第一九八回
衆第三一号
行政監視院法案
目次
第一章 目的及び設置(第一条)
第二章 組織等
第一節 組織(第二条−第八条)
第二節 事務局(第九条−第十六条)
第三章 権限
第一節 国の行政機関等の業務に関する監視等(第十七条−第十九条)
第二節 法律の制定又は改廃等に関する意見具申等(第二十条・第二十一条)
第三節 資料の提出の要求等(第二十二条−第二十六条)
第四節 国民の意見等の把握等(第二十七条)
第四章 議院運営委員会による審査(第二十八条)
第五章 雑則(第二十九条−第三十一条)
附則
第一章 目的及び設置
第一条 国会が国権の最高機関であって国の唯一の立法機関であることに鑑み、国会による行政の監視及び立法に関する機能の充実強化を図り、もって民意を反映した国政の健全な発展に寄与するため、国会に、国の行政機関等の業務に関する監視、調査及び評価を行うとともに、その結果に基づいて必要な法律の制定及び改廃等に関して意見を述べる行政監視院を置く。
第二章 組織等
第一節 組織
(組織)
第二条 行政監視院は、行政監視委員三人をもって組織する。
(行政監視委員の任命)
第三条 行政監視委員は、国の行政機関等(法律の規定に基づき内閣に置かれる各機関、内閣の統轄の下に行政事務をつかさどる機関として置かれる各機関及び内閣の所轄の下に置かれる機関並びに行政執行法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第四項に規定する行政執行法人をいう。)をいう。以下同じ。)の業務に関する監視、調査及び評価(以下単に「監視」という。)に関して優れた識見を有する者のうちから、両議院の議長が、両議院の承認を得て、これを任命する。
(行政監視委員の任期)
第四条 行政監視委員の任期は、六年とし、再任されることができる。
2 行政監視委員が任期中に欠けたときは、後任の行政監視委員の任期は、前任者の残任期間とする。
(行政監視委員の身分保障)
第五条 行政監視委員は、心身の故障のため職務の執行ができないこと又は職務の執行上の義務違反があったことについて両議院の議決があったときを除いては、罷免されることはない。
(行政監視委員の服務)
第六条 行政監視委員は、在任中、政党その他の政治団体の役員となり、又は積極的に政治活動をしてはならない。
2 行政監視委員は、他の官職を兼ね、又は公選による公職の候補者となり、若しくは公選による公職と兼ねてはならない。
(院長)
第七条 行政監視院に院長を置き、両議院の議長が、両議院の承認を得て、行政監視委員のうちからこれを任命する。
2 院長は、行政監視院の事務を統理し、行政監視院を代表する。
3 院長は、行政監視委員会議の議決を経て、かつ、事前に、時宜によっては事後に、両議院の議長の承認を得て、行政監視院の業務の執行上必要な諸規程を定めることができる。
4 院長に事故があるとき又は院長が欠けたときは、あらかじめその指名する行政監視委員が、その職務を代行する。
(行政監視委員会議)
第八条 行政監視委員会議の議長は、院長をもって、これに充てる。
2 行政監視院がこの法律の規定によってその所掌に属させられた事項を決定する場合においては、行政監視委員会議の議決を経なければならない。
第二節 事務局
(設置)
第九条 行政監視院の事務を処理させるため、行政監視院に事務局を置く。
2 事務局に、その事務を分掌するため、部及び課を置く。
3 各部課の分掌事務及び各部の分課並びに職員の配置は、院長が、行政監視委員会議の議決を経て、これを定める。
(職員)
第十条 事務局に、事務局長一人、事務局次長一人、調査員その他所要の職員を置く。
2 職員の任免は、行政監視委員会議の議決を経て、院長がこれを行う。
3 事務局に、特に必要があると認めるときは、行政監視院の各部の必要とする広範な関連分野について、専門調査員を置くことができる。
4 専門調査員の任免については、第二項の規定を準用する。
(事務局長)
第十一条 事務局長は、院長の命を受けて、事務局の事務を掌理し、所属職員を監督する。
2 事務局長は、事務局における事務の処理状況について、随時、行政監視委員会議に報告するものとする。
(事務局次長)
第十二条 事務局次長は、事務局長を助け、事務局の事務を整理し、各部課の事務を監督する。
(部長)
第十三条 各部に部長を置き、事務局長が、調査員のうちからこれを命ずる。
2 部長は、事務局長の命を受け、部内の事務を掌理する。
(課長)
第十四条 各課に課長を置き、事務局長が、調査員のうちからこれを命ずる。
2 課長は、部長の命を受け、課内の事務を掌理する。
(調査員その他の職員)
第十五条 調査員その他の職員は、上司の指揮監督を受け、事務に従事する。
(専門調査員)
第十六条 専門調査員は、各専門分野について、特に重要な監視又は意見具申に関する事務をつかさどる。
第三章 権限
第一節 国の行政機関等の業務に関する監視等
(国の行政機関等の業務に関する監視)
第十七条 行政監視院は、各議院の常任委員会若しくは特別委員会又は参議院の調査会(以下「常任委員会等」という。)の要求に応じ、必要な期間継続して、当該要求に係る国の行政機関等の業務に関し、必要な監視を行うことができる。
