保育等従業者の人材確保のための処遇の改善等に関する特別措置法案要綱
第一 総則
一 目的
この法律は、一人一人の子どもが健やかに成長することができる社会を実現するために保育等従業者が重要な役割を担っているにもかかわらずその賃金が他の業種に属する事業に従事する者と比較して低い水準にあること、小学校就学前の子どもの教育及び保育に対する多様な需要への対応の重要性が著しく増大していること等に鑑み、保育等従業者の賃金をはじめとする処遇の改善のための特別の措置等を定めることにより、優れた人材を確保し、もって子ども・子育て支援の水準の向上に資することを目的とすること。
(第1条関係)
二 定義
1 この法律において「保育事業者等」とは、次に掲げる者をいうこと。
@ 子ども・子育て支援法の特定教育・保育施設の設置者
A 子ども・子育て支援法の特定地域型保育事業者
B 子ども・子育て支援法の特例保育を行う事業者
C 子ども・子育て支援法の特定子ども・子育て支援提供者
D @〜Cのほか、小学校就学前の子どもの教育又は保育に関する事業を行う者で政令で定めるもの
2 この法律において「保育等従業者」とは、保育事業者等の従業者(政令で定める者を除く。)をいうこと。
(第2条関係)
第二 保育等従業者の処遇の改善等
一 保育等従業者処遇改善助成金の支給
1 保育等従業者処遇改善助成金の支給
(1) 都道府県知事は、保育等従業者の賃金を改善するための措置を講ずる保育事業者等(都道府県、市町村(特別区を含む。)その他政令で定める者を除く。(3)及び第四の一の1において同じ。)に対し、その申請に基づき、当該措置に要する費用に充てるための助成金(以下第二の一において「保育等従業者処遇改善助成金」という。)を支給すること。
(2) 保育等従業者処遇改善助成金の支給の要件、額、申請の方法その他保育等従業者処遇改善助成金の支給に関し必要な事項は、政令で定めること。
(3) (2)の政令を定めるに当たっては、一人一人の子どもが健やかに成長することができる社会を実現するために保育等従業者が重要な役割を担っていること並びに小学校就学前の子どもの教育及び保育に対する多様な需要への対応の重要性が著しく増大していることを踏まえるとともに、保育事業者等における保育等従業者の職責等に応じた処遇の体系、他の業種に属する事業に従事する者の平均的な賃金水準等を勘案し、かつ、(1)の申請に係る保育事業者等の負担に配慮するものとすること。
(第3条関係)
2 不正利得の徴収
(1) 偽りその他不正の手段により保育等従業者処遇改善助成金の支給を受けた者があるときは、都道府県知事は、国税徴収の例により、その者から、その支給を受けた保育等従業者処遇改善助成金の額に相当する金額の全部又は一部を徴収することができること。
(2) (1)による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとすること。
(第4条関係)
3 交付金
(1) 国は、保育等従業者処遇改善助成金の支給に要する費用の全額に相当する金額を都道府県に交付すること。
(2) 国は、毎年度、予算の範囲内で、保育等従業者処遇改善助成金に関する事務の執行に要する費用に相当する金額を都道府県に交付すること。
(第5条関係)
二 都道府県等の職員である保育等従業者の給与の改善のための措置
国は、保育事業者等である都道府県等であって、その職員である保育等従業者の給与を改善するための措置(保育等従業者処遇改善助成金の支給の要件を勘案して政令で定める要件に該当するものに限る。)を講ずるものに対し、当該措置に要する費用に対する補助、地方交付税制度の拡充その他の必要な財政上の措置を講ずるものとすること。
(第6条関係)
三 保育等従業者の処遇の改善等に関するその他の施策
1 人件費の割合その他の情報の取りまとめ及び公表
国及び地方公共団体は、保育等従業者になろうとする者がその就業先の選択を適切に行うことができるよう、保育事業者等が設置し又は運営する施設又は事業の状況に関する情報のうち、各年度における事業費の総額に占める保育等従業者に係る人件費の総額の割合その他の保育等従業者の処遇に関する情報の取りまとめ及びその結果の公表その他の必要な施策を講ずるものとすること。
(第7条関係)
2 保育等従業者等の子どもの養育の状況等に応じた就業の継続等
国及び地方公共団体は、保育等従業者及び保育等従業者になろうとする者がその子どもの養育の状況その他の事情に応じて保育等従業者として就業することができるよう、保育等従業者の就業の継続を図るための制度の充実、保育士資格を有する者であって保育に関する業務に従事した後に離職したものの再就職の促進のために必要な体制の整備その他の必要な施策を講ずるものとすること。
