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答弁本文情報

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平成十一年四月十三日受領
答弁第一五号

  内閣衆質一四五第一五号
    平成十一年四月十三日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員辻元清美君提出魚類養殖のホルマリン大量使用・垂れ流しによる環境破壊・海洋汚染に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員辻元清美君提出魚類養殖のホルマリン大量使用・垂れ流しによる環境破壊・海洋汚染に関する質問に対する答弁書



一について

 ホルマリンを養殖業において薬剤として使用することについては、魚介類への移行残留や環境への影響等が十分解明されていないことから、極力避けるよう従来から「水産用医薬品以外の物の薬剤としての使用について」(昭和五十六年六月二十五日付け五十六水研第七百九十七号水産庁長官通達。以下「水産庁長官通達」という。)等により養殖業者に対して指導してきたところであり、引き続き一層の指導の徹底を図ってまいりたい。
 また、第百四十五回国会に提出している持続的養殖生産確保法案が成立した場合には、漁業協同組合等による養殖漁場の改善を図るための計画制度を活用することによって、養殖業者が自主的にホルマリンの使用を規制することを促進してまいりたい。

二について

 水産庁長官通達の趣旨は、水産用医薬品以外の物については、代替薬となる水産用医薬品がない場合であって、食用に供せられるおそれのない魚卵や稚魚の消毒などにやむを得ず用いるとき以外には薬剤としての使用を禁止するものであり、「水産用医薬品以外の物の薬剤としての使用制限について」(平成九年十二月二十二日付け九水推第九十四号水産庁次長通知)によって、本通達の趣旨の徹底を図ったところである。
 また、稚魚とは、卵からかえって間もない魚のことである。
 ホルマリンの廃棄の方法としては、化学的には、多量の水を加えて希薄な水溶液とした後、次亜塩素酸塩水溶液を加えて分解させ、廃棄する方法や水酸化ナトリウム水溶液等でアルカリ性にして、過酸化水素を加えて分解させた後多量の水で希釈して処理する方法等が知られている。

三について

 一について及び七についてで答弁しているとおりである。

四について

 ホルマリンによる食品と海洋の汚染に関する質問に対する答弁書(平成九年一月二十四日内閣衆質一三九第五号)の十七についてで答弁したとおり、御指摘の駆除作業後のホルマリン含有海水の筏から海洋への流出は、船舶からの排出に該当しないことから、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(昭和四十五年法律第百三十六号。以下「海防法」という。)に違反するものではない。なお、とらふぐの寄生虫駆除を行うために、養殖用筏の中の海水をビニールシート等で一時的に区画し、ここにホルマリンを含有した海水を散布する場合は、ホルムアルデヒドを気化させるため使用後の海水を一定期間筏に留め置いた後、当該ビニールシート等を除去して海水の流出入に従ってこれを自然環境中に拡散させているものと承知しているが、このような場合における筏から流出する海水に関しては、現在のところ、生活環境及び公衆衛生上悪影響が生ずるという科学的知見は得られていないことから、当該海水を廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号。以下「廃棄物処理法」という。)上の廃棄物として取り扱うことは社会通念上適当でないと考える。

五について

 海上保安庁において平成八年秋に実施した調査によれば、ホルマリンを含有した海水を船舶から筏に散布し、その後、ホルムアルデヒドを気化させるため、使用後の海水を筏に留め置く期間は、数日間程度であったと承知している。
 また、当該調査においては、筏から使用後の海水を海洋に流出させる際のホルムアルデヒドの気化の確認及び濃度の測定がどのようにして行われているかについては調査していない。

