第二一六回
衆第八号
政治資金委員会法案
目次
第一章 目的及び設置(第一条)
第二章 組織等(第二条−第八条)
第三章 監査等(第九条−第十五条)
第四章 雑則(第十六条・第十七条)
附則
第一章 目的及び設置
第一条 政党の公開方法工夫支出(政治資金規正法(昭和二十三年法律第百九十四号)第十三条の二第一項に規定する公開方法工夫支出をいう。以下同じ。)の監査を行うとともに、政治資金の制度に関する提言を行うため、国会に、政治資金委員会を置く。
第二章 組織等
(組織)
第二条 政治資金委員会(以下「委員会」という。)は、委員長及び委員六人をもって組織する。
2 委員のうち四人は、非常勤とする。
3 委員長は、委員会の事務を統理し、委員会を代表する。
4 委員長に事故があるとき又は委員長が欠けたときは、あらかじめその指名する委員がその職務を代行する。
(委員長及び委員の任命)
第三条 委員長及び委員は、委員会の職務の遂行に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第百二十四条の五に規定する公開方法工夫支出の監査等に係る両議院の議院運営委員会の合同協議会(第八条第三項及び第十五条において「両院合同協議会」という。)の推薦に基づき、両議院の議長が、両議院の承認を得て、これを任命する。
(委員長及び委員の任期)
第四条 委員長及び委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員長又は委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員長及び委員は、再任されることができる。
3 委員長及び委員の任期が満了したときは、当該委員長及び委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとする。
(委員長及び委員の身分保障)
第五条 委員長及び委員は、心身の故障のため職務の遂行ができないこと又は職務の執行上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない非行があったことについて両議院の議決があったときを除いては、罷免されることはない。
(委員長及び委員の服務)
第六条 委員長及び委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
2 委員長及び委員は、不偏不党かつ公平中正にその職務を行わなければならない。
3 委員長及び委員は、在任中、政党その他の政治団体の役員となり、又は積極的に政治活動をしてはならない。
4 委員長及び委員は、他の官職を兼ね、又は公選による公職の候補者となり、若しくは公選による公職と兼ねてはならない。
(会議及び会議録)
第七条 委員会がこの法律の規定によってその所掌に属させられた事項を決定する場合においては、委員会の議決を経なければならない。
2 委員会は、会議録二部を作成し、委員長及び委員がこれに署名し、各議院に送付する。この場合において、各議院は、送付を受けた会議録を保存する。
3 委員会の会議録は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)の提供その他の適当な方法により各議院の議員に提供する。ただし、特に秘密を要するものと委員会で決議した部分については、この限りでない。
(事務局)
第八条 委員会の事務を処理させるため、委員会に事務局を置く。
2 事務局に、事務局長一人その他所要の職員を置く。
3 事務局長その他の職員は、両議院の議長が協議して定めるところにより、両院合同協議会の意見を聴いて、委員長が任命する。
4 事務局に、その事務を分掌するため、部及び課を置く。
5 前三項に定めるもののほか、事務局に関し必要な事項は、両議院の議長が協議して定める。
第三章 監査等
(監査等)
第九条 委員会は、次に掲げる事務を行うものとする。
一 公開方法工夫支出の監査を行うこと。
二 政治資金の制度に関する提言を行うこと。
(公開方法工夫支出に関する書面の提出)
第十条 政党(政治資金規正法第三条第二項に規定する政党をいう。以下同じ。)の会計責任者(同法第九条第一項に規定する会計責任者をいう。以下同じ。)(政党が解散し、又は目的の変更その他により政治団体(同法第三条第一項に規定する政治団体をいう。以下この項において同じ。)でなくなった場合には、当該政党の代表者及び会計責任者であった者とし、同条第二項各号のいずれにも該当しない政治団体となったときは、その会計責任者。以下この条及び第十二条第一項において同じ。)は、同法第十三条の二第一項(同法第十七条第四項において準用する場合を含む。)の規定により当該政党の支出(同法第四条第五項に規定する支出をいい、同法第九条第一項第二号に規定する政治団体のためにその代表者又は会計責任者と意思を通じてされた支出を含む。以下この条及び次条において同じ。)について公開方法工夫支出である旨を記載した同法第十二条第一項又は第十七条第一項の報告書を提出するときは、当該報告書の同法第十二条第一項又は第十七条第一項に規定する提出期限までに、当該報告書の写し及び当該報告書に公開方法工夫支出である旨を記載した支出に係る次に掲げる書面(第四号に掲げる書面にあっては、当該公開方法工夫支出が同法第十三条の二第二項第二号又は第三号に掲げる支出である場合に限る。)を委員会に提出しなければならない。
