日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案要綱
第一 目的の改正 (第一条関係)
目的に、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震による災害が甚大で、かつ、その被災地域が広範にわたるおそれがあることに鑑み」との文言を追加し、この法律に定める事項として「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震津波避難対策特別強化地域の指定、津波避難対策緊急事業計画の作成及びこれに基づく事業に係る財政上の特別の措置」を追加するとともに、「災害対策基本法、地震防災対策特別措置法その他の地震防災対策に関する法律と相まって、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進を図ること」を明記すること。
第二 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域等
一 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域の指定等 (第三条関係)
内閣総理大臣は、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域(以下「推進地域」という。)の指定をするに当たっては、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震として科学的に想定し得る最大規模のものを想定して行うものとすること。
二 地震防災対策強化地域との調整規定の削除 (第四条関係)
推進地域の指定を受けた地域が大規模地震対策特別措置法第三条第一項の規定による日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策強化地域の指定を受けることとなった場合の調整規定を削除すること。
三 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画 (新第四条関係)
1 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画(以下「基本計画」という。)に定める事項として、次に掲げる事項を追加すること。
@ 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の円滑かつ迅速な推進の意義に関する事項
A 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する基本的な施策に関する事項
B 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震が発生した場合の災害応急対策の実施に関する基本的方針に関する事項
2 1Aに掲げる事項については、原則として、その具体的な目標及びその達成の期間を定めるものとすること。
3 中央防災会議は、基本計画の作成及びその実施の推進に当たっては、次に掲げる事項について、適切に配慮するものとすること。
@ 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震の発生の形態並びに日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に伴い発生する地震動及び津波の規模に応じて予想される災害の事態が異なることに鑑み、あらゆる災害の事態に対応することができるようにすること。
A 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震による災害が甚大で、かつ、その被災地域が広範にわたるおそれがあることに鑑み、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関する調査研究の成果その他の地震防災に関する最新の科学的知見及び情報通信技術その他の先端的な技術の活用を通じて、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策をより効果的に行うことができるようにすること。
四 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進計画 (新第五条関係)
1 防災業務計画等のうち、2@からBまでに掲げる事項を含む一定の事項について定めた部分を、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進計画(以下「推進計画」という。)とすること。
2 推進計画として定める事項として、次に掲げる事項を追加すること。
@ 避難施設その他の避難場所、避難路その他の避難経路、避難誘導及び救助活動のための拠点施設その他の消防用施設その他の日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関し地震防災上緊急に整備すべき施設等で政令で定めるものの整備に関する事項
A 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に伴い発生する津波からの防護、円滑な避難の確保及び迅速な救助に関する事項
B 関係指定行政機関、関係指定地方行政機関、関係地方公共団体、関係指定公共機関、関係指定地方公共機関その他の関係者との連携協力の確保に関する事項
3 市町村防災会議(市町村防災会議を設置しない市町村にあっては、当該市町村の市町村長。以下同じ。)が推進計画を定める場合には、第四の二1の津波避難対策緊急事業計画の基本となるべき事項を定めることができること。
4 2@に掲げる事項については、原則として、その具体的な目標及びその達成の期間を定めるものとすること。
第三 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進協議会 (新第八条関係)
一 協議会の組織
関係指定行政機関の長及び関係指定地方行政機関の長、関係地方公共団体の長並びに関係指定公共機関及び関係指定地方公共機関は、共同で、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震が発生した場合における災害応急対策及び当該災害応急対策に係る防災訓練の実施に係る連絡調整その他の日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策を相互に連携協力して推進するために必要な協議を行うための協議会(以下単に「協議会」という。)を組織することができること。
二 協議会の事務等
1 協議会は、会議において協議を行うため必要があると認めるときは、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長並びに指定公共機関及び指定地方公共機関その他の関係者に対して、資料の提供、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができること。
2 会議において協議が調った事項については、協議会の構成員は、その協議の結果を尊重しなければならないこと。
3 協議会の庶務は、内閣府において処理すること。
第四 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震津波避難対策特別強化地域
一 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震津波避難対策特別強化地域の指定等
1 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震津波避難対策特別強化地域の指定 (新第九条関係)
