衆議院法制局採用情報

過去の出題例

職員採用総合職試験(第2次試験(論文試験))
試験年度 憲法 行政法 民法
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令和8年度
憲法

 以下の学生A及びBの会話を読んで、問に答えなさい。

[学生の会話]

A「内閣総理大臣その他の国務大臣が予算委員会その他の委員会に出席している姿はよく見かけるように思うけれど、最高裁判所長官の姿は、予算委員会その他の委員会で見かけない気がするわね。なぜかしら?」

B「国会法を見ると、国務大臣については『委員会は、議長を経由して内閣総理大臣その他の国務大臣並びに内閣官房副長官、副大臣及び大臣政務官並びに政府特別補佐人の出席を求めることができる。』と規定しているのに対し、最高裁判所長官については『最高裁判所長官又はその指定する代理者は、その要求により、委員会の承認を得て委員会に出席説明することができる。』と規定していることにその一因があるのかもしれないね。実際には、最高裁判所長官が委員会に出席することはまれだけれど、その代理者が予算委員会や法務委員会に出席して裁判所の予算や裁判所に関係する法律案に対する説明を行う例は多くあるみたいだよ。」

A「それぞれの条文の委員会への出席に関する規定の仕方が、国務大臣と最高裁判所長官とで異なるのね。とはいえ、裁判所がその要求により委員会に出席することができるだけではなく、委員会として、最高裁判所に質問したり、意見を求めたりする必要性もあると思うわ。�@最高裁判所長官についても、委員会としてその出席を求める制度を設けることはできないものかしら。」

B「私としては、委員会における法律案の審査において、もっと憲法上の論点について深い議論がなされるようになるとよいと思うんだよね。」

A「だとしたら、例えば�A委員会が、自ら審議している法律案の合憲性について、法的拘束力を有しないかたちで最高裁判所の見解を求めることができることとしてはどうかしら?」

B「う〜ん、そのアイデアは、判例の司法権に対する考え方や違憲審査権の行使に対する考え方からすると難しくないかなあ。」

A「違憲審査制の役割は、個人の人権を保障することだけではないと思うの。そう考えれば、こうした制度を設けることも憲法上許容されていると考える余地はあるのではないかしら。」

[問1]

 下線部�@の構想について、憲法上の論点を整理して、あなたの考えを述べなさい。その際、委員会への出席の方法に関して国務大臣と最高裁判所長官とで国会法の規定の仕方が異なっている理由及びあなたの考えと異なる立場から想定される意見にも言及すること。

[問2]

 下線部�Aの構想について、憲法上の論点を整理して、あなたの考えを述べなさい。その際、あなたの考えと異なる立場から想定される意見にも言及すること。

参照条文

国会法【略】

行政法

 以下の[事実関係]を前提に、[参照条文]に掲げている関係法令等の抜粋を適宜参照しながら、〔問1〕及び〔問2〕に答えなさい。

[事実関係]

1 A市は、近年、生活に困難を抱える若年者が増加していることに鑑み、若年者の就労と自立を支援するため、A市若年者就労支援条例を制定し、同条例に基づき、一定の要件を満たす若年者の就労を支援する事業(以下「本件事業」という。)を実施している。
 また、A市は、A市行政手続条例5条に基づき、本件事業の審査基準として、A市若年者就労支援事業実施要綱を定めて公表している。

2 A市は、本件事業の実施に当たり、支援対象者の該当性を迅速かつ効率的に判断するため、人工知能(AI)を活用して申請者の就職可能性を評価する情報処理システム(以下「本件評価システム」という。)を導入している。
 本件評価システムは、過去の支援実績等のデータを用いて構築されたアルゴリズムにより、申請者の年齢、就労期間、離職回数、資格保有の有無、学歴などの申請者の客観的指標を分析して、申請者の就職可能性の程度を数値化して評価する仕組みとなっている。
 また、A市は、限られた予算の下で就労支援の効果を高めて支援後の就職率・定着率の成果を向上させる観点から、本件評価システムでは、支援後に比較的短期間で就職に至る可能性のある申請者ほど高い数値になるように運用されていた。
 なお、A市は、本件評価システムにおいて各要素の重み付けがどのように設定されているか等について公表していない。

