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法律第百七十一号(昭二二・一二・一二)

◎政府に対する不正手段による支払請求の防止等に関する法律

 (支払請求内訳書)

第一条 国、連合国軍又は特別調達庁のためになされた工事の完成、物の生産その他の役務の給付に関し、国に対して、自己又は他人が提供した物又は役務の費用として代金又は報酬の請求をしようとする者は、命令の定める書式により、支払請求内訳書を作成し、これにすべての材料及び労務並びに労務以外の役務で第三者の提供したもの(以下諸役務という。)につき、材料については、その品目、規格、品質、数量及び価額、労務については、その労務者の職種別の員数及び賃金額、諸役務については、その種類及び価額の内訳を明記しなければならない。但し、左の各号の一に該当する物又は役務については、その価額自体を記載すれば足り、当該物の生産又は役務の提供に関し使用された材料、労務及び諸役務に分けて内訳を記載することを必要としない。

一 物価統制令に規定する統制額(以下統制額という。)のある物又は役務

二 統制額のない物 但し、その価額の合計額が国を当事者とする請負契約又は購入契約の各契約金額の二百分の一に相当する金額を超えない範囲内におけるものに限る。

三 統制額のない物 但し、その購入金額の合計額が、第四条において準用される公団の購入金額を含み、国の一般会計歳出予算額の千分の三に相当する金額を超えない範囲内において大蔵大臣の特に指定する購入契約により購入するものに限る。

 (価額及び賃金の計算)

第二条 前条の規定による支払請求内訳書に記載すべき材料及び諸役務の価額並びに賃金額は、左の各号の定めるところによりこれを計算しなければならない。

一 材料及び諸役務の価額は、実際使用された数量及び

イ 第一条に規定する工事の完成、物の生産その他の役務の給付に関する契約成立前給付者が他人から譲り受けた材料又は提供を受けた諸役務については、契約成立の時の統制額

ロ 前号の契約成立後給付者が買い入れた材料又は諸役務については、その買入の時の統制額

ハ その他のものについては、当該材料を事業場に搬入した時の統制額

ニ ロ号若しくはハ号に掲げる時の明らかでないもの又は取得の方法の明らかでないものについては、イ号に掲げる統制額

を超えない価格等(物価統制令第二条に規定する価格等をいう。以下同じ。)による。

二 賃金額は、職種ごとに、実際使用された員数及び労務使用当時の一般職種別賃金額を超えない賃金額による。

前項に規定する一般職種別賃金額は、主務大臣が官報を以て、これを告示する。

第一項の統制額には、物価統制令第三条第一項但書の規定による許可に係る価格等の額を含む。

 (誓約書)

第三条 第一条の規定による支払請求内訳書を提出する者は、その支払請求内訳書が正確であり、且つ、これに記載された価額及び賃金額が前条の規定に適合して計算されている旨の誓約書を作成し、これに署名し、印を押さなければならない。

 (地方公共団体及び公団に対する準用)

第四条 前三条の規定は、地方公共団体又は公団のためになされた工事の完成、物の生産その他の役務の給付に関し、地方公共団体又は公団に対し、自己又は他人が提供した物又は役務の費用として代金又は報酬の請求をしようとする者に、これを準用する。この場合において第一条但書第三号の規定の地方公共団体に対する適用については、同号中「国の一般会計歳出予算額の千分の三に相当する金額を超えない範囲内において大蔵大臣の特に指定する購入契約により購入するものに限る。」とあるのは「地方公共団体の一般会計歳出予算額の千分の一に相当する金額(その金額が一万円に達しないときは一万円)を超えない範囲内において購入するもの並びに地方公共団体がその事業の用に供するため購入する土地及び建物に限る。」と読み替えるものとする。

 (下請人に対する準用)

第五条 第一条(同条但書第二号及び第三号を除く。)、第二条及び第三条の規定は、第一条又は前条に規定する契約の履行に関し、使用された物又は役務を給付者に対し提供しその代金又は報酬を請求しようとする者(以下下請人という。)に、これを準用する。

下請人は、給付者に対し、契約の履行後遅滞なく、前項において準用する第一条及び第三条に規定する書類を提出しなければならない。

下請人は、前項の義務を怠つたときは、これに因り給付者に生じた損害を賠償する責を負う。

 (請求及び支払の効力)

第六条 第一条に規定する代金又は報酬(国の雇傭する官吏、職員又は労務者に対する国の直接の支払を除く。以下本条中同じ。)の請求権を有する者は、第一条、第三条及び第九条第一項に規定する適法の書類を国に提出しなければ、その権利を行使することができない。

