第一六四回
参第一五号
金融商品取引監視委員会設置法案
(目的)
第一条 この法律は、金融商品取引監視委員会の設置並びに任務及びこれを達成するため必要となる明確な範囲の所掌事務を定めるとともに、その所掌する行政事務を能率的に遂行するため必要な組織を定めることを目的とする。
(設置)
第二条 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第三項の規定に基づいて、内閣府の外局として、金融商品取引監視委員会を設置する。
(任務)
第三条 金融商品取引監視委員会は、証券取引、金融先物取引その他これらに類似する取引(以下「金融商品取引」という。)の公正を確保し、有価証券の投資者及びこれに準ずる者の保護を図るとともに、有価証券の流通等の円滑を図ることを任務とする。
(所掌事務)
第四条 金融商品取引監視委員会は、前条の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。
一 次に掲げる者の検査その他の監督に関すること。
イ 証券業を営む者
ロ 有価証券債務引受業を営む者
ハ 証券金融会社
ニ 投資信託委託業者
ホ 投資法人
ヘ 有価証券市場を開設する者
ト 証券取引所持株会社
チ 証券業協会
リ 投資顧問業(有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律(昭和六十一年法律第七十四号)第二条第二項に規定する投資顧問業をいう。)を営む者
ヌ 金融先物取引業を行う者
ル 金融先物債務引受業を行う者
ヲ 金融先物市場を開設する者
ワ 金融先物取引所持株会社
カ 信託受益権販売業を営む者
ヨ 抵当証券業を営む者
タ 抵当証券保管機構
レ 特定目的会社、特定譲渡人及び原委託者(それぞれ資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第二条第三項、第二百八条第一項及び第二百二十四条に規定する特定目的会社、特定譲渡人及び原委託者をいう。)
ソ 商品投資販売業を営む者
ツ 商品投資顧問業(商品投資に係る事業の規制に関する法律(平成三年法律第六十六号)第二条第七項に規定する商品投資顧問業をいう。)を営む者
ネ 不動産特定共同事業を営む者
ナ 商品取引受託業務を営む者
ラ 商品取引債務引受業を営む者
ム 商品市場を開設する者
ウ 商品先物取引協会
ヰ 海外商品取引業者(海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律(昭和五十七年法律第六十五号)第二条第五項に規定する海外商品取引業者をいう。)
二 投資者保護基金の業務及び組織の適正な運営の確保に関すること。
三 投資者保護基金による返還資金融資に係る適格性の認定を行うこと。
四 委託者保護基金の業務及び組織の適正な運営の確保に関すること。
五 委託者保護基金による返還資金融資に係る適格性の認定を行うこと。
六 証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二章から第二章の四までの規定による有価証券届出書、有価証券報告書その他の書類の審査及び処分に関すること。
七 公認会計士及び監査法人に関すること。
八 株式、社債その他の有価証券の保管、振替及び登録に関する業務の適正な運営の確保に関すること。
九 金融商品取引に係る知識の普及に関すること。
十 証券取引法の規定による課徴金に関すること。
十一 金融商品取引に係る犯則事件の調査に関すること。
十二 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)第五章の規定に基づいて、届出及び通知を受けた事項並びに提供を受けた情報の整理及び分析並びに疑わしい取引に関する情報の提供を行うこと。
十三 所掌事務に係る国際協力に関すること。
十四 政令で定める文教研修施設において所掌事務に関する研修を行うこと。
十五 前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき金融商品取引監視委員会に属させられた事務
(職権の行使)
第五条 金融商品取引監視委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う。
(組織)
第六条 金融商品取引監視委員会は、委員長及び委員四人をもって組織する。
2 委員長は、会務を総理し、金融商品取引監視委員会を代表する。
3 委員長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。
(委員長及び委員の任命)
第七条 委員長及び委員は、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。
2 委員長又は委員の任期が満了し、又は欠員が生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、前項の規定にかかわらず、委員長又は委員を任命することができる。
3 前項の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認が得られないときは、内閣総理大臣は、直ちにその委員長又は委員を罷免しなければならない。
(委員長及び委員の任期)
第八条 委員長及び委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員長又は委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員長及び委員は、再任されることができる。
3 委員長及び委員の任期が満了したときは、当該委員長及び委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとする。
