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法律第百十六号(昭二二・一〇・八)

◎日本国沿岸に置き去られた船舶の措置に関する法律

第一条 昭和二十年八月十五日以後において日本国沿岸に置き去られた船舶で運輸大臣が適当な調査をした後置き去られた船舶として指定したもの(以下指定船舶という。)の措置については、他の法令の規定にかかわらず、この法律の定めるところによる。

前項の規定による指定は、告示によりこれを行う。

連合国人の所有に属することの明らかな船舶又はその所有に属することの正当に推定される船舶及び他の法令の規定により没収すべき船舶については、第一項の規定による指定は、これを行わない。

第二条 前条第一項の規定による指定があつたときは、管海官庁は、当該指定船舶を管理しなければならない。

管海官庁は、命令の定めるところにより、当該船舶が指定されたことを公告し、その公告においては、左に掲げる者に対しては、この法律の定めるところにより公告の日から三箇月以内に当該指定船舶の返還又は支払を請求することができる旨を、所有者に対しては、第三項の規定により一箇月の期間(以下猶予期間という。)内に費用を負担しないで当該指定船舶の返還を請求することができる旨を告知し、又、これらの者で知れた者に対しては、各別にこれを告知しなければならない。

一 指定船舶の所有者

二 指定船舶の上に担保権を有する者

三 指定船舶が置き去られた後において当該指定船舶を拾得した者

四 指定船舶が置き去られた後において公の機関の指示により当該指定船舶を管理した者

五 指定船舶が置き去られた後において当該指定船舶に因り損害を受けた者

前項の規定による公告の日又は各別の告知の日のうちいずれか遅い方の日の翌日から一箇月以内に当該指定船舶の所有者がその返還を請求したときは、管海官庁は、遅滞なく当該指定船舶をその所有者に引き渡さなければならない。この場合には、当該指定船舶の所有者は、第三条第一項の金額を負担することを要せず、又、前項第三号及び第四号に掲げる者は、第三条第一項第二号及び第三号の金額の支払を受けることができない。

この法律施行前に、置き去られた船舶として管海官庁に届出があり、且つ、管海官庁の調査によつてもなおその所有者の知れなかつた船舶については、前項の規定を適用しない。

第三条 前条第二項の規定により当該指定船舶の返還を請求した所有者で猶予期間内に返還を請求しなかつたものは、同項に規定する請求期間経過後三箇月以内に限り、当該指定船舶の引渡を受けることができる。この場合には、左に掲げる金額は、当該指定船舶の所有者の負担とする。

一 管海官庁のした公告、告知及び管理に要した費用に相当する金額

二 前条第二項第三号に掲げる者で同項の規定により支払を請求したものがあるときは、当該指定船舶の価格の十分の一に相当する金額

三 前条第二項第四号に掲げる者で同項の規定により支払を請求したものが適当な範囲内において当該指定船舶の救助、引揚又は修繕をしたときは、その費用に相当する金額

四 第二項の規定による鑑定の費用に相当する金額

前項第二号の指定船舶の価格は、運輸大臣の指定する鑑定人の評価した公正な時価による。

管海官庁は、第一項の金額の全部を受け取らなければ、当該指定船舶をその所有者に引渡してはならない。但し、運輸大臣が費用の負担に関する困難及び不公正を避けるため必要があると認めて支払期間を三箇月延期したときは、この限りでない。

第四条 指定船舶の所有者が第二条第二項及び第三条第一項の規定により当該指定船舶の引渡を請求しなかつたときは、管海官庁は、その適当で信頼するに足りると認める海運業者、漁業者その他海上企業に密接な関係を有する者に対し、命令の定めるところにより、入札の方法によつて、これを売却しなければならない。この場合には、管海官庁は、運輪大臣の指定する鑑定人に当該指定船舶を評価させ、その評価した公正な時価を以て最低入札価格としなければならない。

前項の規定による売却に因つて、当該指定船舶の上に存する権利は、消滅し、これを買い受けた者は、その所有権を取得する。

第一項の規定により指定船舶を買い受けた者は、命令の定めるところにより、指定船舶の所有者としてその登記を受けることができる。

第五条 管海官庁は、第三条第一項の金額又は前条第一項の規定による売却代金を受け取つたときは、遅滞なく第三条第一項第二号及び第三号の金額を夫々第二条第二項第三号及び第四号に掲げる者で同項の規定により支払を請求したものに支払わなければならない。

第三条第一項第一号及び第四号の金額は、管海官庁が同項の金額又は前条第一項の規定による売却代金を受け取つた時に、国庫に帰属し、前条第一項の規定による売却の費用に相当する金額は、同条第一項の規定による売却代金を受け取つた時に、国庫に帰属する。

第六条 第二条第二項第二号又は第五号に掲げる者が同項の規定により支払を請求したときは、管海官庁は、第四条第一項の規定による売却代金から第三条第一項の金額及び第四条第一項の規定による売却の費用に相当する金額を控除した残額(以下控除残額という。)を供託しなければならない。

第七条 第二条第二項第二号又は第五号に掲げる者で同項の規定により支払を請求したものは、第四条第一項の規定による売却の日の翌日から二年以内に限り、前条の規定によつて供託された金額に対しその権利を行うことができる。この場合には、第二条第二項第二号に掲げる者は、同項第五号に掲げる者に優先する。

第二条第二項第五号に掲げる者が数人ある場合において、前条の規定により供託された金額がその債権の総額を弁済するに足りないときは、各々その債権額の割合に応じてその権利を行うことができる。

第八条 第二条第二項第二号及び第五号に掲げる者が同項の規定により支払を請求しなかつたときは、控除残額は、管海官庁が第四条第一項の規定による売却代金を受け取つた時に、国庫に帰属する。

第二条第二項第二号又は第五号に掲げる者が同項の規定により支払を請求したときは、第六条の規定により供託された金額は、これらの者が前条の規定によりその権利を行つた金額を除いて、同条第一項の規定による期間満了の時に、国庫に帰属する。

第九条 管海官庁は、第五条第一項の場合には、第三条第一項第二号及び第三号の金額を第五条第一項の規定による支払の時まで、第六条の場合には、控除残額を同条の規定による供託の時まで歳入歳出外現金として保管することができる。

第十条 第一条第一項の規定による指定のあつた後において、指定船舶の原所有者が連合国人であることが知れたときは、その者は、管海官庁にその権利を証明して、当該指定船舶の返還を請求することができる。この場合には、第三条第一項の金額を負担することを要しない。

前項の場合において当該指定船舶が第四条第一項の規定により既に売却されているときは、前項に規定する者は、同条第一項の規定による売却の日から五年以内に限り、前項の規定による請求をすることができる。この場合において当該指定船舶の返還の請求があつたときは、管海官庁は、同条第一項の規定による売却代金の全額を前項に規定する者に支払つて、当該指定船舶の返還の義務を免かれることができる。

第一項に規定する者が所有権を放棄した場合、又は第一条第一項の指定のあつた後において所有者が連合国の国籍を取得し、若しくは連合国人が当該指定舶舶の所有権を取得した場合には、前二項の規定を適用しない。

第十一条 第四条第一項の規定により売却された指定船舶の原所有者で連合国人でないものが、一時日本国にいなかつたため、第二条第二項の規定による請求をすることができなかつたときは、その者は、日本国に帰還した日の翌日から六箇月以内に限り、運輸大臣にその不在の事実を証明して、管海官庁に対し第八条の規定により国庫に帰属した金額の支払を請求することができる。

附 則

この法律施行の期日は、政令でこれを定める。

(運輸・内閣総理大臣署名)

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