六について

 とらふぐの寄生虫駆除を行うために、養殖用筏の中の海水をビニールシート等で一時的に区画し、ここにホルマリンを含有した海水を散布する場合は、ホルムアルデヒドを気化させるため使用後の海水を一定期間筏に留め置いた後、当該ビニールシート等を除去して海水の流出入に従ってこれを自然環境中に拡散させているものと承知しており、御指摘の「ホルマリン薬浴後そのまますぐに薬浴液を無処理で放流する方法が日常的に行われている」かどうかは承知していない。
 御指摘の方法については、水産庁長官通達の趣旨に照らし適当でないと考えるが、御指摘の「ホルマリン薬浴後そのまますぐに薬浴液を無処理で放流する」海水中に含まれるホルマリンは微量であると聞いており、現在のところ、生活環境及び公衆衛生上悪影響が生ずるという科学的知見は得られていないことから、当該海水を廃棄物として取り扱うことは社会通念上適当ではなく、廃棄物処理法違反とはならないと考えている。
 また、御指摘の方法については、船舶からの排出に該当しないことから、海防法の規制対象とはならないので、同法違反とはならないと考えている。

七について

 水産庁の研究所等によるこれまでの調査、研究の結果、あこやがいのへい死の原因となっている本感染症については、徹底した漁場管理や低水温での飼育により被害の拡大防止や低減が可能であることが示唆されている。
 今後は、これらの知見を踏まえ、適切な漁場管理や低温処理技術による病害対策研究を強化することとしており、これらの研究成果が得られれば、被害の拡大要因についてもおのずから明らかになるものと考える。
 なお、平成九年度に実施した海域における海水中のホルマリン濃度のモニタリング調査において、すべての調査点でホルマリンは検出されていないことから、ホルマリンのあこやがい大量へい死への間接的な関与についても、その可能性は極めて低いと考えられる。

八について

 御指摘の「平成九年度アコヤガイ大量へい死原因究明に関する水産庁研究所成果報告書」(平成十年三月)の中で示されているA県、B県及びC県並びにそれぞれの県におけるSt1、St2、St3、StA、StB、StC、StD及びStEに対応する地域は次の表のとおりである。
 なお、平成十年度においても平成九年度と同じ定点で定期的に採水調査を実施しており、その結果については、年度終了後に報告書として取りまとめる予定である。


九について

 これまでのところ、ホルマリンが海洋において他の有害化学物質へ転化し、水産生物に悪影響を及ぼしているという例は聞いておらず、従ってそうした観点からの調査、研究は実施していない。
 しかしながら、環境への影響等については必ずしも十分に解明されているとはいえないため、今後ともホルマリンの使用制限の徹底に努めてまいりたい。

十について

 御指摘の点については、元来生体内にはホルムアルデヒド以外にアルデヒド基を持つ物質が検出濃度以上に存在する可能性があること、分析方法によってはアルデヒド基を持つ物質すべてで陽性反応が得られる例があること等から、ホルムアルデヒドの由来については判断が困難である。

十一について

 環境庁は「ホルマリンによる環境汚染の防止対策について」(平成十年二月四日付け環水規第三十三号環境庁水質保全局長通知)により都道府県知事に対してホルマリンによる公共用水域の汚染状況等の調査を依頼したところである。調査を行った都道府県のすべてから当該調査の結果が報告され次第、早急にこれらを取りまとめ、その結果を明らかにしてまいりたい。

十二について

 水産庁は、養殖業者等に対して御指摘のようなホルマリンの使用についての指導、推進を行ったことはない。
 魚病対策においては、適正な養殖管理が基本であり、魚病を発生させない養殖管理に努めることが重要であると考える。
 今後、さらに適正な養殖管理が実践できるよう都道府県を通じて養殖業者等を指導してまいりたい。

十三について

 お尋ねの社団法人全国かん水養魚協会の対応は、食品の安全性確保の観点から適切なものと評価されるものである。
 これらを受け、各漁業協同組合は、荷受け業者等からの要請に応じて証明書を発行しており、これまで五県八組合において証明書が発行されている。
 なお、発行していない漁業協同組合については、荷受け業者等からの要請がなされていないことが大きな理由であるとのことである。

