国家公務員法等の一部を改正する法律案要綱
第一 国家公務員法の一部改正
一 一般職及び特別職
1 特別職たる機関の長の秘書官及び宮内庁の職員のうち特別職とするもの並びに防衛省の職員のうち一般職とするものを政令で指定するものとすること。
2 ある職が、国家公務員の職に属するかどうか及び第二条に規定する一般職に属するか特別職に属するかを決定する権限を内閣総理大臣が有するものとすること。 (第二条関係)
二 人事行政の原則
1 職員に関する人事行政は、国民全体の奉仕者としての職員の職務遂行が確保されるよう、公正に行われなければならないものとすること。
2 職員の採用後の任用、給与その他の人事管理は、職員の採用年次、合格した採用試験の種類及び幹部候補育成課程の育成の対象であるか否か又はあつたか否かにとらわれてはならず、この法律に特段の定めがある場合を除くほか、人事評価(任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とするために、職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価をいう。)に基づいて適切に行われなければならないものとすること。 (第四条関係)
三 労働関係に関する制度
勤務条件に関する団体交渉及び団体協約その他の職員の労働関係に関する制度は、法律によつてこれを定めるものとすること。 (第六条関係)
四 任免の根本基準
任免の根本基準の実施につき必要な事項は、政令で定めるものとすること。 (第七条関係)
五 欠員補充の方法
欠員補充の方法について、政令で定めるものとすること。 (第十条関係)
六 採用の方法
職員の採用について、医師その他の法令に基づく資格を有する者をもつて充てるべき官職又は職務の内容若しくは職務に必要な能力及び適性が専門的である官職であつて、競争試験による採用の必要がないもの又は競争試験による採用が不適当であるものとして政令で定める官職に採用しようとする場合その他の場合には選考の方法によることを妨げないものとすること。 (第十一条関係)
七 採用試験の実施
採用試験は、第二章第二節第二款の定めるところにより、試験機関(公務員庁又は採用試験を実施する行政機関として政令で定めるものをいう。以下同じ。)が、公正に実施するものとすること。
(第十五条及び第十六条関係)
八 受験の資格要件
採用試験の受験者の資格要件について、政令で定めるものとすること。 (第十八条関係)
九 採用試験の内容
1 採用試験は、受験者が、当該採用試験に係る官職の属する職制上の段階の標準的な官職に係る標準職務遂行能力及び当該採用試験に係る官職についての適性を有するかどうかを客観的かつ多角的に判定できるものでなければならないものとすること。
2 採用試験に係る官職、当該官職の区分に応じた採用試験の種類その他採用試験の実施に関し必要な事項は、政令で定めるものとすること。
3 試験機関は、政令で定めるところにより、合格者を決定する方法を定め、採用試験の公正な実施に支障を及ぼすおそれがある事項を除き、あらかじめ、公表するものとすること。 (第十九条関係)
十 採用試験の告知
1 採用試験の告知につき、内閣総理大臣が必要と認める注意事項等を記載するものとすること。
2 採用試験の告知に係る公告につき、政令で定めるものとすること。
3 内閣総理大臣は、受験の資格を有すると認められる者が受験するように、常に努めなければならないものとすること。
4 内閣総理大臣は、公告された採用試験又は実施中の採用試験を取り消し、又は変更することができるものとすること。 (第二十二条関係)
十一 合格の取消し等
試験機関は、不正の手段によつて採用試験を受け、若しくは受けようとした者又はこの法律若しくはこの法律に基づく政令に違反した者に対しては、当該採用試験を受けることを禁止し、又は合格の決定を取り消すことができるものとすること。 (第二十三条関係)
十二 試験に関する報告要求等
1 内閣総理大臣は、七の政令で定める行政機関に対し、政令で定めるところにより、採用試験の実施状況について報告を求めることができるものとすること。
2 内閣総理大臣は、1の行政機関が法令に違反して採用試験を行つた場合には、その是正のため必要な指示を行うことができるものとすること。 (第二十四条関係)
十三 名簿の作成
試験機関は、政令で定めるところにより、採用候補者名簿を作成するものとすること。
(第二十五条関係)
十四 名簿の失効
採用候補者名簿が、内閣総理大臣の定める事由等に該当するときは、内閣総理大臣は、これを失効させることができるものとすること。 (第二十八条関係)
十五 選考の実施
1 選考は、政令で定めるところにより、任命権者が公正に実施するものとすること。