3 制度上、本件評価システムは、あくまで判断を補助するための参考資料として活用されることとなっていたが、実際には、A市の担当部署では、本件評価システムの評価結果を覆すには手続が煩雑であるため、申請者の離職理由等を個別に調査することはなく、本件評価システムの評価結果が基準値を下回る場合には、「支援対象者に該当しない」旨の判断を行うという運用がなされていた。

4 X(27歳)は、約5年前に大学を卒業し、それ以降A市内で継続的に居住する者である。Xは、大学卒業後に正社員として民間企業Yに就職したが、Yの業績が著しく悪化したため、拠点閉鎖に伴う整理解雇により、入社から約2年で離職を余儀なくされた。Xの勤務態度に全く問題はなく、この離職は、専らY側の事由によるものであった。
 その後、Xは、アルバイトで生計を維持しながら求職活動を続けていたが、物価上昇の影響もあり、生活に余裕のない状況が続いていた。
 Xは、自分が専門的技能や資格を有していないために就職できていないと考え、安定した職業に就くために職業訓練を受けることを希望し、A市に対して本件事業の利用をオンラインで申請した。Xは、その申請に際し、自由記載欄に、求職活動を継続していることや、職業訓練を受講することで就職しやすくなると考えていること等を入力した。

5 しかし、Xの申請については、本件評価システムの評価結果が基準値を下回ったため、A市は、Xを「支援対象者」に該当しないと判断し、その旨を書面でXに通知した。その通知書には、「申請内容を総合的に考慮した結果、支援対象者には該当しないと判断しました」とのみ記載されていた。

6 Xは、A市の判断に納得できず、A市に情報公開請求を行ったところ、�@本件評価システムが申請者の客観的指標を分析して就職可能性の程度を評価するものであること、�A本件評価システムが比較的短期間で就職に至る可能性のある申請者を高く評価する仕組みとなっていること、�B本件評価システムの評価結果が基準値を下回る場合には、特段の事情がない限り「非該当」として処理する運用がなされていること、�C特段の事情があると認める場合には、それを証する資料を用いて関係部署と協議した上で判断理由を記録する手続となっていることを知るに至った。

7 Xは、A市の対応において自分の支援の必要性が十分に考慮されていないと感じているとともに、A市の判断が相対的に就職しやすい者にとって有利な方向に偏っているのではないかと疑問を抱いている。

  [問1]

  Xは、A市の対応に対して取消訴訟を提起することを考えているが、その可否について論じなさい。

  [問2]

  Xは、問1の取消訴訟において、A市の対応の違法性に関してどのような主張を行うことが考えられるか。その可否について論じなさい。
 なお、条例及び要綱の違法性については論じる必要はない。

参照条文

○ A市若年者就労支援条例

 (目的)

第1条 この条例は、近年、生活に困難を抱える若年者が増加していることが喫緊の課題となっていることに鑑み、若年者の就労及び自立を支援するため、若年者に対する就労の支援の実施に関し必要な事項を定めることにより、若年者の生活の安定を図ることを目的とする。

 (定義)

第2条 この条例において「若年者」とは、市内に住所を有する者のうち、おおむね18歳以上35歳未満の者をいう。

 (市の責務)

第3条 市は、生活に困難を抱える若年者が自立した生活を営むことができるよう、若年者に対する就労の支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進するよう努めるものとする。

 (支援対象者)

第4条 この条例に基づく支援(以下「就労支援」という。)の対象となる者(以下「支援対象者」という。)は、次に掲げる要件のいずれにも該当する若年者であって、就労支援を行うことが適当であると認められるものとする。
一 市内に継続して3年以上居住すること。
二 就労に関して支援を必要とする事情があること。
三 就労の意欲があること。

 (申請)

第5条 就労支援を受けようとする者は、市長に対し、書面又は市が提供する電子申請システムを利用する方法により申請しなければならない。

 (支援対象者該当性の判断)

第6条 市長は、前条の申請があったときは、その申請を行った者(以下この条及び次条において「申請者」という。)の就労状況、求職活動の状況、生活状況その他の事情を総合的に考慮し、申請者の就労支援の必要性及び就労支援による就労可能性を踏まえて、当該申請者が支援対象者に該当するかどうかを判断するものとする。

 (判断結果の通知)

第7条 市長は、前条の判断の結果(以下「判断結果」という。)を、速やかに、申請者に対して通知するものとする。

 (通知の方法)

