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第二〇八回

衆第五号

   感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律案

 (感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の一部改正)

第一条 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)の一部を次のように改正する。

  第四十四条の二の次に次の一条を加える。

  (医療機関との協定の締結等)

 第四十四条の二の二 都道府県は、新型インフルエンザ等感染症のまん延を防止するため、医療機関との間において、当該感染症のまん延の状況に応じた当該感染症の患者を入院させるための病床の数その他の地域における当該感染症に係る医療を提供する体制の確保のために必要な事項を定めた協定を締結することができる。

 2 都道府県は、前項の協定の締結に当たっては、医師、医療機関その他の医療関係者との協議の場を設け、これらの者に対し、当該協議の場における協議に参加するよう求めることができる。

 3 都道府県は、第一項の協定を締結した医療機関に対し、政令で定めるところにより、当該協定の履行に先立って、その履行によって生ずる医療機関の支出の増加又は収入の減少の見込額に相当する額として政令で定めるところにより算定した額の協力金を支給するものとする。

 4 前項の協力金の支給を受けた医療機関が正当な理由なく第一項の協定に定められた事項を履行しないときは、都道府県は、政令で定めるところにより、前項の規定により支給した協力金の額に相当する額の全部又は一部の返還を求めることができる。

  第四十四条の三の次に次の一条を加える。

  (健康状態の観察等)

 第四十四条の三の二 都道府県知事は、前条第一項又は第二項の規定により報告を求めた者について、当該報告を踏まえつつ、必要に応じて相談等を行うことにより、健康状態の観察を行うものとする。この場合においては、これらの者の病状が急変した場合等において速やかに必要な医療を提供することができるよう、体制の確保に努めるものとする。

 2 都道府県知事は、前項に規定する健康状態の観察に関する事務を医療機関等と協力して行うことができる。この場合において、都道府県は、当該医療機関等に対し、政令で定めるところにより、当該協力に係る事務の実施に要する費用その他の事情を勘案して政令で定める額の協力金を支給するものとする。

  第五十八条中第十四号を第十五号とし、第十三号を第十四号とし、第十二号の次に次の一号を加える。

  十三 第四十四条の二の二第三項又は第四十四条の三の二第二項の規定による協力金の支給に要する費用

  第六十一条第三項中「第十四号」を「第十五号」に改める。

  第六十二条中第三項を第四項とし、第二項を第三項とし、第一項の次に次の一項を加える。

 2 国は、第五十八条第十三号の費用に対して、政令で定めるところにより、予算の範囲内で、その全部又は一部を補助することができる。

  第六十四条第一項中「(結核指定医療機関に係る部分を除く。)」の下に「、第四十四条の二の二(都道府県の権限に属する事項を定めた協定に係る部分に限る。)」を、「第五十六条の二十七第七項」の下に「、第五十八条第十三号(都道府県の権限に属する事項を定めた協定に係る協力金が支給された場合における当該協力金の支給に要する費用に係る部分に限る。)」を加える。

  第六十五条の二中「、第二項及び第七項」の下に「、第四十四条の三の二」を加える。

 (新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部改正)

第二条 新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成二十四年法律第三十一号)の一部を次のように改正する。

  目次中「第三十一条の三」を「第三十一条の三の三」に改める。

  第十六条第三項中「第二十条第三項」を「第二十条第四項」に改める。

  第十七条第二号中「第二十条第一項」の下に「及び第三項、第三十一条の三の二第二項」を加え、「第三十一条の五及び」を「第三十一条の五並びに」に改める。

  第二十条第四項を同条第五項とし、同条第三項中「第一項」の下に「及び前項」を加え、同項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。

 3 政府対策本部長は、第一項の総合調整を行うため必要があると認めるときは、都道府県知事等に対し、新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な情報の提供を求めることができる。

  第二十四条第二項中「執行機関(」の下に「第七項及び」を加え、同条第九項を同条第十項とし、同条第八項を同条第九項とし、同条第七項を同条第八項とし、同条第六項の次に次の一項を加える。

 7 前項に定めるもののほか、都道府県対策本部長は、第一項の総合調整を行うため必要があると認めるときは、関係市町村長等に対し、それぞれ当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な情報の提供を求めることができる。

  第三十一条に次の三項を加える。

 6 都道府県知事は、第一項の規定により医療関係者のうち病院その他の医療機関の管理者である者(以下この条及び第六十三条の二において「管理者」という。)に患者等に対する医療を行うことを要請する場合において必要があると認めるときは、当該管理者に対し、患者等に対する医療を行うための設備、人員等を確保するため、当該管理者の管理に係る医療機関の設備、人員等の配置を変更することその他患者等に対する医療を確実に行うために必要な措置を講ずるよう要請することができる。

 7 都道府県知事は、第三項の規定により管理者に患者等に対する医療を行うべきことを指示するときは、患者等に対する医療を確実に行うため特に必要があると認めるときに限り、当該管理者に対し、前項の措置を講ずべきことを指示することができる。

 8 都道府県知事は、前二項の規定により管理者に第六項の措置を講ずるよう要請し、又は当該措置を講ずべきことを指示するときは、当該管理者に対し適切な説明を行い、その理解を得るよう努めなければならない。

  第三章中第三十一条の三の次に次の二条を加える。

  (他の都道府県知事に対する医療の提供の要請)