2 選考は、選考をされる者が、当該選考に係る官職の属する職制上の段階の標準的な官職に係る標準職務遂行能力及び当該選考に係る官職についての適性を有するかどうかを客観的かつ多角的に判定できるものでなければならないものとすること。 (第二十九条関係)
十六 選考の告知
任命権者は、選考を行おうとする場合には、政令で定めるところにより、当該選考の告知を公告により行わなければならないものとすること。ただし、職員が任命権者の要請に応じ特別職国家公務員等となるため退職し、引き続き特別職国家公務員等として在職した後、引き続いて当該退職を前提として当該職員であつた者を採用しようとする場合(一の特別職国家公務員等として在職した後、引き続き一以上の特別職国家公務員等として在職し、引き続いて当該退職を前提として採用しようとする場合を含む。)に選考を行おうとする場合、当該官職が極めて高度の知識又は特殊な経験を必要とするものであることにより、当該選考の告知を行うことが適当でないと認められる場合その他これらに類する場合として政令で定める場合にあつては、この限りでないものとすること。 (第三十条関係)
十七 選考の受託
公務員庁は、任命権者の委託により、十五及び十六の事務の一部を行うことができるものとすること。
(第三十一条関係)
十八 採用試験による採用
第三十四条第一項の規定にかかわらず、任命権者は、採用候補者名簿に記載されている者の中から採用することができない場合その他これに準ずる場合として政令で定める場合には、当該官職と職務の内容が類似し、かつ、その職務の複雑及び責任の度が同等以上の官職に係る採用候補者名簿に記載されている者の中から、面接を行い、その結果を考慮して、当該官職への採用を行うことができるものとすること。 (第三十四条関係)
十九 昇任、降任及び転任
任命権者は、第三十六条第一項及び第二項の規定にかかわらず、現に任命されている官職と異なる官職に係る採用試験に合格した職員について、当該採用試験に係る官職への昇任、降任又は転任を行うことができるものとすること。 (第三十六条関係)
二十 条件付採用
条件付採用の例外とする場合を定めるほか、条件付採用に関し必要な事項等について、政令で定めるものとすること。 (第三十七条関係)
二十一 臨時的任用
臨時的任用に関し必要な事項等について、政令で定めるものとすること。 (第三十八条関係)
二十二 選考による採用に関する報告要求等
1 人事公正委員会は、任命権者に対し、人事公正委員会規則で定めるところにより、選考による職員の採用の実施状況について報告を求めることができるものとすること。
2 人事公正委員会は、任命権者が法令に違反して選考による職員の採用を行つた場合には、その是正のため必要な指示を行うことができるものとすること。
3 人事公正委員会が2による指示を行つた場合には、その旨を内閣総理大臣に通知しなければならないものとすること。 (第三十九条関係)
二十三 休職、復職、退職及び免職
職員の休職、復職、退職及び免職について、この法律及びこの法律に基づく政令に従い、これを行うものとすること。 (第四十条関係)
二十四 派遣の場合
1 任命権者は、別に法律で定める場合のほか、次に掲げる場合には職員を派遣することができるものとすること。
イ 当該職員が、学術に関する調査、研究又は指導であつて、当該職員の職務に関係があると認められるものに、学校、研究所、病院その他内閣総理大臣の指定する公共的施設(ロにおいて「指定研究所等」という。)において従事する場合(ロに掲げる場合を除く。)
ロ 当該職員が、国及び行政執行法人以外の者が国(当該職員が行政執行法人の職員である場合にあつては、当該行政執行法人。以下ロにおいて同じ。)と共同して又は国の委託を受けて行う科学技術(人文科学のみに係るものを除く。)に関する試験又は研究(以下ロにおいて「共同研究等」という。)であつて、当該職員の職務に関係があると認められるものに、指定研究所等又は内閣総理大臣が当該共同研究等に関し指定する施設において従事する場合
ハ イ及びロに掲げるもののほか、これらに類するものとして政令で定める場合
2 任命権者は、1により職員の派遣を行おうとするときは、派遣先の要請に基づいて、かつ、当該職員の同意を得て、これを行わなければならないものとすること。 (第五十一条関係)
二十五 派遣の期間及び効果
派遣の期間及び派遣期間の満了等による職務への復帰、職員として身分保有、職務に従事しないこと、派遣期間中第五十五条第一項に規定する給与に関する法律で別段の定めをしない限り何らの給与を受けてはならないことなど派遣の効果について定めるものとすること。 (第五十二条関係)
二十六 給与の根本基準
職員の給与は、生計費、民間における賃金その他の事情を考慮して定められなければならないものとすること。 (第五十三条関係)
