第二一九回
閣第三号
更生保護制度の充実を図るための保護司法等の一部を改正する法律案
(保護司法の一部改正)
第一条 保護司法(昭和二十五年法律第二百四号)の一部を次のように改正する。
第一条中「世論の啓発」を「の世論の啓発、社会環境の改善及び地域住民の活動の促進」に、「地域社会の浄化をはかり」を「安心して暮らすことのできる安全な地域社会の実現を図り」に改める。
第三条第一項中「左の」を「次の」に、「すべて」を「全て」に、「、委嘱する」を「委嘱する」に改め、同項第一号及び第二号を次のように改める。
一 人格識見が高いこと。
二 他の保護司及び保護観察官と協働して誠実かつ熱心に職務を行う意欲を有すること。
第三条第一項中第四号を第五号とし、第三号を第四号とし、第二号の次に次の一号を加える。
三 職務の遂行に必要な時間を確保できること。
第三条第三項中「委嘱は」の下に「、多様な保護司がそれぞれの個性と能力を発揮して事務に従事することの重要性に鑑み」を、「から」の下に「、保護司の多様性の確保に配慮しつつ」を加え、同条に次の一項を加える。
5 保護観察所の長は、保護司の職務の意義及び内容に関する広報を実施するとともに、第三項の推薦を行うに当たり、関係行政機関若しくは地方公共団体又は民間の団体若しくは個人の協力を得て、多様な人材の確保に資するように努めるものとする。
第六条を削る。
第七条中「二年」を「三年」に改め、同条ただし書中「但し」を「ただし」に改め、同条を第六条とする。
第八条ただし書中「但し」を「ただし」に、「は、この限りでない」を「その他特に必要があるときは、当該区域外においても、職務を行うことができる」に改め、同条に次の一項を加える。
2 保護司は、前項ただし書の規定によりその置かれた保護区の区域外において職務を行うとき(地方更生保護委員会又は保護観察所の長から特に命ぜられたときを除く。)は、あらかじめ、又はその職務を行つた後遅滞なく、地方更生保護委員会又は保護観察所の長にその旨を報告しなければならない。
第八条を第七条とする。
第八条の二第一号中「又は」を「、又は」に改め、同条第二号中「又は」を「、又は」に、「ための」を「ための地方公共団体の施策及び」に改め、同条第三号を削り、同条第四号中「又は」を「、又は」に改め、同号を同条第三号とし、同条を第八条とする。
第十条を削り、第十一条を第十条とし、第十二条を第十一条とする。
第十三条第二項第一号中「第八条の二」を「第八条」に改め、同項第四号中「事項」を「事務」に改め、同号を同項第六号とし、同項第三号の次に次の二号を加える。
四 保護司の職務に関する研修の機会の提供
五 更生保護サポートセンター(保護司の職務の円滑かつ効果的な遂行に資する施設として法務省令で定めるものをいう。)の運営
第十三条を第十二条とする。
第十四条第二項第四号中「事項」を「事務」に改め、同号を同項第五号とし、同項第三号の次に次の一号を加える。
四 保護司の職務に関する研修の機会の提供
第十四条を第十三条とし、同条の次に次の一条を加える。
(保護司会等への支援)
第十四条 保護観察所の長は、第十二条第二項に規定する保護司会の任務及び前条第二項に規定する保護司会連合会の任務の円滑かつ効果的な遂行を図るため、保護司会及び保護司会連合会に対し、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。
第十八条を第二十一条とする。
第十七条中「かんがみ」を「鑑み、その地方公共団体の地域の状況に応じ」に、「ことができる」を「ように努めなければならない」に改め、同条に次の一項を加える。
2 地方公共団体は、第十六条の措置の実施に関し国から必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない。
第十七条を第十八条とし、同条の次に次の二条を加える。
(事業主の措置)
第十九条 事業主(国及び地方公共団体を除く。)は、その使用する者が保護司の職務を円滑かつ効果的に行うことができるよう、保護司の職務を行うための休暇を取得しやすい環境の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。
(不利益取扱いの禁止)
第二十条 労働者が保護司の職務を行うために休暇を取得したことその他保護司であること、保護司になろうとしたこと又は保護司であつたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
第十六条を第十七条とし、第十五条の次に次の一条を加える。
(国の責務)
第十六条 国は、保護司が安全にかつ安心してその職務を円滑かつ効果的に行うことができる環境を整備するため、保護司が面接をするのに適当な場所の確保、保護司への支援体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。
(更生保護事業法の一部改正)
第二条 更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)の一部を次のように改正する。
第二条第二項第一号中「者」を「者又は保護観察に付されていた者」に改め、同項第三号中「(第一号に該当する者を除く。次号及び第五号において同じ。)」を削り、同項第八号中「退院し、又は仮退院を許された者(第一号に該当する者を除く。)」を「退院した者」に改める。
第三条第一項中「かんがみ」を「鑑み」に改め、同条第二項中「かんがみ」を「鑑み、その地方公共団体の地域の状況に応じ」に、「ことができる」を「よう努めなければならない」に改める。
