第二〇八回
衆第一八号
特定土砂等の管理に関する法律案
(目的)
第一条 この法律は、特定土砂等の管理に関する制度を設けることにより、特定土砂等の管理の適正化を図り、もって災害の防止及び生活環境の保全に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「土砂等」とは、土、砂利(砂及び玉石を含む。)、砕石その他これらに類する物として政令で定めるものをいう。ただし、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第二条第一項に規定する廃棄物に該当するもの、土壌汚染対策法(平成十四年法律第五十三号)第十六条第一項に規定する汚染土壌に該当するもの及び放射性物質によって汚染されたものを除く。
2 この法律において「大規模工事」とは、土砂等の発生を伴う工事であって、政令で定めるところにより算定した当該工事から発生する土砂等の見込量が五百万立方メートルを限度として工事の態様等を勘案して政令で定める体積を超えるものをいう。
3 この法律において「特定土砂等」とは、大規模工事から発生した土砂等をいう。
(大規模工事の注文者による通知)
第三条 大規模工事の全部又は一部(特定土砂等の発生を伴うものに限る。)の注文者は、当該大規模工事の全部又は一部を当該注文者から請け負う者に対し、国土交通省令で定めるところにより、国土交通省令で定める期限までに、請け負わせる工事が大規模工事の全部又は一部(特定土砂等の発生を伴うものに限る。)である旨、大規模工事の発注者(大規模工事の全部又は一部(他の者から請け負ったものを除く。)の注文者をいう。次条第一項において同じ。)の氏名又は名称その他国土交通省令で定める事項を通知しなければならない。
(特定土砂等管理票及び特定土砂等最終管理票)
第四条 大規模工事の発注者又は大規模工事の全部若しくは一部を請負契約によらないで自ら施工する者(以下この条において「大規模工事の発注者等」という。)は、その大規模工事に係る特定土砂等の全部又は一部を他の者に引き渡す場合には、国土交通省令で定めるところにより、引き渡す特定土砂等の体積、大規模工事の発注者等の氏名又は名称、引渡しを受ける者の氏名又は名称その他国土交通省令で定める事項を記載した特定土砂等管理票を作成して、その引渡しと同時に、当該他の者に対し、これを交付しなければならない。
2 次の各号のいずれかに該当する者は、特定土砂等(第二号に掲げる者にあっては、同号の特定土砂等管理票に係る特定土砂等に限る。)の全部又は一部を他の者に引き渡す場合には、国土交通省令で定めるところにより、前項に規定する事項を記載した特定土砂等管理票を作成して、その引渡しと同時に、当該他の者にこれを交付し、かつ、国土交通省令で定める期間内に、当該特定土砂等に係る大規模工事の発注者等に当該特定土砂等管理票の写しを送付しなければならない。
一 当該特定土砂等に係る大規模工事の全部又は一部を他の者から請け負った者
二 前項又はこの項の規定による特定土砂等管理票の交付を受けた者(当該特定土砂等に係る大規模工事の発注者等及び前号に掲げる者を除く。)
3 前二項の規定による特定土砂等管理票の交付を受けた者は、当該特定土砂等管理票に係る特定土砂等の全部又は一部(当該交付を受けた後に他の者に引き渡したものを除く。)が付合、加工その他の事由により土砂等でなくなった場合には、国土交通省令で定めるところにより、土砂等でなくなった特定土砂等の体積その他国土交通省令で定める事項を記載した特定土砂等最終管理票を作成して、国土交通省令で定める期間内に、当該特定土砂等に係る大規模工事の発注者等に対し、これを送付しなければならない。
4 大規模工事の発注者等は、管理対象特定土砂等(第一項の規定により交付した特定土砂等管理票に係る特定土砂等及び第二項第一号に掲げる者から同項の規定による送付を受けた特定土砂等管理票の写しに係る特定土砂等をいう。以下この項及び次項において同じ。)の全部(国土交通省令で定める部分を除く。同項において同じ。)について前項の規定による特定土砂等最終管理票の送付を受けるまでの間、国土交通省令で定める期間ごとに、管理対象特定土砂等の状況を把握し、その結果を国土交通大臣に届け出なければならない。
5 大規模工事の発注者等は、管理対象特定土砂等の全部について第三項の規定による特定土砂等最終管理票の送付を受けたときは、国土交通省令で定める期間内に、その旨その他国土交通省令で定める事項を国土交通大臣に届け出なければならない。
6 第一項若しくは第二項の規定により特定土砂等管理票を交付し、又は第三項の規定により特定土砂等最終管理票を送付した者は、当該特定土砂等管理票の写し又は当該特定土砂等最終管理票の写しを国土交通省令で定める期間保存しなければならない。
