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第二〇八回

衆第五六号

   分散型エネルギー利用の促進に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、気候変動が生活、社会、経済及び自然環境に重大な影響を及ぼし、地球温暖化の防止及び気候変動の影響への適応が重要な課題となっていることに鑑み、あわせて内外におけるエネルギーをめぐる経済的社会的環境の変化及びエネルギーの安定的な供給の重要性を踏まえ、地域における創意工夫を生かした分散型エネルギー利用を促進するため、その基本理念、経済産業大臣による基本方針の策定、都道府県又は市町村による分散型エネルギー利用促進計画の作成及びこれに係る交付金の交付等について定め、もって個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現及び持続可能な社会の形成を図り、国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「再生可能エネルギー源」とは、次に掲げるエネルギー源をいう。

 一 太陽光

 二 風力

 三 水力

 四 地熱

 五 太陽熱

 六 大気中の熱その他の自然界に存する熱(前二号に掲げるものを除く。)

 七 バイオマス(動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することができるもの(原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品を除く。)をいう。第五条第二項第三号ニにおいて同じ。)

 八 前各号に掲げるもののほか、原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品以外のエネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして経済産業省令で定めるもの

2 この法律において「地域エネルギー源」とは、国内の地域に存する再生可能エネルギー源その他のエネルギー源をいう。

3 この法律において「分散型エネルギー利用」とは、次に掲げるものをいう。

 一 地域エネルギー源から得られ、又は製造されたエネルギーをその得られ、又は製造された地域において使用すること。

 二 電気及び熱を併せて供給する設備を用いて地域エネルギー源以外のエネルギー源から得られた電気及び熱をその得られた地域において使用すること。

 三 国内の地域における事業活動に伴い発生した廃熱をその発生した地域において使用すること。

 (基本理念)

第三条 分散型エネルギー利用の促進は、エネルギーの使用の目的に応じて適切かつ効率的にエネルギーを使用する観点から、大規模な発電設備による電気の供給を中心とした従来のエネルギーの需給に関する施策からの転換の推進を図ることを旨として行われなければならない。

2 分散型エネルギー利用の促進は、地域エネルギー源を効果的かつ効率的に活用することにより、エネルギーの供給に係る温室効果ガスの排出の量の削減等の環境への負荷の低減に資することを旨として行われなければならない。

3 分散型エネルギー利用の促進は、電線路、熱の供給に係る導管その他のエネルギーの流通のための設備等の整備を通じて地域エネルギー源を地域の実情に即して活用したエネルギーの地産地消を推進することにより、災害時におけるエネルギーの供給不足への対処を含むエネルギーの安定的かつ適切な供給の確保及びエネルギーの消費者による自主的かつ合理的な選択の確保に資することを旨として行われなければならない。

4 分散型エネルギー利用の促進に当たっては、地域における適正な経済循環構造(地域資源及び地域における多様な人材の活用等による地域の特性を生かした事業の展開により得られた利益をその地域における経済活動に還元し、もって地域経済の活性化及び地域における雇用機会の創出に資する経済構造をいう。)の確立に資することとなるよう配慮しなければならない。

 (基本方針)

第四条 経済産業大臣は、前条の基本理念にのっとり、分散型エネルギー利用の促進に関する基本的な方針(以下この条及び次条第一項において「基本方針」という。)を定めなければならない。

2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 分散型エネルギー利用の促進の意義及び目標に関する事項

 二 分散型エネルギー利用の促進のために政府が実施すべき施策に関する基本的な方針

 三 次条第一項に規定する分散型エネルギー利用促進計画の作成に関する基本的な事項

 四 分散型エネルギー利用の促進に関する施策の効果(地域における雇用機会の創出その他地域に及ぼす経済的社会的効果を含む。)についての評価に関する基本的な事項

 五 前各号に掲げるもののほか、分散型エネルギー利用の促進に関する重要事項

3 経済産業大臣は、基本方針を定めようとするときは、関係行政機関の長に協議しなければならない。

4 経済産業大臣は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

5 前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。

 (分散型エネルギー利用促進計画)

第五条 都道府県又は市町村は、単独で又は共同して、基本方針に基づき、当該都道府県又は市町村の区域における分散型エネルギー利用の促進に関する計画(以下「分散型エネルギー利用促進計画」という。)を作成することができる。

