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法律第百四十九号(昭二四・五・三一)

◎文部省著作教科書の出版権等に関する法律

 (著作権の管理)

第一条 文部省が著作の名義を有する教科書(以下単に「教科書」という。)の著作権は、文部大臣が管理するものとする。

2 文部大臣は、教科書の出版権(以下単に「出版権」という。)を設定することができる。

3 この法律で「著作権」とは、著作権法(明治三十二年法律第三十九号)第一条に定める権利を、「出版権」とは、同法第二十八条ノ二の規定により設定する権利をいう。

 (資格審査)

第二条 出版権を取得しようとする者は、その資格について文部大臣の審査を受けなければならない。

2 前項の審査は、教育上支障を生じないことを期するために、出版権を取得しようとする者が良質の教科書を学校において必要とする時期までに製造供給するにたる事業能力及び信用状態を有するかどうかを、第四条の規定による競争を行わせるに先立つて審査することを目的とする。

 (教科書出版資格審査会)

第三条 文部大臣は、前条の審査を行うに当つては、教科書出版資格審査会(以下「審査会」という。)に諮問しなければならない。

2 審査会は、審査員二十人以内で組織する。

3 前項の審査員は、学識経験者及び関係各省各庁の職員の中から、文部大臣が任命する。

4 前三項に定めるものを除くほか、審査会に関して必要な事項は、政令で定める。

 (出版権設定契約の方式)

第四条 出版権の設定は、第二条の審査に合格した者の競争によつて行う。但し、競争に付するいとまがないときは、第二条の審査に合格した者との随意契約によることができる。

 (保証金)

第五条 競争に加わろうとする者は、現金又は国債をもつて、その見積つた予定製造原価に最初に発行する予定部数を乗じて得た額の百分の一以上の保証金を納めなければならない。

2 競落者が契約を結ばないときは、保証金は、国庫に帰属する。

 (入札)

第六条 競争は、教科書一部当りの製造原価について入札の方法によつて行い、文部大臣の予定した製造原価以内において最も低額の入札をした者に出版権を設定するものとする。

2 競争に付しようとするときは、その入札期日の前日から起算し少くとも十日前に、官報、新聞紙、掲示その他の方法をもつて公告しなければならない。但し、急を要する場合においては、その期間を五日までに短縮することができる。

3 前項の規定による公告は、左に掲げる事項について行うものとする。

一 教科書の種類及び最初に発行を予定される部数

二 契約条項を示す場所

三 製造原価の算出の基礎

四 競争執行の場所及び日時

五 入札の保証金額に関する事項

4 前項第三号の製造原価の算出の基礎については、あらかじめ文部省令で定める。

5 文部大臣又はその委任を受けた官吏は、競争入札に付する教科書の製造原価を予定し、その予定製造原価を封書にし、開札の際これを開札場所に置かなければならない。

6 教科書の定価は、第一項の規定による製造原価の入札価格を基準として算定するものとする。

 (開札)

第七条 開札は、公告に示した場所及び日時において、入札者の面前において行わなければならない。但し、入札者で出席しない者があるときは、入札事務に関係のない官吏をして開札に立ち合わせなければならない。

2 入札者は一旦提出した入札書の引換、変更又は取消をすることができない。

 (再度の入札)

第八条 開札の場合において各人の入札のうち、第六条第五項の規定により予定した製造原価の制限に達したものがないときは、直ちに、再度の入札をすることができる。

 (落札者の決定)

第九条 落札となるべき同価の入札をした者が二人以上あるときは、直ちに、くじで落札者を定めなければならない。

2 前項の場合において、当該入札者のうち出席しない者又はくじを引かない者があるときは、入札事務に関係のない官吏をしてこれに代りくじを引かせることができる。

 (再入札公告の期間)

第十条 入札者若しくは落札者がない場合又は落札者が契約を結ばない場合において、更に入札に付しようとするときは、第六条第二項の期間は、五日までに短縮することができる。

 (発行義務)

第十一条 出版権の設定を受けた者(以下「出版権者」という。)は、教料書の発行に関する臨時措置法(昭和二十三年法律第百三十二号)第八条の規定により、文部大臣が都道府県教育委員会の報告した教科書の需要数を基礎にして発行すべき教科書の種類及び部数を指示したときは、その指示した発行を引き受けなければならない。