第8条 前条の通知は、書面の送付による方法により行うものとする。

 (就労支援の実施)

第9条 市長は、第6条の規定により支援対象者に該当すると判断したときは、当該支援対象者に対し、次に掲げる支援の全部又は一部を実施することができる。
一 求職活動に関する相談及び助言
二 職業訓練の受講に関する支援
三 資格取得に要する費用の補助
四 前各号に掲げるもののほか、就労及び自立に資するものと認められる支援

2 前項第3号に掲げる補助の内容、方法及び上限額は、市長が別に定める。

3 市長は、第1項の規定による支援の実施に当たり、必要があると認めるときは、関係機関と連携することができる。

 (調査及び資料の提出)

第10条 市長は、この条例の施行に必要な限度において、申請者に対し必要な調査を行い、又は資料の提出若しくは説明を求めることができる。

 (関係機関との連携)

第11条 市は、支援対象者に対する就労支援を効果的に実施するため、公共職業安定所その他の関係機関と連携を図るよう努めるものとする。

 (委任)

第12条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。


○ A市若年者就労支援事業実施要綱〔抜粋〕

 (趣旨)

第1条 この要綱は、A市が実施する若年者就労支援事業(以下「本事業」という。)に関し、A市若年者就労支援条例(以下「条例」という。)に基づき行われる支援対象者(条例第4条に規定する支援対象者をいう。以下同じ。)の該当性に関する判断に当たり考慮すべき事項その他の本事業の実施に関し必要な事項を定めるものとする。

 (判断に当たり考慮すべき事項)

第2条 市長は、条例第6条の規定に基づき申請者が支援対象者に該当するか否かを判断するに当たっては、申請書に記載された情報又は申請者が入力した情報その他市が保有する情報を踏まえ、次に掲げる事項を総合的に考慮するものとする。
一 現在の就労状況及びこれまでの就労履歴
二 求職活動の状況
三 生活状況その他就労の支援の必要性に関する事項
四 迅速かつ効果的な支援の実施に必要な事項
五 前各号に掲げるもののほか、個別の事案に即した総合的な判断を行うために必要な事項

 (判断を補助するための情報処理システムの活用)

第3条 市長は、前条の事項を考慮して支援対象者の該当性を判断するに当たり、その判断の迅速性及び効率性を確保する観点から、その判断を補助するため、情報処理システムを活用することができる。

2 前項の情報処理システムは、市長の判断をそのまま代替するものではなく、あくまでもその判断を行う際の参考資料として用いられるものであることに留意するものとする。

 (個別事情の考慮)

第4条 前条第2項の趣旨に照らし、同条第1項の情報処理システムによる分析結果がある場合であっても、市長は、申請者の具体的な事情にも配慮しつつ、必要に応じて追加的な調査又は検討を行うものとする。

 …(以下略)…


○ A市行政手続条例〔抜粋〕

 (目的)

第1条 この条例は、行政手続法(平成5年法律第88号)第46条の規定の趣旨にのっとり、処分、行政指導及び届出に関する手続に関して共通する事項を定めることにより、A市の行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が市民にとって明らかであることをいう。)の向上を図り、もって市民の権利利益の保護に資することを目的とする。

 (定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 条例等 A市(以下「市」という。)の条例及び市長の規則をいう。

二 処分 処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。

三 申請 条例等に基づき、市長の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して市長が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。

四〜九 (略)

 (審査基準)

第5条 市長は、申請により求められた許認可等をするかどうかをその条例等の定めに従って判断するために必要とされる基準(以下「審査基準」という。)を定めるものとする。

2 市長は、審査基準を定めるに当たっては、当該許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。

3 市長は、行政上特別の支障があるときを除き、その申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければならない。

 (標準処理期間)

第6条 市長は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。

 (申請に対する審査、応答)

第7条 市長は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の条例等に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者(以下「申請者」という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。

 (理由の提示)

第8条 市長は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合には、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。

2 前項に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない。


○ 行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)〔抜粋〕

 (抗告訴訟)

第3条 (略)

2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

3〜7 (略)

 (原告適格)

第9条 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。

2 (略)

 (裁量処分の取消し)

