第二〇八回
閣第二号
警察法の一部を改正する法律案
警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)の一部を次のように改正する。
第五条第四項第六号イ及びロ中「事案」の下に「(ハに掲げるものを除く。)」を加え、同号に次のように加える。
ハ サイバーセキュリティ(サイバーセキュリティ基本法(平成二十六年法律第百四号)第二条に規定するサイバーセキュリティをいう。)が害されることその他情報技術を用いた不正な行為により生ずる個人の生命、身体及び財産並びに公共の安全と秩序を害し、又は害するおそれのある事案(以下この号及び第二十五条第一号において「サイバー事案」という。)のうち次のいずれかに該当するもの(第十六号及び第六十一条の三において「重大サイバー事案」という。)
(1) 次に掲げる事務又は事業の実施に重大な支障が生じ、又は生ずるおそれのある事案
(i) 国又は地方公共団体の重要な情報の管理又は重要な情報システムの運用に関する事務
(ii) 国民生活及び経済活動の基盤であつて、その機能が停止し、又は低下した場合に国民生活又は経済活動に多大な影響を及ぼすおそれが生ずるものに関する事業
(2) 高度な技術的手法が用いられる事案その他のその対処に高度な技術を要する事案
(3) 国外に所在する者であつてサイバー事案を生じさせる不正な活動を行うものが関与する事案
第五条第四項中第二十六号を第二十七号とし、第十六号から第二十五号までを一号ずつ繰り下げ、第十五号の次に次の一号を加える。
十六 重大サイバー事案に係る犯罪の捜査その他の重大サイバー事案に対処するための警察の活動に関すること。
第十二条の二第一項中「第五条第四項第二十五号」を「第五条第四項第二十六号」に改める。
第十九条第一項中「情報通信局」を「サイバー警察局」に改める。
第二十一条中第二十七号を第三十号とし、第二十六号を第二十九号とし、第二十五号を第二十八号とし、第二十四号の次に次の三号を加える。
二十五 警察通信に関すること。
二十六 所管行政に関する情報の管理に関する企画及び技術的研究に関すること。
二十七 所管行政に関する情報システムの整備及び管理に関すること。
第二十五条を次のように改める。
(サイバー警察局の所掌事務)
第二十五条 サイバー警察局においては、警察庁の所掌事務に関し、次に掲げる事務をつかさどる。
一 サイバー事案に関する警察に関すること。
二 犯罪の取締りのための情報技術の解析に関すること。
第三十条第一項中「第十七号から第二十号まで及び第二十三号から第二十六号まで」を「第十八号から第二十一号まで及び第二十四号から第二十七号まで」に改め、同条の次に次の一条を加える。
(関東管区警察局の所掌事務の特例)
第三十条の二 前条の規定にかかわらず、関東管区警察局は、全国を管轄区域として、警察庁の所掌事務のうち第五条第四項第十六号に掲げるものに係るものを分掌する。
第三十一条第二項中「所掌事務」の下に「(前条の規定により関東管区警察局が分掌する事務を除く。)」を加える。
第三十三条第一項中「第五条第四項第十八号及び第十九号」を「第五条第四項第十九号及び第二十号」に改める。
第三十四条第三項中「(情報通信局長を除く。)」を削る。
第六十一条の三第一項中「分担」の下に「(重大サイバー事案の処理にあつては、警察庁及び関係都道府県警察間の分担)」を加え、同条に次の二項を加える。
3 長官は、重大サイバー事案について警察庁と都道府県警察が共同して処理を行う必要があると認めるときは、当該重大サイバー事案の処理に関する方針を定め、警察庁又は関係都道府県警察の一の警察官(第六十条第一項の規定による援助の要求又は第一項の規定による指示により派遣された者を含む。)に、当該重大サイバー事案の処理に関し、当該方針の範囲内で、警察庁及び関係都道府県警察の警察職員に対して必要な指揮を行わせることができる。
4 第一項の規定による指示により重大サイバー事案の処理に関して警察庁に派遣された都道府県警察の警察官は、国家公安委員会の管理の下に、当該重大サイバー事案の処理に必要な限度で、全国において、職権を行うことができる。
第六十四条中「特別の定」を「特別の定め」に、「除く外」を「除くほか」に改め、同条を同条第二項とし、同条に第一項として次の一項を加える。
第五条第四項第十六号に掲げるものに係る事務に関して必要な職務を行う警察庁の警察官は、この法律に特別の定めがある場合を除くほか、当該職務に必要な限度で職権を行うものとする。
第七十九条第一項中「職員」の下に「(第六十一条の三第四項に規定する都道府県警察の警察官を除く。)」を加え、同条第二項中「は、前項」を「又は国家公安委員会は、前二項」に改め、同項第一号中「都道府県警察」を「警察」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