一 当該支出を受けた者の氏名及び住所(当該支出を受けた者が団体である場合にあっては、その名称及び主たる事務所の所在地)並びに当該支出の目的、金額及び年月日を記載した明細書(次条第二項第二号及び第三号において「公開方法工夫支出明細書」という。)
二 当該支出が公開方法工夫支出に該当する旨及びその理由を記載した書面
三 当該支出に係る領収書等の写し(政治資金規正法第十二条第二項に規定する領収書等の写しをいう。)
四 政治資金規正法第十三条の二第二項第二号又は第三号の申出に係る書面の写し
五 前各号に掲げるもののほか、委員会が定める書面
2 総務大臣は、政党の会計責任者から政治資金規正法第十二条第一項又は第十七条第一項の報告書の提出を受けた場合において、当該報告書に公開方法工夫支出である旨が記載された支出があるときは、速やかに、その旨を委員会に通知しなければならない。
3 委員会は、前項の規定による通知を受けた場合において、当該通知に係る政党の会計責任者が同項の報告書の政治資金規正法第十二条第一項又は第十七条第一項に規定する提出期限までに当該報告書の写し又は第一項に規定する書面を提出していないときは、速やかに、その旨を公表しなければならない。
(公開方法工夫支出の監査)
第十一条 委員会は、前条第一項の規定による書面の提出を受けたときは、政治資金規正法第二十条第一項後段の規定により同項後段の日までに公表される同法第十二条第一項の規定による報告書にあっては同日の一月前までに、当該報告書以外の同項又は第十七条第一項の規定による報告書にあっては当該提出を受けた後遅滞なく、これらの報告書に公開方法工夫支出である旨が記載された各支出について、監査しなければならない。
2 前項の規定による監査は、委員会が定める具体的な指針に基づき、政治資金規正法第十二条第一項又は第十七条第一項の規定による報告書に公開方法工夫支出である旨が記載された各支出に関し、次に掲げる事項について行うものとする。
一 当該各支出が公開方法工夫支出に該当すること。
二 当該報告書(当該各支出に係る部分に限る。次号において同じ。)及び公開方法工夫支出明細書は、領収書等(政治資金規正法第十一条第二項に規定する領収書等をいう。)及び領収書等を徴し難かった支出の明細書等(同法第十九条の十一に規定する領収書等を徴し難かった支出の明細書等をいう。)に基づいて支出の状況が表示されていること。
三 当該報告書及び公開方法工夫支出明細書の記載が政治資金規正法及びこの法律の規定に従って行われていること。
(監査報告書の提出等)
第十二条 委員会は、前条第一項の規定による監査の結果を記載した監査報告書を作成し、当該監査報告書を、両議院の議長に提出するとともに、第十条第一項の規定による書面の提出をした政党の会計責任者に送付しなければならない。
2 委員会は、前項の監査報告書を両議院の議長に提出したときは、速やかに、その内容を公表するものとする。
(説明又は資料提出の要求)
第十三条 委員会は、第九条に規定する事務の遂行のため必要があると認めるときは、国の行政機関、地方公共団体の公署、政党その他の者に対して、説明又は資料の提出を要求することができる。この場合においては、当該要求を受けた者は、これに応じなければならない。
(職務上の秘密に関する説明又は資料提出)
第十四条 前条の要求を受けた国の行政機関又は地方公共団体の公署は、当該要求に係る説明又は資料について、職務上の秘密に関するものであることの申立てを行い、その説明又は資料の提出を拒むときは、その理由を疎明しなければならない。この場合において、その理由を委員会において受諾し得るときは、当該国の行政機関又は地方公共団体の公署は、当該要求に係る説明を行い、又は資料を提出する必要がない。
2 前項の理由を受諾することができない場合は、委員会は、両議院の議長に対して、前条の要求に係る説明若しくは資料の提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣の声明又は同条の要求に係る説明若しくは資料の提出が公の利益を害する旨の当該地方公共団体の声明を要求するよう求めることができる。