第30条 行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。

民法

 あなたは、Xから法律相談を受けている。次に掲げる〔事実〕及び〔Xからの聴き取り〕の内容を前提として、Xから質問された(1)〜(3)について、それぞれ回答を検討せよ。
 その際、条文上の根拠のある部分については、根拠規定を明示すること。


※文中において特定されている日時にかかわらず、令和8年1月1日現在において施行されている法令に基づいて解答すること。

※民法以外の法令の適用については、検討する必要はない。


[事実]

1.XとYは夫婦であり、その間には実子Aがいる。XYは婚姻後も従前の仕事を継続しており、XYAは生計を一にしていた。

2.Yは、令和元年頃、相次いで両親を亡くしたことをきっかけとして、献金によって来世での幸福が得られる旨を主張するZに傾倒するようになった。Yは、Zの「金銭とは、現世の罪の象徴である」「Zは、大衆の罪を引き受け救済する存在である」「Zに委ねた金銭の多さは、来世に持ち越される罪の少なさである」などといった発言を受けて、自らが相続した財産や婚姻前に形成した財産をZに寄附するようになった。これらの財産がほとんど費消された後も、Yは寄附をやめなかった。

3.令和3年2月、Aの高校進学が決まった。Yは、このことを奇貨として、同月20日、貸金業者Pに対し、Aの高校入学許可証及び入学金その他初年度納付金の振込用紙(150万円)を示しながら、「初年度納付金など、Aの高校入学に要する諸費用に充てる」「配偶者Xと相談し、手元の資金を充てるのではなく、当座は借入れにより賄い、5年後が満期の生命保険の満期返戻金を充てたいということとなった」「自分よりもXの方が収入が高く安定しているので、X名義で借り入れたい、Xも承諾している」「Xは急な海外出張のため、来店することができない」などと虚偽の説明を行い、これを信じたPとの間で、Xの代理人として金銭消費貸借契約(200万円・弁済期令和8年3月31日・利息50万円)を締結し、受領した金銭をZに寄附した。

4.令和6年3月、Aは高校を卒業した。同年4月、Aは就職を機にXYの元を離れ、現在に至るまで、独立して生計を営んでいる。

5.令和7年8月、Xは相続により甲土地を単独で取得した。同年9月、Yは、Xの実印を冒用し、友人Qに対して「Xが相続税の支払いに充てるため甲土地の買い手を探している」「Xは多忙のため自分が代理することとなった」などと虚偽の説明を行い、これを信じたQとの間で、Xの代理人として甲土地の売買契約を締結し、その所有権移転登記を行った上で、受領した代金1500万円をZに寄附した。なお、甲土地は、現在に至るまで、引き続きQが占有しており、登記もQ名義のままである。

6.令和8年1月、Xは貸金業者Pから3の金銭消費貸借契約の弁済期が迫っている旨の連絡を受けたことを契機に、3及び5の事情を初めて把握した。

7.令和8年2月、XYは離婚した。

8.令和8年3月、Zは、Yが離婚したこと及びその原因がYの使い込みにあったことをYから聴取し、初めて把握した。Zは、これを好機と捉え、Yに対し「あなたが前世で負った罪は大変大きく、今の不幸もそれゆえである」「一刻の猶予もない、全ての富を手放さなければならない」などと申し向け、Yは、Zに勧められるまま、離婚時に自己の名義でB銀行の口座に有していた全財産1000万円をZに寄附した。


〔Xからの聴き取り〕

 Yとの結婚を機に、私もYもB銀行に新しく口座を作って、結婚後の収入はそこで管理するようにしていました。B銀行の口座は生活費などの支出のため日常的に使っており、出入りも週に一度はお互いに確認していたので、Yもそこから使い込むことは避けていたのだと思います。
 Yの両親が亡くなって以降、Yの金遣いが荒くなっていたことは把握していたのですが、生活費や、Aの高校入学金を含めた養育費などの負担はそれまでどおりに折半していましたので、結婚前の貯蓄から出しているのだろう、程度に考えて、あまり口を出さないようにしていました。まさか私の財産を使い込んでいたとは思いもしなかったです。
 離婚時の財産分与については、互いに行わないことで合意しました。こんな使い込みまでされて、とにかく早急に離婚したかったのですが、その時点ではどこまで使い込まれていたかも調べないといけない状態だったので、使い込み分の清算は後回しにするということにしました。結婚後の収入はだいたい同じで、生活費も折半していたという事情もあります。
 実印については、普段は印鑑登録証と一緒に貸金庫で保管していて、Yもこの貸金庫には入れないはずです。ただ、あの頃は、相続手続のために実印が必要かもしれないと思い、一時的に自宅で保管していました。時期からしても、それを勝手に持ち出して押印したのだと思います。
 私としては、とにかく、マイナス分さえゼロになってくれればそれでよいと思っています。次の3点についてアドバイスをいただけないでしょうか。