二十七 給与に関する制度についての調査研究等
内閣総理大臣は、職員の給与に関する制度について、随時、調査研究を行い、その結果を公表するものとすること。 (第五十七条関係)
二十八 給与の支払の監理
1 内閣総理大臣は、職員に対する給与の支払を監理するものとすること。
2 職員に対する給与の支払は、この法律及び給与に関する法律に反して行つてはならないものとすること。 (第五十八条関係)
二十九 給与簿
給与簿は、いつでも内閣総理大臣が指定する職員が検査し得るようにしておかなければならないものとし、給与簿に関し必要な事項は政令で定めるものとすること。 (第五十九条関係)
三十 給与簿の検査と違法の支払に対する措置
給与簿の検査及び違法な給与の支払に対する必要な措置は内閣総理大臣が行うものとすること。
(第六十条及び第六十一条関係)
三十一 能率の根本基準
1 職員の保健及び安全保持並びに厚生に関する事項その他能率の根本基準の実施につき必要な事項は、この法律及び他の法律に定めるものを除いては、政令で定めるものとすること。
2 1の政令で定める職員の保健及び安全保持並びに厚生に関する事項は、労働安全衛生法、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律その他の法令に定める民間事業の従事者の安全衛生及び福祉に関する事項との均衡を考慮して定められるものとすること。
(第六十八条関係)
三十二 分限、懲戒及び保障の根本基準
分限、懲戒及び保障の根本基準の実施につき必要な事項は、政令(勤務条件に関する行政措置の要求及び職員の意に反する不利益な処分の審査に関する事項については、人事公正委員会規則)で定めるものとすること。 (第七十一条関係)
三十三 身分保障
職員は、第七十五条各号に掲げる場合との権衡を考慮して政令で定める事由に該当するときは、降給されるものとすること。 (第七十二条関係)
三十四 離職
職員の離職に関し必要な事項は、政令で定めるものとすること。 (第七十四条関係)
三十五 本人の意に反する降任及び免職の場合
職員が、第七十五条各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、政令で定めるところにより、その意に反して、これを降任し、又は免職することができるものとすること。 (第七十五条関係)
三十六 本人の意に反する休職の場合
水難、火災その他の災害により、生死不明又は所在不明となつた場合及び第七十七条第一号から第三号までの規定により休職とされた職員が復職した場合その他これらに類するものとして政令で定める場合において定員に欠員がないときは、職員をその意に反して休職することができるものとすること。
(第七十七条関係)
三十七 休職の期間及び効果
第七十七条第一号及び第三号に掲げる場合における休職は三年を超えない範囲内で政令で定める期間又は休職の事由が消滅するまでの期間のいずれか短い期間とする等の休職の期間並びに休職の期間が終了したときは休職とされた職員が離職する場合を除き速やかに復職を命じなければならないこと等の休職の効果について定めるものとすること。 (第七十八条関係)
三十八 適用除外
臨時的職員及び条件付採用期間中の職員の分限について、臨時的任用又は条件付採用の性質をそれぞれ考慮して政令で必要な事項を定めるものとすること。 (第七十九条関係)
三十九 定年による退職
年齢六十年と異なる定年の職員について、政令で定めるものとすること。 (第八十条関係)
四十 定年による退職の特例
定年による退職の特例に係る期限の延長について、内閣総理大臣の承認を得るものとすること。
(第八十一条関係)
四十一 定年退職者等の再任用
1 常時勤務を要する官職に係る再任用の対象者について、政令で定めるものとすること。
2 再任用の任期の更新について、政令の定めるところによるものとすること。 (第八十二条関係)
四十二 懲戒の場合
1 内閣総理大臣は、懲戒処分に関し、その適切な実施を図るために必要な指針を定めるものとすること。
2 内閣総理大臣は、1の指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならないものとすること。 (第八十五条関係)
四十三 懲戒の効果
1 停職の期間は、一年以内とするものとすること。
2 減給は、一年以内の期間、俸給の月額の五分の一に相当する額以下の額を給与の額から減ずるものとすること。 (第八十六条関係)
四十四 懲戒権者
人事公正委員会は、職員が国家公務員倫理法又はこれに基づく命令(同法第五条第三項の規定に基づく訓令及び同条第四項の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合に限り、この法律に規定された調査を経て当該職員を懲戒手続に付することができるものとすること。 (第八十七条関係)
