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法律第百六十八号(昭二三・七・一五)

◎少年法を改正する法律

少年法目次

 第一章 総則

 第二章 少年の保護事件

  第一節 通則

  第二節 調査及び審判

  第三節 抗告

 第三章 成人の刑事事件

 第四章 少年の刑事事件

  第一節 通則

  第二節 手続

  第三節 処分

 第五章 雑則

 附則

少年法

第一章 総則

 (この法律の目的)

第一条 この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年及び少年の福祉を害する成人の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。

 (少年、成人、保護者)

第二条 この法律で「少年」とは、二十歳に満たない者をいい、「成人」とは、満二十歳以上の者をいう。

2 この法律で「保護者」とは、少年に対して法律上監護教育の義務ある者及び少年を現に監護する者をいう。

第二章 少年の保護事件

第一節 通則

 (審判に付すべき少年)

第三条 次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する。

一 罪を犯した少年及び十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年

二 次に掲げる事由があつて、その性格又は環境に照して、将来罪を犯す虞のある少年

(イ) 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。

(ロ) 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。

(ハ) 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入りすること。

(ニ) 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。

2 家庭裁判所は、前項第二号に掲げる少年で十四歳に満たない者については、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、これを審判に付することができる。

 (判事補の職権)

第四条 第二十条の決定以外の裁判は、判事補が一人でこれをすることができる。

 (管轄)

第五条 保護事件の管轄は、少年の行為地、住所、居所又は現在地による。

2 家庭裁判所は、保護の適正を期するため特に必要があると認めるときは、決定をもつて、事件を他の管轄家庭裁判所に移送することができる。

3 家庭裁判所は、事件がその管轄に属しないと認めるときは、決定をもつて、これを管轄家庭裁判所に移送しなければならない。

第二節 調査及び審判

 (通告)

第六条 家庭裁判所の審判に付すべき少年を発見した者は、これを家庭裁判所に通告しなければならない。

 (少年保護司の報告)

第七条 少年保護司は、家庭裁判所の審判に付すべき少年を発見したときは、これを裁判官に報告しなければならない。

2 少年保護司は、前項の報告に先だち、少年及び保護者について、事情を調査することができる。

 (事件の調査)

第八条 家庭裁判所は、前二条の通告又は報告により、審判に付すべき少年があると思料するときは、事件について調査しなければならない。検察官、司法警察員、都道府県知事又は児童相談所長から家庭裁判所の審判に付すべき少年事件の送致を受けたときも、同様である。

2 家庭裁判所は、少年保護司に命じて、少年、保護者又は参考人の取調その他の必要な調査を行わせることができる。

 (調査の方針)

第九条 前条の調査は、なるべく、少年、保護者又は関係人の行状、経歴、素質、環境等について、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的智識を活用して、これを行うように努めなければならない。

 (附添人)

第十条 少年及び保護者は、家庭裁判所の許可を受けて、附添人を選任することができる。但し、弁護士を附添人に選任するには、家庭裁判所の許可を要しない。

2 保護者は、家庭裁判所の許可を受けて、附添人となることができる。

 (呼出、同行)

第十一条 家庭裁判所は、事件の調査について必要があると認めるときは、少年又は保護者に対して、呼出状を発することができる。

2 家庭裁判所は、正当の理由がなく前項の呼出に応じない者に対して、同行状を発することができる。

 (緊急の場合の同行)

第十二条 家庭裁判所は、少年が保護のため緊急を要する状態にあつて、その福祉上必要であると認めるときは、前条第二項の規定にかかわらず、その少年に対して、同行状を発することができる。

 (同行状の執行)

第十三条 同行状は、少年保護司がこれを執行する。

2 家庭裁判所は、警察官、警察吏員、観察官又は保護委員をして、同行状を執行させることができる。

 (証人尋問・鑑定・通訳・翻訳)

