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法律第二百六号(昭二三・八・一)

◎経済調査庁法

第一章 中央経済調査庁

第一条 内閣総理大臣の管理の下に、中央経済調査庁を置く。

2 中央経済調査庁は、国民経済の調和ある復興を図るため、物資の生産、配給及び消費並びに物価(賃金を除く。)に関する経済統制を円滑に実施することを目的として左の事務を掌る。

 一 経済統制の励行の確保に関する全国並びに管区経済調査庁及び地方経済調査庁の各管轄区域における計画の立案に関する事項

 二 経済法令(別表第一に掲げる法令及び政令で指定される法令並びに当該法令に基き発せられた命令をいう。以下同じ。)の遵守の奨励その他経済法令に関する違反行為の予防のためにする一般国民の啓発に関する事項

 三 行政機関の行う経済法令に関する経済施策の実施に対する監査に関する事項

 四 経済法令に関する違反行為の調査に関する事項

 五 経済法令に関する違反行為について、警察その他の行政機関の行う予防及び捜査に対する勧告及び協力に関する事項

 六 経済法令の規定の趣旨についての警察官及び警察吏員の啓発に関する事項

 七 経済法令に関する違反行為について、警察その他の行政機関の行う予防及び捜査の状況並びにその改善についての一般的情報収集(個々の事件の捜査に関する証拠についての情報収集を除く。)に関する事項

 八 隠退蔵物資の調査及び供出の促進に関する事項

第二条 中央経済調査庁に長官一人、次長一人及び部長三人並びに政令の定めるところにより経済調査官その他所要の職員を置く。

第三条 中央経済調査庁に中央経済調査庁官房、監査部、査察部及び物資調査部を置く。

2 官房及び各部の分掌事項及び分課は、長官が、これを定める。

第四条 長官は、国務大臣を以て、これに充てる。

2 長官は、庁務を統理し、部下の職員を指揮監督する。

3 次長は、長官を補佐し、庁務を掌理する。

4 部長は、経済調査官を以て、これに充てる。部長は、上官の命を受けて、部の事務を掌理する。

第五条 中央経済調査庁の職員は、国家公務員法の規定に従つて、これを任命する。

第六条 第一条第二項の事務に関し中央経済調査庁及び関係各庁の間の連絡調整を図るため、中央経済調査庁に、中央経済調査委員会を置く。

2 委員会は、委員長及び委員を以て、これを組織する。

3 委員長は、次長を以て、委員は、法務庁、最高検察庁、経済安定本部、物価庁、中央経済調査庁及び国家地方警察本部の官吏並びに大蔵、厚生、農林、商工、運輸及び建設の各省部内の官吏の中から、内閣総理大臣が、これを任命する。

4 委員会は、第一条第二項の事務について、長官に建議することができる。

5 前四項に規定するものの外、委員会に関し必要な事項は、長官が、これを定める。

第二章 管区経済調査庁

第七条 全国を八経済調査管区に分ち、各経済調査管区に、管区経済調査庁を置く。

2 管区経済調査庁は、内閣総理大臣の管理に属し、当該経済調査管区における第一条第二項の事務を掌る。

3 経済調査管区の区域及び名称並びに管区経済調査庁の位置及び名称は、別表第二による。

第八条 各管区経済調査庁に庁長一人、部長二人及び総務課長一人並びに政令の定めるところにより経済調査官その他所要の職員を置く。

第九条 各管区経済調査庁に総務課、監査部及び査察部を置く。

2 総務課及び各部の分掌事項並びに各部の分課は、庁長が、これを定める。

第十条 庁長は、経済調査官を以て、これに充てる。庁長は、中央経済調査庁長官の指揮監督を受け、庁務を掌理し、部下の職員を指揮監督する。

2 部長は、経済調査官を以て、これに充てる。部長及び総務課長は、庁長の命を受けて、部又は課の事務を掌理する。

第十一条 管区経済調査庁の職員は、国家公務員法の規定に従つて、これを任命する。

第十二条 各経済調査管区における第一条第二項の事務に関し管区経済調査庁及び関係各庁の間の連絡調整を図るため、各管区経済調査庁に、管区経済調査委員会を置く。

2 委員会は、委員長及び委員を以て、これを組織する。

3 委員長は、庁長を以て、委員は、第六条第三項に規定する各省各庁部内の地方行政機関の職員(北海道にあつては北海道知事を含む。)及び高等検察庁の官吏の中から、中央経済調査庁長官が、これを任命する。

