国会議員政策担当秘書資格試験第1次試験(論文式)の出題例について

 

  • 国会議員政策担当秘書として必要な高度な企画力・分析力・構成力等を見る総合的な論文試験である。
    問題文及び提示された資料を分析し、論述する形式となっている。
  • 課題1は必須問題である。課題2及び課題3は選択問題であり、いずれか1問を選択する。(計2問解答)
  • 各問1000字〜1200字で論述する。解答時間は3時間である。

※ 実際の出題に際しては、例に掲げたテーマに限らず、多岐に亘る分野からの出題となる。

※ 出題例は、ある時点における社会状況を前提としたものであり、現在の状況とは必ずしも一致しない。


《出題例1》

 平成13年5月11日,熊本地方裁判所は,ハンセン病国家賠償請求訴訟事件に関して,原告患者達に全面勝訴の判決を与えた。敗訴した国は控訴を断念し,6月7日に衆議院,翌8日に参議院において資料1のような決議を行った。さらに,「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律」(平成13年法律第63号)が可決,制定された。
 一方,それに先立って政府は,資料2のような声明を出している。
 この決議と政府声明の双方を検討して,国会が立法行為において基本的人権を擁護するために果たすべき役割を考察しなさい。



〔資料1〕

ハンセン病問題に関する決議

 去る5月11日の熊本地方裁判所におけるハンセン病国家賠償請求訴訟判決について,政府は控訴しないことを決定した。本院は永年にわたり採られてきたハンセン病患者に対する隔離政策により,多くの患者,元患者が人権上の制限,差別等により受けた苦痛と苦難に対し,深く反省し謝罪の意を表明するとともに,多くの苦しみと無念の中で亡くなられた方々に哀悼の誠を捧げるものである。
 さらに,立法府の責任については,昭和60年の最高裁判所の判決を理解しつつ,ハンセン病問題の早期かつ全面的な解決を図るため,我々は,今回の判決を厳粛に受け止め,隔離政策の継続を許してきた責任を認め,このような不幸を二度と繰り返さないよう,すみやかに患者,元患者に対する名誉回復と救済等の立法措置を講ずることをここに決意する。
 政府においても,患者,元患者の方々の今後の生活の安定,ならびにこれまで被った苦痛と苦難に対し,早期かつ全面的な解決を図るよう万全を期するべきである。
 右決議する。



〔資料2〕

政 府 声 明

平成13年5月25日
閣 議 決 定

 政府は,平成13年5月11日の熊本地方裁判所ハンセン病国家賠償請求訴訟判決に対しては,控訴断念という極めて異例の判断をしましたが,この際,本判決には,次のような国家賠償法,民法の解釈の根幹にかかわる法律上の問題点があることを当事者である政府の立場として明らかにするものです。

  1. 立法行為については,国会議員は国民全体に対する政治的責任を負うにとどまり,国会議員が個別の国民の権利に対応した関係での法的責任を負うのは,「立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて立法を行うというごとき,容易に想定し難いような例外的な場合」(最高裁判所昭和60年11月21日第一小法廷判決),すなわち故意に憲法に違反し国民の権利を侵害する場合に限られます。これに対して,本判決は,故意がない国会議員の不作為に対して,法的責任を広く認めております。このような判断は,司法が法令の違憲審査権を超えて国会議員の活動を過度に制約することとなり,前記判例に反しますので,国家賠償法の解釈として到底認めることができません。
  2. 民法第724条後段は,損害賠償請求権は20年を経過することにより消滅する旨規定していますが,本判決では,結果的に40年間にわたる損害の賠償を認めるものとなっております。この点については,本件の患者・元患者の苦しみを十分汲み取って考えなければならないものではありますが,そのような結論を認めれば,民法の規定に反し,国民の権利・義務関係への影響があまりに大きく,法律論としてはこれをゆるがせにすることができません。

 

《出題例2》

 20世紀後半の経済成長の推進的役割を担ってきた大量生産・大量消費を主体とする社会経済システム,そして,その結果として常態化した大量廃棄社会は,世紀末になって廃棄物処理に関する技術的問題や地球温暖化をはじめとする環境問題を顕在化させ,人類の生存基盤を脅かすほどの深刻さを増している。このような大量廃棄社会に関する問題認識および循環型社会への転換の必要性については,すでに国民的な共通認識が形成されていると考えられる。
 しかし,21世紀に形成されるであろう循環型社会の具体的なイメージや,そのような社会への移行過程においてどのような技術的・社会的システムを採用するかについての明確な設計図は描かれていない。すなわち,その理念が明確でないままに実行段階に入ることを余儀なくされている循環型社会の具体的な内容の明確化,および公共政策や企業活動の評価基準になりうる尺度や指標の早急な開発が求められている。
 また,個人や企業の複雑な利害を総合的に調整する制度としての公共政策の設計も不可欠である。その設計のためには,地域や都市の改造,地域の活性化,さらには貿易を含めた物質収支の制御を考慮しつつ,超世代的視野に基づく政策ないし技術の選択が必要であり,この点では今後国民的議論の高揚が求められている。現在,国内外では,拡大生産者責任(製造物に関する廃棄・処分に至るまでの環境負荷の低減に関する責任を生産者等に課すという考え方)や,責任の共有化原則(異なる立場から環境にかかわる企業,住民,行政など様々な主体がパートナーシップを構築することにより,他の主体の努力を補完し,また協調しつつ,分担と連携が形作られることで,個々の努力は大きな成果を生むという考え方)などについて議論が行われている。
 このような状況を背景として,循環型社会をめざすシステムを設計するにあたって,例えば「循環型社会」とはどのような社会か,どう責任を分担するのか,などの基本的理念について,わが国の取り組みの現状評価を含めて見解を述べなさい。



〔参考資料〕

・容器包装リサイクル法(平成7年6月16日法律第112号)
 小売店に対して,ガラス製容器とペットボトルの再資源化に伴う費用負担を義務づけ,スーパーで配る紙袋やビニール袋,生鮮食品用トレー,段ボールについても企業側に再資源化の負担を求めている。

・特定家庭用機器再商品化法(平成10年6月5日法律第97号)
 家電メーカーに対し,テレビ,エアコン,冷蔵庫,洗濯機の使用済み家電製品の回収,再商品化を義務づけ,消費者にはリサイクル料金の負担を求める。平成13年4月の施行を目指し,将来はガス機器,パソコンなどにも拡大する見通し。

・グリーン購入法(平成12年5月31日法律第100号)
 省庁と出先機関,特殊法人は環境への負荷の少ない商品を率先して購入し,調査結果を公表する。地方自治体も購入に努力する。

・循環型社会形成推進基本法(平成12年6月2日法律第110号)
 廃棄物の減量や使用済み製品の回収・再利用を目指すとともに,不法投棄の防止を図ることを目的としている。5年ごとに見直し,国は,平成15年10月までに循環型社会形成推進基本計画の策定を目指す。