第十四条 家庭裁判所は、証人を尋問し、又は鑑定、通訳若しくは翻訳を命ずることができる。

2 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)中、裁判所の行う証人尋問、鑑定、通訳及び翻訳に関する規定は、保護事件の性質に反しない限り、前項の場合に、これを準用する。

 (検証、押収、捜索)

第十五条 家庭裁判所は、検証、押収又は捜索をすることができる。

2 刑事訴訟法中、裁判所の行う検証、押収及び捜索に関する規定は、保護事件の性質に反しない限り、前項の場合に、これを準用する。

 (援助、協力)

第十六条 家庭裁判所は、調査及び観察のため、警察官、警察吏員、観察官、保護委員、児童福祉司又は児童委員に対して、必要な援助をさせることができる。

2 家庭裁判所は、その職務を行うについて、公務所、公私の団体、学校、病院その他に対して、必要な協力を求めることができる。

 (観護の措置)

第十七条 家庭裁判所は、審判を行うため必要があるときは、決定をもつて、次に掲げる観護の措置をとることができる。

一 少年保護司の観護に付すること。

二 少年観護所に送致すること。

2 同行された少年については、観護の措置は、遅くとも、到着のときから二十四時間以内に、これを行わなければならない。検察官又は司法警察員から勾留又は逮捕された少年の送致を受けたときも、同様である。

3 第一項第二号の措置においては、少年観護所に収容する期間は、二週間を越えることはできない。特に継続の必要があるときは、一回に限り、決定をもつて、これを更新することができる。但し、検察官から再び送致を受けた事件が先に第一項第二号の措置がとられ、又は勾留状が発せられた事件であるときは、収容の期間は、これを更新することはできない。

4 裁判官が第四十三条第一項の請求により、第一項第一号の措置をとつた場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その措置は、これを第一項第一号の措置とみなす。

5 裁判官が第四十三条第一項の請求により第一項第二号の措置をとつた場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その措置は、これを第一項第二号の措置とみなす。この場合には、第三項の期間は、家庭裁判所が事件の送致を受けた日から、これを起算する。

6 観護の措置は、決定をもつて、これを取り消し、又は変更することができる。但し、第一項第二号の措置については、収容の期間は、通じて四週間を越えることはできない。

 (児童福祉法の措置)

第十八条 家庭裁判所は、調査の結果、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)の規定による措置を相当と認めるときは、決定をもつて、事件を権限を有する都道府県知事又は児童相談所長に送致しなければならない。但し、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けた事件については、この限りでない。

 (審判を開始しない旨の決定)

第十九条 家庭裁判所は、調査の結果、審判に付することができず、又は審判に付するのが相当でないと認めるときは、審判を開始しない旨の決定をしなければならない。

 (検察官への送致)

第二十条 家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮にあたる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照して刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。但し、送致のとき十六歳に満たない少年の事件については、これを検察官に送致することはできない。

 (審判開始の決定)

第二十一条 家庭裁判所は、調査の結果、審判を開始するのが相当であると認めるときは、その旨の決定をしなければならない。

 (審判の方式)

第二十二条 審判は、懇切を旨として、なごやかに、これを行わなければならない。

2 審判は、これを公開しない。

 (審判開始後保護処分に付しない場合)

第二十三条 家庭裁判所は、審判の結果、第十八条又は第二十条にあたる場合であると認めるときは、それぞれ、所定の決定をしなければならない。

2 家庭裁判所は、審判の結果、保護処分に付する必要がないと認めるときは、その旨の決定をしなければならない。

 (保護処分の決定)

第二十四条 家庭裁判所は、前条の場合を除いて、審判を開始した事件につき、決定をもつて、次に掲げる保護処分をしなければならない。

一 地方少年保護委員会の観察に付すること。

二 教護院又は養護施設に送致すること。

三 少年院に送致すること。

2 前項第一号及び第三号の保護処分においては、地方少年保護委員会をして、家庭その他の環境調整に関する措置を行わせることができる。

 (少年保護司の観察)