4 委員会は、当該経済調査管区における第一条第二項の事務について、庁長に建議することができる。

5 前四項に規定するものの外、委員会に関し必要な事項は、中央経済調査庁長官が、これを定める。

第三章 地方経済調査庁

第十三条 都府県の区域ごとに、地方経済調査庁を置く。北海道に四以内の地方経済調査庁を置く。

2 地方経済調査庁は、内閣総理大臣の管理に属し、当該区域における第一条第二項第一号、第二号、第四号乃至第八号の事務を掌る。

第十四条 各地方経済調査庁に庁長一人及び政令の定めるところにより経済調査官その他所要の職員を置く。

第十五条 庁長は、経済調査官を以て、これに充てる。庁長は、管区経済調査庁長の指揮監督を受け、庁務を掌理し、部下の職員を指揮監督する。

第十六条 地方経済調査庁の職員は、国家公務員法の規定に従つて、これを任命する。

第十七条 各地方経済調査庁の管轄区域における第一条第二項第一号、第二号、第四号乃至第八号の事務に関し、地方経済調査庁及び関係各庁の間の連絡調整を図るため、各地方経済調査庁に、地方経済調査委員会を置く。

2 委員会は、委員長及び委員を以て、これを組織する。

3 委員長は、庁長を以て、委員は、第六条第三項に規定する各省各庁部内の地方行政機関(都道府県国家地方警察本部を含む。)及び地方検察庁の官吏並びに関係各庁の吏員の中から、管区経済調査庁長が、これを任命する。

4 委員会は、当該地方経済調査庁の管轄する区域における第一条第二項第一号乃至第六号及び第八号の事務について、地方経済調査庁長に建議することができる。

5 前四項の規定するものの外、委員会に関し必要な事項は、中央経済調査庁長官が、これを定める。

第四章 経済調査官の定員及び権限

第十八条 経済調査官の定員は、全国を通じて三千五百人を超えてはならない。

第十九条 経済調査官は、上官の命を受け、第一条第二項各号の事務を掌る。

2 経済調査官は、経済法令に関する違反事件を調査するため必要な取調をすることができる。但し、強制の処分は、この法律又は他の法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。

3 経済調査官は、前項の調査について、公務所に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

第二十条 経済調査官は、経済法令に関する違反事件を調査するため必要があるときは、適当な裁判所の裁判官から臨検、捜索又は差押の許可状を受けることができる。

2 前項の許可状の請求は、経済法令に関する違反事件があると疑うにたりる相当の理由を宣誓により明示した書面を提出して、これをしなければならない。

3 第一項の許可状の請求があつた場合、裁判官は、経済法令に関する違反事件があると疑うにたりる相当の理由があると認めるときは、臨検すべき場所、捜索すべき場所、身体若しくは物件又は差押すべき物件、請求者の官職及び氏名、有効期間並びに所属裁判所を記載し且つ自己の氏名を記し、押印をした許可状を経済調査官に交付しなければならない。この場合において、違反嫌疑者の氏名及び理由となつている違反事実が明らかなときは、裁判官は、これらの事項をも記載しなければならない。

4 経済調査官は、第一項の許可状を他の経済調査官に交付して、調査をさせることができる。

5 経済調査官は、第一項の許可状に基き調査をするときは、許可状の執行に従い且つ差押及び身体についての捜索をする所轄の警察官又は警察吏員を同行しなければならない。

6 経済調査官は、第一項の許可状に基く調査をすることができるが、差押及び身体についての捜索は、警察官又は警察吏員に限りこれをすることができる。

第二十一条 経済調査官は、経済法令に関する現行犯人を逮捕する場合においては、前条第一項の許可状を受けないで、その違反現場で、臨検、捜索又は差押をすることができる。但し、差押をしたときは、関係人に受領書を交付し、且つ差押物件を二十四時間以内に警察官又は警察吏員に引き渡さなければならない。

第二十二条 経済調査官は、職務を行うにあたつては、その身分を証明すべき証票を携帯し、関係人の請求があるときは、これを示さなければならない。

第二十三条 経済調査官は、捜索をしたときは、その始終を記載し、立会人に示し、ともに署名押印しなければならない。立会人が署名せず又は署名押印することができないときはその旨を附記しなければならない。

