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答弁本文情報

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平成十年一月十三日受領
答弁第二一号

  内閣衆質一四一第二一号
    平成十年一月十三日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員保坂展人君提出死刑の執行などに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員保坂展人君提出死刑の執行などに関する質問に対する答弁書



一の1について

 個々具体的な死刑執行に関する事項については、毎年の統計において執行数を公表するにとどめており、御質問に対する答弁は差し控えさせていただきたい。

一の2について

 昭和二十年から平成八年までの死刑確定者数及び執行者数は、別表第一のとおりである。

一の3について

 個々具体的な死刑執行に関する事項については、毎年の統計において執行数を公表するにとどめており、御質問に対する答弁は差し控えさせていただきたい。

一の4について

 御指摘のような回答をした例は見当たらなかった。

一の5について

 「法務統計月報」から「死刑執行」の項目が無くなったのは、平成三年一月分からである。これは、「法務統計月報」は月ごとの傾向を速報するものであり、死刑執行の数字まで登載して速報する必要はないと考えたからである。

一の6について

 国家の刑罰権の作用は、本来、刑の執行そのものに限られるのであって、それを超えて、国家機関が刑の執行の事実を殊更に公表して、刑の執行を受けた者やその関係者に、不利益や精神的苦痛を与えることは相当でないと考える。死刑執行の都度、その事実を公表することについては、死刑を執行された者の遺族の感情又は他の死刑確定者の心情の安定等に配慮し、答弁を差し控えてきたところである。
 日別の死刑確定者数や月別の死刑執行者数を回答しないのは、これに回答すると、それを契機として、死刑を執行された者を特定するための種々の調査や死刑を執行された者について様々な報道や憶測がなされるおそれがあり、これにより、死刑を執行された者の遺族又はそれと推測された者等に名誉や生活の平穏を失わせるという不利益や精神的苦痛を与えるとともに、他の死刑確定者の心情の安定を損なう等、個々具体的な死刑執行に関する事項について答弁することと同様の結果を招きかねないと思われるからである。

二の1について

 御指摘の決議は、死刑を相当とする犯罪類型、可能な場合毎年、死刑を宣告された者の数、正確な処刑の数、死刑囚の数、上訴により破棄又は減刑された死刑判決の数及び特赦が認められた事件の数並びに同決議の保障内容が国内法で具体化された程度に関する情報の公表を求めているものであるが、我が国は、これらの情報については、統計等により、可能な限り公表しているものであって、現状で十分と考えている。

二の2について

 死刑に関する情報の開示については、二の1についてで述べたとおりであり、また、死刑の言渡しがなされた個々の事件の裁判の内容について、裁判公開の原則により明らかにされており、御指摘のような刑罰権行使の適正を図るという観点に立っても、その公開の程度は現状で十分と考えている。

二の3について

 平成九年度予算としては、人事院規則に基づき死刑執行に従事した職員に対し支給する特殊勤務手当のみであり、他の種類の特殊勤務手当とともに特殊勤務手当六億四千四十三万七千円の一部として予算計上している。
 なお、支給額は、従事職員一人一回につき二万円であり、一回につき十人以内に限り支給される。

二の4について

 当初予算策定の時点においては、執行件数等が予見できないが、所要額が僅少であることから他の種類の特殊勤務手当とともに特殊勤務手当の一部として予算計上している。

三の1について

 昭和二十二年以降、死刑確定者で恩赦(減刑)に浴した者は、二十五名(政令恩赦の対象となった者を含む。)である。
 昭和三十年以降、死刑確定者について恩赦上申された件数、中央更生保護審査会によって恩赦相当とされた件数及び恩赦不相当とされた件数は、別表第二のとおりである。
 なお、昭和二十九年以前の各年別の上申件数については、正確な数値が把握できないため明らかでない。

三の2について

 国家の刑罰権の作用は、本来、刑の執行そのものに限られるのであって、それを超えて、国家機関が刑の執行の事実を殊更に公表して、刑の執行を受けた者やその関係者に不利益や精神的苦痛を与えることは相当でないと考える。恩赦出願中に死刑を執行した事例の有無についても、未執行の死刑囚その他関係者の心情に与える影響等にかんがみ、答弁を差し控えさせていただきたい。

三の3について

 一般的に、恩赦の当否の判断基準というものはないが、犯罪者予防更生法(昭和二十四年法律第百四十二号)第五十四条第一項において、中央更生保護審査会が法務大臣に対し個別恩赦の申出をする場合には、あらかじめ、本人の性格、行状、違法の行為をするおそれがあるかどうか、本人に対する社会の感情その他関係のある事項について調査をしなければならない旨規定されており、同審査会は、具体的事案に即してこれらの事項を調査し、その結果を総合勘案して恩赦の申出をするか否かを判断していると思われる。
 したがって、一般論としては、そのような被害者遺族の意見は、社会の感情の一側面として中央更生保護審査会の議決の際考慮すべき要素の一つになり得ると考えられる。