(第8条関係)
3 保育等従業者の業務に係る負担の軽減
国及び地方公共団体は、保育等従業者の業務に係る負担の軽減を図るため、行政機関に対する申請に係る書類の作成その他の保育等従業者の業務に関する事務に関し、情報通信技術の活用等による簡素化の促進その他の必要な施策を講ずるものとすること。
(第9条関係)
4 保育等従業者の資質の向上等
国及び地方公共団体は、保育等従業者の資質の向上及び特定の保育の分野に係る専門的な能力を有する保育等従業者の育成を図るため、保育等従業者に対する研修の機会の確保、保育等従業者がその業務を行うために必要な情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとすること。
(第10条関係)
5 保育等従業者としての経験等についての適正な評価のための仕組みの構築等
国及び地方公共団体は、保育等従業者が保育等従業者としての経験、知識、技能等(5において「保育等従業者としての経験等」という。)にふさわしい評価を受けることができるよう、保育等従業者としての経験等についての適正な評価方法の確立、保育事業者等その他の関係者間における保育等従業者としての経験等の評価に資する情報の共有を図るための仕組みの構築その他の必要な施策を講ずるものとすること。
(第11条関係)
6 国民の関心と理解の増進
国及び地方公共団体は、小学校就学前の子どもの教育及び保育の重要性に対する国民の関心と理解を深め、保育等従業者の業務に対する社会的評価の向上を図るため、広報活動及び啓発活動の実施その他の必要な施策を講ずるものとすること。
(第12条関係)
第三 子ども・子育て支援に関する事業に従事する者の処遇の改善
1 第二に定めるもののほか、国は、次に掲げる者その他の社会的養護を含めた子ども・子育て支援に関する事業に従事する者の処遇の改善のために必要な措置を講ずるものとすること。
@ 児童福祉法の児童自立生活援助事業及び小規模住居型児童養育事業に従事する者並びに乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設、児童心理治療施設及び児童自立支援施設の従業者
A 児童福祉法の放課後児童健全育成事業及び放課後子供教室運営事業(地域住民等の参加を得て、放課後等に全ての児童を対象として学習活動、体験活動等を行う事業をいう。)に従事する者
2 国は、1の措置については、政令で定めるところにより、他の法令の規定にかかわらずその費用の全額を負担することができるものとすること。
(第13条関係)
第四 雑則
一 報告等
1 都道府県知事は、第二の一の施行に必要な限度において、保育事業者等若しくは保育事業者等であった者若しくは当該保育事業者等の従業者であった者(1において「保育事業者等であった者等」という。)に対し、報告若しくは帳簿書類その他の物件の提出若しくは提示を命じ、保育事業者等若しくは当該保育事業者等の従業者若しくは保育事業者等であった者等に対し出頭を求め、又は当該職員に関係者に対して質問させ、若しくは当該保育事業者等の事業所若しくは施設、事務所その他その業務に関係のある場所に立ち入り、その帳簿書類その他の物件を検査させることができること。
2 1による質問又は立入検査を行う場合においては、当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならないこと。
3 1による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならないこと。
(第14条関係)
二 事務の区分
第二の一の1の(1)及び2の(1)並びに第四の一の1により都道府県が処理することとされている事務は、地方自治法の第一号法定受託事務とすること。
(第15条関係)
三 厚生労働省令への委任
この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、厚生労働省令で定めること。
(第16条関係)
第五 罰則
第四の一の1の報告をしなかったこと等に対して所要の罰則を設けること。
(第17条関係)
第六 施行期日等
1 この法律は、公布の日から起算して一月を経過した日から施行すること。
2 この法律は、子ども・子育て支援に係る制度について見直しが行われ、保育等従業者に関し、優れた人材の確保に支障がなくなったときは、廃止するものとすること。
3 関係法律について所要の改正を行うこと。
(附則関係)