第二〇八回
衆第四〇号
公職の候補者となる労働者の雇用の継続の確保のための立候補休暇に関する法律案
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 立候補休暇(第三条−第六条)
第三章 雑則(第七条−第十条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、立候補休暇の制度を設けることにより、公職の候補者となる労働者の雇用の継続を確保し、もって国民の政治への参画の機会の増大に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「立候補休暇」とは、労働者が、公職の候補者となる場合において、次章に定めるところにより、当該公職に係る選挙の期日の公示又は告示の日前十四日に当たる日から当該選挙の期日後三日に当たる日までの期間内において、選挙運動又は選挙運動の準備若しくは残務整理をするために取得する休暇をいう。
2 この法律において「公職」とは、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第三条に規定する公職をいう。
3 この法律において「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者であって、賃金を支払われるもの(日々雇用される者を除く。)をいう。
第二章 立候補休暇
(立候補休暇の申出)
第三条 労働者は、その事業主に申し出ることにより、立候補休暇を取得することができる。
2 立候補休暇は、一日の所定労働時間が短い労働者として厚生労働省令で定める者以外の者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働省令で定める一日未満の単位で取得することができる。
3 第一項の規定による申出(以下「立候補休暇の申出」という。)は、厚生労働省令で定めるところにより、立候補休暇を取得することとする日(前項の厚生労働省令で定める一日未満の単位で取得するときは、立候補休暇の開始及び終了の日時。次項及び第五条第一項において「立候補休暇予定日」という。)を全て明らかにして、しなければならない。
4 立候補休暇の申出は、当該立候補休暇の申出に係る最初の立候補休暇予定日の七日前までにしなければならない。ただし、やむを得ない事情があるときは、この限りでない。
(立候補休暇の申出があった場合における事業主の義務等)
第四条 事業主は、労働者からの立候補休暇の申出があったときは、当該立候補休暇の申出を拒むことができない。ただし、過去一年以内に他の選挙に係る立候補休暇の申出をしたことがある労働者(公職選挙法第百条第一項から第四項までの規定に該当し投票を行うことを必要としなくなったことその他の厚生労働省令で定める事由により当該立候補休暇の申出に係る立候補休暇を取得しなかった労働者を除く。)からの立候補休暇の申出(当該他の選挙に係る再選挙に係るものを除く。)があった場合は、この限りでない。
2 前項ただし書の場合において、事業主にその立候補休暇の申出を拒まれた労働者は、前条第一項の規定にかかわらず、立候補休暇を取得することができない。
(立候補休暇の申出の撤回等)
第五条 立候補休暇の申出をした労働者は、当該立候補休暇の申出に係る最初の立候補休暇予定日の前日までは、その事業主の同意を得て、当該立候補休暇の申出を撤回することができる。
2 前項の規定により立候補休暇の申出を撤回した労働者は、当該立候補休暇の申出に係る選挙については、第三条第一項の規定にかかわらず、立候補休暇の申出をすることができない。
3 立候補休暇の申出をした労働者は、公職の候補者の届出がなされなかったことその他の労働者が当該立候補休暇の申出に係る立候補休暇を取得することが適当でない事由として厚生労働省令で定める事由が生じたときは、当該事由が生じた日後の当該立候補休暇の申出に係る立候補休暇を取得することができない。この場合において、労働者は、その事業主に対して、当該事由が生じた旨を遅滞なく通知しなければならない。
(不利益取扱いの禁止)
第六条 事業主は、労働者が立候補休暇の申出をし、又は立候補休暇を取得したことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
第三章 雑則
(労働政策審議会への諮問)
第七条 厚生労働大臣は、第三条第二項、第四条第一項及び第五条第三項の厚生労働省令の制定又は改正の立案をしようとするときその他この法律の施行に関する重要事項について決定しようとするときは、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴かなければならない。
(厚生労働省令への委任)
第八条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のために必要な手続その他の事項は、厚生労働省令で定める。
(船員に関する特例)
第九条 船員法(昭和二十二年法律第百号)の適用を受ける船員に関しては、第三条第二項及び第三項、第四条第一項、第五条第三項、第七条並びに前条中「厚生労働省令」とあるのは「国土交通省令」と、第七条中「厚生労働大臣」とあるのは「国土交通大臣」と、「労働政策審議会」とあるのは「交通政策審議会」とする。
(適用除外)
