衆議院

メインへスキップ





   安倍内閣不信任決議案(第一九六回国会、決議第一〇号)


 本院は、安倍内閣を信任せず。
  右決議する。

     理 由
 安倍内閣を信任できない最大の理由は、現内閣による傲慢かつ無責任な政権運営が続く限り、国民の生命・財産を守れない、生活や安全も守れないということが明らかになったことにある。
 第一に、西日本を広範囲に襲った「平成三十年七月豪雨」災害への対応である。気象庁が記録的な大雨となる可能性に言及する異例の緊急記者会見を行った今月五日の夜、安倍総理大臣のみならず、翌日に死刑執行を控えた上川法務大臣、災害対応に従事する自衛隊を指揮監督する小野寺防衛大臣、首相官邸の対応に責任を持つ西村官房副長官らを含む自民党議員数十名が、酒宴に興じていたことが明らかになった。加えて西村副長官自身が、SNSで場違いなコメントと共にこの酒宴の写真を拡散させるという愚行を演じた。図らずも政府・自民党の危機感が決定的に欠如していたことを全国民に露呈する形となったが、これにとどまらず、政府に非常災害対策本部が設置されたのが実に八日になってからという対応の遅さも、被災された方々に厳しく非難されて然るべきである。その責任は極めて重大であると言わざるを得ない。
 第二に、政府がIR法案と呼ぶ、いわゆる「カジノ法案」の強行可決である。広範囲に及ぶ重大な大雨災害対応の陰で、政府・与党は、事もあろうに民間業者にギャンブルを解禁するカジノ法案の審議を強行した。まさに言語道断を通り越す愚行の極みである。しかもそのカジノ法案を担当し答弁を行っていたのは、災害発生時に最前線で対応する国土交通省の最高責任者の石井大臣であり、大臣は災害対応に文字通り全身全霊を持って当たるべき立場にある。にもかかわらず政府・与党は、この石井大臣をカジノ法案の審議に張り付け、広島県内で新たな河川の氾濫があった情報の伝達が遅れるという事態まで招いた。如何に安倍政権がこの災害対応を軽視しているか、もはや弁解の余地はなく、安倍内閣の責任はあまりにも重い。
 第三に、データねつ造まで発覚した、欠陥だらけの、働き方改革ならぬ「働かせ方改悪」法案の強行可決である。安倍内閣は「働き方改革国会」などと決めつけて法案審議に臨んだが、野党の詳細な調査により、政府提出法案のそもそもの元となる裁量労働制に関するデータの多くに、ねつ造と思われる不備が発見された。当初、安倍総理大臣も加藤厚生労働大臣も問題ないとの答弁を繰り返していたが、野党の追及に抗しきれず、答弁の撤回、謝罪、法案の修正を余儀なくされた。前代未聞の醜態であり、これだけでも十分この法案の欠陥ぶりは明らかであるが、これに加えて高度プロフェッショナル制度のニーズ調査についても、その杜撰さが明らかとなった。国民生活に直結する重要問題にもかかわらず、欠陥商品としか言いようのない「働かせ方改悪」法案を強引に押し通した安倍内閣の責任は、免れようがない。
 安倍政権の経済失政も大問題である。総理の名を臆面もなく使うアベノミクスと称する経済政策は、もはや行き詰まっている。物価安定目標や賃金の伸びは全くの期待外れであり、総理の声高な主張とは裏腹に、その恩恵が国民一人ひとりの実感するものとなっていない事実は隠しようもない。また格差拡大も続き、分厚い中間層などという言葉は既に死語と化した。一方で、いたずらに財政拡大路線をとり続けた結果、財政再建目標を先送りし、このことについての真摯な説明もない。
 また、地球儀を俯瞰するなどと、言葉ばかりが踊る外交政策も完全に袋小路に陥っている。北朝鮮問題では、総理は「最大限の圧力」とただ言い続け、河野外務大臣に至っては世界各国に北朝鮮との断交まで呼びかけたが、結果は南北首脳会談、米朝首脳会談の相次ぐ実現という劇的な情勢の変化である。総理がどう言い繕おうとわが国は完全にはしごを外された状況にあることは明らかで、結果、拉致問題の解決の糸口すらつかめないままである。また日米関係についても、安倍総理はトランプ大統領の就任前に、跪くばかりに自宅まで駆けつけて個人的な友好関係を築こうとしたが、結果は北朝鮮問題で完全にはしごを外され、「米国抜きのTPPは意味がない」と言った側から米国はTPPを脱退、日米貿易摩擦の再燃の恐れまで出てくる始末である。
 しかし、安倍内閣の抱える数々の失政は、こうしたことにとどまらないほど深刻であることを、更に指摘せざるを得ない。特に問題なのは、わが国の先達が築き上げてきた、誇るべき議会制民主主義の根幹を破壊したことである。国権の最高機関たる立法府に対して虚偽の説明を行うため、行政府が公文書の改ざん、隠ぺい、破棄、口裏合わせまで行った上で虚偽答弁を延々と繰り返し、一年以上にわたる国会審議を全く無意味なものとした。まさに前代未聞の蛮行であり、断じて許されるものではない。
 然るに安倍内閣は、この事態の重大さを一顧だにせず、「丁寧な説明」という、空虚としか言いようのない言葉を繰り返すのみで、今もってなお事態の解決に真剣に取り組もうとしていない。安倍総理大臣は、「私や妻が関係したということになれば、首相も国会議員も辞める」とまで言い放った答弁で自らが追い込まれ、無理に無理を重ねた答弁は完全に破綻している。麻生財務大臣に至っては、暴言、放言の限りを尽くし、反省の色の欠片も見せず、まともな謝罪すらない。こうした不遜極まりない内閣が続く限り、わが国の民主主義は完全に破壊され、取り返しのつかない事態を招くことにもはや疑いの余地はない。安倍内閣の一刻も早い退陣が、わが国の議会制民主主義を守る唯一の手段であると断ぜざるを得ない。
 更に、国民の財産である国有地が不当に安く払い下げられた森友問題については、財務省による決裁文書の改ざん、隠ぺい、破棄、更には口裏合わせという、あり得ない事態を招いたそもそもの原因に、安倍総理大臣や総理夫人の存在があることは既に明らかである。そしてこうした疑惑について国民に対して真摯な説明をしようとしないことが、決定的な政治不信を招き、未だに国民の多数が批判の目を向けている。同様に加計問題も、岩盤規制に穴を開けると言いながら、その穴を通れるのは総理の友人のみで、官邸はじめ政府を挙げて加計学園を優遇した事実は隠しようもない。安倍内閣がこうした問題を放置し、未だに真摯な説明を拒むのであれば、これ以上政権の座にとどまることは許されない。
 これ以外にも、自衛隊の日報隠ぺい問題や、現職自衛官による暴言などに見られるシビリアンコントロールの欠如、内閣府副大臣の国会での不適切発言や、財務省事務次官、厚生労働省局長らのセクハラ問題、自民党議員の要請による文部科学省の公立中学校への授業内容への介入問題、外務大臣による度重なる国会軽視発言など、安倍政権をめぐる不祥事、疑惑は枚挙にいとまがなく、国民の政治不信は極まっている。また、憲法をめぐる安倍総理の数々の発言や行動を見れば、わが国の基本理念である立憲主義を全く理解していないことも明らかで、もはやこの内閣にこれ以上国政を担わせることは、国益を決定的に害し、危険ですらある。よって安倍内閣の一刻も早い退陣を強く求めるものである。
 以上が、本決議案を提出した理由である。

衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.