政府職員(国の支払事務を所掌するその他の者を含む。以下同じ。)は、第一条、第三条及び第九条第一項に規定する適法の書類の提出がなければ、第一条に規定する代金又は報酬を支払つてはならない。

第一項の規定は、第四条に規定する代金又は報酬の請求権を有する者に、前項の規定は、地方公共団体又は公団の職員に、これを準用する。

 (前払及び精算)

第七条 前条の規定は、第一条又は第四条に規定する工事の完成、物の生産その他の役務の給付に関する契約の履行前において代金又は報酬(契約の履行後において代金又は報酬に充当する旨の特約に基いて交付する金額を含む。)の部分払又は仮払をなす旨の約定がある場合における当該金額の請求及び支払については、これを適用しない。

しかしながら政府職員(地方公共団体又は公団の職員を含む。)は、第九条第一項の規定による内訳書の提出がなければ、前項に規定する代金又は報酬の部分払又は仮払をなしてはならない。

第一項の約定に基く支払があつた場合においては、当該支払を受けた者は、第一条(第四条において準用する場合を含む。)に規定する事項を記載した精算書を、契約の履行後三十日以内(大蔵大臣が特にこれよりも長い期限を定めたときはその期限内)に、当該支払をなした者に提出しなければならない。

第二条及び第三条の規定は、前項の規定による精算書に記載すべき材料及び諸役務の価額並びに賃金額の計算について、これを準用する。

下請人は、給付者に対し、前二項の規定の適用につき必要な事項を、遅滞なく、通知しなければならない。第五条第三項の規定は、この場合に、これを準用する。

前条第一項及び第二項の規定は、第三項の場合において契約の履行後支払うべき残額がある場合に、これを準用する。

第三項の規定による精算書の提出後材料、労務又は諸役務に対する代金又は報酬の前払額が超過払となつているときは、当該支払を受けた者は、その超過額を返還しなければならない。

 (約定金額の改定)

第八条 第一条(第四条において準用する場合を含む。)の規定による支払請求内訳書又は前条第三項の規定による精算書に記載された材料の価額の合計額、諸役務の価額の合計額及び賃金の合計額の総額がこれらの各区分についての約定金額の合計額よりも少いときは、約定金額は、支払請求内訳書又は精算書に記載された金額に改定されたものとする。

 (見積書)

第九条 物の購入契約を除く外、第一条又は第四条に規定する工事の完成、物の生産その他の役務の給付に関する契約による給付者は、契約成立後三十日以内(大蔵大臣が特にこれよりも長い期限を定めたときはその期限内)に、国、地方公共団体又は公団に対し、命令の定める書式により、当該契約に関し、材料及び諸役務の価額並びに賃金額の見積額につき、その詳細の内訳を記載した内訳書を提出しなければならない。

第一条但書第一号及び第二号の規定は、前項の規定による内訳書について、これを準用する。

前項の規定により提出された内訳書に記載された材料の価額の合計額、諸役務の価額の合計額及び賃金の合計額は、これを夫々材料の価額の合計額、諸役務の価額の合計額及び賃金の合計額についての契約成立の時の約定金額とみなす。

 (検査及び報告)

第十条 当該官吏は、契約成立後、第二条(第四条、第五条第一項又は第七条第四項において準用する場合を含む。)の規定による計算に関し必要があるときは、給付者若しくは下請人その他当該契約に関連して給付者と取引した者に対して質問し、報告を求め、これらの者の営業場、事業場等に臨検し、帳簿書類その他の物件を検査し、又参考人について質問することができる。

政府は必要があるときは、命令の定めるところにより、都道府県の吏員又は公団の職員をして、前項の事務に従事させることができる。

 (賃金の支払)

第十一条 政府職員(命令で定める法人の職員を含む。)は、左の各号の一に該当する労務者に対しては、第二条第二項に規定する一般職種別賃金額を超える額の賃金を支払つてはならない。

一 連合国軍の需要に応じて連合国軍のために労務に服する労務者

二 公共事業費を以て経費の全部又は一部を支弁する事業に係る労務に服する労務者

 (昭和二十一年法律第六十号の契約に対するこの法律の適用)

第十二条 第一条、第三条並びに第七条第三項及び第四項の書類が、昭和二十一年法律第六十号(政府の契約の特例に関する法律)第一条第一項の規定に該当する契約に関するものであるときは、これらの書類は、同法第一条第一項の支払金額の確定を請求する際、これを提出すべきものとする。この場合においては、確定金額の支払の請求をしようとする際、あらためて第一条、第三条並びに第七条第三項及び第四項の書類を提出することを必要としない。

