感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律案要綱
第一 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の一部改正
一 緊急時の医療提供体制の確保のための都道府県等と医療機関の協定の締結及び協定を締結した医療機関に対する支援
1 医療提供体制の確保のための協定の締結
(1) 都道府県及び保健所設置市等は、新型インフルエンザ等感染症のまん延を防止するため、医療機関との間において、当該感染症のまん延の状況に応じた当該感染症の患者を入院させるための病床の数その他の地域における当該感染症に係る医療を提供する体制の確保のために必要な事項を定めた協定を締結することができること。 (新第四十四条の二の二第一項関係)
(2) 都道府県及び保健所設置市等は、(1)の協定の締結に当たっては、医師、医療機関その他の医療関係者との協議の場を設け、これらの者に対し、当該協議の場における協議に参加するよう求めることができること。 (新第四十四条の二の二第二項関係)
2 協定を締結した医療機関に対する支援
(1) 都道府県又は保健所設置市等は、1(1)の協定を締結した医療機関に対し、政令で定めるところにより、当該協定の履行に先立って、その履行によって生ずる医療機関の支出の増加又は収入の減少の見込額に相当する額として政令で定めるところにより算定した額の協力金を支給するものとすること。 (新第四十四条の二の二第三項関係)
(2) (1)の協力金の支給を受けた医療機関が正当な理由なく1(1)の協定に定められた事項を履行しないときは、都道府県又は保健所設置市等は、政令で定めるところにより、(1)の協力金の額に相当する額の全部又は一部の返還を求めることができること。 (新第四十四条の二の二第四項関係)
(3) 国は、政令で定めるところにより、予算の範囲内で、(1)の協力金の支給に要する費用の全部又は一部を補助することができること。 (第五十八条及び第六十二条新第二項関係)
二 自宅療養者等に対する健康観察等に協力する医療機関への支援等
1 都道府県知事(保健所設置市等にあっては、保健所設置市等の長。2において同じ。)は、新型インフルエンザ等感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者又は当該感染症の患者に対して健康状態について報告を求めたときは、当該報告を求めた者について、当該報告を踏まえつつ、必要に応じて相談等を行うことにより、健康状態の観察を行うものとすること。この場合においては、これらの者の病状が急変した場合等において速やかに必要な医療を提供することができるよう、体制の確保に努めるものとすること。 (新第四十四条の三の二第一項関係)
2 都道府県知事は、1の健康状態の観察に関する事務を医療機関等と協力して行うことができること。この場合において、都道府県(保健所設置市等にあっては、保健所設置市等)は、当該医療機関等に対し、政令で定めるところにより、当該協力に係る事務の実施に要する費用その他の事情を勘案して政令で定める額の協力金を支給するものとすること。 (新第四十四条の三の二第二項関係)
3 国は、政令で定めるところにより、予算の範囲内で、2の協力金の支給に要する費用の全部又は一部を補助することができること。 (第五十八条及び第六十二条新第二項関係)
第二 新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部改正
一 政府対策本部長による情報提供の求め等
1 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等対策に関する総合調整を行うため必要があると認めるときは、都道府県知事等に対し、新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な情報の提供を求めることができること。 (第二十条新第三項関係)
2 都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策に関する総合調整を行うため必要があると認めるときは、関係市町村長等に対し、それぞれ当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な情報の提供を求めることができること。 (第二十四条新第七項関係)
二 医療機関に対する設備、人員配置の変更等の要請又は指示及び医療機関への支援
1 都道府県知事は、新型インフルエンザ等対策特別措置法第三十一条第一項の規定により医療機関の管理者に患者等に対する医療を行うことを要請する場合において必要があると認めるときは、当該管理者に対し、当該管理者の管理に係る医療機関の設備、人員等の配置を変更することその他患者等に対する医療を確実に行うために必要な措置を講ずるよう要請することができること。 (第三十一条新第六項関係)