3 前項の求めを受けた各議院の議長が同項の声明を要求し、これに対して同項の声明があった場合は、前条の要求を受けた国の行政機関又は地方公共団体の公署は、当該要求に係る説明を行い、又は資料を提出する必要がない。
4 前項の要求後十日以内に、内閣又は地方公共団体が第二項の声明を出さないときは、前条の要求を受けた国の行政機関又は地方公共団体の公署は、当該要求に係る説明を行い、又は資料を提出しなければならない。
(両院合同協議会に対する国政調査の要請)
第十五条 委員会は、特に必要があると認めるときは、両院合同協議会に対し、国会法第百二十四条の六の規定により国政に関する調査を行うよう、要請することができるものとする。
第四章 雑則
(諸規程の制定)
第十六条 委員長は、委員会の議決を経て、かつ、事前に、時宜によっては事後に、両議院の議長の承認を得て、委員会の業務の遂行上必要な諸規程を定めることができる。
(財政措置等)
第十七条 この法律の施行に必要となる人員については、国会職員の定員に上乗せして確保されることとするとともに、この法律の施行に必要となる経費が確保されるよう、格別の財政措置が講ぜられるものとする。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、令和八年一月一日から施行する。ただし、次条の規定は、公布の日から施行する。
(準備行為)
第二条 委員会の委員長及び委員の任命のために必要な行為その他委員会の設置のために必要な準備行為は、この法律の施行前においても行うことができる。
(国会職員法の一部改正)
第三条 国会職員法(昭和二十二年法律第八十五号)の一部を次のように改正する。
第一条第四号の次に次の一号を加える。
四の二 政治資金委員会の委員長及び委員
第一条第五号中「及び訴追委員会事務局」を「、訴追委員会事務局及び政治資金委員会事務局」に改める。
第四条の二第一項、第五条及び第八条中「並びに国立国会図書館」を「、国立国会図書館」に改め、「専門調査員」の下に「並びに政治資金委員会の委員長及び委員」を加える。
第十五条の八中「定める」を「定め、政治資金委員会事務局の職員については政治資金委員会の委員長が両議院の議院運営委員会の承認を経て定める」に改める。
第十六条第一項中「並びに国立国会図書館」を「、国立国会図書館」に改め、「専門調査員」の下に「並びに政治資金委員会の委員長及び委員」を加える。
第二十四条の三第一項中「本章」を「この章」に、「掌る」を「つかさどる」に、「並びに国立国会図書館の館長」を「、国立国会図書館の館長並びに政治資金委員会の委員長及び委員」に改める。
第二十八条第一項中「並びに国立国会図書館」を「、国立国会図書館」に改め、「専門調査員」の下に「並びに政治資金委員会の委員長及び委員」を加える。
第三十三条中「いう。)及び」を「いう。)、」に改め、「「訴追委員会」という。)」の下に「及び政治資金委員会」を加える。
第三十八条の次に次の一条を加える。
第三十八条の二 政治資金委員会に設ける国会職員考査委員会の委員長は、政治資金委員会の委員長、その委員には、政治資金委員会の委員、各議院事務局の事務総長及び事務次長並びに各議院法制局の法制局長及び法制次長が、これに当たる。
附則第七項中「並びに国立国会図書館」を「、国立国会図書館」に改め、「専門調査員」の下に「並びに政治資金委員会の委員長及び委員」を加える。
(国会に置かれる機関の休日に関する法律の一部改正)
第四条 国会に置かれる機関の休日に関する法律(昭和六十三年法律第百五号)の一部を次のように改正する。
第一条第二項中「裁判官訴追委員会」の下に「、政治資金委員会」を加える。
(国会職員の育児休業等に関する法律の一部改正)
第五条 国会職員の育児休業等に関する法律(平成三年法律第百八号)の一部を次のように改正する。
第二条中「並びに国立国会図書館」を「、国立国会図書館」に改め、「専門調査員」の下に「並びに政治資金委員会の委員長及び委員」を加える。
(国会職員の配偶者同行休業に関する法律の一部改正)
第六条 国会職員の配偶者同行休業に関する法律(平成二十五年法律第八十号)の一部を次のように改正する。
第二条第一項中「並びに国立国会図書館」を「、国立国会図書館」に改め、「専門調査員」の下に「並びに政治資金委員会の委員長及び委員」を加える。
理 由
政党の公開方法工夫支出の監査を行うとともに、政治資金の制度に関する提言を行うため、国会に、政治資金委員会を置く必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
本案施行に要する経費
本案施行に要する経費としては、具体的な組織いかんにもよるが、両院にまたがる現行の機関と同規模のものを想定すれば、平年度約二億二千万円の見込みである。