第二十五条 家庭裁判所は、前条第一項の保護処分を決定するため必要があると認めるときは、決定をもつて、相当の期間、少年保護司の観察に付することができる。

2 家庭裁判所は、前項の観察とあわせて、次に掲げる措置をとることができる。

一 遵守事項を定めてその履行を命ずること。

二 条件を附けて保護者に引き渡すこと。

三 適当な施設、団体又は個人に補導を委託すること。

 (決定の執行)

第二十六条 家庭裁判所は、第十七条第一項第二号、第十八条、第二十条及び第二十四条第一項の決定をしたときは、少年保護司、警察官、警察吏員、観察官、保護委員、児童福祉司又は児童委員をして、その決定を執行させることができる。

2 家庭裁判所は、第十七条第一項第二号、第十八条、第二十条及び第二十四条第一項の決定を執行するため必要があるときは、少年に対して、呼出状を発することができる。

3 家庭裁判所は、正当の理由がなく前項の呼出に応じない者に対して、同行状を発することができる。

4 第十三条の規定は、前項の同行状に、これを準用する。

 (競合する処分の調整)

第二十七条 保護処分の継続中、本人に対して有罪判決が確定したときは、保護処分をした家庭裁判所は、相当と認めるときは、その保護処分を取り消すことができる。

2 保護処分の継続中、本人に対して新たな保護処分がなされたときは、新たな保護処分をした家庭裁判所は、前の保護処分をした家庭裁判所の意見を聞いて、いずれかの保護処分を取消すことができる。

 (報告と意見の提出)

第二十八条 家庭裁判所は、第二十四条又は第二十五条の決定をした場合において、施設、団体、個人、地方少年保護委員会、児童福祉施設又は少年院に対して、少年に関する報告又は意見の提出を求めることができる。

 (委託費用の支給)

第二十九条 家庭裁判所は、第二十五条第二項第三号の措置として、適当な施設、団体又は個人に補導を委託したときは、その者に対して、これによつて生じた費用の全部又は一部を支給することができる。

 (証人等の費用)

第三十条 証人、鑑定人、翻訳人及び通訳人に支給する旅費、日当、宿泊料その他の費用の額については、刑事訴訟費用に関する法令の規定を準用する。

2 参考人は、旅費、日当、宿泊料を請求することができる。

3 参考人に支給する費用は、これを証人に支給する費用とみなして、第一項の規定を適用する。

 (費用の徴収)

第三十一条 家庭裁判所は、少年又はこれを扶養する義務のある者から証人、鑑定人、通訳人、翻訳人及び参考人に支給した旅費、日当、宿泊料その他の費用並びに少年観護所及び少年院において生じた費用の全部又は一部を徴収することができる。

2 前項の費用の徴収については、非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第二百八条の規定を準用する。

第三節 抗告

 (抗告)

第三十二条 保護処分の決定に対しては、決定に影響を及ぼす法令の違反、重大な事実の誤認又は処分の著しい不当を理由とするときに限り、少年、その法定代理人又は附添人から、二週間以内に、抗告をすることができる。但し、附添人は、選任者である保護者の明示した意思に反して、抗告をすることはできない。

 (抗告審の裁判)

第三十三条 抗告の手続がその規定に違反したとき、又は抗告が理由のないときは、抗告を棄却しなければならない。

2 抗告が理由のあるときは、原決定を取り消して、事件を原裁判所に差し戻し、又は他の家庭裁判所に移送しなければならない。

 (執行の停止)

第三十四条 抗告は、執行を停止する効力を有しない。但し、原裁判所又は抗告裁判所は、決定をもつて、執行を停止することができる。

 (再抗告)

第三十五条 抗告を棄却した決定に対しては、憲法に違反し、若しくは憲法の解釈に誤があること、又は最高裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所の判例と相反する判断をしたことを理由とする場合に限り、少年、その法定代理人又は附添人から、最高裁判所に対し、二週間以内に、特に抗告をすることができる。但し、附添人は、選任者である保護者の明示した意思に反して、抗告をすることはできない。