三の4について

 恩赦の出願は、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)上刑の執行停止事由とはされていないが、恩赦の出願がなされている場合には、死刑執行のもたらす重大な結果にかんがみ、法務大臣は、死刑執行命令を発するに当たり、中央更生保護審査会の議決の有無及びその内容を十分参酌することとしており、国際的にも通用し得る保障をしているものと思料する。

四の1について

 死刑制度について様々な意見等があることは承知しているが、その存廃は、国民世論に十分配慮しつつ、社会における正義の実現等種々の観点から慎重に検討すべき問題であると考えている。
 なお、御指摘の補足意見は、その結論において、「我が国民の死刑に対する意識にみられる社会一般の寛容性の基準及び我が国裁判所の死刑の制限的適用の現状を考えるならば、今日の時点において死刑を罪刑の均衡を失した過剰な刑罰であって憲法に反すると断ずるには至ら」ないとしたものと承知している。

四の2について

 平成二年一月から平成九年十一月末までの間に、検察官が死刑を求刑し、第一審判決が宣告された事件としては、合計六十一件を把握しており、その判決の内訳は、死刑三十三件、無期懲役二十七件、有期懲役(懲役十八年)一件である。

四の3について

 具体的な事件の刑事裁判における検察官又は裁判所の判断にかかわる事柄については、答弁を差し控えさせていただきたい。

四の4について

 平成二年一月から平成九年十一月末までの間に第一審判決が宣告された死刑求刑に係る事件のうち、死刑を言い渡さなかった第一審判決に対して検察官が控訴した事件は、二十七件であり、死刑の科刑を是認しなかった控訴審判決に対して検察官が上告した事件は、四件である。

四の5について

 具体的な事件の刑事裁判における検察官の判断にかかわる事柄については、答弁を差し控えさせていただきたい。

四の6について

 御指摘のような宗教上の理由などに基づいて被害者の遺族が死刑を望まなかった事例は、把握していない。

四の7について

 殺人事件等の被害者の遺族の感情は、各遺族それぞれに異なるものと考えている。

四の8について

 量刑に関するものを含め、事実関係は事案により異なるものであるので、個別の事件において、立証方法に差違が生じ得るのはむしろ当然であり、各般の情況を併せ考慮して犯人に適切妥当な刑罰が量定されるのであるから、法の下の平等に反するとは考えていない。

四の9について

 殺人事件等の被害者の遺族によるいわゆる被害感情に関する証言に対し、これを吟味するため反対尋問を行うことが取り分け困難であるとは考えていない。

四の10について

 御指摘の補足意見は、「例えば、一定期間死刑の執行を法律によって実験的に停止して、犯罪増加の有無との相関関係をみる」等の法制が考えられるとしているが、「それはもとより立法の問題に属する」としているところである。
 現在、国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については、死刑もやむを得ないものと考えていること、死刑の執行が停止された後にこれが再開された場合、非人道的な結果になりかねないことなどにかんがみると、「一定期間死刑の執行を法律によって実験的に停止して、犯罪の増加の有無との相関関係をみる」ことは、適当ではなく、その必要もないものと考えている。

五の1について

 日本弁護士連合会人権擁護委員会に対し、死刑執行及び死刑確定者の処遇等に関し、国際規範に違反する重大な人権侵害があるので相当な措置を求める旨の人権救済申立てがなされ、同委員会において、所要の調査を行い、同連合会理事会の承認を得て、要望書が提出されたものと承知している。

五の2及び4について

 我が国においては、死刑確定者の外部交通については、身柄の確保及び心情の安定への配慮という収容の目的に反しない限度で、死刑確定者の権利を十分に保障しており、上訴については、法制上、三審制が保障され、控訴理由は広範であり、死刑事件では必ず弁護人が付される上、実務の運用も極めて慎重であって、その他の要望書指摘の点も含めて、法制度及びその運用において、死刑に直面する者の権利を実質的に十分保障しており、現行の死刑執行方法や死刑確定者の処遇などは、市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号)に違反するものではなく、また、国際連合決議の趣旨に反するものではないと考えている。また、以上述べたように、我が国は、死刑に直面する者の権利を保障するため、十分な措置を講じている。

五の3について

 我が国においては、捜査段階から被疑者に対して弁護人を選任する権利を保障している上、死刑の適用は極めて厳格かつ慎重に行われている。御指摘の国際連合決議は、勧告の性質を有するものであって、我が国を法的に拘束するものではないが、その趣旨は、死刑が科される可能性のある者に対し、手続のすべての段階において弁護人の援助を受ける権利等の手続的保障を与えるよう勧告するものであって、我が国の現状が右決議の趣旨に反することになるものではないと考えている。

六の1から3までについて

 個々の死刑執行の有無及び時期については、従来から公表していないところであり、御質問についても答弁は差し控えさせていただきたい。
 なお、一般論として申し上げれば、死刑執行に関しては、個々の事案につき、関係記録を十分に精査し、刑の執行停止、再審、非常上告の事由又は恩赦を相当とする情状の有無につき慎重に検討し、これらの事由及び情状の存在しないことが確認された場合に執行されているところである。



別表第一

別表第一


別表第一


別表第一


別表第一


別表第一


別表第二

別表第二


別表第二


別表第二


別表第二




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