 (製造原価の改定)

第十二条 出版権の存続期間中物価の変動その他やむを得ない事由によつて、出版権者の引き受けた製造原価を変更する必要が生じたときは、文部大臣は、出版権者と協議してこれを改定することができる。

 (出版料納付の義務)

第十三条 出版権者は、発行の指示があつたときは、すみやかに発行の指示があつた部数に応じ、定価(出版料相当額を除く。)の百分の二から百分の十六・六までの範囲内で文部省令の定めるところにより算定した額の出版料を国庫に納付しなければならない。但し、文部大臣は、発行の指示があつた日から四箇月を限度として、出版料納付の時期を定めることができる。

 (出版料の減免)

第十四条 文部大臣は、出版権者が災害その他出版権者の責に帰することのできない事由によつて教科書の全部若しくは一部の製造供給ができなくなり、出版料の納付が困難であると認められるとき、又は教科書の発行部数が五万部を越えない場合において、義務教育上の見地から特にその定価をやすくする必要があると認められるときは、出版料を軽減し、又は免除することができる。

 (出版権の消滅)

第十五条 左の各号の一に該当する事由がある場合には、文部大臣は、出版権を消滅させることができる。

一 出版権者の事業能力、信用状態が出版権設定当時の状況より低下し、教育上支障のないように教科書を製造供給することができないと認められるに至つたとき。

二 第十一条又は第十三条に規定する義務を怠つたとき。

三 教科書の発行に関する臨時措置法第十四条又は第十五条の規定により文部大臣が発行の指示を取り消したとき。

2 文部大臣が前項第一項の認定をするときは、審査会に諮問しなければならない。

3 第十二条の協議がととのわないときは、出版権者又は文部大臣は、出版権を消滅させることができる。

第十六条 出版権が消滅したときは、文部大臣は、出版権の設定をしていた者に対して、消滅の際に有した教科書、その半製品及び版型について、新たに第四条の規定により文部大臣が出版権を設定した者を譲渡に関する協議をすることを命ずることができる。

2 前項に規定する協議の命令は、出版権の消滅の日から一箇月を経過したときは、行うことができない。

3 第一項の協議がととのわないとき、又は協議することができないときは、譲渡に関して文部大臣が裁定する。

4 前項の裁定があつたときは、その裁定の定めるところにより当事者間に協議がととのつたものとみなす。

5 第三項の裁定中対価について不服のある譲渡の当事者は、その裁定の通知を受けた日から三筒月以内に、訴をもつてその金額の増減を請求することができる。

6 前項の訴においては、譲渡の当事者の一方を被告とする。

 (出版権の譲渡等)

第十七条 出版権は文部大臣の認可を経なければ、譲渡することができない。

2 第十一条の規定は、前項の規定によつて出版権を譲り受けた者に準用する。

3 出版権は、質入することができない。

 (他の図書への準用)

第十八条 この法律の規定は、政令の定めるところにより、文部省が著作の名義を有する教科書以外の教授上用いられる図書に準用する。

 (他の法令の適用)

第十九条 教科書の著作権の管理及び出版権の設定に関してこの法律に定のない事項については、その性質に反しない限り、著作権法、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)、会計法(昭和二十二年法律第三十五号)、及び国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)並びにこれらの法律の規定に基く命令の規定を適用するものとする。

 (施行政令)

第二十条 この法律の実施のための手続その他の施行について必要な事項は、政令で定める。

附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。

2 この法律施行の際現に教科書の出版を行つている者の出版に関する権利は、この法律の規定によつて設定された出版権とみなす。

3 昭和二十三年十月一日から昭和二十五年三月三十一日までの間に出版に関する権利の消滅する教科書について、その出版権を新たに設定する場合には、競争を行わせることが教科書の製造供給を教育上必要とする時期に間に合わせるためには不適当と認められる場合に限り、第四条本文の規定にかかわらず、随意契約によることができる。

4 前項の規定によつて随意契約によることのできる教科書の種類は、教科用図書審議会の議を経て、文部大臣が定める。

(大蔵・文部・内閣総理大臣署名)

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