インテリジェンスに係る態勢の整備の推進に関する法律案要綱
第一 総則
一 目的 (第1条関係)
この法律は、国際情勢の複雑化、インターネットその他の高度情報通信ネットワークの整備、情報通信技術の活用の進展等に伴い、外国による我が国に対する不当な影響力の行使の脅威が増大する中で、日本国憲法の保障する国民の自由と権利を尊重しつつ、インテリジェンスを適確に実施することが極めて重要となっていることに鑑み、インテリジェンスに係る態勢の整備の推進に関し、基本理念を定め、国の責務を明らかにし、及びインテリジェンスに係る態勢の整備に関する施策の基本となる事項を定めるとともに、インテリジェンス態勢整備推進本部を設置することにより、インテリジェンスに係る態勢の整備を総合的かつ集中的に推進し、もって我が国及び国民の安全の確保並びに健全な民主主義の根幹の維持に寄与することを目的とする。
二 定義 (第2条関係)
この法律において「インテリジェンス」とは、国の安全の確保、公の秩序の維持及び公衆の安全の保護(以下「国の安全の確保等」という。)に関する政策決定のために必要な情報の収集、整理及び分析並びにその結果の活用(以下「情報収集等」という。)を行うとともに、国の安全の確保等に関する重要な情報を保全し及び我が国に対する不当な情報収集等に対処することをいう。
三 基本理念 (第3条関係)
1 インテリジェンスに係る態勢の整備の推進は、外国の利益を図る目的で行われる活動については、その透明性を確保することが重要であることを旨として行われなければならない。
2 インテリジェンスに係る態勢の整備の推進は、インテリジェンスの実施において政治的中立及び民主的統制が確保されるようにすることを旨として行われなければならない。
3 インテリジェンスに係る態勢の整備の推進は、インテリジェンスに係る体制の整備が国家の存立に関わる重要な課題であるとの認識の下に行われなければならない。
4 インテリジェンスに係る態勢の整備の推進に当たっては、インテリジェンスの実施において日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならないことに留意しなければならない。
四 国の責務 (第4条関係)
国は、三の基本理念にのっとり、インテリジェンスに係る態勢の整備に関する施策を総合的に策定し及び実施する責務を有する。
五 法制上の措置等 (第5条関係)
政府は、インテリジェンスに係る態勢の整備に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。この場合において、必要となる法制上の措置については、この法律の施行後3年以内を目途として講じなければならない。
第二 基本的施策
一 外国による不当な影響力の行使の防止のための措置等
(第6条関係)
1 国は、外国による我が国に対する不当な影響力の行使の防止に資するよう、外国の利益を図る目的で行われる一定の活動を把握し及びこれを国民に周知するための当該活動を行う者に係る国への届出制度の創設その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 国は、外国の利益を図る目的で虚偽の情報、不正確な情報その他誤解を生じさせるおそれのある情報が情報通信技術を用いて拡散されることが我が国の健全な民主主義の発達に及ぼす影響、当該影響に適切に対処するための方策等に関する調査研究を行い、その結果に基づいて、当該影響に適切に対処するために必要な施策を講ずるものとする。
二 行政組織の整備等 (第7条関係)
1 国は、インテリジェンスを適確に実施することができるようにするため、インテリジェンスに関する事務をつかさどる機関及びこれを管理する独立行政委員会の設置を含めた必要な行政組織の整備、関係機関の連携協力の確保その他必要な体制の整備を行うものとする。
2 国は、1の体制の整備に当たっては、国会の関与による民主的統制が確保されたものとなるようにしなければならない。
三 情報収集等に係る手法の拡充等 (第8条関係)
1 国は、インテリジェンスを適確に実施することができるようにするため、国の安全の確保等に関する政策決定のために必要な情報収集等に係る手法の拡充その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 1の措置を講ずるに当たっては、インテリジェンスの実施に際して国民の自由と権利に制限が加えられる場合にあっても、その制限はインテリジェンスを実施するため必要最小限のものに限られ、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならないことに留意されなければならない。
四 インテリジェンスに係る職務に従事する者等の安全及び適切な処遇の確保 (第9条関係)
国は、インテリジェンスに係る職務に従事する者及びインテリジェンスに協力する者の安全を確保するとともに、これらの者の適切な処遇を確保するために必要な施策を講ずるものとする。
五 人材の確保等 (第10条関係)
国は、インテリジェンスに関する専門的な知識又は技能を有する人材の確保、養成及び資質の向上のために必要な施策を講ずるものとする。
六 検証、調査研究の推進等 (第11条関係)
国は、インテリジェンスの適確な実施に資するよう、インテリジェンスの実施の状況及びその効果の検証並びにインテリジェンスに関する調査研究の推進その他の必要な措置を講ずるものとする。
七 国民の理解の増進及び信頼の向上 (第12条関係)
国は、インテリジェンスに対する国民の理解を増進させ及びその信頼を向上させるため、インテリジェンスの実施の状況の概要の公表、インテリジェンスを実施して得た成果の適時の公表その他の必要な措置を講ずるものとする。
第三 インテリジェンス態勢整備推進本部
(第13条から第22条まで関係)
1 内閣に、インテリジェンス態勢整備推進本部を設置する。
2 本部は、インテリジェンスに係る態勢の整備の推進等の事務をつかさどる。
3 本部は、本部長(内閣総理大臣)・副本部長(内閣官房長官・インテリジェンス態勢整備推進担当大臣)・本部員(本部長・副本部長以外の全ての国務大臣)をもって組織する。
第四 施行期日等
一 施行期日 (附則第1条関係)
この法律は、公布の日から施行する。ただし、第三及び三は、公布の日から起算して1月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
二 検討 (附則第2条関係)
国は、民間事業者、教育研究機関等が保有する情報を保全するための措置について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
三 内閣法の一部改正 (附則第3条関係)
内閣情報官の所掌事務に、インテリジェンス態勢整備推進本部に関する事務を追加する。

