第二〇八回
衆第三一号
刑法等の一部を改正する法律案
(刑法の一部改正)
第一条 刑法(明治四十年法律第四十五号)の一部を次のように改正する。
第二百三十一条の次に次の一条を加える。
(加害目的誹謗等)
第二百三十一条の二 人の内面における人格に対する加害の目的で、これを誹謗し、又は中傷した者は、拘留又は科料に処する。
2 前項の行為については、第二百三十条の二の例による。
(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律の一部改正)
第二条 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(平成十二年法律第七十五号)の一部を次のように改正する。
第二十三条第一項中「地方裁判所」の下に「及び簡易裁判所」を加え、同項第二号ニ中「ハまで」を「ニまで」に改め、同号中ニをホとし、ハの次に次のように加える。
ニ 刑法第二百三十条(名誉毀損)、第二百三十一条(侮辱)又は第二百三十一条の二(加害目的誹謗等)の罪
第二十七条第一項第二号中「第四条、」及び「又は第十条第二項」を削り、「地方裁判所」の下に「及び簡易裁判所」を加える。
(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部改正)
第三条 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成十三年法律第百三十七号)の一部を次のように改正する。
第一条中「よる情報の流通」を「係る情報」に改める。
第二条第一号中「不特定の者によって受信されることを目的とする」を削り、「この号」の下に「及び第四条第一項」を加え、同条第四号中「(当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)」及び「(当該送信装置に入力された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)」を削る。
第三条第一項中「よる情報の流通により」を「係る情報によって」に改め、「、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって」を削り、「該当するとき」を「該当する場合(当該特定電気通信が不特定の者によって受信されることを目的とするものである場合にあっては、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するとき)」に改め、同項第一号及び第二号並びに同条第二項第一号及び第二号中「よる情報の流通」を「係る情報」に改める。
第三条の二第一号及び第二号中「よる情報」を「係る情報」に改め、「の流通」を削る。
第四条第一項中「よる情報の流通」を「係る情報」に改め、「、次の各号のいずれにも該当するときに限り」を削り、「権利の侵害」を「権利を侵害したとする情報の発信者」に改め、「もの」の下に「その他これらに準ずると認められる情報」を加え、「)の」を「)のうち、特定発信者情報(発信者情報であって専ら侵害関連通信(侵害情報の発信者による当該侵害情報の送信に係る特定電気通信役務(特定電気通信設備を用いて提供する電気通信役務(電気通信事業法第二条第三号に規定する電気通信役務をいう。)をいう。)を利用した当該侵害情報以外の情報の電気通信による送信であって、当該侵害情報の発信者を特定するために必要な範囲内であるものとして総務省令で定めるものをいう。)に係るものとして総務省令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)以外の発信者情報については第一号及び第二号のいずれにも該当するとき、特定発信者情報については次の各号のいずれにも該当するときは、それぞれその」に改め、同項第一号中「の流通」及び「ことが明らかである」を削り、同項に次の一号を加える。
三 当該特定電気通信役務提供者が当該権利を侵害したとする情報の発信者に係る特定発信者情報以外の発信者情報を保有していないと認めるとき。
第四条第四項中「開示関係役務提供者」の下に「及びドメイン名役務提供者」を、「第一項」の下に「又は第二項」を加え、同項を同条第五項とし、同条第三項中「第一項」の下に「又は第二項」を加え、同項を同条第四項とし、同条第二項中「開示関係役務提供者」の下に「及びドメイン名役務提供者」を加え、「前項」を「前二項」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
2 特定電気通信に係る情報によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときは、当該特定電気通信に係る電気通信事業法第百六十四条第二項第二号に掲げるドメイン名の取得、維持又は管理に関する役務を提供する者であって総務省令で定めるもの(当該特定電気通信に係る開示関係役務提供者である者を除く。以下この条において「ドメイン名役務提供者」という。)に対し、当該ドメイン名役務提供者が保有する当該権利を侵害したとする情報の発信者に係る発信者情報の開示を請求することができる。
一 当該開示の請求に係る侵害情報によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたとき。
二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他当該発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。ただし、第三条及び附則第六条の規定は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(政令への委任)