(1)甲土地は代々相続してきたものなので、Qに返してほしいと言えないものでしょうか。

(2)また、Pからは貸金200万円及びこれに対する利息50万円を返すように言われていますが、借りてもいない金を返さなければいけないのでしょうか。

(3)他方、PもQも、Yにだまされたと言われればそれはそうで、もっと言えばZさえいなければこんなことにはなっていなかったはずです。仮に、PやQとは争えないとされてしまった場合に、その分をZから回収する方法はあるのでしょうか。

 どうぞ、よろしくお願いします。

参照条文

民法 第一編〜第四編【略】

令和7年度
憲法

2030年代半ば、日本では地方から都市への人口の流出が進み、東京都の人口は1,500万人を超える一方、地方の人口は減少し、医療・福祉サービスへのアクセスも悪化していた。
 このような状況下において、医師の偏在、とりわけ、都市部への医療機関の集中は非常に大きな課題となっており、東京都では可住地面積当たりの医療機関数(以下「面積当たりの医療機関数」という。)が全国で突出して高く、また、人口当たりの医療機関数も全国平均の2倍となっていた。
 都市部における医療機関の更なる増加を抑制し、全国的な医師の偏在を解決するための次のような法律による対応の方策〔1〕〔2〕について、あなたが、衆議院議員から憲法上の問題がないか相談を受けたと仮定して、憲法上の論点と評価を述べなさい。
 なお、憲法上の論点の他に、政策合理性について言及することも差し支えない。

〔1〕

 人口増加が続いており、かつ、面積当たりの医療機関数と人口当たりの医療機関数の両方が全国平均の2倍を超える区域において、新規の医療機関を開設することができないこととする法律

〔2〕

 人口増加が続いており、かつ、面積当たりの医療機関数と人口当たりの医療機関数の両方が全国平均の2倍を超える区域において、医療機関が受け取る診療報酬を3割減額した上で、その減額分を原資として、人口減少が続いており、かつ、面積当たりの医療機関数と人口当たりの医療機関数の両方が全国平均を下回る区域にある医療機関が受け取る診療報酬を3割増額することとする法律(※なお、いずれの区域においても、患者の自己負担額は従前どおりとなるよう制度設計するものとする。)

参照条文

日本国憲法【略】

行政法

Y県には江戸時代より前から続く農業用ため池Aがあり、Y県知事から、農業用ため池の管理及び保全に関する法律に基づいて、特定農業用ため池に指定されている。
 隣県において台風の際に農業用ため池が決壊して近隣の住宅を押し流し、死者も出たことから、Y県は、県内の農業用ため池を調査することとした。調査の結果、農業用ため池Aは、堤体が変形し、漏水が続いており、仮に地震や豪雨があった場合は決壊するおそれがあることが判明した。しかし、古くから利用されている農業用ため池Aの権利関係は不明確で、所有権を有する者も、所有権以外の権原に基づき管理を行う者も不明であることから、農業用ため池Aの決壊を防ぐために堤体の地盤を改良して強度を上げる等の防災工事は行われていない。
 農業用ため池の防災工事には、それぞれの農業用ため池の状況に応じて異なるものの、1億円を超える費用を要することが見込まれるところ、Y県の調査結果によれば、県内には、農業用ため池Aと同様に、地震や豪雨があった場合に決壊するおそれがある農業用ため池が多く存在しているという状況である。
 Y県は、直ちに県内全ての決壊のおそれがある農業用ため池の防災工事を行うことは難しいことから、農業用ため池の近隣の住民が災害時に速やかに避難することができるよう、ハザードマップを作成するとともに公表した。
 農業用ため池Aの周辺に住む住民Xは、農業用ため池Aには決壊のおそれがあること、また、自らの居住する住宅がハザードマップにおいて農業用ため池Aが決壊した場合の浸水区域として表示されていることを知り、訴訟を提起して、Y県知事に対し、防災工事の施行を求めたいと考えている。