四十五 国家公務員倫理審査会への権限の委任
人事公正委員会は、四十四による権限を国家公務員倫理審査会に委任するものとすること。
(第八十八条関係)
四十六 刑事裁判との関係
懲戒に付せられるべき事件が、刑事裁判所に係属する間においても、人事公正委員会又は人事公正委員会の承認を経て任命権者は、同一事件について、適宜に、懲戒手続を進めることができるものとすること。 (第八十九条関係)
四十七 措置要求
勤務条件に関する行政措置の要求があつたときは、人事公正委員会が事案の審査、判定等を行うものとすること。 (第九十条から第九十二条まで関係)
四十八 職員の意に反する不利益な処分に関する審査
不利益処分に関し審査請求があつたときは、人事公正委員会が事案の調査を行い、処分の承認、修正、取消し等を行うものとすること。 (第九十四条から第九十八条まで関係)
四十九 服務の根本基準
服務の根本基準の実施につき必要な事項は、政令(政治的行為の制限及び営利企業に関する制限に関する事項については、人事公正委員会規則)で定めるものとすること。 (第百一条関係)
五十 団結権の制限
警察職員及び海上保安庁又は刑事施設において勤務する職員は、職員の勤務条件の維持改善を図ることを目的とし、かつ、当局と交渉する団体を結成し、又はこれに加入してはならないものとすること。
(第百三条関係)
五十一 秘密を守る義務
秘密を守る義務に関する第百五条第一項から第三項までの規定は、人事公正委員会で扱われる調査又は審理の際人事公正委員会から求められる情報に関しては、これを適用しないものとすること。
(第百五条関係)
五十二 政治的行為の制限
政治的行為の制限について、人事公正委員会規則で定めるものとすること。 (第百七条関係)
五十三 営利企業に関する制限
1 第百八条第一項の営利企業の役員等との兼業等の制限の規定は、人事公正委員会規則で定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事公正委員会の承認を得た場合には、これを適用しないものとすること。
2 営利企業の経営に参加し得る地位にある職員の企業に対する関係の存続が職員の職務遂行上適当でないと認めるときに当該職員への通知は人事公正委員会が行い、通知内容についての審査請求は人事公正委員会に行うものとすること。
3 人事公正委員会が審査請求について調査をした結果、通知の内容が正当であると決定された職員等は、人事公正委員会規則で定めるところにより、人事公正委員会規則で定める期間内に、その企業に対する関係の全部若しくは一部を絶つか、又はその官職を退かなければならないものとすること。
(第百八条関係)
五十四 他の事業又は事務の関与制限
他の事業又は事務の関与制限に関し、職員が二十四の1により派遣される場合にあつては、当該職員の所轄庁の長の申出による内閣総理大臣の承認を要するものとすること。 (第百九条関係)
五十五 退職年金制度に関する意見の申出
内閣総理大臣は、年金制度に関し調査研究を行い、必要な意見を関係大臣に申し出ることができるものとすること。 (第百四十三条関係)
五十六 団結権を制限される職員の勤務条件
五十の職員の勤務条件は、当該職員の職務の特殊性及び他の職員の勤務条件との均衡を考慮して定めるものとすること。 (第百四十四条関係)
五十七 各省各庁の長等が定める勤務条件
各省各庁の長(内閣総理大臣、各省大臣及び会計検査院長並びに宮内庁長官、各外局の長及び警察庁長官をいう。)又はその委任を受けた部内の国家公務員は、法律又はこれに基づく命令の規定に反しない限りにおいて、その所属の職員の勤務条件を定めることができるものとすること。
(第百四十五条関係)
五十八 人事公正委員会の設置
内閣府設置法第四十九条第三項の規定に基づいて、内閣総理大臣の所轄の下に、人事公正委員会(以下五十九から七十六までにおいて「委員会」という。)を置くものとすること。 (第百四十六条関係)
五十九 任務
委員会は、公務の公正性を確保し、かつ、職員の利益を保護するため、職員に関する人事行政の公正の確保を図ることを任務とするものとすること。 (第百四十七条関係)
六十 所掌事務
委員会は、五十九の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどるものとすること。
イ 職員の勤務条件に関する行政措置の要求及び不利益な処分についての審査請求その他の職員の苦情を処理すること(他の行政機関の所掌に属するものを除く。)。
ロ 第百七条の規定による職員の政治的行為の制限及び第百八条の規定による営利企業に関する制限に関する事務