2 都道府県知事は、新型インフルエンザ等対策特別措置法第三十一条第三項の規定により医療機関の管理者に患者等に対する医療を行うべきことを指示するときは、特に必要があると認めるときに限り、当該管理者に対し、1の措置を講ずべきことを指示することができること。 (第三十一条新第七項関係)
3 都道府県知事は、医療機関の管理者に1の要請をし、又は2の指示をするときは、当該管理者に対し適切な説明を行い、その理解を得るよう努めなければならないこと。 (第三十一条新第八項関係)
4 都道府県は、1の要請に応じ、又は2の指示に従った管理者の管理に係る医療機関に対し、当該要請に応じ、又は当該指示に従ったことによって生ずる医療機関の支出の増加又は収入の減少の見込額に相当する額として政令で定めるところにより算定した額の協力金を支給するものとすること。 (新第六十三条の二関係)
5 国は、4の協力金の支給を支援するために必要な財政上の措置等を講ずるものとすること。 (第七十条第二項関係)
三 他の都道府県知事に対する医療の提供の要請
1 都道府県知事は、当該都道府県の区域内において医療機関又は医療関係者が不足し、患者等に対する医療の提供に著しい支障が生ずると認める場合には、政府対策本部長に対し、当該区域内において医療の提供を受けることができず、又は受けることができないおそれのある患者等が必要な医療の提供を受けられるようにするために、他の都道府県知事に対し、当該他の都道府県の区域内の医療機関における医療の提供、医療関係者の派遣、オンライン診療の実施その他の当該患者等に対する医療の提供のために必要な措置をとるべきことを要請するよう求めることができること。 (新第三十一条の三の二第一項関係)
2 政府対策本部長は、1の求めを受けた場合において、各都道府県における新型インフルエンザ等の発生の状況、医療の提供の状況その他の状況に照らして1の措置をとることが適当と認められる都道府県があるときは、当該都道府県知事に対し、当該措置をとるべきことを要請することができること。 (新第三十一条の三の二第二項関係)
3 政府対策本部長は、2の要請をしようとするときは、あらかじめ、1の求めをした都道府県知事及び当該要請をしようとする都道府県知事の意見を聴かなければならないこと。 (新第三十一条の三の二第三項関係)
4 2及び3の場合において、政府対策本部長は、2の要請に係る権限を政府対策副本部長に委任することができること。 (新第三十一条の三の二第四項関係)
四 物資の確保等
国は、新型インフルエンザ等に係る検査の実施、診断、治療及び感染の防止に必要な医薬品、医療機器その他の物資について、国の内外における新型インフルエンザ等の患者の病状、数その他の新型インフルエンザ等の発生及びまん延の状況に照らして必要となることが予測される数量を、当該状況の推移に即して機動的に確保するとともに、これらの物資が地方公共団体等に適時かつ適切に配分されるよう、必要な措置を講ずるものとすること。 (新第三十一条の三の三関係)
第三 附則
一 施行期日
この法律は、公布の日から起算して十日を経過した日から施行すること。ただし、第二の四、第三の二から五1までは、公布の日から施行すること。 (附則第一条関係)
二 新型コロナウイルス感染症に係る検査体制の充実
国は、新型コロナウイルス感染症に係る検査について、次に掲げる者が迅速かつ確実に当該検査を受けることができるよう、体制の充実に努めなければならないこと。
@ 濃厚接触者その他医師が当該検査が必要と認める者
A 医療関係者その他の社会の機能を維持するために必要な業務に従事する者
B @Aに掲げるもののほか、当該検査を必要とする者
(附則第二条関係)
三 医療関係者の処遇の改善等
国は、新型コロナウイルス感染症に対する対策が必要な状況が継続している中で、医療提供体制の確保が喫緊の課題となっている現状に鑑み、医療関係者の処遇の改善その他の医療関係者に対する支援に係る施策を実施するために必要な財政上の措置を講ずるものとすること。 (附則第三条関係)
四 新型コロナウイルス感染症の患者等に対する措置の在り方についての検討
国は、速やかに、新型コロナウイルス感染症の病状又は当該感染症にかかった場合の病状の程度が重篤化するおそれ等に関する知見、当該感染症及びそのまん延防止のための措置が国民生活及び社会経済に与えている影響その他当該感染症に関する内外の動向を踏まえ、濃厚接触者及び無症状病原体保有者に対する措置の在り方を含めた当該感染症の患者等に対する措置の在り方について、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に規定する他の感染症の類型との比較等の観点から検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。 (附則第四条関係)
五 経過措置等
1 この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定めるものとすること。 (附則第五条関係)
2 関係法律について所要の改正を行うこと。 (附則第六条及び第七条関係)