2 分散型エネルギー利用促進計画には、次に掲げる事項を記載するものとする。

 一 分散型エネルギー利用促進計画の区域

 二 分散型エネルギー利用促進計画の目標

 三 第一号の区域において分散型エネルギー利用を促進するために必要な次に掲げる事業に関する事項

  イ 再生可能エネルギー発電施設(再生可能エネルギー源を電気に変換する設備及びその附属設備をいう。)その他の電気を供給するための設備(発電設備、蓄電池その他の電気の需給の調整を行うための設備、送電配電設備、変電受電設備その他の設備をいう。)の整備に関する事業(ハに掲げる事業を除く。)

  ロ 再生可能エネルギー熱利用施設(再生可能エネルギー源又は再生可能エネルギー源を原材料とする燃料を熱源とする熱を給湯、暖房、冷房その他の用途に利用するための施設をいう。)、廃熱を回収利用するための施設その他の熱を利用するための設備(ボイラー、冷凍設備、循環ポンプ、整圧器、導管その他の設備をいう。)の整備に関する事業(ハに掲げる事業を除く。)

  ハ 電気及び熱を併せて供給する設備の整備に関する事業

  ニ バイオマスを原材料とする燃料その他の燃料の製造又は輸送に係る設備の整備に関する事業

  ホ その他経済産業省令で定める事業

 四 分散型エネルギー利用促進計画の達成状況の評価(地域における雇用機会の創出その他地域に及ぼす経済的社会的効果についての評価を含む。)に関する事項

 五 計画期間

 六 前各号に掲げるもののほか、分散型エネルギー利用の促進に関し必要な事項

3 前項第三号に掲げる事項には、当該分散型エネルギー利用促進計画を作成する都道府県又は市町村が実施する事業又は事務(以下「事業等」という。)に係るものを記載するほか、必要に応じ、当該都道府県又は市町村以外の者が実施する事業等(分散型エネルギー利用促進計画を作成する都道府県又は市町村が当該事業等に要する費用の一部を負担してその推進を図るものに限る。)に係るものを記載することができる。

4 前項の規定により分散型エネルギー利用促進計画に都道府県又は市町村以外の者が実施する事業等に係る事項を記載しようとする都道府県又は市町村は、当該事項について、あらかじめ、その者の同意を得なければならない。

5 都道府県又は市町村以外の者であって分散型エネルギー利用の促進に寄与する事業等を実施しようとするものは、当該事業等を実施しようとする地域をその区域に含む都道府県又は市町村に対し、当該事業等をその内容に含む分散型エネルギー利用促進計画の案の作成についての提案をすることができる。

6 前項の都道府県又は市町村は、同項の提案を踏まえた分散型エネルギー利用促進計画の案を作成する必要がないと判断したときは、その旨及びその理由を、当該提案をした者に通知しなければならない。

7 都道府県又は市町村は、分散型エネルギー利用促進計画の作成に当たっては、熱の供給に係る導管の設置その他の熱を適切かつ効率的に使用することができる環境の整備が図られるよう特に配慮しなければならない。

8 都道府県又は市町村は、分散型エネルギー利用促進計画の作成に当たっては、地球温暖化対策の推進に関する法律(平成十年法律第百十七号)第二十一条第一項に規定する地方公共団体実行計画との整合性の確保を図るよう努めなければならない。

9 都道府県又は市町村は、分散型エネルギー利用促進計画の作成に当たっては、あらかじめ、公聴会の開催その他住民その他利害関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

10 都道府県又は市町村は、分散型エネルギー利用促進計画を作成したときは、遅滞なく、これを公表するよう努めるとともに、都道府県にあっては関係市町村(都道府県と共同して当該分散型エネルギー利用促進計画を作成した市町村を除く。)に、市町村(都道府県と共同して当該分散型エネルギー利用促進計画を作成した市町村を除く。)にあっては都道府県に、当該分散型エネルギー利用促進計画の写しを送付しなければならない。

11 第四項から前項までの規定は、分散型エネルギー利用促進計画の変更について準用する。

12 都道府県又は市町村は、分散型エネルギー利用促進計画の実施に当たっては、住民等の理解と協力を得るよう努めなければならない。

 (分散型エネルギー利用促進計画の実施の状況の公表)

第六条 分散型エネルギー利用促進計画を作成した都道府県又は市町村は、前条第二項第五号の計画期間中、毎年少なくとも一回、当該分散型エネルギー利用促進計画の実施の状況を取りまとめ、その効果(地域における雇用機会の創出その他地域に及ぼす経済的社会的効果を含む。)についての評価を行い、その実施の状況及び評価の結果を公表するよう努めるものとする。

 (交付金の交付等)