2 第三十四条の規定は、前項の場合に、これを準用する。

 (その他の事項)

第三十六条 この法律で定めるものの外、保護事件に関して必要な事項は、最高裁判所がこれを定める。

第三章 成人の刑事事件

 (公訴の提起)

第三十七条 次に掲げる成人の事件については、公訴は、家庭裁判所にこれを提起しなければならない。

一 未成年者喫煙禁止法(明治三十三年法律第三十三号)の罪

二 未成年者飲酒禁止法(大正十一年法律第二十号)の罪

三 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第五十六条又は少年についての第六十四条に関する第百十八条の罪、第六十条第二項若しくは第三項、少年についての第六十二条又は第六十三条(第三項を除く。)、第七十二条に関する第百十九条第一号の罪、第五十七条から第五十九条まで、少年についての第六十八条に関する第百二十条第一号の罪(これらの罪に関する第百二十一条の規定による事業主の罪を含む。)

四 児童福祉法第六十条の罪

2 前項に掲げる罪とその他の罪が刑法(明治四十年法律第四十五号)第五十四条第一項に規定する関係にある事件については、前項に掲げる罪の刑をもつて処断すべきときに限り、前項の規定を適用する。

 (事件の通告)

第三十八条 家庭裁判所は、少年に対する保護事件の調査又は審判により、前条に掲げる事件を発見したときは、これを検察官又は司法警察員に通知しなければならない。

 (地方裁判所への移送)

第三十九条 家庭裁判所は第三十七条に掲げる事件について、禁錮以上の刑を科するのを相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に移送しなければならない。

第四章 少年の刑事事件

第一節 通則

 (準拠法例)

第四十条 少年の刑事事件については、この法律で定めるものの外、一般の例による。

第二節 手続

 (司法警察員の送致)

第四十一条 司法警察員は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、罰金以下の刑にあたる犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。

 (検察官の送致)

第四十二条 検察官は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、第四十五条第五号本文に規定する場合を除いて、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。

 (勾留に代る措置)

第四十三条 検察官は、少年の被疑事件においては、裁判官に対して、勾留の請求に代え、第十七条第一項の措置を請求することができる。但し、第十七条第一項第一号の措置は、家庭裁判所の裁判官に対して、これを請求しなければならない。

2 前項の請求を受けた裁判官は、第十七条第一項の措置に関して、家庭裁判所と同一の権限を有する。

3 検察官は、少年の被疑事件においては、やむを得ない場合でなければ、裁判官に対して、勾留を請求することはできない。

 (勾留に代る措置の効力)

第四十四条 裁判官が前条第一項の請求に基いて第十七条第一項第一号の措置をとつた場合において、検察官は、捜査を遂げた結果、事件を家庭裁判所に送致しないときは、直ちに、裁判所に対して、その措置の取消を請求しなければならない。

2 裁判官が前条第一項の請求に基いて第十七条第一項第二号の措置をとるときは、令状を発してこれをしなければならない。

3 前項の措置の効力は、その請求をした日から十日とする。

 (検察官へ送致後の取扱)

第四十五条 家庭裁判所が、第二十条の規定によつて事件を検察官に送致したときは、次の例による。

一 第十七条第一項第一号の措置は、その少年の事件が再び家庭裁判所に送致された場合を除いて、検察官が事件の送致を受けた日から十日以内に公訴が提起されないときは、その効力を失う。公訴が提起されたときは、裁判所は、検察官の請求により、又は職権をもつて、いつでも、これを取り消すことができる。

二 前号の措置の継続中、勾留状が発せられたときは、その措置は、これによつて、その効力を失う。

三 第一号の措置は、その少年が満二十歳に達した後も、引き続きその効力を有する。

四 第十七条第一項第二号の措置は、これを勾留とみなし、その期間は、検察官が事件の送致を受けた日から、これを起算する。この場合において、その事件が先に勾留状の発せられた事件であるときは、この期間は、これを延長することはできない。