第十条 この法律は、国家公務員及び地方公務員については、適用しない。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一月を経過した日から施行する。ただし、次条の規定は、公布の日から施行する。
(準備行為)
第二条 この法律の施行のために必要な準備行為は、この法律の施行の日前においても行うことができる。
(検討)
第三条 政府は、この法律の施行後四年を目途として、立候補休暇の取得の状況その他のこの法律の施行状況を勘案し、必要があると認めるときは、立候補休暇をより容易に取得することができるようにするための方策について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(労働基準法の一部改正)
第四条 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)の一部を次のように改正する。
第十二条第三項中第五号を第六号とし、第四号の次に次の一号を加える。
五 公職の候補者となる労働者の雇用の継続の確保のための立候補休暇に関する法律(令和四年法律第▼▼▼号)第二条第一項に規定する立候補休暇を取得した期間
第三十九条第十項中「休業した期間及び」を「休業した期間、」に改め、「介護休業をした期間」の下に「及び公職の候補者となる労働者の雇用の継続の確保のための立候補休暇に関する法律第二条第一項に規定する立候補休暇を取得した期間」を加える。
(船員法の一部改正)
第五条 船員法の一部を次のように改正する。
第七十四条第四項中「期間及び」の下に「公職の候補者となる労働者の雇用の継続の確保のための立候補休暇に関する法律(令和四年法律第▼▼▼号)第二条第一項に規定する立候補休暇を取得した期間並びに」を加える。
(船員職業安定法の一部改正)
第六条 船員職業安定法(昭和二十三年法律第百三十号)の一部を次のように改正する。
第九十一条の三を第九十一条の四とし、第九十一条の二の次に次の一条を加える。
(公職の候補者となる労働者の雇用の継続の確保のための立候補休暇に関する法律の適用に関する特例)
第九十一条の三 船員派遣の役務の提供を受ける者がその指揮命令の下に労働させる派遣船員の当該船員派遣に係る就業に関しては、当該船員派遣の役務の提供を受ける者もまた当該派遣船員を雇用する事業主とみなして、公職の候補者となる労働者の雇用の継続の確保のための立候補休暇に関する法律(令和四年法律第▼▼▼号)第六条の規定を適用する。
第九十二条第四項中「及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」を「、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び公職の候補者となる労働者の雇用の継続の確保のための立候補休暇に関する法律」に改める。
(船員の雇用の促進に関する特別措置法の一部改正)
第七条 船員の雇用の促進に関する特別措置法(昭和五十二年法律第九十六号)の一部を次のように改正する。
第十四条第五項中「及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号)」を「、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号)及び公職の候補者となる労働者の雇用の継続の確保のための立候補休暇に関する法律(令和四年法律第▼▼▼号)」に改める。
(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律の一部改正)
第八条 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)の一部を次のように改正する。
第四十七条の三の次に次の一条を加える。
(公職の候補者となる労働者の雇用の継続の確保のための立候補休暇に関する法律の適用に関する特例)
第四十七条の三の二 労働者派遣の役務の提供を受ける者がその指揮命令の下に労働させる派遣労働者の当該労働者派遣に係る就業に関しては、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者もまた、当該派遣労働者を雇用する事業主とみなして、公職の候補者となる労働者の雇用の継続の確保のための立候補休暇に関する法律(令和四年法律第▼▼▼号)第六条の規定を適用する。
(厚生労働省設置法の一部改正)
第九条 厚生労働省設置法(平成十一年法律第九十七号)の一部を次のように改正する。
第九条第一項第四号中「平成二十六年法律第百三十七号)」の下に「、公職の候補者となる労働者の雇用の継続の確保のための立候補休暇に関する法律(令和四年法律第▼▼▼号)」を加える。
(国土交通省設置法の一部改正)
第十条 国土交通省設置法(平成十一年法律第百号)の一部を次のように改正する。
第十四条第一項第三号中「平成三年法律第七十六号)」の下に「、公職の候補者となる労働者の雇用の継続の確保のための立候補休暇に関する法律(令和四年法律第▼▼▼号)」を加える。
理 由
公職の候補者となる労働者の雇用の継続を確保することにより、国民の政治への参画の機会の増大を図るため、立候補休暇の制度を設ける必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。