第二一七回
閣第三二号
公益通報者保護法の一部を改正する法律案
公益通報者保護法(平成十六年法律第百二十二号)の一部を次のように改正する。
目次中「公益通報者の解雇の無効及び」を削り、「・第二十二条」を「−第二十四条」に改める。
第一条中「公益通報者の解雇の無効及び」を削る。
第二条第一項中「次条第二号及び第六条第二号」を「次条第一項第二号及び第六条第一項第二号」に、「次条第三号及び第六条第三号」を「次条第一項第三号及び第六条第一項第三号」に改め、同項第二号中「第四条に」を「第四条第一項第一号に」に、「第四条及び第五条第二項」を「第四条第一項」に改め、同項第四号を同項第五号とし、同項第三号中「前二号」を「前三号」に、「労働者であった者又は派遣労働者若しくは派遣労働者」を「派遣労働者(以下この号及び第十一条第二項において「労働者等」という。)若しくは労働者等であった者又は特定受託業務従事者若しくは特定受託業務従事者」に改め、同号を同項第四号とし、同項第二号の次に次の一号を加える。
三 特定受託業務従事者(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和五年法律第二十五号)第二条第二項に規定する特定受託業務従事者をいう。以下同じ。)又は特定受託業務従事者であった者 当該特定受託業務従事者に係る特定受託事業者(同条第一項に規定する特定受託事業者をいう。以下同じ。)又は特定受託事業者であった者に業務委託(同条第三項に規定する業務委託をいう。以下この号及び第五条において同じ。)をし、又は当該通報の日前一年以内に業務委託をしていた事業者
第二条第三項第二号中「別表」を「この法律及び別表」に、「同表」を「この法律及び同表」に改める。
第二章の章名中「公益通報者の解雇の無効及び」を削る。
第三条の見出しを「(労働者に対する不利益取扱いの禁止等)」に改め、同条各号列記以外の部分を次のように改める。
前条第一項第一号に定める事業者は、その使用し、又は使用していた公益通報者が次の各号に掲げる場合においてそれぞれ当該各号に定める公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
第三条第三号ヘ中「第六条第二号ロ」を「第六条第一項第二号ロ」に改め、同条に次の二項を加える。
2 前項の規定に違反して前条第一項第一号に定める事業者が行った解雇その他不利益な取扱い(解雇以外の不利益な取扱いにあっては、懲戒(労働基準法第八十九条(第九号に係る部分に限る。)の規定に基づき事業者が就業規則に定めた制裁又は事業者と労働者との間の労働契約に定めた制裁をいう。)としてされたものに限る。次項及び第二十一条第一項において「解雇等特定不利益取扱い」という。)は、無効とする。
3 公益通報者に対する解雇等特定不利益取扱いが第一項各号に定める公益通報をした日(前条第一項第一号に定める事業者が第一項第二号又は第三号に定める公益通報がされたことを知って当該解雇等特定不利益取扱いをした場合にあっては、当該事業者が当該公益通報を知った日)から一年以内にされたときは、前項の規定の適用については、当該解雇等特定不利益取扱いは、当該公益通報をしたことを理由としてされたものと推定する。
第四条及び第五条を次のように改める。
(派遣労働者に対する不利益取扱いの禁止等)
第四条 第二条第一項第二号に定める事業者(当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けるものに限る。次項において同じ。)は、その指揮命令の下に労働する派遣労働者である公益通報者が前条第一項各号に定める公益通報をしたことを理由として、次に掲げる行為をしてはならない。
一 当該公益通報者に係る労働者派遣契約(労働者派遣法第二十六条第一項に規定する労働者派遣契約をいう。次項において同じ。)を解除すること。
二 前号に掲げるもののほか、当該公益通報者に対して、当該公益通報者に係る労働者派遣をする事業者に派遣労働者の交代を求めることその他不利益な取扱いをすること。
2 前項(第一号に係る部分に限る。)の規定に違反して第二条第一項第二号に定める事業者が行った労働者派遣契約の解除は、無効とする。
(特定受託事業者に対する不利益取扱いの禁止)
第五条 第二条第一項第三号に定める事業者は、その業務委託をし、又は業務委託をしていた特定受託事業者に係る特定受託業務従事者である公益通報者が第三条第一項各号に定める公益通報をしたことを理由として、当該特定受託事業者に対して、業務委託に係る契約の解除、取引の数量の削減、取引の停止、報酬の減額その他不利益な取扱いをしてはならない。
第六条の見出しを「(役員に対する不利益取扱いの禁止等)」に改め、同条各号列記以外の部分を次のように改める。
第二条第一項第五号に定める事業者(同号イに掲げる事業者に限る。次項及び第八条第四項において同じ。)は、その職務を行わせ、又は行わせていた役員である公益通報者が次の各号に掲げる場合においてそれぞれ当該各号に定める公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して、報酬の減額その他不利益な取扱い(解任を除く。)をしてはならない。
第六条に次の一項を加える。