五 検察官は、家庭裁判所から送致を受けた事件について、公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑があると思料するときは、公訴を提起しなければならない。但し、送致を受けた事件の一部について公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑がないか、又は犯罪の情状等に影響を及ぼすべき新たな事情を発見したため、訴追を相当でないと思料するときは、この限りでない。送致後の情況により訴追を相当でないと思料するときも、同様である。

六 弁護士である附添人は、これを弁護人とみなす。

 (保護処分の効力)

第四十六条 罪を犯した少年に対して第二十四条第一項の保護処分がなされたときは、審判を経た事件について、刑事訴追をし、又は家庭裁判所の審判に付することはできない。

 (時効の停止)

第四十七条 第八条第一項前段の場合においては第二十一条の決定があつてから、第八条第一項後段の場合においては送致を受けてから、事件が家庭裁判所に係属中、公訴の時効は、その進行を停止する。

2 前項の規定は、第二十一条の決定又は送致の後、本人が満二十歳に達した事件についても、これを適用する。

 (勾留)

第四十八条 勾留状は、やむを得ない場合でなければ、少年に対して、これを発することはできない。

2 少年を勾留する場合には、少年観護所にこれを拘禁することができる。

3 本人が満二十歳に達した後でも、引き続き前項の規定によることができる。

 (取扱の分離)

第四十九条 少年の被疑者又は被告人は、他の被疑者又は被告人と分離して、なるべく、その接触を避けなければならない。

2 少年に対する被告事件は、他の被告事件と関連する場合にも、審理に妨げない限り、その手続を分離しなければならない。

3 拘置監においては、少年を成人と分離して収容しなければならない。

 (審理の方針)

第五十条 少年に対する刑事事件の審理は、第九条の趣旨に従つて、これを行わなければならない。

第三節 処分

 (死刑と無期刑の緩和)

第五十一条 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、死刑をもつて、処断すべきときは、無期刑を科し、無期刑をもつて処断すべきときは、十年以上十五年以下において、懲役又は禁錮を科する。

 (不定期刑)

第五十二条 少年に対して長期三年以上の有期の懲役又は禁錮をもつて処断すべきときは、その刑の範囲内において、長期と短期を定めてこれを言い渡す。但し、短期が五年を越える刑をもつて処断すべきときは、短期を五年に短縮する。

2 前項の規定によつて言い渡すべき刑については、短期は五年、長期は十年を越えることはできない。

3 刑の執行猶予の言渡をする場合には、前二項の規定は、これを適用しない。

 (少年観護所収容中の日数)

第五十三条 第十七条第一項第二号の措置がとられた場合においては、少年観護所に収容中の日数は、これを未決勾留の日数とみなす。

 (換刑処分の禁止)

第五十四条 少年に対しては、労役場留置の言渡をしない。

 (家庭裁判所への移送)

第五十五条 裁判所は、事実審理の結果、少年の被告人を保護処分に付するのが相当であると認めるときは、決定をもつて、事件を家庭裁判所に移送しなければならない。

 (懲役又は禁錮の執行)

第五十六条 懲役又は禁錮の言渡を受けた少年に対しては、特に設けた監獄又は監獄内の特に分界を設けた場所において、その刑を執行する。

2 本人が満二十歳に達した後でも、満二十六歳に達するまでは、前項の規定による執行を継続することができる。

 (刑の執行と保護処分)

第五十七条 保護処分の継続中、懲役、禁錮又は拘留の刑が確定したときは、先に刑を執行する。懲役、禁錮又は拘留の刑が確定してその執行前保護処分がなされたときも、同様である。

 (仮出獄)

第五十八条 少年のとき懲役又は禁錮の言渡を受けた者には、次の期間を経過した後、仮出獄を許すことができる。

一 無期刑については七年

二 第五十一条の規定により言い渡した有期の刑については三年

三 第五十二条第一項及び第二項の規定により言い渡した刑については、その刑の短期の三分の一

 (仮出獄期間の終了)