第二条 この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
(刑事訴訟法の一部改正)
第三条 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の一部を次のように改正する。
第二百三十五条ただし書及び第二百四十四条中「又は第二百三十一条」を「、第二百三十一条又は第二百三十一条の二」に改める。
(民事執行法の一部改正)
第四条 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)の一部を次のように改正する。
第三十三条第二項第一号の二中「地方裁判所」の下に「及び簡易裁判所」を加える。
(損害賠償命令に関する規定の整備)
第五条 前条に定めるもののほか、第二条の規定による犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律の改正に伴い必要な同法第二十三条第一項に規定する損害賠償命令に関する規定の整備については、別に法律で定める。
(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律の一部改正)
第六条 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律(令和三年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第二条第一号の改正規定中「この号」の下に「及び第五条第三項」を加え」を「第四条第一項」を「第五条第三項」に改め」に改め、同条に五号を加える改正規定のうち第五号中「よる情報の流通」を「係る情報」に改め、第六号中「もの」の下に「その他これらに準ずると認められる情報」を加え、第七号中「及び同条第二項」を「、同条第二項に規定するドメイン名役務提供者及び同項」に改める。
第四条第一項の改正規定中「「、次の各号のいずれにも該当するときに限り」及び」を削り、「に、「(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の」を「のうち、特定発信者情報(発信者情報であって専ら侵害関連通信に係るものとして総務省令で定めるものをいう。以下この項及び第十五条第二項において同じ。)以外の発信者情報については第一号及び第二号のいずれにも該当するとき、特定発信者情報については次の各号のいずれにも該当するときは、それぞれその」に改め」を「に改め、「(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものその他これらに準ずると認められる情報をいう。以下同じ。)」及び「(侵害情報の発信者による当該侵害情報の送信に係る特定電気通信役務(特定電気通信設備を用いて提供する電気通信役務(電気通信事業法第二条第三号に規定する電気通信役務をいう。)をいう。)を利用した当該侵害情報以外の情報の電気通信による送信であって、当該侵害情報の発信者を特定するために必要な範囲内であるものとして総務省令で定めるものをいう。)」を削り、「この項」の下に「及び第十五条第二項」を加え」に改め、同項に一号を加える改正規定のうち「同項に次の一号を加える」を「同項第三号を次のように改める」に改め、第三号イ及びロ中「の侵害」を「を侵害したとする情報の発信者」に改める。
第四条第二項及び第三項の改正規定を次のように改める。
第四条第二項中「開示関係役務提供者」を「前項に規定する特定電気通信役務提供者」に、「この条」を「この項」に、「対し、」を「対しては」に改め、「開示を」の下に「、当該特定電気通信に係る侵害関連通信の用に供される電気通信設備を用いて電気通信役務を提供した者(当該特定電気通信に係る前項に規定する特定電気通信役務提供者である者を除く。以下この項において「関連電気通信役務提供者」という。)に対しては当該関連電気通信役務提供者が保有する当該侵害関連通信に係る発信者情報の開示を、それぞれ」を加え、同条第三項を次のように改める。
3 前二項に規定する「侵害関連通信」とは、侵害情報の発信者による当該侵害情報の送信に係る特定電気通信役務を利用した当該侵害情報以外の情報又は侵害情報の発信者が当該侵害情報の送信に係る特定電気通信役務を利用し、若しくはその利用を終了するために行った当該特定電気通信役務に係る識別符号(特定電気通信役務提供者が特定電気通信役務の提供に際して当該特定電気通信役務の提供を受けることができる者を他の者と区別して識別するために用いる文字、番号、記号その他の符号をいう。)その他の符号の電気通信による送信であって、当該侵害情報の発信者を特定するために必要な範囲内であるものとして総務省令で定めるものをいう。
第四条第四項を削る改正規定中「第四条第四項」を「第四条第四項及び第五項」に改める。
本則に二条及び一章を加える改正規定のうち第八条中「よる情報の流通」を「係る情報」に改める。
理 由
最近におけるインターネット上の誹謗中傷による被害の実情に鑑み、人の内面における人格に対する加害の目的でこれを誹謗し、又は中傷する行為についての処罰規定を整備するとともに、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律における損害賠償命令制度の対象事件に、名誉毀損罪、侮辱罪及び加害目的誹謗等罪に係る被告事件を追加し、あわせて、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の規定による発信者情報の開示請求に関し、開示請求に係る事案の拡大、権利侵害の明白性の要件の削除その他所要の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。