(委員長及び委員の身分保障)
第九条 委員長及び委員は、金融商品取引監視委員会により、心身の故障のため職務の執行ができないと認められた場合又は職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない非行があると認められた場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。
(委員長及び委員の罷免)
第十条 内閣総理大臣は、委員長又は委員が前条に該当する場合は、その委員長又は委員を罷免しなければならない。
(委員長及び委員の服務等)
第十一条 委員長及び委員は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
2 委員長及び委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。
3 委員長及び委員は、在任中、内閣総理大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行ってはならない。
(委員長及び委員の給与)
第十二条 委員長及び委員の給与は、別に法律で定める。
(会議)
第十三条 金融商品取引監視委員会は、委員長が招集する。
2 金融商品取引監視委員会は、委員長及び二人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。
3 金融商品取引監視委員会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
4 委員長に事故がある場合の第二項の規定の適用については、第六条第三項に規定する委員は、委員長とみなす。
(規則の制定)
第十四条 金融商品取引監視委員会は、その所掌事務について、法律若しくは政令を実施するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、金融商品取引監視委員会規則を制定することができる。
(建議)
第十五条 金融商品取引監視委員会は、必要があると認めるときは、金融商品取引の公正を確保するため、又は投資者の保護その他の公益を確保するために必要と認められる施策について内閣総理大臣、金融庁長官又は財務大臣に建議することができる。
(関係行政機関との協力)
第十六条 金融商品取引監視委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、説明その他の必要な協力を求めることができる。
2 金融商品取引監視委員会及び証券等関連業者(金融商品取引監視委員会の所掌に係る事業に類似し、又は密接に関連する事業を営む者をいう。)に対する検査を所掌する行政機関の長は、効率的な検査の実施のため、意見の交換を図るとともに、それぞれの求めに応じ、それぞれの職員に協力させることができる。
(公表)
第十七条 金融商品取引監視委員会は、毎年、その事務の処理状況を公表しなければならない。
(事務局)
第十八条 金融商品取引監視委員会の事務を処理させるため、金融商品取引監視委員会に事務局を置く。
2 証券取引法の規定による課徴金に係る事件についての審判手続(審決を除く。)の全部又は一部を行わせるため、事務局に審判官を置く。
3 審判官の定数は、政令で定める。
4 審判官は、事務局の職員のうちから、審判手続を行うについて必要な法律及び金融に関する知識経験を有し、かつ、公正な判断をすることができると認められる者について、金融商品取引監視委員会が定める。
5 前三項に定めるもののほか、事務局の内部組織は、金融商品取引監視委員会規則で定める。
(地方事務所)
第十九条 金融商品取引監視委員会の事務局の地方機関として、所要の地に地方事務所を置く。
2 前項の地方事務所の名称、位置及び管轄区域は、政令で定める。
(公認会計士・監査審査会)
第二十条 別に法律で定めるところにより金融商品取引監視委員会に置かれる審議会等は、公認会計士・監査審査会とする。
2 公認会計士・監査審査会については、公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号。これに基づく命令を含む。)の定めるところによる。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
ただし、次条第一項の規定は、公布の日から施行する。
(最初の委員長及び委員の任命)
第二条 第七条第一項の規定による金融商品取引監視委員会の委員長及び委員の任命のために必要な行為は、この法律の施行前においても行うことができる。
2 この法律の施行の日以後最初に任命される金融商品取引監視委員会の委員長及び委員の任命について、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、第七条第二項及び第三項の規定を準用する。
(政令への委任)
第三条 前条に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
(関係法律の整備)
第四条 この法律の施行に伴う関係法律の整備については、別に法律で定める。
理 由
証券取引、金融先物取引その他これらに類似する取引の公正を確保し、有価証券の投資者及びこれに準ずる者の保護を図るとともに、有価証券の流通等の円滑を図るため、内閣府の外局として金融商品取引監視委員会を新たに設置することとし、その任務及び所掌事務並びに組織を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
この法律の施行に伴い必要となる経費
この法律の施行に伴い必要となる経費は、平年度約二百十億円の見込みである。