内閣総理大臣は、推進地域のうち、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に伴い津波が発生した場合に特に著しい津波災害が生ずるおそれがあるため津波避難対策を特別に強化すべき地域を、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震津波避難対策特別強化地域(以下「特別強化地域」という。)として指定するものとすること。
内閣総理大臣は、による特別強化地域の指定をするに当たっては、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震として科学的に想定し得る最大規模のものを想定して行うものとすること。
内閣総理大臣は、による特別強化地域の指定をしようとするときは、あらかじめ中央防災会議に諮問しなければならないこと。
内閣総理大臣は、による特別強化地域の指定をしようとするときは、あらかじめ関係都道県の意見を聴かなければならないこと。この場合において、関係都道県が意見を述べようとするときは、あらかじめ関係市町村の意見を聴かなければならないこと。
内閣総理大臣は、による特別強化地域の指定をしたときは、その旨を公示しなければならないこと。
2 1による特別強化地域の指定があったときは、関係市町村長は、居住者、滞在者その他の者の日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に伴い発生する津波からの円滑な避難に資するよう、当該津波に関する情報の伝達方法、避難施設その他の避難場所及び避難路その他の避難経路に関する事項その他特別強化地域における円滑な避難を確保する上で必要な事項を居住者、滞在者その他の者に周知させるため、これらの事項を記載した印刷物の配布その他の必要な措置を講じなければならないこと。ただし、当該特別強化地域において、津波防災地域づくりに関する法律第五十五条に規定する措置が講じられているときは、この限りでないこと。 (新第十条関係)
二 津波避難対策緊急事業計画 (新第十一条関係)
1 一1による特別強化地域の指定があったときは、関係市町村長は、当該特別強化地域について、市町村防災会議が定める推進計画に基づき、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に伴い発生する津波から避難するため必要な緊急に実施すべき次に掲げる事業に関する計画(以下「津波避難対策緊急事業計画」という。)を作成することができること。
@ 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に伴い発生する津波からの避難の用に供する避難施設その他の避難場所の整備に関する事業
A @の避難場所までの避難の用に供する避難路その他の避難経路の整備に関する事業
B 集団移転促進事業(防災のための集団移転促進事業に係る国の財政上の特別措置等に関する法律第二条第二項に規定する集団移転促進事業をいい、四3の特別の措置の適用を受けようとするものを含む。以下同じ。)
C 集団移転促進事業に関連して移転が必要と認められる施設であって、高齢者、障害者、乳幼児、児童、生徒その他の迅速な避難の確保を図るため特に配慮を要する者が利用する施設で政令で定めるものの整備に関する事業
2 1@からCまでに掲げる事業については、原則として、その具体的な目標及びその達成の期間を定めるものとすること。
3 1@からCまでに掲げる事業には、関係市町村が実施する事業に係る事項を記載するほか、必要に応じ、関係市町村以外の者が実施する事業に係るものを記載することができること。
4 関係市町村長は、津波避難対策緊急事業計画に関係市町村以外の者が実施する事業に係る事項を記載しようとするときは、当該事項について、あらかじめ、その者の同意を得なければならないこと。
5 内閣総理大臣の同意
関係市町村長は、津波避難対策緊急事業計画を作成しようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議し、その同意を得なければならないこと。
関係市町村長は、の協議をしようとするときは、あらかじめ、都道県知事の意見を聴き、津波避難対策緊急事業計画にその意見を添えて、内閣総理大臣に提出しなければならないこと。
内閣総理大臣は、の同意をしようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長と協議しなければならないこと。
三 津波避難対策緊急事業に係る国の負担又は補助の特例等 (新第十二条及び別表関係)
津波避難対策緊急事業計画に基づいて実施される事業(以下「津波避難対策緊急事業」という。)のうち、別表上欄に掲げるもの(当該津波避難対策緊急事業に関する主務大臣の定める基準に適合するものに限る。)に要する経費に対する国の負担又は補助の割合(以下「国の負担割合」という。)は、当該津波避難対策緊急事業に関する法令の規定にかかわらず、同表下欄のとおりとすること。
四 津波避難対策緊急事業計画に基づく集団移転促進事業に係る特例措置
1 国は、二1Cの政令で定める施設の整備に関し、必要な財政上及び金融上の配慮をするものとすること。 (新第十三条関係)
2 市町村が津波避難対策緊急事業計画に基づき集団移転促進事業を実施するため、農地を農地以外のものにし、又は農地若しくは採草放牧地を農地若しくは採草放牧地以外のものにするためこれらの土地について所有権若しくは使用及び収益を目的とする権利を取得する場合において、農地転用の許可要件を緩和すること。 (新第十四条関係)
3 津波避難対策緊急事業計画に基づく集団移転促進事業を実施する場合においては、土地の取得造成後に譲渡する場合においても、その用地の取得造成費等について、市場価格で譲渡した場合の譲渡収入を超える部分を補助の対象とすること。 (新第十五条関係)
4 国の行政機関の長又は都道県知事は、津波避難対策緊急事業計画に基づく集団移転促進事業の実施のため国土利用計画法その他の土地利用に関する法律、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律その他の法律の規定による協議その他の行為又は許可その他の処分を求められたときは、当該集団移転促進事業に係る施設の整備が円滑に行われるよう適切な配慮をするものとすること。
(新第十六条関係)
5 地方公共団体が二1Cの政令で定める施設その他津波避難対策緊急事業計画に基づく集団移転促進事業に関連して移転する公共施設又は公用施設の除却を行うために要する経費(公共的団体又は国若しくは地方公共団体が出資している法人で政令で定めるものが設置する二1Cの政令で定める施設その他当該集団移転促進事業に関連して移転する公共施設の除却に係る負担又は助成に要する経費を含む。)については、地方財政法第五条の規定にかかわらず、地方債をもってその財源とすることができること。 (新第十七条関係)
五 津波避難対策上緊急に整備すべき施設等の整備等についての配慮 (新第二十条関係)
国及び地方公共団体は、特別強化地域において、積雪寒冷地域における津波からの円滑な避難を確保するために必要な避難施設その他の避難場所、避難路その他の避難経路その他の津波避難対策上緊急に整備すべき施設等の整備等を行うに当たっては、当該施設等について、交通、通信その他積雪寒冷地域における津波避難対策上必要な機能が確保されるよう特に配慮しなければならないこと。
第五 施行期日等
一 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。
(附則関係)
二 その他所要の規定を整備すること。
別表(第四の三関係)
事 業 の 区 分 国の負担割合
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に伴い発生する津波からの避難の用に供する 三分の二
避難施設その他の避難場所の整備で地方公共団体その他の政令で定める者が実施
するもの
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に伴い発生する津波からの避難場所までの避 三分の二
難の用に供する避難路その他の避難経路の整備で地方公共団体その他の政令で定
める者が実施するもの