第一八六回
参第二号
国の財務書類等の作成及び財務情報の開示等に関する法律案
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 国の財務書類等の作成及び財務情報の開示(第三条−第八条)
第三章 雑則(第九条−第十四条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、企業会計の慣行を参考とした国の財務書類等の作成及びその国会への提出等による財務情報の開示等について定めることにより、国の資産及び負債、国の事務及び事業に要した費用その他の国の財務に関する状況を明らかにし、かつ、国会等による予算執行に対する検証の充実を図り、もって政府の有する国の財政状況を国民に説明する責務が十分に果たされるようにするとともに、適正な予算編成と効率的な行政の推進に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「各省各庁」とは、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第二十一条に規定する各省各庁をいい、「各省各庁の長」とは、同法第二十条第二項に規定する各省各庁の長をいう。
2 この法律において「局等の組織」とは、次に掲げる組織をいう。ただし、当該組織が所掌する事務及び事業の内容、当該組織に係る歳出額の状況及び資産の内容等を総合的に勘案し、第一号に掲げるものにあっては当該組織に係る財務情報を開示する必要性に乏しいものとして政令で定めるものを除き、第二号に掲げるものにあっては当該組織に係る財務情報を開示することが特に有益であると認められるものとして政令で定めるものに限る。
一 次に掲げる組織
イ 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)又は内閣の所轄の下に置かれる機関
ロ 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第十七条第一項に規定する官房若しくは局、宮内庁又は同法第四十九条第一項に規定する委員会若しくは庁
ハ 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第七条第一項に規定する官房若しくは局又は同法第三条第二項に規定する委員会若しくは庁
ニ 会計検査院法(昭和二十二年法律第七十三号)第二条に規定する検査官会議又は事務総局
二 国の機関の組織であって前号に掲げる組織以外のもの
3 この法律において「特殊法人等」とは、次に掲げる法人をいう。
一 法律により直接に設立される法人
二 特別の法律により特別の設立行為をもって設立すべきものとされる法人
三 特別の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政官庁の認可を要する法人
4 この法律において「特別会計連結対象法人」とは、特別会計(勘定に区分する特別会計にあっては、勘定とする。第七項第三号において同じ。)において経理されている事務及び事業と密接な関連を有する特殊法人等として財務大臣が定める要件に該当するものをいう。
5 この法律において「各省各庁連結対象法人」とは、各省各庁が所掌する事務及び事業と密接な関連を有する特殊法人等として財務大臣が定める要件に該当するものをいう。
6 この法律において「財務書類」とは、次に掲げる書類から構成される決算に関する財務情報を開示するための書類をいう。
一 貸借対照表(一の会計年度の年度末における資産、負債及び資産と負債との差額の状況を記載した書類をいう。第三号において同じ。)
二 業務費用計算書(一の会計年度において発生した費用の状況を記載した書類をいう。)
三 資産・負債差額増減計算書(一の会計年度の貸借対照表における資産と負債との差額とその前会計年度の貸借対照表における資産と負債との差額の増減の状況を要因別に記載した書類をいう。)
四 区分別収支計算書(一の会計年度における歳入と歳出の決算を業務及び財務に区分した収支の状況を記載した書類をいう。)
五 注記(前各号に掲げる書類に記載された事項に関する重要な会計方針、偶発債務(債務の保証(債務の保証と同様の効果を有するものを含む。)、係争事件に係る賠償義務その他現実に発生していない債務で、将来において債務となる可能性のあるものをいう。)の内容及び金額その他の財務内容を理解するために必要となる事項を記載した書類をいう。)
六 附属明細書(第一号から第四号までに掲げる書類に記載された事項に関する明細を記載した書類をいう。)
7 この法律において「省庁別財務書類等」とは、次に掲げる財務書類をいう。