2 役員である公益通報者は、前項各号に定める公益通報をしたことを理由として第二条第一項第五号に定める事業者から解任された場合には、当該事業者に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。
第七条中「第三条各号及び前条各号」を「第三条第一項各号及び前条第一項各号」に改める。
第八条第二項中「第十六条」を「第十四条から第十六条まで」に改め、同条第三項を次のように改める。
3 第五条の規定は、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律第五条及び第六条第三項(同法第十七条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用を妨げるものではない。
第八条第四項中「第六条」を「第六条第二項」に、「第二条第一項第四号」を「第二条第一項第五号」に改める。
第九条中「第三条各号に定める公益通報をしたことを理由とする」を削り、「(以下この条において「一般職の国家公務員等」という。)に対する免職その他不利益な取扱いの禁止については、第三条から第五条までの規定にかかわらず、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号。裁判所職員臨時措置法において準用する場合を含む。)、国会職員法、自衛隊法及び地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)の定めるところによる」を「については、第三条第二項及び第三項の規定は適用せず、同条第一項及び第二十一条第一項の規定の適用については、第三条第一項中「解雇」とあるのは「懲戒免職、分限免職」と、第二十一条第一項中「解雇等特定不利益取扱い」とあるのは「分限免職又は懲戒処分」とする」に改め、同条後段を削る。
第十条中「第三条各号及び第六条各号」を「第三条第一項各号及び第六条第一項各号」に改める。
第十一条第一項中「第三条第一号及び第六条第一号」を「第三条第一項第一号及び第六条第一項第一号」に、「次条」を「第十二条」に改め、同条第二項中「第三条第一号及び第六条第一号」を「第三条第一項第一号及び第六条第一項第一号」に改め、「整備」の下に「、労働者等に対するその周知」を加え、同条の次に次の二条を加える。
(通報妨害の禁止等)
第十一条の二 第二条第一項各号に定める事業者は、当該各号に掲げる者に対して、正当な理由がなく、公益通報をしない旨の合意をすることを求めること、公益通報をした場合に不利益な取扱いをすることを告げることその他の行為によって、公益通報を妨げてはならない。
2 前項の規定に違反してされた合意その他の法律行為は、無効とする。
(通報者探索の禁止)
第十一条の三 第二条第一項各号に定める事業者は、正当な理由がなく、公益通報者である旨を明らかにすることを要求することその他の公益通報者を特定することを目的とする行為をしてはならない。
第十三条第一項及び第二項中「第三条第二号及び第六条第二号」を「第三条第一項第二号及び第六条第一項第二号」に改める。
第十五条の見出しを「(助言及び指導)」に改め、同条中「報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告」を「助言又は指導」に改め、同条の次に次の一条を加える。
(勧告及び命令等)
第十五条の二 内閣総理大臣は、第十一条第一項(同条第三項の規定により読み替えて適用する場合を除く。)の規定に違反していると認めるときは、事業者に対して、その違反を是正するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による勧告を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に係る措置をとらなかったときは、当該勧告を受けた者に対し、当該勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
3 内閣総理大臣は、前項の規定による命令をした場合には、その旨を公表することができる。
4 内閣総理大臣は、第十一条第一項(同条第三項の規定により読み替えて適用する場合に限る。)及び第二項(同条第三項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定の施行に関し必要があると認めるときは、事業者に対して、勧告をすることができる。
5 内閣総理大臣は、第十一条第二項(同条第三項の規定により読み替えて適用する場合を除く。)の規定に違反している事業者に対し、前項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に係る措置をとらなかったときは、その旨を公表することができる。
第十六条を次のように改める。
(報告及び検査)