2 前項の要求は、当該議院の議長を経由して、行うものとする。
(報告書の提出等)
第十八条 行政監視院は、前条第一項の監視を行った結果を記載した報告書を、同項の要求をした常任委員会等の属する議院の議長に提出しなければならない。
2 議長は、前項の報告書の提出を受けたときは、これを前条第一項の要求をした常任委員会等に送付するものとする。
(議員による監視の要求等)
第十九条 議員は、衆議院においては議員二十人以上、参議院においては議員十人以上の賛成者と連署して、行政監視院に対し、国の行政機関等の業務に関して必要な監視を行うことを要求することができる。
2 前二条の規定は、前項の要求について準用する。
第二節 法律の制定又は改廃等に関する意見具申等
(法律の制定又は改廃等に関する意見具申)
第二十条 行政監視院は、常任委員会等から、前節の監視の結果を踏まえて、必要な法律の制定又は改廃、予算の議決等に関して意見を求められたときは、これに対して意見を述べることができる。
2 第十七条第二項及び第十八条の規定は、前項の意見具申について準用する。
(議員による意見具申の要求等)
第二十一条 議員は、衆議院においては議員二十人以上、参議院においては議員十人以上の賛成者と連署して、行政監視院に対し、前節の監視の結果を踏まえて、必要な法律の制定又は改廃、予算の議決等に関して意見を求めることができる。
2 前条の規定は、前項の要求について準用する。
第三節 資料の提出の要求等
(資料の提出の要求)
第二十二条 行政監視院は、前二節の監視又は意見具申のため必要があると認めるときは、国の行政機関等、地方公共団体その他の者に対して、資料の提出を要求することができる。
2 前項の要求を受けた国の行政機関等及び地方公共団体は、当該要求を受けた日から二十日以内に、当該要求に係る資料を提出しなければならない。ただし、その期間内に当該資料を提出することができないことについて正当の理由がある場合において、その理由及び提出することができる合理的な期限を明示したときは、この限りでない。
3 前項ただし書に規定する場合においては、当該要求を受けた国の行政機関等及び地方公共団体は、当該明示した期限内に、当該要求に係る資料を提出しなければならない。
(職務上の秘密に関する資料の提出)
第二十三条 行政監視院は、前条第一項の要求に係る資料について、当該要求を受けた国の行政機関等又は地方公共団体が職務上の秘密に関するものであることを申し立てたときは、その監督庁の承認を得なければならない。
2 監督庁が前項の承認を拒むときは、その理由を疎明しなければならない。この場合において、その理由を行政監視院において受諾し得るときは、国の行政機関等又は地方公共団体は、当該要求を受けた資料を提出する必要がない。
3 前項の理由を受諾することができない場合は、行政監視院は、第十七条第一項若しくは第十九条第一項又は第二十条第一項若しくは第二十一条第一項の要求(第二十六条第一項及び第三十条において「監視又は意見具申の要求」という。)をした常任委員会等又は議員の属する議院の議長に対して、前条第一項の要求に係る資料の提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣の声明を要求するよう求めることができる。
4 前項の求めを受けた各議院の議長が同項の声明を要求し、これに対して同項の声明があった場合は、第一項の要求を受けた国の行政機関等又は地方公共団体は、当該資料を提出する必要がない。
5 前項の要求後十日以内に、内閣が第三項の声明を出さないときは、第一項の要求を受けた国の行政機関等又は地方公共団体は、当該資料を提出しなければならない。
(立入調査)
第二十四条 行政監視院は、前二節の監視又は意見具申のため必要があると認めるときは、専門調査員又は調査員に官公署その他必要な場所に立ち入らせて、必要な調査をさせることができる。
2 前項の規定により立入調査を行う専門調査員又は調査員は、その身分を示す証票を携帯し、関係者の要求があるときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(参考人の出頭)
第二十五条 行政監視院は、前二節の監視又は意見具申のため必要があると認めるときは、参考人の出頭を求め、その意見を聴くことができる。
(懲戒処分の要求)
第二十六条 行政監視院は、第二十四条の立入調査又は前条の参考人の出頭の求めを受けた国の行政機関等又は地方公共団体の職員がこれに応じないときは、当該監視又は意見具申の要求をした常任委員会等又は議員の属する議院の議長に対して、当該職員の任命権者に対し懲戒の処分を要求するよう求めることができる。
2 前項の懲戒の処分の要求は、内閣を経由して、行うものとする。
第四節 国民の意見等の把握等
第二十七条 行政監視院は、その所掌事務の円滑な遂行に資するため、国の行政機関等の業務に関し、幅広く国民の意見等を把握し、及び資料を収集すること等に努めるものとする。
第四章 議院運営委員会による審査