ハ 国と民間企業との間の人事交流に関する法律第四条第一項の規定により交流基準を制定すること。
ニ 国家公務員倫理法第十一条の規定により国家公務員倫理審査会の所掌事務とされた事項に関する事務
ホ 七十四により関係大臣その他の機関の長に対し人事行政の改善に関する勧告を行うこと。
ヘ イからホまでに掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき委員会に属させられた事務 (第百四十八条関係)
六十一 職権の行使
委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行うものとすること。 (第百四十九条関係)
六十二 組織
1 委員会は、委員長及び委員二人をもつて組織するものとすること。
2 委員は、非常勤とするものとすること。 (第百五十条関係)
六十三 委員長及び委員の任命
1 委員長及び委員は、人格が高潔であり、人事行政に関し識見を有する年齢三十五年以上の者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命するものとすること。
2 委員長又は委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、1にかかわらず、1に定める資格を有する者のうちから、委員長又は委員を任命することができるものとすること。
3 2の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事後の承認を得なければならないものとすること。この場合において、両議院の事後の承認を得られないときは、内閣総理大臣は、直ちにその委員長又は委員を罷免しなければならないものとすること。
4 委員長の任免は、天皇が、これを認証するものとすること。
5 任命の日以前五年間において、政党の役員、政治的顧問その他これらと同様な政治的影響力をもつ政党員であつた者又は任命の日以前五年間において、公選による国若しくは都道府県の公職の候補者となつた者は、委員長又は委員となることができないものとすること。
6 委員長及び委員の任命については、そのうち二人以上が同一の政党に属することとなつてはならないものとすること。 (第百五十一条関係)
六十四 任期
1 委員長及び委員の任期は、四年とするものとすること。ただし、補欠の委員長又は委員の任期は、前任者の残任期間とするものとすること。
2 委員長及び委員は、再任されることができるものとすること。ただし、引き続き十二年を超えて委員長及び委員に在任することはできないものとすること。
3 委員長及び委員の任期が満了したときは、当該委員長及び委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとすること。 (第百五十二条関係)
六十五 身分保障
委員長及び委員は、次のいずれかに該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがないものとすること。
イ 破産手続開始の決定を受けたとき。
ロ 禁錮以上の刑に処せられたとき又は第五章に規定する罪を犯し刑に処せられたとき。
ハ 第十二条第四号に掲げる者に該当することとなつたとき。
ニ 委員会により、心身の故障のため職務の執行ができないと認められたとき又は職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない非行があると認められたとき。 (第百五十三条関係)
六十六 罷免
1 内閣総理大臣は、委員長又は委員が六十五のイからニまでのいずれかに該当するときは、その委員長又は委員を罷免しなければならないものとすること。
2 内閣総理大臣は、委員長及び委員のうち二人以上が同一の政党に属することとなつたときは、六十五にかかわらず、これらの者のうち一人以外のものについては、両議院の同意を得て、罷免するものとすること。
3 2は、政党所属関係に異動のなかつた委員長又は委員の地位に影響を及ぼすものではないものとすること。 (第百五十四条及び第百五十五条関係)
六十七 服務
1 第百五条第一項及び第百七条の規定は、委員長及び委員に準用するものとすること。
2 第百八条第一項及び第二項並びに第百九条の規定は、委員長に準用するものとすること。
3 委員長は、他の官職を兼ねてはならないものとすること。 (第百五十六条関係)
六十八 給与
委員長及び委員の給与は、別に法律で定めるものとすること。 (第百五十七条関係)
六十九 委員長
1 委員長は、会務を総理し、委員会を代表するものとすること。