第十六条 内閣総理大臣は、第十一条第一項(同条第三項の規定により読み替えて適用する場合を除く。)の規定の施行に必要な限度において、事業者に対し、報告をさせ、又はその職員に、事業者の事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 内閣総理大臣は、第十一条第一項(同条第三項の規定により読み替えて適用する場合に限る。)及び第二項(同条第三項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定の施行に必要な限度において、事業者に対し、報告を求めることができる。
3 第一項の規定により職員が立ち入るときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
4 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第二十条中「及び第十六条」を「から第十六条まで」に、「に適用しない」を「には、適用しない」に改める。
第二十二条中「第十五条」を「第十六条第二項」に改め、同条を第二十四条とし、同条の前に次の一条を加える。
第二十三条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本項の罰金刑を科する。
一 第二十一条第一項 三千万円以下の罰金刑
二 第二十一条第二項 同項の罰金刑
2 前項(第一号に係る部分に限る。)の規定は、国及び地方公共団体には、適用しない。
第二十一条を第二十二条とし、第五章中同条の前に次の一条を加える。
第二十一条 第三条第一項の規定に違反して解雇等特定不利益取扱いをしたときは、当該違反行為をした者は、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
2 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第十五条の二第二項の規定による命令に違反したとき。
二 第十六条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第八条の規定は、公布の日から施行する。
(経過措置の原則)
第二条 この法律による改正後の公益通報者保護法(以下「新法」という。)の規定(罰則を除く。)は、この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律の施行前にされたこの法律による改正前の公益通報者保護法(附則第六条において「旧法」という。)第二条第一項に規定する公益通報にも適用する。
(労働者に対する不利益取扱いに関する経過措置)
第三条 新法第三条第一項及び第二項の規定は、この法律の施行後にされた解雇その他不利益な取扱いについて適用し、この法律の施行前にされた解雇その他不利益な取扱いについては、なお従前の例による。
2 新法第三条第三項の規定は、解雇以外の不利益な取扱いについては、この法律の施行後に懲戒(同条第二項に規定する懲戒をいう。)としてされたものについて適用する。
3 この法律の施行前にされた解雇に係る新法第三条第三項の規定の適用については、同項中「前項」とあるのは、「公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和七年法律第▼▼▼号)による改正前の第三条」とする。
(派遣労働者に対する不利益取扱いに関する経過措置)
第四条 新法第四条第一項(第一号に係る部分に限る。)の規定は、この法律の施行後にされた同号に掲げる行為について適用し、この法律の施行前にされた同号に掲げる行為に相当する行為については、なお従前の例による。
(通報妨害に係る法律行為の無効に関する経過措置)
第五条 新法第十一条の二第二項の規定は、この法律の施行後にされた公益通報をしない旨の合意その他の法律行為について適用し、この法律の施行前にされた当該法律行為については、適用しない。
(報告及び勧告に関する経過措置)
第六条 この法律の施行前に旧法第十五条の規定により報告を求められ、かつ、この法律の施行の際現に報告がされていないものについては、なお従前の例による。
2 この法律の施行前に旧法第十五条の規定による勧告を受けた事業者が当該勧告に従わなかった場合における公表については、なお従前の例による。
(罰則に関する経過措置)
第七条 この法律の施行前にした行為及び前条第一項の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(政令への委任)
第八条 附則第二条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定める。
(検討)
第九条 政府は、この法律の施行後五年を目途として、新法の施行の状況を勘案し、新法の規定について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
理 由
最近における国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令に違反する事実の発生状況等に鑑み、これらの法令の規定の遵守を図るため、公益通報者の範囲を拡大するとともに、公益通報をしたことを理由とする不利益取扱いの禁止等の措置を強化するほか、公益通報に適切に対応するために事業者がとるべき措置の充実強化を図るための措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。