2 第六十四条第一項に規定する警察庁の警察官及び第六十一条の三第四項に規定する都道府県警察の警察官の当該職務執行について苦情がある者は、国家公安委員会に対し、国家公安委員会規則で定める手続に従い、文書により苦情の申出をすることができる。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、令和四年四月一日から施行する。
(警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律の一部改正)
第二条 警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律(昭和二十七年法律第二百四十五号)の一部を次のように改正する。
第三条第二項中「給付の」を「前項の規定にかかわらず、給付の」に、「第六十条の規定により」を「第六十条第一項の規定による」に、「要求に基き援助におもむいた」を「援助の要求により派遣された」に、「基因する」を「起因する」に、「警察官の援助を要求した当該」を「援助の要求をした」に改め、同条第三項を次のように改める。
3 第一項の規定にかかわらず、給付の原因である災害が、次に掲げる警察官に協力援助したことに起因するものについては、国がその給付を行うものとする。
一 警察法第六十一条の三第一項の規定による指示により警察庁に派遣された警察官
二 警察法第七十三条第三項の規定により同条第一項の布告区域(同条第二項の規定により布告区域以外の区域に派遣された場合における当該区域を含む。)に派遣され当該区域内において職務を行つた警察官
(国際捜査共助等に関する法律の一部改正)
第三条 国際捜査共助等に関する法律(昭和五十五年法律第六十九号)の一部を次のように改正する。
第六条中「認める」の下に「警察庁又は」を加え、「、関係書類を送付して」を削り、同条に後段として次のように加える。
この場合において、都道府県警察に対して指示を行うときは、当該都道府県警察に関係書類を送付するものとする。
第七条第三項を同条第四項とし、同条第二項中「前項」を「第一項」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
2 警察庁が前条の指示を受けた場合においては、警察庁長官は、警察庁の司法警察員に前項の処分をさせなければならない。
第十四条第三項中「前項」を「警察庁長官が共助に必要な証拠の収集を終えたとき又は前項の規定により証拠」に、「これ」を「収集した証拠又は送付を受けた証拠」に改める。
第十八条第一項第一号中「認める」の下に「警察庁又は」を加え、同条第八項中「前二項」を「前三項」に改め、同項を同条第九項とし、同条中第七項を第八項とし、第六項を第七項とし、第五項の次に次の一項を加える。
6 警察庁が第一項第一号の指示を受けた場合においては、警察庁長官は、警察庁の警察官に調査のための必要な措置を採ることを命ずるものとする。
(国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律の一部改正)
第四条 国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律(平成十九年法律第三十七号)の一部を次のように改正する。
第七条中「認める」の下に「警察庁又は」を加え、「、関係書類を送付して」を削り、同条に後段として次のように加える。
この場合において、都道府県警察に対して指示を行うときは、当該都道府県警察に関係書類を送付するものとする。
第八条中「同条第二項」の下に「及び第三項」を加え、「同条第三項」を「同条第四項」に改める。
第十条第三項中「前項の」を「警察庁長官が協力に必要な証拠の収集を終えたとき又は前項の規定により」に、「これ」を「収集した証拠又は送付を受けた証拠」に改める。
第五十二条第一項第一号中「認める」の下に「警察庁又は」を加え、同条第二項中「第八項」を「第九項」に、「同条第七項」を「同条第八項」に改め、「同条第六項」の下に「及び第七項」を加える。
理 由
最近におけるサイバーセキュリティに対する脅威の深刻化に鑑み、国家公安委員会及び警察庁の所掌事務に重大サイバー事案に対処するための警察の活動に関する事務等を追加するとともに、警察庁が当該活動を行う場合における広域組織犯罪等に対処するための措置に関する規定を整備するほか、警察庁の組織について、サイバー警察局を設置する等の改正を行う。これが、この法律案を提出する理由である。