2 委員会は、あらかじめ委員のうちから、委員長が故障のある場合に委員長を代理する者を定めておかなければならないものとすること。 (第百五十八条関係)
七十 会議
1 委員会は、委員長及び一人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができないものとすること。
2 委員会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによるものとすること。
3 委員会が六十五のニによる認定をするには、1及び2にかかわらず、本人以外の二人の者が出席し、両者の一致した議決がなければならないものとすること。
4 委員長に事故がある場合の1及び2の適用については、六十九の2の委員長の職務を代理する者は、委員長とみなすものとすること。 (第百五十九条関係)
七十一 規則の制定
委員会は、その所掌事務について、法律若しくは政令を実施するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、人事公正委員会規則を制定することができるものとすること。(第百六十条関係)
七十二 人事公正委員会の調査
1 委員会又はその指名する者は、委員会の所掌する事項に関し調査することができるものとすること。
2 第百三十七条第二項から第五項までの規定は、1による調査について準用するものとすること。
(第百六十一条関係)
七十三 調査に関する権限の委任
委員会は、七十二による権限のうち職員の職務に係る倫理の保持に関して行われるもの(第九十四条第一項に規定する審査請求に係るものを除く。)を国家公務員倫理審査会に委任するものとすること。
(第百六十二条関係)
七十四 人事行政改善勧告
1 委員会は、職員に関する人事行政の公正を確保するため必要があると認めるときは、人事行政の改善に関し、関係大臣その他の機関の長に勧告することができるものとすること。
2 1の場合においては、委員会は、その旨を内閣総理大臣に通知しなければならないものとすること。
(第百六十三条関係)
七十五 法令の制定改廃に関する意見の申出
1 内閣総理大臣は、この法律に基づく政令(職員の任免、分限及び懲戒に関するものに限る。)の制定又は改廃の立案に際しては、あらかじめ、委員会にその内容を通知するものとすること。
2 委員会は、職員に関する人事行政の公正を確保するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣に対し、1による通知に係る政令その他法令の制定又は改廃に関し意見を申し出ることができるものとすること。 (第百六十四条関係)
七十六 事務局
1 委員会の事務を処理させるため、委員会に事務局を置くものとすること。
2 事務局に、事務局長のほか、所要の職員を置くものとすること。
3 事務局長は、委員長の命を受けて、局務を掌理するものとすること。 (第百六十五条関係)
七十七 国家公務員倫理審査会
別に法律で定めるところにより人事公正委員会に置かれる審議会等は、国家公務員倫理審査会とし、国家公務員倫理法(これに基づく命令を含む。)の定めるところによるものとすること。
(第百六十六条関係)
七十八 内閣総理大臣の調査
1 内閣総理大臣は、この法律に定める人事行政に関する事項(第百三十七条第一項に規定する職員の退職管理に関する事項及び六十により人事公正委員会の所掌に属するものを除く。)に関し調査することができるものとすること。
2 内閣総理大臣は、1の調査に関し必要があるときは、証人を喚問し、又は調査すべき事項に関係があると認められる書類若しくはその写しの提出を求めることができるものとすること。
(第百六十七条関係)
七十九 職員の人事行政に関する業務の報告
内閣総理大臣及び人事公正委員会は、それぞれ、毎年、内閣を経て国会に対し、職員の人事行政に関する業務の状況を報告するとともに、公表しなければならないものとすること。(第百七十一条関係)
八十 人事管理官
人事管理官は、内閣総理大臣及び人事公正委員会との緊密な連絡並びにこれらに対する協力に努めなければならないものとすること。 (第百七十二条関係)
八十一 政令等への委任
1 この法律その他の法律及びこれらに基づく命令に定めるもののほか、職員の人事行政及び人事管理に関する文書の保存に関し必要な事項は、政令(人事公正委員会の所掌する事務に関する文書については、人事公正委員会規則)で定めるものとすること。
2 この法律に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、政令(人事公正委員会の所掌する事務に関する事項については、人事公正委員会規則)で定めるものとすること。
(第百七十三条関係)
