第二〇一回
参第二六号
日本たばこ産業株式会社の完全民営化等に関する法律案
(趣旨)
第一条 この法律は、政府が日本たばこ産業株式会社(以下「会社」という。)とその株主としての利害関係を有しており、政府において、国民の健康の保持の観点からの製造たばこに係る規制の強化及びたばこ税の税率の更なる引上げに関し検討が十分に進んでいるとはいえない状況にあるとともに、我が国のたばこ関連事業の現状に照らし政府が会社の株式を保有する必要性及び会社を特殊法人として存続させる必要性が低下していることに鑑み、会社の完全民営化(政府の保有する会社の株式の全部を処分するとともに日本たばこ産業株式会社法(昭和五十九年法律第六十九号)を廃止することをいう。以下同じ。)に関し講ずべき措置について定め、あわせて、会社の完全民営化を契機とした製造たばこに係る規制の強化及びたばこ税の税率の引上げに関する政府における検討等について定めるものとする。
(政府保有株式の処分)
第二条 政府は、この法律の施行後三年以内を目途として、その保有する会社の株式の全部を処分するものとする。
(日本たばこ産業株式会社法を廃止するための措置)
第三条 政府は、その保有する会社の株式の全部を処分したときは、日本たばこ産業株式会社法を廃止するための措置を講ずるものとする。
(たばこ関連事業に係る制度の見直し)
第四条 政府は、会社の完全民営化が完了した後におけるたばこ関連事業に係る制度について、次の基本的方向で検討を加え、その結果に基づいて、たばこ事業法(昭和五十九年法律第六十八号)を改正するための措置その他の必要な措置を前条の措置と併せて講ずるものとする。
一 製造たばこの原料として国内で生産される葉たばこについて、会社が基本的にその全てを買い入れる仕組みを廃止し、これを買い入れるかどうか及びこれを買い入れる量を、次号の移行の後の仕組みの下で製造たばこを製造する者の自由な判断に委ねるものとすること。
二 会社でなければ製造たばこを製造してはならないとする仕組みは、たばこ税の保全及び製造たばこの品質の確保の観点から適格性を有する者が製造たばこを製造することができる仕組みに移行させること。
(たばこ耕作者に対する措置)
第五条 政府は、前条第一号に関連する措置の実施が会社に製造たばこの原料としての葉たばこを売り渡す目的をもって国内でたばこを耕作してきた者に及ぼす経済的な影響の緩和を図るため、これらの者に対し、たばこの耕作の事業を廃止し又は縮小した場合におけるこれによる収入の減少を補填するための措置、たばこ以外の農作物の耕作への転換を支援するための措置その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 前項の収入の減少を補填するための措置を講ずる場合においては、当該措置が講ぜられる期間は、会社の完全民営化が完了した後おおむね五年を超えないものとする。
3 第一項の規定により講ぜられる措置に要する費用の財源は、政府の保有する会社の株式の処分による収入を活用して、確保するものとする。
(製造たばこに係る規制の強化及びたばこ税の税率の引上げに関する検討等)
第六条 政府は、会社の完全民営化を契機とし、国民の健康の保持の観点からの製造たばこに係る規制について、国際的な水準を勘案しつつ、これを強化する方向で検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
2 政府は、会社の完全民営化を契機とし、たばこ税について、国民の健康の保持の観点から製造たばこの消費の抑制を図るためその税率を引き上げる方向で検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(日本たばこ産業株式会社法の一部改正)
2 日本たばこ産業株式会社法の一部を次のように改正する。
第二条第一項を削り、同条第二項中「会社は」を「日本たばこ産業株式会社(以下「会社」という。)は」に改め、同項を同条とする。
第十七条第一号中「第二条第二項」を「第二条」に改める。
理 由
政府が日本たばこ産業株式会社とその株主としての利害関係を有しており、政府において、国民の健康の保持の観点からの製造たばこに係る規制の強化及びたばこ税の税率の更なる引上げに関し検討が十分に進んでいるとはいえない状況にあるとともに、我が国のたばこ関連事業の現状に照らし政府が同社の株式を保有する必要性及び同社を特殊法人として存続させる必要性が低下していることに鑑み、同社の完全民営化に関し講ずべき措置について定め、あわせて、同社の完全民営化を契機とした製造たばこに係る規制の強化及びたばこ税の税率の引上げに関する政府における検討等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。