第二十八条 両議院の議院運営委員会は、少なくとも六箇月に一回以上これを開会し、行政監視院の業務の処理状況に関する院長の報告、行政監視院の業務の執行上院長の定める諸規程、行政監視院の予算及びその他の事務につき審査する。
2 各議院の議院運営委員長は、前項の審査の結果をその議院に報告する。
第五章 雑則
(年次報告等)
第二十九条 行政監視院は、毎年、両議院の議長に対し、その業務についての報告書を提出しなければならない。
2 両議院の議長は、前項の報告書の提出を受けたときは、これを広く国民に公表する措置を講ずるものとする。
(会計検査院に対する協力の依頼)
第三十条 行政監視院は、第三章第一節又は第二節の監視又は意見具申のため特に必要があると認めるときは、当該監視又は意見具申の要求をした常任委員会等又は議員の属する議院の議長を経由して、会計検査院に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を依頼することができる。
(参考人の旅費及び日当)
第三十一条 第二十五条の規定により行政監視院に出頭した参考人には、議院に出頭する証人等の旅費及び日当に関する法律(昭和二十二年法律第八十一号)の規定の例により旅費及び日当を支給する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、国会法の一部を改正する法律(令和元年法律第▼▼▼号)の施行の日から施行する。
(議院事務局法の一部改正)
第二条 議院事務局法(昭和二十二年法律第八十三号)の一部を次のように改正する。
第十五条第一号中「委員会の命を受けて行うその審査又は調査のために必要な調査(第十九条において「予備的調査」という。)及び」を削り、「これらの調査の事務」を「これ」に改める。
第十九条を削り、第二十条を第十九条とし、第二十一条を第二十条とする。
(国会職員法の一部改正)
第三条 国会職員法(昭和二十二年法律第八十五号)の一部を次のように改正する。
第一条第五号中「国立国会図書館」の下に「、行政監視院」を加え、同号を同条第六号とし、同条第四号を同条第五号とし、同条第三号の次に次の一号を加える。
四 行政監視院の院長その他の行政監視委員、調査員及び専門調査員
第五条及び第八条中「並びに国立国会図書館」を「、国立国会図書館」に改め、「専門調査員」の下に「並びに行政監視院の院長その他の行政監視委員及び専門調査員」を加える。
第十五条の六中「定める」を「定め、行政監視院の職員については行政監視院の院長が行政監視委員会議の議決及び両議院の議院運営委員会の承認を経て定める」に改める。
第十六条中「専門調査員」の下に「、行政監視院の院長その他の行政監視委員及び専門調査員」を加える。
第二十四条の三第一項中「並びに国立国会図書館の館長」を「、国立国会図書館の館長並びに行政監視院の院長その他の行政監視委員及び専門調査員」に改める。
第二十八条第一項中「並びに国立国会図書館」を「、国立国会図書館」に改め、「専門調査員」の下に「並びに行政監視院の院長その他の行政監視委員及び専門調査員」を加える。
第三十三条中「国立国会図書館」の下に「、行政監視院」を加える。
第三十五条及び第三十五条の二中「並びに国立国会図書館の館長」を「、国立国会図書館の館長並びに行政監視院の院長」に改める。
第三十六条中「並びに各議院法制局の法制局長及び法制次長」を「、各議院法制局の法制局長及び法制次長並びに行政監視院の院長」に改め、同条の次に次の一条を加える。
第三十六条の二 行政監視院に設ける国会職員考査委員会の委員長は、行政監視院の院長、その委員には、行政監視委員(院長を除く。)並びに行政監視院の事務局長、事務局次長及び院長が指名する部長、各議院事務局の事務総長及び事務次長、各議院法制局の法制局長及び法制次長並びに国立国会図書館の館長が、これに当たる。
(国会に置かれる機関の休日に関する法律の一部改正)
第四条 国会に置かれる機関の休日に関する法律(昭和六十三年法律第百五号)の一部を次のように改正する。
第一条第二項中「国立国会図書館」の下に「、行政監視院」を加える。
(国会職員の育児休業等に関する法律の一部改正)
第五条 国会職員の育児休業等に関する法律(平成三年法律第百八号)の一部を次のように改正する。
第二条中「並びに国立国会図書館」を「、国立国会図書館」に改め、「専門調査員」の下に「並びに行政監視院の院長その他の行政監視委員及び専門調査員」を加える。
(国会職員の配偶者同行休業に関する法律の一部改正)
第六条 国会職員の配偶者同行休業に関する法律(平成二十五年法律第八十号)の一部を次のように改正する。
第二条第一項中「並びに国立国会図書館」を「、国立国会図書館」に改め、「専門調査員」の下に「並びに行政監視院の院長その他の行政監視委員及び専門調査員」を加える。
理 由
国会による行政の監視及び立法に関する機能の充実強化を図り、民意を反映した国政の健全な発展に寄与するため、国会に、行政監視院を置く必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
本案施行に要する経費
本案施行に要する経費としては、平年度約二十七億六千万円の見込みである。