一 一般会計省庁別財務書類(一般会計のうち各省各庁に係る部分に関する当該各省各庁の全体及び局等の組織ごとの財務書類をいう。第四号において同じ。)
二 特別会計財務書類(各省各庁の長が管理する各特別会計(勘定に区分する特別会計にあっては、当該勘定及び当該特別会計)に関する財務書類をいう。次号において同じ。)
三 特別会計連結財務書類(各省各庁の長が管理する各特別会計及び当該特別会計に係る特別会計連結対象法人につき連結して記載した財務書類をいい、当該特別会計連結対象法人がない場合には、その旨を当該特別会計に係る特別会計財務書類に付記したものをいう。)
四 省庁別財務書類(国の会計のうち各省各庁に係る部分に関する当該各省各庁の全体及び局等の組織ごとの財務書類をいい、当該各省各庁の長が管理する特別会計がない場合には、その旨を一般会計省庁別財務書類に付記したものをいう。次号において同じ。)
五 省庁別連結財務書類(国の会計のうち各省各庁に係る部分及び当該各省各庁に係る各省各庁連結対象法人につき連結して記載した当該各省各庁の全体及び局等の組織ごとの財務書類をいい、当該各省各庁連結対象法人がない場合には、その旨を省庁別財務書類に付記したものをいう。)
8 この法律において「国の財務書類」とは、次に掲げる財務書類をいう。
一 一般会計財務書類(一般会計の全体に関する財務書類をいう。)
二 一般会計・特別会計財務書類(国の会計の全体に関する財務書類をいう。)
三 連結財務書類(国の会計及び各省各庁連結対象法人の全体につき連結して記載した財務書類をいう。)
9 この法律において「国の財務書類等」とは、国の財務書類及び各省各庁の省庁別財務書類等をいう。
第二章 国の財務書類等の作成及び財務情報の開示
(作成基準)
第三条 財務大臣は、国の財務書類等の作成基準(以下単に「作成基準」という。)を定めなければならない。
2 作成基準は、企業会計の慣行を参考とし、かつ、国の財務の特殊性を考慮したものでなければならない。
3 財務大臣は、作成基準を定め、又はこれを変更しようとするときは、財政制度等審議会の議を経なければならない。
4 財務大臣は、作成基準を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(省庁別財務書類等の作成及び送付)
第四条 各省各庁の長は、毎会計年度、作成基準に従い、省庁別財務書類等を作成し、政令で定めるところにより、財務大臣に送付しなければならない。
(国の財務書類の作成)
第五条 財務大臣は、毎会計年度、作成基準に従い、国の財務書類を作成しなければならない。
(国の財務書類等の検査)
第六条 内閣は、国の財務書類等を、国の歳入歳出決算とともに会計検査院に送付し、その検査を受けなければならない。
(国の財務書類等の国会への提出)
第七条 内閣は、前条の規定により会計検査院の検査を経た国の財務書類等を、国の歳入歳出決算とともに、その参考資料として、国会に提出しなければならない。
(インターネットの利用等による開示等)
第八条 各省各庁の長は、当該各省各庁の省庁別財務書類等に記載された情報その他当該各省各庁の財務に関する状況を適切に示す情報として政令で定めるものを、インターネットの利用その他適切な方法により開示しなければならない。この場合において、省庁別財務書類等に記載された情報については、第四条の規定により当該省庁別財務書類等を作成した後及び第六条の規定により当該省庁別財務書類等に係る会計検査院の検査を経た後、速やかに、開示するものとする。
2 財務大臣は、国の財務書類に記載された情報その他国の財務に関する状況を適切に示す情報として政令で定めるものを、インターネットの利用その他適切な方法により開示しなければならない。この場合において、国の財務書類に記載された情報については、第五条の規定により当該国の財務書類を作成した後及び第六条の規定により当該国の財務書類に係る会計検査院の検査を経た後、速やかに、開示するものとする。
3 前二項の場合において、各省各庁の長及び財務大臣は、開示される情報を国民が十分に理解することができるよう、その内容をできる限り平易な表現を用いて分かりやすく説明する資料その他必要な情報を併せて提供するように努めるものとする。
第三章 雑則
(特殊法人等の財務諸表の作成に係る基準の在り方)
第九条 政府は、第二条第七項第三号の特別会計連結財務書類及び同項第五号の省庁別連結財務書類並びに同条第八項第三号の連結財務書類に記載される情報がより適切なものとなり、並びにこれらの書類を効率的に作成することができるようにする観点から、特殊法人等の貸借対照表、損益計算書等の財務諸表の作成に係る基準について、作成基準との整合性が確保されたものとなるようにしなければならない。
(調査研究)