7 第一項又は第二項の規定による特定土砂等管理票の交付を受けた者は、当該特定土砂等管理票を国土交通省令で定める期間保存しなければならない。
8 大規模工事の発注者等は、第二項の規定による特定土砂等管理票の写しの送付を受け、又は第三項の規定による特定土砂等最終管理票の送付を受けたときは、当該特定土砂等管理票の写し又は当該特定土砂等最終管理票を国土交通省令で定める期間保存しなければならない。
9 前各項に定めるもののほか、特定土砂等管理票及び特定土砂等最終管理票に関し必要な事項は、国土交通省令で定める。
(虚偽の特定土砂等管理票の交付等の禁止)
第五条 何人も、前条第一項又は第二項に規定する場合でないにもかかわらず、同条第一項に規定する事項について虚偽の記載をして特定土砂等管理票又はその写しを交付し、又は送付してはならない。
2 何人も、前条第三項に規定する場合でないにもかかわらず、同項に規定する事項について虚偽の記載をして特定土砂等最終管理票を送付してはならない。
(罰則)
第六条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした者は、三月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第三条の規定による通知をせず、又は虚偽の通知をしたとき。
二 第四条第一項又は第二項の規定に違反して、特定土砂等管理票を交付せず、又は同条第一項に規定する事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をして特定土砂等管理票を交付したとき。
三 第四条第二項の規定に違反して、特定土砂等管理票の写しを送付せず、又は同条第一項に規定する事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をして特定土砂等管理票の写しを送付したとき。
四 第四条第三項の規定に違反して、特定土砂等最終管理票を送付せず、又は同項に規定する事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をして特定土砂等最終管理票を送付したとき。
五 第四条第四項又は第五項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。
六 第四条第六項から第八項までの規定に違反して、特定土砂等管理票若しくはその写し又は特定土砂等最終管理票若しくはその写しを保存しなかったとき。
七 前条第一項の規定に違反して、虚偽の記載をして特定土砂等管理票又はその写しを交付し、又は送付したとき。
八 前条第二項の規定に違反して、虚偽の記載をして特定土砂等最終管理票を送付したとき。
第七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同条の罰金刑を科する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第二条、第三条、第六条(第一号に係る部分に限る。)、第七条(第六条第一号に係る部分に限る。)及び次項の規定はこの法律の施行の日(附則第三項において「施行日」という。)前の政令で定める日から、附則第四項の規定は公布の日から施行する。
(経過措置)
2 第三条の規定(同条の規定に係る罰則を含む。)は、同条の規定の施行の際現に行われている大規模工事(政令で定めるところにより算定した同条の規定の施行の日以後に当該大規模工事から発生する土砂等の見込量が第二条第二項に規定する政令で定める体積を超えるものに限る。)についても適用する。
3 第四条及び第五条の規定(これらの規定に係る罰則を含む。)は、この法律の施行の際現に行われている第三条の規定が適用される土砂等の発生を伴う工事(前項の規定により同条の規定が適用される大規模工事を含む。)であって、政令で定めるところにより算定した施行日以後に発生する土砂等の見込量が第二条第二項に規定する政令で定める体積以下のもの及び当該工事から施行日以後に発生した土砂等についても適用する。
(政令への委任)
4 前二項に定めるもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置は、政令で定める。
理 由
災害の防止及び生活環境の保全に資するため、特定土砂等の管理に関する制度を設けることにより、特定土砂等の管理の適正化を図る必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。