第二十四条 経済調査官は、経済法令に関する違反事件を調査するため必要があるときは、適当な裁判所の裁判官の許可状を受けて警察官又は警察吏員を同行し、その者に違反嫌疑者の逮捕を求めることができる。

2 前項の許可状の請求については、第二十条第二項の規定を準用する。

3 第一項の許可状の請求があつた場合、裁判官は、経済法令に関する違反事件があると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、違反嫌疑者の氏名及び住所、請求者の氏名及び官職、有効期間並びに所属裁判所を記載し、違反事実を明示し、且つ自己の氏名を記し、押印した許可状を経済調査官に交付しなければならない。

4 経済調査官は、第一項の許可状を他の経済調査官に交付し、その者に同項の権限を行わせることができる。

5 経済調査官は、経済法令に関する現行犯人がその場所にいるときは、許可状を受けないで、これを逮捕することができる。現行犯人を逮捕した場合、経済調査官は、留置の必要のあるときは、これを警察官又は警察吏員に引き渡さなければならない。この場合、警察官又は警察吏員がその身柄を検察官に送致するのは、経済調査官が現行犯人を逮捕したときから四十八時間を超えてはならない。

第二十五条 経済調査官は、前条第五項の規定により現行犯人を逮捕して引き渡し、又は第二十一条の規定により物件を差し押えて引き渡し、前条第一項又は第二十条の規定により警察官若しくは警察吏員違反嫌疑者を逮捕し、又は物件の差押をしたときは、事件を告発するまでは、何時でも違反嫌疑者を取り調べ、差押物件につき調査することができる。

2 経済調査官が、現行犯人を逮捕し又はその求めにより警察官若しくは警察吏員が違反嫌疑者を逮捕したときの事件の告発その他の処理については、刑事訴訟に関する法令の規定を準用する。

第二十六条 経済調査官は、違反事件の調査によつて心証を得たときは、検察官に事件を告発しなければならない。

第二十七条 経済調査官は、経済法令に関するいかなる違反事件についても、又いかなる地域においても、その職務を行うことができる。

第二十八条 この法律の規定による警察官又は警察吏員の行為については、刑事訴訟に関する法令の規定を準用する。

第五章 補則

第二十九条 警察官又は警察吏員は、経済調査官から第二十条第五項の規定による同行を求められ、又は第二十四条第一項の規定による違反嫌疑者の逮捕を求められたときは、これに応じなければならない。

第三十条 管区経済調査庁長又は地方経済調査庁長は、経済調査官の行う経済法令に関する違反事件の調査につき必要がある場合には、その管轄する区域内の都道府県警察長又は市町村警察長に対して、実力による応援を求めることができる。

2 都道府県警察長又は市町村警察長は、前項の規定により応援を求められたときは、できる限り、これに応じなければならない。

第三十一条 警察その他の行政機関は、第一条第二項第五号、第七条第二項又は第十三条第二項の規定による勧告があつたときは、できる眼り、これに基いて経済法令に関する違反行為の予防及び捜査を行わなければならない。

第三十二条 経済調査官は、第一条第二項第七号、第七条第二項又は第十三条第二項の規定による情報収集の結果、経済法令に関する違反行為につき警察その他の行政機関の行う予防又は捜査の措置が相当でないと思料するときは、その是正に関する意見を中央経済調査庁長官に具申しなければならない。

2 中央経済調査庁長官は、第一条第二項第七号の規定による情報収集の結果、又は前項の規定による具申により経済法令に関する違反行為につき警察その他行政機関の行う予防又は捜査の措置が相当でないと思料するときは、その是正に関し、当該行政機関の行う捜査又は予防についての最高監督機関に勧告することができる。

第三十三条 中央経済調査庁長官は、第一条第二項第三号又は第七条第二項の規定による監査の結果必要があるときは、経済安定本部総裁に対し、経済安定本部令第十五条の規定による命令を発するように意見を具申することができる。

第三十四条 中央経済調査庁長官は、命令の定めるところにより経済統制を円滑に実施するため必要があるときは、その所管事項について、物資の生産又は配給の事業を営む者に対し、帳簿の作成又は報告書の提出を命じ、経済調査官をして当該帳簿を検査させることができる。