第七条 分散型エネルギー利用促進計画を作成した都道府県又は市町村は、次項の交付金を充てて当該分散型エネルギー利用促進計画に基づく事業等の実施(都道府県又は市町村以外の者が実施する事業等に要する費用の一部の負担を含む。同項において同じ。)をしようとするときは、当該分散型エネルギー利用促進計画を経済産業大臣に提出しなければならない。

2 国は、前項の都道府県又は市町村に対し、同項の規定により提出された分散型エネルギー利用促進計画に基づく事業等の実施に要する経費に充てるため、経済産業省令で定めるところにより、予算の範囲内で、交付金を交付することができる。

3 前項の経済産業省令を定めるに当たっては、第五条第二項第三号ロ及びハに掲げる事業が促進されるよう配慮しなければならない。

4 第二項の交付金を充てて行う事業等に要する費用については、他の法令の規定に基づく国の負担又は補助は、当該規定にかかわらず、行わないものとする。

5 前各項に定めるもののほか、第二項の交付金の交付に関し必要な事項は、経済産業省令で定める。

 (援助)

第八条 国及び電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二十八条の四の広域的運営推進機関は、都道府県及び市町村に対し、分散型エネルギー利用促進計画の作成及び変更並びにその円滑かつ確実な実施に関し必要な情報提供、助言その他の援助を行うよう努めるものとする。

 (指導及び助言)

第九条 分散型エネルギー利用促進計画を作成した都道府県又は市町村は、当該分散型エネルギー利用促進計画に基づく事業等を実施する者に対し、当該事業等の適確な実施に関し必要な指導及び助言を行うものとする。

 (財政上の措置等)

第十条 国及び地方公共団体は、分散型エネルギー利用促進計画に基づく事業等の円滑かつ確実な実施に資するため必要な財政上又は税制上の措置その他の措置を講ずるものとする。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第三条から第五条までの規定は、公布の日から施行する。

 (検討)

第二条 政府は、地域における創意工夫を生かした分散型エネルギー利用の一層の促進を図るため、分散型エネルギー利用に関する規制について規定する法律及び法律に基づく命令の規定に基づく規制の特例措置について検討を加え、必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。

2 政府は、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況を勘案し、第五条第二項第三号ロ及びハに掲げる事業への更なる支援の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

 (電気事業法の一部改正)

第三条 電気事業法の一部を次のように改正する。

  第二十八条中「確保」の下に「、国内の地域に存するエネルギー源の地域の実情に即した効果的かつ効率的な活用」を加える。

  第二十八条の四十第一項第三号中「策定する」を「策定し、及び必要に応じて変更する」に改め、同号に後段として次のように加える。

    この場合においては、送配電等業務指針の策定又は変更に先立つて、都道府県及び市町村に意見を述べる機会を与えること。

  第二十八条の四十五中「には」の下に「、国内の地域に存するエネルギー源の地域の実情に即した効果的かつ効率的な活用の動向を勘案し」を加える。

  第二十九条第一項中「電気工作物」の下に「(全ての送電用の電気工作物を含む。)」を加え、同条第五項中「確保」の下に「、国内の地域に存するエネルギー源の地域の実情に即した効果的かつ効率的な活用」を加え、同条第六項第五号中「広域的運営」の下に「又は国内の地域に存するエネルギー源の地域の実情に即した効果的かつ効率的な活用」を加える。

 (電気事業法の一部改正に伴う経過措置)

第四条 前条の規定による改正後の電気事業法第二十九条の規定は、前条の規定の施行の日の属する年度(以下この条において「施行年度」という。)の翌年度に係る同法第二十九条第一項に規定する供給計画(以下この条において「供給計画」という。)から適用し、施行年度に係る供給計画については、なお従前の例による。

 (エネルギー政策基本法の一部改正)

第五条 エネルギー政策基本法(平成十四年法律第七十一号)の一部を次のように改正する。

  第二条第一項中「かんがみ」を「鑑み」に改め、「備蓄及び」の下に「国内の地域に存するエネルギー源の地域の実情に即した効果的かつ効率的な活用その他」を、「並びに」の下に「災害時におけるエネルギーの供給不足への対処のための体制の整備その他」を加え、「関し」を「関する」に改める。


     理 由

 気候変動が生活、社会、経済及び自然環境に重大な影響を及ぼし、地球温暖化の防止及び気候変動の影響への適応が重要な課題となっていることに鑑み、あわせて内外におけるエネルギーをめぐる経済的社会的環境の変化及びエネルギーの安定的な供給の重要性を踏まえ、地域における創意工夫を生かした分散型エネルギー利用を促進するため、その基本理念、経済産業大臣による基本方針の策定、都道府県又は市町村による分散型エネルギー利用促進計画の作成及びこれに係る交付金の交付等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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