[問1]

 Xは、Y県知事に対し、防災工事の施行についてどのような請求をすることが考えられるか。

[問2]

 Y県知事は、Xの請求にどのような反論をすることが考えられるか。

参照条文

行政事件訴訟法 【略】

農業用ため池の管理及び保全に関する法律 【略】

民法

 次の文章を読んで、後記の〔問1〕、〔問2〕及び〔問3〕に答えなさい。

[事実Ⅰ]

1.Aはその所有する土地及び家屋をBに賃貸し、別の場所に住んでいる。

2.令和7年9月中旬、台風がBの住んでいる地域を直撃し、Bの家屋の屋根が壊れ、雨漏りが発生するなどして、その5分の1を使用できなくなった。

3.Bは、Aに対し、屋根の修理を依頼したが、Aからは、(ア)「今回の屋根の損壊は自分の責任によるものではないので、自分が修理する必要はないのではないか。また、今回のような大規模な修理を自分が行う必要はないのではないか。」との話があった。

4.Aは、相当の期間経過後も、屋根の修理に応じなかったため、Bは、自ら業者に依頼して屋根の修理を行った。Bとしては、屋根の修理費用については、本来Aが支払うべきものであると考えている。

〔問1〕

 [事実Ⅰ]を前提として、次の問いに答えなさい。

 [事実Ⅰ]の3.の段階で、Bは、Aに対し、どのような請求を行うことができるか。下線部(ア)のAの主張に言及しつつ、根拠を示しながら論じなさい。

 また、[事実Ⅰ]の4.の段階で、Bは、Aに対し、屋根の修理費用の請求を行うことができるか。根拠を示しながら論じなさい。

 ただし、AとBの賃貸借契約において、修繕に関する特約はなかったものとする。

[事実Ⅱ](事実Ⅰの続き)

5.Bは、屋根を修理する前の令和7年9月末の家賃の支払日において、同月中旬の台風による屋根の損壊以降、家屋の一部が使用できなくなったため、家賃を減額してほしいと考えていた。

6.しかし、Aからは、(イ)「家屋の一部が使用できなくなってはいるものの、それ自体がなくなってしまったわけではないので、減額に応ずる必要はないのではないか。もし仮に減額に応ずる必要があるとしても、請求前の分についてまで応ずる必要はないのではないか。」との話があった。

〔問2〕

 [事実Ⅰ]及び[事実Ⅱ]を前提として、次の問いに答えなさい。

 Bは、Aに対し、どのような請求を行うことができるか。下線部(イ)のAの主張に言及しつつ、根拠を示しながら論じなさい。

[事実Ⅲ](事実Ⅰ・Ⅱの続き)

7.AがBに賃貸している家屋の周りには、ブロック塀が設けられているが、これは、AがBに賃貸する前に、Aが建設会社のCに工事を行わせて設けたものであった。

8.しかし、Cは、工事の際に、ブロック塀に通常要求される強度の基礎工事を行っていなかった。

9.令和7年9月中旬の台風の際に、強風の影響でブロック塀が倒壊し、隣人のDが負傷することとなった。

〔問3〕

 [事実Ⅰ]、[事実Ⅱ]及び[事実Ⅲ]を前提として、次の問いに答えなさい。

 今回の台風が通常の規模のものであった場合、Dは、A又はBに対し、どのような請求を行うことができるか。根拠を示しながら論じなさい。

 また、仮に今回の台風が通常の規模を超えるものであった場合、上記の請求の相手方の減責を認めるべきか、それとも、認めるべきではないと考えるか。それぞれの主張の想定される論拠を示しながら論じなさい。

参照条文

民法 第一編〜第三編【略】

令和6年度
憲法

 以下の学生A及びBの会話を読んで、問に答えなさい。

学生A「近いうちに衆議院が解散されそうだね。昨日のニュースで解説していたけど、まだ野党の選挙体制が整っていないらしく、今選挙すれば与党が大勝するかもしれないみたいだよ。」

学生B「前から気になっていたんだけど、衆議院の解散って政府与党に相当有利な仕組みだよね。自分たちに最も有利なタイミングで選挙をすることができるんだから。そんな不公平な制度は問題だと思うな。」

