第一六五回
参第二号
戦後強制抑留者に対する特別給付金の支給に関する法律案
(趣旨)
第一条 この法律は、戦後強制抑留者が、戦後、酷寒の地において、長期間にわたって劣悪な環境の下で強制抑留され、多大の苦難を強いられたこと、その間において過酷な強制労働に従事させられ、また、それにもかかわらず当該強制労働に対する対価の支払を受けていないこと等の特別の事情にかんがみ、あわせてそれらの者が本邦に帰還した後の状況等についても考慮し、戦後強制抑留者の労苦を慰藉するための特別給付金の支給に関し必要な事項を規定するものとする。
(定義)
第二条 この法律において「戦後強制抑留者」とは、昭和二十年八月九日以来の戦争の結果、同年九月二日以後ソヴィエト社会主義共和国連邦又はモンゴル人民共和国の地域において強制抑留された者で本邦に帰還したものをいう。
(特別給付金の支給)
第三条 戦後強制抑留者でこの法律の施行の日において日本の国籍を有するものには、特別給付金を支給する。
2 特別給付金の支給を受ける権利の認定は、これを受けようとする者の請求に基づいて、総務大臣が行う。
3 前項の請求は、総務省令で定めるところにより、平成二十七年三月三十一日までに行わなければならない。
4 前項の期間内に特別給付金の支給を請求しなかった者には、特別給付金は、支給しない。
(特別給付金の額等)
第四条 特別給付金の額は、戦後強制抑留者の帰国の時期の区分に応じ次の表に掲げる額とし、これを一時金として支給する。
帰国の時期 |
特別給付金の額 |
昭和二十三年十二月三十一日まで |
三〇〇、〇〇〇円 |
昭和二十四年一月一日から昭和二十五年十二月三十一日まで |
五〇〇、〇〇〇円 |
昭和二十六年一月一日から昭和二十七年十二月三十一日まで |
一、〇〇〇、〇〇〇円 |
昭和二十八年一月一日から昭和二十九年十二月三十一日まで |
一、五〇〇、〇〇〇円 |
昭和三十年一月一日以降 |
二、〇〇〇、〇〇〇円 |
(特別給付金の支給を受ける権利の承継)
第五条 特別給付金の支給を受ける権利を有する者が死亡した場合において、その者がその死亡前に特別給付金の支給の請求をしていなかったときは、その者の相続人は、自己の名で、当該特別給付金の支給を請求することができる。
2 前項の場合において、同順位の相続人が数人あるときは、その一人のした特別給付金の支給の請求は、全員のためにその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした特別給付金の支給を受ける権利の認定は、全員に対してしたものとみなす。
(異議申立期間)
第六条 特別給付金に関する処分についての異議申立てに関する行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)第四十五条の期間は、その処分の通知を受けた日の翌日から起算して一年以内とする。
2 前項の異議申立てについては、行政不服審査法第四十八条の規定にかかわらず、同法第十四条第三項の規定は、準用しない。
(譲渡又は担保の禁止)
第七条 特別給付金の支給を受ける権利は、譲渡し、又は担保に供することができない。
(差押えの禁止)
第八条 特別給付金の支給を受ける権利は、差し押さえることができない。ただし、国税滞納処分(その例による処分を含む。)による場合は、この限りでない。
(非課税)
第九条 租税その他の公課は、特別給付金を標準として、課することができない。
(特別給付金の返還)
第十条 不実の申請その他不正の手段により特別給付金の支給を受けた者があるときは、総務大臣は、その者に対して特別給付金の全部又は一部に相当する金額の返還を命ずることができる。
2 前項の規定により返還を命ぜられた金額を納付しない者があるときは、総務大臣は、期限を指定してこれを督促しなければならない。
3 前項の規定による督促を受けた者がその指定期限までに第一項の規定により返還を命ぜられた金額を納付しないときは、総務大臣は、国税滞納処分の例によりこれを処分することができる。
4 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
(総務省令への委任)
第十一条 この法律に規定するもののほか、この法律の実施のための手続その他その執行について必要な細則は、総務省令で定める。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成十九年一月一日から施行する。
(総務省設置法の一部改正)
第二条 総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)の一部を次のように改正する。
第四条第八十八号の次に次の一号を加える。
八十八の二 戦後強制抑留者に対する特別給付金の支給に関する法律(平成十八年法律第▼▼▼号)第三条第一項の規定による特別給付金に関すること。
(検討等)
第三条 国は、この法律の施行後速やかに、第二条の地域において戦後強制抑留された者であって日本の国籍を有しないものその他第三条第一項の規定による特別給付金の支給の対象となっている者以外のもの及び樺太、千島、北緯三十八度以北の朝鮮又は元の関東州、元の満州等の中国の地域において戦後強制抑留された者であって第二条の地域において戦後強制抑留された者と同様の実情にあったものに係る強制抑留の実態について総合的に調査を行うとともに、その結果等を踏まえつつ、それらの者その他の関係者について労苦に報いる等のための方策に関し検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずるものとする。
理 由
戦後強制抑留者が、戦後、酷寒の地において、長期間にわたって劣悪な環境の下で強制抑留され、多大の苦難を強いられたこと、その間において過酷な強制労働に従事させられ、また、それにもかかわらず当該強制労働に対する対価の支払を受けていないこと等の特別の事情にかんがみ、あわせてそれらの者が本邦に帰還した後の状況等についても考慮し、戦後強制抑留者に対し、その労苦を慰藉するため、特別給付金を支給することとする必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
この法律の施行に伴い必要となる経費
この法律の施行に伴い必要となる経費は、約三百九十億円の見込みである。