八十二 一般職に属する職員に関し、その職務と責任の特殊性に基づいて、この法律の特例を要する場合においては、別に法律又は政令(人事公正委員会の所掌する事項については、人事公正委員会規則)をもつて、これを規定できることができるものとすること。 (附則第十三条関係)
八十三 労働組合法(第十九条から第十九条の十一まで、第二十条から第二十三条まで、第二十四条第二項、第二十六条第一項、第二十七条の二十四から第二十七条の二十六まで、第二十九条及び第三十条の規定を除く。)及びこれらの法律に基づいて発せられる命令は、第二条の一般職に属する職員には、これを適用しないものとすること。 (附則第十六条関係)
第二 内閣法の一部改正
公務員庁の設置に伴い、内閣官房及び内閣人事局のつかさどる事務について、所要の規定の整備を行うものとすること。
第三 労働組合法の一部改正
中央労働委員会が一般職の国家公務員に係る労働組合の認証、不当労働行為事件の審査、あっせん、調停及び仲裁等に関する事務を所掌することに伴い、中央労働委員会の委員等について必要な体制を整備するなど所要の規定の整備を行うものとすること。
第四 国家公務員の寒冷地手当に関する法律の一部改正
自律的労使関係制度を措置することに伴い、所要の規定の整備を行うものとすること。
第五 特別職の職員の給与に関する法律の一部改正
人事公正委員会委員長等の俸給月額について定めるものとすること。 (第三条及び別表第一関係)
第六 一般職の職員の給与に関する法律の一部改正
一 給与の支払
1 一般職の職員の給与に関する法律に基づく給与は、現金で、直接職員に、その全額を支払わなければならないものとすること。
2 法律に別段の定めがある場合又は確実な支払の方法であつて政令で定めるものによる場合においては現金以外のもので支払い、法律に別段の定めがある場合には給与の一部を控除して支払うことができるものとすること。 (第三条関係)
二 指定職俸給表の号俸の額及び俸給の特別調整額
1 指定職俸給表の適用を受ける職員の号俸及び管理又は監督の地位にある職員の俸給月額の特別調整額表は政令で定めることとし、会計検査院の職員の占める官職に係るものにあつては、会計検査院の意見を聴いて、政令で定めるものとすること。
2 会計検査院は、会計検査院の職員に関する1の政令の制定又は改廃について意見があるときは、内閣に申し出ることができるものとすること。 (第六条の二及び第十条の二関係)
三 級別定数の設定及び改定
1 会計検査院の職員に係る職務の級の定数の設定又は改定については、会計検査院の意見を聴いて、行うものとすること。
2 会計検査院は、会計検査院の職員の職務の級の定数の設定又は改定に関し意見があるときは、内閣総理大臣に申し出ることができるものとすること。 (第八条関係)
四 一般職の職員の給与に関する法律の規定による給与の決定に関して苦情のある職員の審査の申立ては、人事公正委員会に対して行うものとすること。 (第二十一条関係)
五 職員が第一の二十四の1により派遣されたときは、その派遣の期間中、これに俸給、扶養手当、地域手当、広域異動手当、研究員調整手当、住居手当及び期末手当のそれぞれ百分の七十以内を支給することができるものとすること。 (第二十三条関係)
六 自律的労使関係制度を措置することに伴い、法律の委任に基づき人事院規則で定めることとしている事項を政令で定めることとする等、所要の規定の整備を行うものとすること。
第七 国家公務員災害補償法の一部改正
一 自律的労使関係制度を措置することに伴い、法律の委任に基づき人事院規則で定めることとしている事項を政令で定めることとする等、所要の規定の整備を行うものとすること。
二 補償及び福祉事業の実施に必要な総合調整等は、内閣総理大臣が行うこととし、補償の実施について不服がある者の審査の申立ては、人事公正委員会に対して行うものとすること。
第八 裁判所職員臨時措置法の一部改正
裁判所職員について、国家公務員法、国家公務員の労働関係に関する法律等の規定の一部を準用すること等、所要の規定の整備を行うものとすること。
第九 国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律の一部改正
一 派遣職員の給与は、派遣職員から当該職員の指定する者に支払うよう申出があった場合には、第六の一の1にかかわらず、当該指定する者に支払うことができるものとすること。 (第五条関係)
二 自律的労使関係制度を措置することに伴い、法律の委任に基づき人事院規則で定めることとしている事項を政令で定めることとする等、所要の規定の整備を行うものとすること。
第十 職員団体等に対する法人格の付与に関する法律の一部改正
自律的労使関係制度を措置することに伴い、定義、職員団体等の法人格の取得及び認証機関等について、所要の規定の整備を行うものとすること。