 第三十一条の三の二 都道府県知事は、当該都道府県の区域内において病院その他の医療機関又は医療関係者が不足し、患者等に対する医療の提供に著しい支障が生ずると認める場合には、政府対策本部長に対し、当該区域内において医療の提供を受けることができず、又は受けることができないおそれのある患者等(以下この項において「特定患者等」という。)が必要な医療の提供を受けられるようにするために、他の都道府県知事に対し、当該他の都道府県の区域内の病院その他の医療機関における医療の提供、医療関係者の派遣、オンライン診療の実施その他の特定患者等に対する医療の提供のために必要な措置をとるべきことを要請するよう求めることができる。

 2 政府対策本部長は、前項の規定による求めを受けた場合において、各都道府県における新型インフルエンザ等の発生の状況、医療の提供の状況その他の状況に照らして同項の措置をとることが適当と認められる都道府県があるときは、当該都道府県知事に対し、当該措置をとるべきことを要請することができる。

 3 政府対策本部長は、前項の規定による要請をしようとするときは、あらかじめ、第一項の規定による求めをした都道府県知事及び当該要請をしようとする都道府県知事の意見を聴かなければならない。

 4 前二項の場合においては、第二十条第四項及び第五項の規定を準用する。

  (物資の確保等)

 第三十一条の三の三 国は、新型インフルエンザ等に係る検査の実施、診断、治療及び感染の防止に必要な医薬品、医療機器その他の物資について、国の内外における新型インフルエンザ等の患者の病状、数その他の新型インフルエンザ等の発生及びまん延の状況に照らして必要となることが予測される数量を、当該状況の推移に即して機動的に確保するとともに、これらの物資が地方公共団体等に適時かつ適切に配分されるよう、必要な措置を講ずるものとする。

  第三十一条の五及び第三十三条第一項中「第二十条第三項及び第四項」を「第二十条第四項及び第五項」に改める。

  第六十三条の二を第六十三条の三とし、第六十三条の次に次の一条を加える。

  (協力金の支給)

 第六十三条の二 都道府県は、第三十一条第六項の規定による要請に応じ、又は同条第七項の規定による指示に従った管理者の管理に係る医療機関に対し、当該要請に応じ、又は当該指示に従ったことによって生ずる医療機関の支出の増加又は収入の減少の見込額に相当する額として政令で定めるところにより算定した額の協力金を支給するものとする。

  第七十条第二項中「ほか、」の下に「第六十三条の二に規定する協力金の支給その他」を加える。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して十日を経過した日から施行する。ただし、第二条中新型インフルエンザ等対策特別措置法第三章中第三十一条の三の次に二条を加える改正規定(第三十一条の三の三に係る部分に限る。)及び次条から附則第五条までの規定は、公布の日から施行する。

 (新型コロナウイルス感染症に係る検査体制の充実)

第二条 国は、新型コロナウイルス感染症(病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和二年一月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)である感染症をいう。以下同じ。)に係る検査について、次に掲げる者が迅速かつ確実に当該検査を受けることができるよう、体制の充実に努めなければならない。

 一 濃厚接触者(都道府県知事又は保健所を設置する市若しくは特別区の長が新型コロナウイルス感染症の患者(新型コロナウイルス感染症の無症状病原体保有者を含む。)と一定の期間内に接触があったために当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者と認めるものをいう。附則第四条において同じ。)その他医師が当該検査が必要と認める者

 二 医療関係者その他の社会の機能を維持するために必要な業務に従事する者

 三 前二号に掲げるもののほか、当該検査を必要とする者

 (医療関係者の処遇の改善等)

第三条 国は、新型コロナウイルス感染症に対する対策が必要な状況が継続している中で、医療提供体制の確保が喫緊の課題となっている現状に鑑み、医療関係者の処遇の改善その他の医療関係者に対する支援に係る施策を実施するために必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 (新型コロナウイルス感染症の患者等に対する措置の在り方についての検討)

第四条 国は、速やかに、新型コロナウイルス感染症の病状又は当該感染症にかかった場合の病状の程度が重篤化するおそれ等に関する知見、当該感染症及びそのまん延防止のための措置が国民生活及び社会経済に与えている影響その他当該感染症に関する内外の動向を踏まえ、濃厚接触者及び無症状病原体保有者に対する措置の在り方を含めた当該感染症の患者等に対する措置の在り方について、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第六条に規定する他の感染症の類型との比較等の観点から検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 (政令への委任)

第五条 この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。

 (地方自治法の一部改正)

第六条 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)の一部を次のように改正する。

  別表第一感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)の項中「、第二項及び第七項」の下に「、第四十四条の三の二」を加える。

 (保健所において執行される事業等に伴う経理事務の合理化に関する特別措置法の一部改正)

第七条 保健所において執行される事業等に伴う経理事務の合理化に関する特別措置法(昭和三十九年法律第百五十五号)の一部を次のように改正する。

  第一条中「第十四号」を「第十五号」に改める。


     理 由

 新型コロナウイルス感染症の発生の状況及びそのまん延防止のための措置の実施の状況に鑑み、新型コロナウイルス感染症に対する対策を含めた新型インフルエンザ等感染症に対する対策の実効性の向上を図るため、医療提供体制の確保のための都道府県等と医療機関との協定の締結及び当該協定を締結した医療機関への協力金の支給並びに自宅療養者等に対する健康観察及びこれに協力する医療機関への協力金の支給等について定め、新型インフルエンザ等対策に関し、医療機関の管理者に対する設備、人員等の配置の変更等の要請又は指示及びこれに応じた医療機関への協力金の支給、他の都道府県知事に対する医療の提供に係る要請並びに医薬品等の物資の確保を図るための措置等について定めるとともに、新型コロナウイルス感染症に係る検査体制の充実等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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