学生A「そういえば、昨日のニュースで、X党の甲議員が衆議院の解散を制限する法律案を検討していると言っていたよ。でも、内閣に自由な解散権があるとすると、その行使を制限する法律はおよそ憲法違反になるんじゃないかな。」

学生B「内閣に自由な解散権があるっていうけど、そもそも、憲法上の根拠はどこにあるんだろう。」

学生A「確か、憲法7条の『内閣の助言と承認』が根拠だったよね。」

学生B「でも憲法4条によると、天皇には国政に関する権能がないんだよね。天皇は形式的・儀礼的な国事行為しかできないはずで、『内閣の助言と承認』もそれに対するものに過ぎないんじゃないかな。
 それに、憲法7条が根拠だとして、本当に自由な解散権があるといえるのかな。」

〔問〕

(1) 解散権の所在とその行使が認められる場面について、論点を整理した上で説明しなさい。

(2) 甲は、衆議院の解散を制限する法律案の内容として、①衆議院の解散事由を限定することを考えており、それが難しい場合には、②解散前に衆議院でその解散理由について議論するための手続を創設することを考えている。上記下線部①及び②を法制化しようとする場合の憲法上の論点について、解散制度の持つ意義を踏まえつつ、あなたの考えを述べなさい。なお、その際、考えられる法制度設計について言及することを妨げない。

参照条文

日本国憲法【略】

行政法

 次の会話は、衆議院法制局での上司Aと部下Bが、新たな立法に取り組むに当たり、ブレインストーミングをしているときのやりとりである。部下Bの空欄①〜④にふさわしい行政法上の論点を論じなさい(※会話文は「です・ます」調で掲載されているが、解答に当たっては、「です・ます」調で表記しても、「だ・である」調で表記しても、採点には影響しない。)。

A:どのような行政分野の法律の立法に当たっても、法律において行政処分の要件を書き切ることは難しいので、一定程度、行政庁の裁量を認めるものになることはしばしばありますよね。法の要件について行政裁量が認められる場面において、その判断が後に司法で争われることとなったとき、行政処分の違法性はどのような基準で判断されていますか。あるいは、そうした一般論を定立することは難しいですか。

B:①          

A:そうですね。ここで留意したいのは、行政庁の専門的・技術的判断が必要である場合においても、行政裁量が認められるかどうかは、個別の行政法分野の行政目的や、行政処分の性質、専門的・技術的判断に至る手続などによって、変わりうるということです。例えば、原子力発電所(原子炉)の設置許可と公害患者に対する給付認定を比較すると、いずれも専門的・技術的判断が必要であるものの、考慮すべき事情には違いがあると思いますが、具体的にはどのような違いがありますか。今、私は2つの分野の例を挙げましたが、他の例を挙げても構いません。

B:②          

A:少し観点が変わる問題となりますが、産業廃棄物処理施設の設置許可などでは、周辺住民が反対運動を起こしたりすることなどから、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の要件を満たしていても、行政庁が周辺住民の同意を取り付けることを産業廃棄物処理業者に求めることがあるようです。法律に根拠がないものの、行政庁としては、産業廃棄物処理業者が円満に事業を進められるよう、独自の指導要綱などを制定して、これに基づき周辺住民の同意の取付けを求め続ける一方、産業廃棄物処理業者がこれを顧みることなく、あくまで廃棄物の処理及び清掃に関する法律の要件を満たしているとして申請をした場合について、この申請に対する不許可処分は許されますか。

B:③          

A:以上を踏まえた上で、立法のお手伝いをするに当たっては、行政庁の裁量を事前に統制するなどして紛争を防ぎながら、事後に紛争になってしまった場合に救済手段が確保されていることが重要ですね。例えば、産業廃棄物処理施設の設置許可申請に対する不許可処分の判断過程において、考慮すべきでないことを考慮した違法があった場合、産業廃棄物処理業者としては、どのような手段により司法救済を求めることが考えられますか。

B:④          

参照条文

廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第一条、第十四条第五項第二号イからヘまで、第十五条の二【略】

行政事件訴訟法 【略】

行政手続法 【略】

民法

 次の文章を読んで、後記の〔問1〕、〔問2〕及び〔問3〕に答えなさい。

[事実Ⅰ]