第十一 一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律の一部改正
一 休憩時間の置き方及び第七条第一項に規定する交替制等勤務職員の能率の維持等を図るため必要な勤務時間中における一時的な作業を休止させるべき時間について、所要の規定の整備を行うものとすること。 (第九条関係)
二 内閣総理大臣は、各省各庁の長が第十三条第二項の規定により正規の勤務時間以外の時間における勤務を命ずるに当たって留意すべき事項その他当該勤務を縮減するために必要な事項についての指針を定め、これを公表するものとすること。 (第十三条関係)
三 自律的労使関係制度を措置することに伴い、法律の委任に基づき人事院規則で定めることとしている事項を政令で定めることとする等、所要の規定の整備を行うものとすること。
第十二 一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律の一部改正
科学技術(人文科学のみに係るものを除く。)に関する専門的な知識又は技術を有する者を、選考により、任期を定めて職員として採用することができる場合について、所要の規定の整備を行うものとすること。 (第三条から第五条まで関係)
第十三 内閣府設置法の一部改正
一 公務員庁及び人事公正委員会の設置に伴い、内閣府の所掌事務等について所要の規定の整備を行うものとすること。
二 内閣府設置法第四条第一項第三十一号に掲げる事務、同条第二項に規定する事務(公務員庁設置法第四条第三項の規定により公務員庁の所掌に属するものに限る。)及び第四条第三項第六十二号に掲げる事務については、特命担当大臣を置き、当該事務を掌理させるものとする。 (第十一条の四関係)
第十四 国家公務員倫理法の一部改正
一 人事公正委員会に国家公務員倫理審査会(二において「審査会」という。)を設置することに伴い、所要の規定の整備を行うものとすること。
二 懲戒処分の指針の策定又は変更に関する意見の申出
1 内閣総理大臣は、この法律又はこの法律に基づく命令に違反した場合に係る国家公務員法第八十五条第三項の指針(2において単に「指針」という。)の策定又は変更に際しては、あらかじめ、審査会にその内容を通知するものとすること。
2 審査会は、職員の職務に係る倫理の保持を図るため必要があると認めるときは、内閣総理大臣に対し、指針の策定又は変更に関し意見を申し出ることができるものとすること。(第二十一条の二関係)
第十五 国と民間企業との間の人事交流に関する法律の一部改正
一 自律的労使関係制度を措置することに伴い、二を除き、法律の委任に基づき人事院規則で定めることとしている事項を政令で定めることとする等、所要の規定の整備を行うものとすること。
二 交流基準の制定、人事交流の実施に関する計画の認定等は、人事公正委員会が行うものとすること。
第十六 一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律の一部改正
自律的労使関係制度を措置することに伴い、所要の規定の整備を行うものとすること。
第十七 国家公務員制度改革基本法の一部改正
内閣人事局、人事院その他の国の行政機関が国家公務員の人事行政に関して担っている機能について内閣府に移管するものとし、当該事務を行わせるために内閣府に公務員庁を置くものとすること。
第十八 附則
一 施行期日
この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。ただし、第十七は、公布の日から施行することとするほか、必要な施行期日を定めるものとすること。 (附則第一条関係)
二 関係法律の整備
この法律の施行に伴う関係法律の整備については、別に法律で定めるものとすること。
(附則第十二条関係)
三 一般職に属する職員の給与に関する検討
政府は、この法律及び国家公務員の労働関係に関する法律の施行の状況を勘案し、国家公務員法第二条に規定する一般職に属する職員の給与に関し、法律の委任に基づき政令で定める事項の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。 (附則第十三条関係)
四 幹部職員の任用等に関する検討
国は、速やかに、内閣人事局の設置後における国の行政機関の幹部職員の任用等に関する状況等を勘案し、国の行政機関の幹部職員の任用等に関する内閣総理大臣及び内閣官房長官の役割並びに内閣人事局の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。 (附則第十四条関係)
五 その他、この法律の施行に伴い必要となる経過措置等について定めるものとすること。