十四及び十五について

 毒物又は劇物について毒物及び劇物取締法(昭和二十五年法律第三百三号)に基づく販売業の登録を受けた者でない者がその販売等を行ったことが判明した場合には、当該業者の店舗の所在地の都道府県により、必要な指導等の措置が講じられる。御指摘の新聞記事によって報道されたとらふぐ養殖場に対してホルマリンを販売した業者が同法に基づく登録を受けていなかったことが判明したことから、当該業者の店舗の所在地の都道府県により、当該業者に対して、販売を行わないこと、販売を行う場合は登録を受けること等について指導が行われており、この結果当該業者は既にホルマリンの販売を行っていないと承知している。
 なお、政府として毒劇物の管理体制並びに危害発生時における関係省庁間の情報伝達及び連携体制を強化するため、平成十年九月十八日に内閣官房長官決裁により毒劇物対策会議の開催が決定されたところであるが、同年十一月二十七日にとりまとめられた「毒劇物対策会議報告書」においては、都道府県衛生部局、農政部局、都道府県警察、消防機関等による事業所への立入等によって必要な登録・届出を行わずに毒劇物が取り扱われているおそれがあることを把握した場合には相互に関係機関へ通報することとしているところであり、今後とも関係機関との連携を図りながら毒劇物の監視指導の徹底を図ってまいりたい。

十六について

 水産庁においては、現在もなお、養殖漁場においてホルマリンを使用しているという報告は受けていないが、御指摘の趣旨を踏まえ、関係都道府県と協力して、ホルマリンの使用実態を改めて調査することについて検討してまいりたい。

十七について

 環境庁は、平成十年に水環境に係る調査を進める際に優先的に知見の集積を図るべき物質として「水環境保全に向けた取組のための要調査項目」(以下「要調査項目」という。)を選定したところであり、要調査項目の中にはホルマリンの主成分であるホルムアルデヒドが含まれている。環境庁としては、要調査項目に該当する物質については、今後順次、環境中の存在状況に係る調査等を実施することとしている。
 一方、水産庁においては、現在までのところ、少なくとも科学的にみてホルマリンが海洋において魚介類に何らかの影響を及ぼしたことがあったとは承知していない。
 しかしながら、環境への影響等については必ずしも十分に解明されているとはいえないため、今後ともホルマリンの使用制限の徹底に努めてまいりたい。

十八について

 水産庁が実施した室内実験の結果、ホルマリン濃度百万分の三・一であこやがいの餌となる植物プランクトンの増殖に影響が生じ、百万分の十二であこやがいに対する直接的影響が生じることが明らかになった。
 一方、平成九年度に実施した海域における海水中のホルマリン濃度のモニタリング調査においては、すべての調査点でホルマリンは検出されていない。
 したがって、この調査、研究結果をもって海域の現場で直ちに有害性を評価することは困難である。

十九について

 環境庁は、水質汚濁の未然防止の観点から、平成十年二月に都道府県知事に対してホルマリンによる公共用水域の汚染状況等の調査を依頼し、現在、調査の結果の報告を受けているところである。また、環境庁は、平成十年に水環境に係る調査を進める際に優先的に知見の集積を図るべき物質として要調査項目を選定したところであるが、この中にはホルマリンの主成分であるホルムアルデヒド及び有機スズ化合物が含まれている。環境庁としては、要調査項目に該当する物質については、今後順次、環境中の存在状況に係る調査等を実施することとしている。これらの調査結果等を踏まえ、公共用水域の水質の保全のために必要な検討を行ってまいりたい。
 なお、御指摘の「環境汚染物質排出・移動登録制度」(以下「PRTR」という。)は、化学物質の使用又は排出の規制を行う措置ではない。政府としては、PRTRに関する措置等を規定する「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律案」を第百四十五回国会に提出したところであり、同法案においては、その対象物質等については政令で定めることとしているところである。





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