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   多文化共生社会基本法案要綱


第一 総則
 一 目的                                    (第一条関係)
   この法律は、我が国における近年の在留外国人の増加に伴い、その人権を尊重しつつ、在留外国人が日常生活、社会生活及び職業生活を国民と共に円滑に営むことができる環境の整備を図ることが重要な課題となっていることに鑑み、多文化共生社会の形成に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、多文化共生社会の形成に関する施策の基本となる事項を定めることにより、多文化共生社会の形成に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって文化の多様性の確保及び地域の活力の向上に寄与することを目的とすること。
 二 定義                                    (第二条関係)
  1 この法律において「在留外国人」とは、我が国に住所を有し適法に在留する外国人をいうこと。
  2 この法律において「多文化共生社会」とは、国民及び在留外国人の一人一人が、社会の対等な構成員として、国籍及び社会的文化的背景を認め合い、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する社会をいうこと。
 三 基本理念                                  (第三条関係)
  1 多文化共生社会の形成は、国民及び在留外国人の人権が尊重されることを前提としつつ、在留外国人を包摂できる社会の実現を図ることを旨として、行われなければならないこと。
  2 多文化共生社会の形成は、在留外国人の増加による社会経済情勢の変化に配慮しつつ、行われなければならないこと。
 四 責務等                            (第四条から第八条まで関係)
  1 国は、三の多文化共生社会の形成についての基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、多文化共生社会の形成に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有すること。
  2 地方公共団体は、基本理念にのっとり、多文化共生社会の形成に関し、国との連携を図りつつ、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有すること。
  3 事業者は、基本理念に配意してその事業活動を行うとともに、国又は地方公共団体が実施する多文化共生社会の形成に関する施策に協力するよう努めなければならないこと。
  4 国民は、地域、職域、学校その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、多文化共生社会の形成に寄与するよう努めなければならないこと。
  5 在留外国人は、日常生活、社会生活又は職業生活を国民と共に円滑に営むため、日本語を習得し、その居住する地域の文化及び慣習について理解を深めるとともに、子に教育を受けさせるよう努めなければならないこと。
 五 その他                           (第九条から第十一条まで関係)
   関係者相互の連携及び協働、法制上の措置等並びに年次報告等に関する規定を設けること。
第二 多文化共生基本計画等
 一 多文化共生基本計画                            (第十二条関係)
  1 政府は、多文化共生社会の形成に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、多文化共生基本計画を定めなければならないこと。
  2 多文化共生基本計画は、多文化共生社会の形成に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本的な事項その他必要な事項について定めるものとすること。
  3 多文化共生基本計画の策定の手続及び公表の義務並びに変更に関する規定を設けること。
 二 地域多文化共生計画                            (第十三条関係)
  1 都道府県及び市町村(特別区を含む。第四において同じ。)は、単独で又は共同して、多文化共生基本計画を勘案し、地域多文化共生計画を定めるよう努めなければならないこと。
  2 地域多文化共生計画の公表の努力義務に関する規定を設けること。
第三 基本的施策
 一 国の施策                         (第十四条から第十八条まで関係)
  1 国は、その事務又は事業を行うに当たり、国籍又は社会的文化的背景が異なることを理由として国民と不当な差別的取扱いをすることにより、在留外国人の権利利益を侵害してはならないこと。
  2 国は、在留外国人その他の関係者からの国籍又は社会的文化的背景が異なることを理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、国籍又は社会的文化的背景が異なることを理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図るものとすること。
  3 国は、多文化共生社会の形成に関する教育及び啓発、国民と在留外国人との交流の促進等により、多文化共生社会の形成について国民の関心と理解を深め、在留外国人の社会的文化的背景が尊重されることとなるよう必要な措置を講ずるものとすること。
  4 国は、在留外国人に対する日本語等の習得の機会の確保、情報の提供等により在留外国人が日常生活、社会生活又は職業生活を国民と共に円滑に営むことができるよう必要な措置を講ずるものとすること。
  5 国は、学齢期にある在留外国人に対する就学の機会その他の未成年の在留外国人に対する教育の機会が確保されるよう必要な措置を講ずるものとすること。
 二 地方公共団体の施策                            (第十九条関係)
   地方公共団体は、一の国の施策を勘案し、その地域の特性に応じた多文化共生社会の形成に関する施策の推進を図るよう努めなければならないこと。
第四 多文化共生社会の形成の推進に係る体制の整備         (第二十条及び第二十一条関係)
  政府の多文化共生推進会議並びに都道府県及び市町村の多文化共生審議会等に関する規定を設けること。
第五 施行期日等
 一 施行期日                                (附則第一条関係)
   この法律は、公布の日から施行すること。
 二 多文化共生社会の形成に関する施策を総合的に推進するための行政組織の在り方の検討
(附則第二条関係)
   政府は、多文化共生社会の形成に関する施策を総合的に推進するため、多文化共生庁の設置等行政組織の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
 三 外国人の在留資格及び難民の保護の在り方の検討              (附則第三条関係)
  1 政府は、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、更なる多文化共生社会の形成の推進を図る観点から、外国人の在留資格及び難民の保護の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
  2 1の検討を行うに当たっては、外国人の子の福祉に配慮しなければならないこと。

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