第五十九条 少年のとき無期刑の言渡を受けた者が、仮出獄を許された後、その処分を取り消されないで十年を経過したときは、刑の執行を受け終つたものとする。

2 少年のとき第五十一条又は第五十二条第一項及び第二項の規定により有期の刑の言渡を受けた者が、仮出獄を許された後、その処分を取り消されないで仮出獄前に刑の執行を受けた期間と同一の期間又は第五十一条の刑期若しくは第五十二条第一項及び第二項の長期を経過したときは、その何れか早い時期において、刑の執行を受け終つたものとする。

 (人の資格に関する法令の適用)

第六十条 少年のとき犯した罪により、刑に処せられてその執行を受け終り、又は執行の免除を受けた者は、人の資格に関する法令の適用については、将来に向つて刑の言渡を受けなかつたものとみなす。

2 少年のとき犯した罪について刑に処せられた者で刑の執行猶予の言渡を受けた者は、その猶予期間中、刑の執行を受け終つたものとみなして、前項の規定を適用する。

3 前項の場合において、刑の執行猶予の言渡を取り消されたときは、人の資格に関する法令の適用については、その取り消されたとき、刑の言渡があつたものとみなす。

第五章 雑則

 (記事等の掲載の禁止)

第六十一条 家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。

附 則

 (施行期日)

第六十二条 この法律は、昭和二十四年一月一日から、これを施行する。

 (経過規定)

第六十三条 この附則で「新法」とは、この法律による改正後の少年法をいい、「旧法」とは、従前の少年法(大正十一年法律第四十二号)をいう。

2 この法律施行の際少年審判所に係属中の事件は、これを家庭裁判所に係属したものとみなす。

3 前項の場合において、旧法第三十七条の規定によりなされた処分は、次の例に従い、これを新法第十七条の規定によりなされた措置とみなす。  

旧法第三十七条

新法第十七条

第一項第一号から第四号までの処分

第二項の処分

第一項第一号の措置

第一項第二号の措置

4 旧法第四条第一項第五号から第九号までの保護処分は、次の例に従い、これを新法第二十四条又は第二十五条の規定によりなされたものとみなす。

旧法第四条

新法

第一項第五号(保護団体に委託する保護処分を除く。)及び第九号の保護処分

第二十五条第一項及び第二項第三号

第一項第五号中保護団体に委託する保護処分及び第六号の保護処分

第二十四条第一項第一号

第一項第七号の保護処分

第二十四条第一項第二号

第一項第八号の保護処分

第二十四条第一項第三号

5 前二項に規定するものの外、旧法の規定によりなされた処分は、この法律の相当規定によりなされたものとみなす。

第六十四条 この法律施行前言渡を受けた刑においては、第五十八条及び第五十九条の適用については、「第五十一条」及び「第五十二条第一項及び第二項」とあるのは、それぞれ、「旧法第七条第一項」及び「旧法第八条第一項及び第二項」と読み替えるものとする。

第六十五条 この法律施行前、十六歳に満たないで刑法第二百条の罪以外の罪を犯した者に対しては、なお旧法第七条第一項の例による。刑法第二百条の罪を犯した者に対しては、第五十一条の規定を適用する。

第六十六条 旧法第四条の保護処分を受けた少年に対しては、旧法第六十三条の規定により刑事訴追をすることのできない事件について、刑事訴追をし、又は家庭裁判所の審判に付することはできない。

第六十七条 第六十条の規定は、この法律施行前、少年のとき犯した罪により死刑又は無期刑に処せられ、減刑その他の事由で刑期を満了し、又は刑の執行の免除を受けた者に対しても、これを適用する。

第六十八条 この法律施行後一年間、第二条第一項の規定にかかわらず、少年は、これを十八歳に満たない者とし、成人は、これを満十八歳以上の者とする。

2 前項の適用については、第四十五条第三号、第四十七条第二項、第四十八条第三項及び第五十六条第二項の「二十歳」とあるのは、これを「十八歳」と読み替えるものとする。

(法務総裁・厚生・内閣総理大臣署名)

 

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