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法律第五十三号(昭二五・三・三一)

  ◎松くい虫等その他の森林病害虫の駆除予防に関する法律

 (目的)

第一条 この法律は、松くい虫等その他の森林病害虫を早期に、且つ、徹底的に駆除し、及びそのまん延を防止し、もつて森林の保全を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「松くい虫等」とは、松、杉その他の樹木に附着してその生育を害するせん孔虫類をいう。

2 この法律において「伐採木等」とは、伐採された樹木その他土地から分離した樹木の幹及び枝条(用材及び薪炭材であるものを含む。)であつてはく皮しないものをいう。

 (駆除命令)

第三条 農林大臣は、松くい虫等が異常にまん延して森林資源に重大な損害を与えるおそれがあると認めるときは、早期に、且つ、徹底的に、これを駆除し、又はそのまん延を防止するため必要な限度において、区域及び期間を定め、左の各号に掲げる命令をすることができる。

 一 松くい虫等の附着している樹木を所有し、又は管理する者に対し、当該樹木の伐倒及びはく皮並びに松くい虫等及びその附着している枝条及び樹皮の焼却を命ずること。

 二 伐採跡地を所有し、又は管理する者に対し、松くい虫等が附着し、又は附着するおそれがある根株のはく皮並びに松くい虫等及びその附着している枝条及び樹皮の焼却を命ずること。

 三 松くい虫等が附着している伐採木等の移動を制限し、又は禁止すること。

 四 松くい虫等が附着し、又は附着するおそれがある伐採木等を所有し、又は管理する者に対し、そのはく皮又は枝条及び樹皮の焼却の措置を命ずること。

2 前項の規定による命令で第八条の規定により損失の補償を伴うものは、これによつて必要となる補償金の総額が国会の議決を経た予算の金額をこえない範囲内においてしなければならない。

3 第一項の規定による命令をしようとするときは、その三十日前までに、省令で定める手続に従い、左の事項を公表しなければならない。

 一 区域及び期間

 二 松くい虫等の種類

 三 行うべき措置の内容

 四 その他必要な事項

4 前項第一号の区域内において森林、樹木又は伐採木等を所有する者は、同項の規定による公表があつた日から二週間以内に、理由を記載した書面をもつて農林大臣に不服の申立をすることができる。

5 農林大臣は、前項の規定による不服の申立を受けたときは、その者に対し、あらかじめ期日及び場所を通知して、公開による聴聞を行い、その者又はその代理人が証拠を呈示し、意見を述べる機会を与えた後、当該申立に対する決定をしなければならない。

6 農林大臣は、第一項の命令を受けるべき者の所在が知れないときその他当該命令をその者に通達することができないときは、省令で定める手続に従い、当該命令の内容を公告して通達に代えることができる。

 (駆除措置)

第四条 農林大臣は、前条第一項第一号、第二号又は第四号に掲げる命令をした場合において、森林、樹木又は伐採木等の所有者又は管理者が指定された期間内に命ぜられた措置を行わないときは、当該措置の全部又は一部を行うことができる。

2 農林大臣は、前項の規定により松くい虫等の駆除又はそのまん延を防止するための措置を行う場合において必要があるときは、都道府県に協力を求めることができる。

 (都道府県知事の駆除命令等)

第五条 都道府県知事は、松くい虫等を駆除し、又はそのまん延を防止するため必要があるときは、その必要の限度において、区域及び期間を定め、第三条第一項各号に掲げる命令をすることができる。

2 前項の場合には、第三条第三項から第六項まで及び前条第一項の規定を準用する。

 (立入検査)

第六条 農林大臣又は都道府県知事は、松くい虫等を駆除し、又はそのまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該官吏又は森林害虫防除員に、森林又は貯木場、倉庫その他伐採木等を蔵置する場所に立ち入らせ、樹木又は伐採木等を検査させ、又は検査のため必要な最少量に限り、無償で、樹皮又は枝条を収去させることができる。

