国外犯罪被害者の遺族に対する弔慰金の支給に関する法律案要綱
第一 趣旨(第一条関係)
この法律は、国外犯罪行為により不慮の死を遂げた日本国民の遺族に対する弔慰金の支給について必要な事項を定めるものとすること。
第二 定義(第二条関係)
一 この法律において「国外犯罪行為」とは、日本国外において行われた人の生命又は身体を害する行為のうち、当該行為が日本国内において行われたとした場合において、その行為が日本国の法令によれば罪に当たるもの(刑法の緊急避難、心神喪失又は責任年齢の規定により罰せられない行為を含むものとし、正当行為又は正当防衛の規定により罰せられない行為及び過失による行為を除く。)をいうこと。
二 この法律において「国外犯罪被害」とは、国外犯罪行為による死亡をいうこと。
三 この法律において「国外犯罪被害者」とは、国外犯罪被害を受けた者であって、当該国外犯罪被害の原因となった国外犯罪行為が行われた時において日本国籍を有する者(日本国外に生活の本拠を有し、かつ、その地に永住すると認められる者を除く。)をいうこと。
第三 弔慰金
一 弔慰金の支給(第三条関係)
国は、国外犯罪被害者の第一順位遺族(日本国籍を有せず、かつ、日本国内に住所を有しない者を除く。)に対し、弔慰金を支給すること。
二 弔慰金の額(第七条関係)
弔慰金の額は、国外犯罪被害者一人当たり百万円とし、弔慰金の支給を受けるべき遺族が二人以上あるときは、百万円をその人数で除して得た額とすること。
三 弔慰金を支給しないことができる場合(第五条関係)
次に掲げる場合には、弔慰金を支給しないことができること。
1 国外犯罪被害者と加害者との間に親族関係(事実上の婚姻関係を含む。)があるとき。
2 国外犯罪被害者が、国外犯罪行為が行われた時において、正当な理由がなくて、治安の状況に照らして生命又は身体に対する高度の危険が予測される地域に所在していたとき。
3 国外犯罪被害者が国外犯罪行為を誘発したときその他当該国外犯罪被害につき国外犯罪被害者にもその責めに帰すべき行為があったとき。
4 1から3までの場合のほか、国外犯罪被害者又はその遺族と加害者との関係その他の事情から判断して、弔慰金を支給することが社会通念上適切でないと認められるとき。
四 支給の制限(第六条関係)
弔慰金は、国外犯罪被害者が業務に従事していたことにより支給される給付金その他これに準ずる給付金で国家公安委員会が定めるものが支給される場合には、支給しないこと。
第四 遺族の範囲及び順位(第四条関係)
一 弔慰金の支給を受けることができる遺族は、国外犯罪被害者の死亡の時において、次のいずれかに該当する者とすること。
1 国外犯罪被害者の配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)
2 国外犯罪被害者の収入によって生計を維持していた国外犯罪被害者の子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹
3 2に該当しない国外犯罪被害者の子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹
二 弔慰金の支給を受けるべき遺族の順位は、一の1から3までの順序とし、2及び3に掲げる者のうちにあっては、それぞれに掲げる順序とし、父母については、養父母を先にし、実父母を後にすること。
第五 裁定の申請(第八条関係)
一 弔慰金の支給を受けようとする者は、次の区分に応じそれぞれ次に定める都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)に申請し、その裁定を受けなければならないこと。
1 申請時に日本国内に住所を有する場合 その者の住所地を管轄する公安委員会
2 申請時に日本国内に住所を有しない場合 次の区分に応じそれぞれ次に定める公安委員会
イ 住民基本台帳に記録されたことがある場合 その者が日本国外へ住所を移す直前に住民票に記載されていた住所の所在地を管轄する公安委員会
ロ 住民基本台帳に記録されたことがない場合 その者の本籍地を管轄する公安委員会
二 一の2の場合における申請は、当該申請を行う者の住所を管轄する領事官その他最寄りの領事官(領事官の職務を行う大使館若しくは公使館の長又はその事務を代理する者を含み、領事官を経由して申請を行うことが著しく困難である地域にあっては、国家公安委員会規則・外務省令で定める者とする。第六において「領事官」という。)を経由して行うことができること。
第六 公安委員会等による援助(第九条関係)
弔慰金の支給を受けようとする者は、日本国内においては関係する公安委員会に、日本国外においては領事官に対し、申請に関し必要な援助を求めることができること。
第七 裁定等(第十条関係)
申請があった場合には、公安委員会は、速やかに、弔慰金を支給し、又は支給しない旨の裁定を行わなければならず、弔慰金を支給する旨の裁定があったときは、当該申請をした者は、弔慰金の支給を受ける権利を取得すること。
第八 国家公安委員会への情報提供等(第十一条関係)
外務大臣は、国外犯罪被害(国外犯罪被害に該当すると思料される死亡を含む。)又は国外犯罪被害者(国外犯罪被害者に該当すると思料される者を含む。)に関する情報であって裁定に資するものを取得したときは、これを国家公安委員会にできる限り速やかに提供するものとし、国家公安委員会は、その提供された情報を、関係する公安委員会に速やかに提供するものとすること。
第九 裁定のための調査等(第十二条関係)
一 公安委員会は、裁定を行うため必要があると認めるときは、申請者その他の関係人に対して、報告をさせ、文書その他の物件を提出させ、又は出頭を命じ、及び外務省その他の公務所又は公私の団体に対し、必要な事項の報告その他の協力を求めることができること。
二 申請者が、正当な理由がなくて、一による報告をせず、文書その他の物件を提出せず、又は出頭しないときは、公安委員会は、その申請を却下することができること。
第十 権利の保護等(第十六条及び第十七条関係)
一 弔慰金の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができないこと。
二 租税その他の公課は、弔慰金として支給を受けた金銭を標準として、課することができないこと。
第十一 その他
一 施行期日(附則第一条関係)
この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。
二 経過措置(附則第二条関係)
この法律の規定は、施行の日以後に行われた国外犯罪行為による死亡について適用すること。
三 検討(附則第三条関係)
政府は、この法律の施行の状況等を勘案し、国外犯罪行為により重度の障害が残った者に対する給付の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。
四 その他
その他所要の規定を整備すること。