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答弁本文情報

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昭和五十七年四月二十日受領
答弁第七号
(質問の 七)

  内閣衆質九六第七号
    昭和五十七年四月二十日
内閣総理大臣 鈴木善幸

         衆議院議長 福田 一 殿

衆議院議員青山丘君提出在日韓国人に対する行政差別に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員青山丘君提出在日韓国人に対する行政差別に関する質問に対する答弁書



一について

1 外国人登録法が我が国に在留する外国人に対して登録証明書の常時携帯義務を課しているのは、外国人登録法の目的の一端が我が国への外国人の不法入国を防止、摘発することにあることから必然的に帰結される措置である。すなわち、外国人に対しては、我が国に在留する事実を登録させるだけでなく、それを証明する文書を携行させるという制度がなければ、国籍、氏名すら特定できないのが通例である不法入国者を多数の外国人の中から発見し、取り締まることは到底不可能である。諸外国においても、登録証明書、滞在許可証等我が国の登録証明書に類似する文書の携帯を要求する制度を設けているが、これは同じ発想に立脚するものといえる。
  したがつて、登録証明書の常時携帯義務を一定の場合又は一部の外国人について免除する等の措置を講ずることは、この制度の意味を没却し、外国人登録法の目的を遂行することを不可能ならしめるものといわなければならない。

2 外国人登録法は、我が国に引き続き一年以上在留する外国人に対し、新規登録等の申請に際して指紋の押なつ義務を課している。これは、指紋が申請人の同一人性を確認する上で絶対的な資料であることにかんがみ、法は指紋制度を採用することによつて登録の正確性を保持し、また、登録証明書の不正発給や偽・変造等を防止することとしたものである。外国人登録が指紋制度に依存せざるを得ないことは、年間約二万五千件にのぼる氏名、生年月日、本籍地等の訂正申立がある事実が示すとおり、在留外国人の身分を特定するために不可欠な登録事項すら登録記録上しばしば変更を余儀なくされる事情にあることによる。また、外国人自身にとつても、指紋制度の裏付けによつて自らが登録証明書の正当な所持人であり、我が国に適法に在留する者であることを確実に証明し得る利便がある。ちなみに、指紋制度実施前は登録証明書の不正入手事案が数万件の単位で発生したが、指紋制度実施後はこの種不正入手事案等はまれにしか発生していない。
  今回の外国人登録法の改正に当たつては、このような指紋制度の果たしている役割等についても十分に検討を加えたが、制度を維持することが必要であるとの判断に達したものである。

3 外国人登録制度は、外国人の居住関係及び身分関係を明確に把握する必要上、二十の項目について登録義務を課しているが、登録事項の多くは、我が国において確認することが困難な事項である。したがつて、外国人について戸籍を前提とする住民基本台帳法のような制度を設けることは、本来的に無理があるといわなければならない。
  また、登録事項のうち、「職業」及び「勤務所又は事務所の名称及び所在地」については、在留外国人の資格外活動の規制等のため、重要な登録事項である。

二について

1 我が国の利益又は公安を著しく害した外国人に対して退去を強制できる制度は主権国家として当然堅持すべき制度であり、たとえ永住許可を与えられた韓国人といえどもその例外とすべきではない。
  しかしながら、これらの者については、永住許可が与えられた歴史的、地縁的背景等を考慮し、退去強制事由に該当する外国人であつても、出入国管理及び難民認定法第五十条に定める在留特別許可の許否の判断に当たつては、特に人道的配慮を行つている。
  なお、永住許可を取得した外国人が通常の善良な生活をしている限りにおいては退去強制のおそれは全くないのであるから、現行の退去強制制度によつて永住権が名目的のものになつてしまうことはない。

2 不法入国者の我が国における生活基盤は違法行為の上に築かれた生活関係であり、退去強制されるのが原則である。また、不法入国後長期間我が国に居住した事実をもつて一律に在留特別許可を与えることとした場合、不法入国を助長することにもなりかねない。
  しかしながら、日本人又は永住外国人との間に家族関係を築いている者等特別に考慮すべき事情がある者については、事案に応じてできる限りの人道的配慮を行い、その者の在留を特別に許可することとしている。

三について

1 公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる公務員であるかどうかは、その占める官職の職務内容を検討して個別具体的に判断すべきものであり、一般的にその範囲を確定することは困難である。

2 昭和五十四年四月十三日付け「在日韓国・朝鮮人の地方公務員任用に関する質問に対する答弁書」において述べた日本国籍を有しない者の地方公務員への任用に関する政府の見解は、今日においても変える考えはない。
  したがつて、公権力の行使又は公の意思の形成への参画に携わる地方公務員であるかどうか及びこのような地方公務員以外の地方公務員に日本国籍を有しない者を任用するかどうかについては、それぞれの地方公共団体の実情に応じ、当該地方公共団体において判断されるべきものと考える。

四について

 高齢で国民年金に新たに加入することとなる外国人についてのみ老齢年金の受給資格期間等についての特例措置を講ずることは、国民年金法上外国人を日本人より有利に扱うこととなるので、適当でない。
 また、在日韓国人については、歴史的な特別な事情があることは承知しているが、国民年金制度が一般的な社会保障制度であることから、他の外国人と区別して特例措置を講ずることは、適当でない。
 なお、外国人に限らず老齢年金に結びつかない者の取扱いについては、国民年金制度のみならず公的年金制度全体の将来の在り方にかかわる問題であると考えている。

 右答弁する。




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