2 前項の規定により立入検査又は収去をする当該官吏及び森林害虫防除員は、その身分を示す証票を携帯し、関係者の要求があるときは、これを呈示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査及び収去の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 (指示権)

第七条 当該官吏又は森林害虫防除員は、前条第一項の規定による検査の結果、伐採木等に松くい虫等が附着し、又は附着するおそれがあると認めるときは、当該伐採木等の所有者又は管理者に対し、はく皮、枝条及び樹皮の焼却等の措置を行うべき旨を指示することができる。

2 前項の指示を受けた者がその指示に従わないときは、当該官吏又は森林害虫防除員は、当該伐採木等につき、自らはく皮、焼却等の処分をすることができる。

 (損失補償)

第八条 国又は都道府県は、第三条第一項若しくは第五条第一項の規定による命令又は前条第二項の規定により当該官吏若しくは森林害虫防除員の行う処分により損失を受けた者に対し、損失を補償しなければならない。

2 前項の規定による補償の額は、第三条第一項第一号、第二号又は第四号の命令に係る場合にあつては、幹若しくは根株のはく皮又は枝条及び樹皮の焼却の措置を行うのに通常要すべき費用に相当する金額とし、同項第三号の命令又は前条第二項の処分に係る場合にあつては、その命令又は処分により通常生ずべき損失額に相当する金額とする。

3 第一項の補償を受けようとする者は、農林大臣又は都道府県知事に、補償を受けようとする見積額を記載した申請書を提出しなければならない。

4 農林大臣又は都道府県知事は、前項の申請があつたときは、遅滞なく補償すべき金額を決定し、当該申請人に通知しなければならない。

5 申請人は、前項の決定について不服があるときは、農林大臣又は都道府県知事に訴願することができる。

 (国庫補助)

第九条 国は、都道府県に対し、予算の定める範囲内において、この法律の規定により都道府県知事の行う松くい虫等の駆除又はそのまん延の防止に関する措置に要する費用の一部を補助することができる。

 (分担金)

第十条 都道府県は、第五条第一項若しくは同条第二項において準用する第四条第一項の規定により都道府県知事が行う松くい虫等の駆除若しくはそのまん延の防止のため必要な措置又は第七条第二項の規定により森林害虫防除員の行う処分により利益を受ける森林、樹木又は伐採木等の所有者又は管理者から、その者の受ける利益を限度として、地方自治法(昭和二十三年法律第六十七号)第二百十七条の分担金を徴収することができる。

 (森林害虫防除員)

第十一条 この法律に規定する松くい虫等の駆除又はそのまん延の防止の事務に従事させるため、都道府県に森林害虫防除員を置き、当該都道府県の吏員をもつてあてる。

 (特例)

第十二条 松くい虫等以外の森林害虫又は獣類、菌類若しくはバイラスが異常にまん延して森林資源に重大な損害を与えるおそれがあり緊急にこれを駆除し、又はそのまん延を防止する必要があるときは、第三条から第十条までの規定に準じ、一年以内の期間を限り、政令でその駆除又はまん延の防止のため必要な事項を定めることができる。

 (罰則)

第十三条 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。

 一 農林大臣又は都道府県知事の第三条第一項第三号に掲げる命令に違反した者

 二 第四条第一項(第五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による処分を拒み、妨げ、又は忌避した者

第十四条 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。

 一 農林大臣又は都道府県知事の第三条第一項第四号に掲げる命令に違反した者

 二 第七条第二項の規定による処分を拒み、妨げ、又は忌避した者

第十五条 第六条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、一万円以下の罰金に処する。

第十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

   附 則

1 この法律は、昭和二十五年四月一日から施行する。

2 森林法(明治四十年法律第四十三号)の一部を次のように改正する。

  第八十一条及び第八十二条を次のように改める。

 第八十一条及び第八十二条 削除

  第百二条中「又ハ第八十一条第一項」を削る。

        (農林・内閣総理大臣署名) 

 

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