第六十一条の二の次に次の一条を加える。
(安全の確保)
第六十一条の三 法務大臣は、認可事業者及び届出事業者の従業者が安全にその職務を行うことができるよう、これら事業者がその従業者の安全を確保することができるようにするために必要な施策の推進に努めなければならない。
(更生保護法の一部改正)
第三条 更生保護法(平成十九年法律第八十八号)の一部を次のように改正する。
第二条第一項中「を促進し」を「(次項において「民間活動」という。)を促進し、同項の責務を果たすための地方公共団体の施策を支援し」に改め、同条第二項中「前項の活動」を「民間活動」に、「かんがみ、これ」を「鑑み、その地方公共団体の地域の状況に応じ、民間活動」に、「ことができる」を「ように努めなければならない」に改める。
第七条に次の二項を加える。
2 委員長及び委員は、再任されることができる。
3 委員長及び委員は、任期が満了した場合においても、後任者が任命されるまでは、第一項の規定にかかわらず、引き続き在任する。
第十条第二項中「とき」を「とき、又は委員長が欠けたとき」に、「職務」を「職務を代理し、又はその職務」に改める。
第十一条第五項中「ある」を「あり、又は委員長が欠けた」に、「職務」を「職務を代理し、又はその職務」に改める。
第十八条に次のただし書を加える。
ただし、再任を妨げない。
第三十二条中「保護司は」の下に「、地域社会を構成する一員として、それぞれの個性と能力を発揮して」を加える。
第六十四条に次の一項を加える。
4 保護観察所の長は、保護観察のための調査において、必要があると認めるときは、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
第七十八条の二の次に次の一条を加える。
(鑑別の求め)
第七十八条の三 保護観察所の長は、刑法第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付されている保護観察付執行猶予者(同項の規定により保護観察に付されている期間中に更に同項の規定により保護観察に付された保護観察付執行猶予者(以下「再保護観察付執行猶予者」という。)を除く。)について、その保護観察の開始に際し、執行を猶予された刑を言い渡される理由となった犯罪に結び付いた要因を的確に把握するため、少年鑑別所の長に対し、当該保護観察付執行猶予者の鑑別を求めるものとする。ただし、保護観察の実施のために必要とは認められないときは、この限りでない。
第八十一条の二中「刑法第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付されている期間中に更に同項の規定により保護観察に付された保護観察付執行猶予者(以下「」及び「」という。)」を削る。
第八十二条の見出し中「収容中の者」を「収容中の者等」に改め、同条第一項中「ている者又は」を「、若しくは労役場に留置されている者又は」に、「収容中の者」を「収容中の者等」に、「ときは」を「ときは、その者との面接を行うこと」に改め、同条第四項を同条第六項とし、同条第三項中「収容中の者」を「収容中の者等」に改め、同項を同条第五項とし、同条第二項中「前項」を「第一項」に改め、同項を同条第四項とし、同条第一項の次に次の二項を加える。
2 保護観察所の長は、前項の規定による調整を行うに当たっては、収容中の者等が収容されている刑事施設(労役場に留置されている場合には、当該労役場が附置された刑事施設)又は少年院の職員から参考となる事項について聴取し、及びこれらの者に面接への立会いその他の協力を求めることができる。
3 前項の規定による聴取は、保護観察官又は保護司をして行わせるものとする。
第八十四条中「第六十一条第一項」の下に「及び第六十四条第四項」を加える。
第八十六条第一項中「収容中の者」を「収容中の者等」に、「又は」を「、第八号又は」に改め、同条第二項中「収容中の者」を「収容中の者等」に改め、同条第三項ただし書中「期間の満了によって前条第一項第一号」を「終了により前条第一項第一号若しくは第二号」に、「仮退院」を「仮退院若しくは少年法第六十四条第一項第二号の保護処分」に、「同項第九号」を「前条第一項第九号」に改める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第三条中更生保護法第八十二条並びに第八十六条第一項及び第二項の改正規定並びに附則第三項の規定は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(保護司の任期及び解嘱に関する経過措置)
2 この法律の施行の際現に保護司に委嘱されている者の任期及び解嘱については、なお従前の例による。
(住民基本台帳法の一部改正)
3 住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)の一部を次のように改正する。
別表第一の三十の三の項中「同条第三項」を「同条第五項」に改める。
理 由
更生保護制度の充実を図るため、保護司の委嘱条件の見直し、任期の延長及び職務の執行区域の弾力化、保護観察付全部執行猶予者の鑑別に関する規定の新設による当該者に対する適切な処遇の実施等、保護司の安全確保を図り、その適任者を確保するための措置を講ずるとともに、更生保護事業における保護の対象者の拡大等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