第十条 政府は、国の財務書類等に記載された情報の政策評価(行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成十三年法律第八十六号)第三条第二項に規定する政策評価をいう。)における活用その他の当該情報の政府による適正な予算編成と効率的な行政の推進への一層の活用を図るための措置、企業会計の慣行の国の予算制度への導入その他国の財務に関する情報の活用及び充実について調査研究を行うものとする。
(行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律の適用除外)
第十一条 この法律の規定による手続については、行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成十四年法律第百五十一号)第三条及び第四条の規定は、適用しない。
(電磁的記録による作成)
第十二条 この法律の規定により作成することとされている財務書類については、当該財務書類に記載すべき事項を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして財務大臣が定めるものをいう。次条第一項において同じ。)の作成をもって、当該財務書類の作成に代えることができる。この場合において、当該電磁的記録は、当該財務書類とみなす。
(電磁的方法による提出)
第十三条 この法律の規定による財務書類の提出については、当該財務書類が電磁的記録で作成されている場合には、電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって財務大臣が定めるものをいう。次項において同じ。)をもって行うことができる。
2 前項の規定により財務書類の提出が電磁的方法によって行われたときは、当該財務書類の提出を受けるべき者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に当該提出を受けるべき者に到達したものとみなす。
(政令への委任)
第十四条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行し、平成二十五年度以後の決算に関する国の財務書類等について適用する。ただし、次条の規定は、公布の日から施行する。
(作成基準の策定のために必要な行為)
第二条 第三条の規定による作成基準の策定のため必要な手続その他の行為は、この法律の施行前においても、同条の規定の例により行うことができる。
(平成二十五年度から平成二十七年度までの各決算に関する特例)
第三条 平成二十五年度から平成二十七年度までの各決算に関する国の財務書類等に係る第六条及び第七条の規定の適用については、第六条中「国の歳入歳出決算とともに」とあるのは「国の歳入歳出決算を会計検査院に送付した後六月以内に」と、第七条中「国の歳入歳出決算とともに、その参考資料として」とあるのは「速やかに」とする。
(平成二十七年度までに講ずる必要な措置)
第四条 政府は、平成二十七年度までに、国の収入及び支出について企業会計の慣行を参考とした処理を自動的に行う機能を有する国の会計事務に係る情報システムの整備その他の国の財務書類等を早期に作成することができるようにするために必要な措置を講ずるものとする。
第五条 財政法、国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)、物品管理法(昭和三十一年法律第百十三号)、特別会計に関する法律(平成十九年法律第二十三号)その他の国の財務に関する法令の規定に基づき作成することとされている各種の国の財務に関する書類及びその取扱いについては、平成二十七年度までに、国の財務書類等との関係に関し検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。
(特別会計に関する法律の一部改正)
第六条 特別会計に関する法律の一部を次のように改正する。
第十九条及び第二十条を次のように改める。
第十九条 特別会計に関する財務情報の開示については、国の財務書類等の作成及び財務情報の開示等に関する法律(平成二十六年法律第▼▼▼号)の定めるところによる。
第二十条 削除
理 由
国の資産及び負債、国の事務及び事業に要した費用その他の国の財務に関する状況を明らかにし、かつ、国会等による予算執行に対する検証の充実を図り、もって政府の有する国の財政状況を国民に説明する責務が十分に果たされるようにするとともに、適正な予算編成と効率的な行政の推進に寄与するため、企業会計の慣行を参考とした国の財務書類等の作成及びその国会への提出等による財務情報の開示等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。