2 中央経済調査庁長官及び管区経済調査庁長は、第一条第二項又は第七条第二項の規定による監査をするため必要があるときは、行政機関から報告を求めることができる。

第三十五条 前条第一項の規定による帳簿の作成又は報告書の提出をせず、若しくは帳簿又は報告書に虚欺の記載をした者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。

第三十六条 この法律は、経済法令に関する違反事件を積極的に捜査すべき警察官及び警察吏員その他の行政機関の責務を軽減するものではない。

附 則

第三十七条 この法律は、公布の日から、これを施行する。

経済調査庁の職員については、国家公務員法の規定が適用せられるまでの間、次の規定を適用する。

 一 中央経済調査庁の次長は、一級とする。中央経済調査庁におかれる一級の官吏の定員は、四人とする。

 二 中央経済調査庁の長官は、部内の三級の官吏の進退を専行する。

 三 中央経済調査庁の部長は、一級の経済調査官を以て、これに充てる。

 四 各管区経済調査庁に置かれる一級の官吏の定員は、三人とする。

 五 管区経済調査庁長は、一級の経済調査官を以て、これに充てる。庁長は、管区経済調査庁及び地方経済調査庁の三級の官吏の進退を専行する。

 六 管区経済調査庁の部長は、一級の経済調査官を以て、総務課長は、二級の官吏を以てこれに充てる。

 七 地方経済調査庁に置かれる一級の官吏の定員は、通じて八人以内とする。

 八 地方経済調査庁長は、一級又は、二級の経済調査官を以て、これに充てる。

第三十八条 経済安定本部令の一部を次のように改正する。

2 第一条中「各庁事務の総合調整及び推進並びに施策の実施に関する監査及びこれに関連する経済統制の励行」を「並びに各庁事務の総合調整及び推進」に改める。

3 第三条第一項中

経済安定本部副長官

三人

 

一級

を、

経済安定本部副長官

二人

 

一級

に改め、

経済安定本部経済査察官

専任 二百六十四人

専任 四百五人

 

二級

三級

 

内九人を一級とすることができる。

を削る。

4 第四条中「並びに地方経済安定局長」を削り、

総理庁事務官又は総理庁技官

専任 五百八十一人

専任 六百三人

 

二級

三級

 

内三十八人を一級とすることができる。

を、

総理庁事務官又は総理庁技官

専任   五百五十八人

専任   五百七十二人

 

二級

三級

 

内二十八人を一級とすることができる。

に改める。

5 第十一条 削除

6 第十四条中「、部員又は地方経済安定局長」を、「又は部員」に改める。

第三十九条 大正十二年勅令第五百二十八号(司法警察官吏及び司法警察官吏の職務を行うべき者の指定等に関する件)の一部を次のように改正する。

2 第二条の二を削る。

別表第一

 一 電気事業法(第十五条の三に係る部分に限る)

 二 食糧管理法

 三 食糧緊急措置令

 四 隠匿物資等緊急措置令

 五 物価統制令

 六 地代家賃統制令

 七 臨時物資需給調整法

 八 ベンゾールの使用制限に関する件(昭和二十一年商工省令第四十八号)

 九 飲食営業緊急措置令

別表第二

経済調査管区の区域

経済調査管区の名称

管区経済調査庁の位置

管区経済調査庁の名称

東京都 神奈川県 埼玉県 千葉県 栃木県 茨城県 群馬県 新潟県 長野県 山梨県

東京経済調査管区

東京都

東京管区経済調査庁

大阪府 京都府 兵庫県 奈良県 和歌山県 滋賀県 福井県

大阪経済調査管区

大阪市

大阪管区経済調査庁

北海道

札幌経済調査管区

札幌市

札幌管区経済調査庁

宮城県 岩手県 福島県 秋田県 青森県 山形県

仙台経済調査管区

仙台市

仙台管区経済調査庁

愛知県 静岡県 三重県 岐阜県 富山県 石川県

名古屋経済調査管区

名古屋市

名古屋管区経済調査庁

広島県 山口県 岡山県 鳥取県 島根県

広島経済調査管区

広島市

広島管区経済調査庁

香川県 愛媛県 徳島県 高知県

高松経済調査管区

高松市

高松管区経済調査庁

福岡県 熊本県 大分県 長崎県 佐賀県 鹿児島県 宮崎県

福岡経済調査管区

福岡市

福岡管区経済調査庁

(内閣総理大臣・法務総裁署名)

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