1.A及びBは、「こしひかり」を生産する米農家であり、隣人同士である。

2.令和6年初頭のある日、A及びBの住む地域を大きな地震が襲った。Aは、外に出て、自宅に特段の損傷がないことを確認したが、その際、隣接するB所有の古い米蔵が大きく損傷し、A宅の方に傾いていることを発見した。Aは、急いでこのことをBに知らせようとしたが、連絡が付かず、Bが年末から海外旅行中であることを思い出した。

3.余震の発生も予想される中、(ア)Aは、「Bが大切にしていた米蔵が崩れでもしたら大変だ、また、そうなれば隣接する我が家にも被害が及びかねない」と考え、自己の名義で米蔵の修理をC工務店に依頼した。米蔵には必要最低限の応急的な修理が施され、AはCに修理費用10万円を支払った。

4.その後、Bが海外旅行から帰宅した。

〔問1〕

 [事実Ⅰ]を前提として、次の問いに答えなさい。

 Aは、Bに対し、米蔵の修理費用10万円の支払を請求することができるか。下線部(ア)の事実がどのような法律上の意義を有するかに言及しつつ、論じなさい。

[事実Ⅱ](事実Ⅰの続き)

5.Bの米蔵は、本格的な修繕が行われることになり、当分の間使用ができない状態となった。この状況を心配したAは、Bに、大型の低温貯蔵庫を所有するDを紹介することにした。Dは、元々Aが、無償で、その収穫した「こしひかり」100�sを保管してもらっている者であった。

6.交渉の結果、Bも、その収穫した「こしひかり」200�sを、無償で、Dの貯蔵庫で保管してもらえることになった。なお、Dは、貯蔵庫内にある大型の容器に、Aの「こしひかり」100�sを保管していたが、A及びBの承諾を得て、当該容器にBの「こしひかり」200�sも混合して保管することにした(A及びBの「こしひかり」は同一種類・同一品質であり、10�s当たり5,000円相当である。)。

7.ところが、DがAの「こしひかり」に加えてBの「こしひかり」も保管するようになってからしばらくしたある日、Dの貯蔵庫に何者かが侵入し、容器に保管されていた「こしひかり」60�sが盗取された。なお、何者かに貯蔵庫への侵入を許したのは、その日はDが貯蔵庫の施錠を忘れていたためである。また、貯蔵庫に侵入した者は不明であり、盗品を取り戻すことは不可能である。

〔問2〕

 [事実Ⅰ]及び[事実Ⅱ]を前提として、次の問いに答えなさい。

 この時点で、A及びBは、Dに対し、契約に基づき、それぞれ何�sの「こしひかり」の返還請求権を有しているか。

 また、A及びBは、Dに対し、債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができるか。

[事実Ⅲ](事実Ⅰ・Ⅱの続き)

8.盗難事件を知り、Dの保管態勢に不信の念を抱いたBは、「Aへの返還分が足りなくなってしまうだろうが、今のうちにDから返せるだけ返してもらい、全て売却してしまおう」と考え、Dに対し、契約に基づくものとして、「こしひかり」200�sの返還を求めた。Dは、あまり深く考えることなくこの求めに応じ、Bに「こしひかり」200�sを返還した。

9.Bは、Dから返還を受けた「こしひかり」200�sについて、直ちに、以上の経緯を何も知らないEに、代金20万円で売却した。Bは、Eから代金全額の支払を受けるとともに、Eに「こしひかり」200�sを現実に引き渡した。なお、当該「こしひかり」200�sは、本来であれば10万円相当であるところ、20万円という高値で売却することができたのは、Bの特別な才覚によるものであった。

10.その後、AがDに対し「こしひかり」100�sの返還を求めたところ、Dは以上の経緯により貯蔵庫内には「こしひかり」40�sしか残っていないとして、Aに「こしひかり」40�sを返還した。

11.Aは、「(イ)BがDから返還を受け、Eに売却した『こしひかり』200�sのうちの一部は、そもそも自分のものであったのだから、その現物の返還か、それに代わる金銭の支払を請求したい」と思っている。

〔問3〕

 [事実Ⅰ]、[事実Ⅱ]及び[事実Ⅲ]を前提として、次の問いに答えなさい。

 Aの下線部(イ)の主張の根拠を明らかにし、その主張の当否を検討した上で、Aが、誰にどのような請求をすることができるか、論じなさい。

参照条文

民法 第一編〜第三編【略】

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