は、施設設備費および人件費等は学校の設置者の負担とし、給食費(食材料費)は、保護者の負担とするたてまえをとつており、国費により無償とすることはなかなか実現困難なことであると考えている。
  しかしながら、学校給食の食事内容の充実を図る等の観点から、所要の物資供給補助を行なうほか、給食費の支払いが困難な者に対しては、要保護および準要保護児童生徒学校給食費援助の制度により、国と地方公共団体が援助しており、今後とも支障のないよう措置してまいりたい。

4 日本育英会による育英奨学事業については、昭和四十七年度予算において奨学金の原資にあてるための政府貸付金を、前年度比五十億円増の二百三億円に増額し、大幅な改善を図つたところである。
  奨学金の貸与月額については、国公立大学の学生に対する一般貸与にあつては倍額(三千円を六千円に)に増額し、大学院学生に対する貸与にあつては、修士課程は六千円増の二万三千円、博士課程は八千円増の三万円という大幅な増額を行なつたのをはじめ、ほぼ全面的な貸与月額の増額を実施した。
  国の育英奨学制度については、今後における高等教育の改革の一環として、さらに根本的な検討を加えることとしており、奨学金の額のあり方についても、その検討のなかで取り扱うこととしたい。

二十について

 政治資金規正法の抜本的改正は、政党政治の消長、わが国の議会制民主主義の将来にかかわる重大な問題である。したがつて、この問題について、外国における立法例、憲法および関係法令との関連等を含め、専門家に多面的かつ徹底した検討を求めたい。そこで得られた結果を基礎にして与野党が広く深く議論を積み重ね、お互いの完全に一致した線で問題の最終解決を図ることが適当だと思う。

 右答弁する。




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