昭和二十一年法律第六十号第一条第一項の規定による支払金額の指定は、第一条、第三条並びに第七条第三項及び第四項の書類の提出がなければ、これをすることができない。 第一項の場合においては、第六条、第七条第六項及び第九条の規定は、これを適用しない。

第十三条 昭和二十一年法律第六十号第一条第一項の規定による支払金額の指定は、当該契約に係る材料の価額の合計額、諸役務の価額の合計額及び賃金の合計額については、夫々第二条の規定により計算された金額の範囲内において、これをしなければならない。

 (罰則)

第十四条 第三条に規定する誓約書に虚偽の誓約をなし、内訳のいずれかの記載金額が第二条の規定を適用して算出した金額を超えるような支払請求内訳書を国に提出した者は、実際上国に損害を加えたかどうかにかかわらず、これをその超過額の三倍以上四倍以下の額に相当する罰金に処する。

第四条において準用する第三条に規定する誓約書に虚偽の誓約をなし、内訳のいずれかの記載金額が第四条において準用する第二条の規定を適用して算出した金額を超えるような支払請求内訳書を地方公共団体又は公団に提出した者も、また前項と同様とする。

前二項の規定は第七条第三項の規定による精算書を提出した場合に、これを準用する。

前三項の罪を犯した者には、刑法第五十四条第一項の規定は、これを適用しないで、他の法条に刑があるときは、その刑を併科する。

第十五条 左の各号に掲げる者は、これを六箇月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。

一 第七条第三項の場合において、同項の規定による精算書を提出しない者

二 第十条の規定による質問に対し、虚偽の答弁をした者

三 第十条の規定により報告を求められて、虚偽の報告をした者

四 第十条の規定により質問を受け若しくは報告を求められた者の答弁若しくは報告を妨げ又は同条の規定による検査を妨げた者

五 第一条、第四条若しくは第五条第一項又は第七条第三項の規定により賃金額について支払請求内訳書又は精算書の提出を必要とする場合において、労働基準法第百八条の規定による賃金台帳を備え置かず、虚偽の記載をした賃金台帳を備え置き、又は賃金台帳に関する質問に対する答弁若しくは検査を妨げた者

第十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

附 則

第一条 この法律施行の期日は、その成立の日から五日を超えない期間内において、政令でこれを定める。

第二条 この法律は、第一条、第四条又は第五条第一項に規定する請求に関しこの法律施行後使用される材料及び労務並びにこの法律施行後提供される諸役務について、これを適用する。

第三条 第一条又は第四条に規定する工事の完成、物の生産その他の役務の給付に関する契約でこの法律施行の際まだ履行の完了していないものに対するこの法律の適用については、第六条及び第七条第二項中「第九条第一項」とあるのは「附則第四条第一項」、第八条中「材料」とあるのは「この法律施行後使用された材料」、「諸役務」とあるのは「この法律施行後提供された諸役務」、「賃金」とあるのは「この法律施行後使用された労務についての賃金」と読み替えるものとする。

第四条 物の購入契約を除く外、第一条又は第四条に規定する工事の完成、物の生産その他の役務の給付に関する契約でこの法律施行の際まだ履行の完了していないものについては、給付者は、命令の定めるところにより、この法律施行後、国、地方公共団体又は公団に対し、当該契約に係る約定金額のうち、この法律施行後提供さるべき工事、物又は役務に対する部分につき第九条第一項の規定に準じた内訳書を提出しなければならない。

第九条第二項及び第三項の規定は、前項の場合に、これを準用する。

第五条 第一条、第四条若しくは第五条第一項又は第七条第三項の規定により労務について支払請求内訳書又は精算書を作成しなければならない業務を営む給付者又は下請人は、労働基準法第百八条の規定の適用があるに至るまでの間は、その使用する労務者の就業する事業場ごとに、当該官吏の検査を受けるため、すべての労務者についての日日の賃金支払簿を備え置き、これにその使用した労務者の氏名を登録し、その職種、賃金支払額及び本人の受け取つた金額を明らかにして置かなければならない。

当該官吏は、何時でも、前項の規定による賃金支払簿を検査し、又、これに関し質問をすることができる。

第六条 前条第一項の規定による賃金支払簿を備え置かず又は虚偽の記載をしたものを備え置いた者は、これを六箇月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。

前条第二項の規定による検査若しくは答弁を妨げた者又は同項の規定による質問に対して虚偽の答弁をした者も、また前項と同様とする。

(内閣総理・外務・内務・大蔵・司法・文部・厚生・農林・商工・運輸・逓信・労働大臣署名)

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