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法律第百二号(昭二五・四・一七)

  ◎水路業務法

目次

 第一章 総則(第一条―第五条)

 第二章 水路測量及び海象観測の実施等(第六条―第二十条)

 第三章 水路測量及び海象観測の成果(第二十一条―第二十五条)

 第四章 水路に関する業務の受託(第二十六条)

 第五章 訴願(第二十七条)

 第六章 罰則(第二十八条・第二十九条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、水路測量の成果その他の海洋に関する科学的基礎資料を整備し、もつて海上における安全の確保を図るとともに、国際間における水路に関する情報の交換に資することを目的とする。

 (水路測量)

第二条 この法律において「水路測量」とは、水域の測量及びこれに伴う土地の測量並びにその成果を航海に利用させるための地磁気の測量をいう。

2 前項の規定は、土地の測量について測量法(昭和二十四年法律第百八十八号)の適用を妨げるものと解釈してはならない。

 (海象観測)

第三条 この法律において「海象観測」とは、潮汐、海潮流、波浪、海氷及びこれらに関連する諸現象の観測をいう。

 (水路図誌)

第四条 この法律において「水路図誌」とは、海図、水路誌、潮汐表、燈台表、航用諸暦及びその他の水路に関する図誌をいう。

 (水路測量標)

第五条 この法律において「水路測量標」とは、海上保安庁又は第六条の規定により許可を受けた者が水路測量又は海象観測のために設置する標識をいう。

2 水路測量標の種類及び形状は、運輸省令で定める。

   第二章 水路測量及び海象観測の実施等

 (海上保安庁以外の者が実施する水路測量)

第六条 海上保安庁以外の者が、その費用の全部又は一部を国又は地方公共団体が負担し、又は補助する水路測量を実施しようとするときは、海上保安庁長官の許可を受けなければならない。但し、学術上の目的をもつて行う測量、局地的な測量等について運輸省令で定める場合は、この限りでない。

 (水路測量の実施方法の勧告)

第七条 海上保安庁長官は、必要があると認めるときは、前条の規定により許可を受けた者に対し、水路測量の実施方法につき勧告をすることができる。

 (水路測量の実施の公示) 

第八条 海上保安庁長官は、水路測量を実施しようとするときは、あらかじめその区域、期間その他必要な事項を公示しなければならない。第六条の規定による許可をしたときも同様とする。

 (水路測量の基準)

第九条 海上保安庁又は第六条の許可を受けた者が行う水路測量は、左の各号に掲げる測量の基準に従つて行わなければならない。

 一 地球の形状及び大きさについては、ベツセルの算出した次の値による。

  長半径 六、三七七、三九七メートル一・五五

  扁平度 二九九・一五二八一三分の一

 二 経緯度は、地理学的経緯度で表示する。

 三 測量の原点は、日本経緯度原点を基礎とする。但し、海上において行う測量その他特別の事情がある場合において、海上保安庁長官の承認を得たときは、この限りでない。

 四 標高は、平均水面からの高さで表示する。

 五 水深は、基本水準面からの深さで表示する。

 六 干出岩及び干出たいは、基本水準面からの高さで表示する。

 七 海岸線は、海面が略最高高潮面に達した時の陸地と海面の境界で表示する。

 八 平均水面及び基本水準面の高さは、運輸省令で定める。

 (資料又は報告の提出の要求)

第十条 海上保安庁長官は、特に必要があるときは、地方公共団体その他港湾施設の管理者に対し、その管理する港湾施設の状況について資料又は報告の提出を求めることができる。

第十一条 海上保安庁長官は、特に必要があるときは、船舶に対し、水路図誌の編修に必要な報告の提出を求めることができる。

 (土地又は水面の立入)

第十二条 海上保安庁の職員は、水路測量又は海象観測のため必要があるときは、国、地方公共団体又は私人が所有し、占有し、又は占用する土地又は水面に立ち入ることができる。

2 前項の規定により宅地又はかき、さく等で囲まれた水面若しくは土地に立ち入る場合には、あらかじめその旨を所有者、占有者又は占用者に通知しなければならない。但し、これらの者に対してあらかじめ通知することが困難であるときは、この限りでない。

3 海上保安庁の職員が、第一項の規定により土地又は水面に立ち入る場合には、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。

 (障害物の除去)

第十三条 海上保安庁の職員は、水路測量を実施するためやむを得ない必要があるときは、あらかじめ所有者又は占有者の承諾を得て、障害となる植物又はかき、さく等を伐除することができる。

第十四条 海上保安庁の職員は、離島又はこれに類する場所で水路測量を実施する場合において、あらかじめ所有者又は占有者の承諾を得ることが困難であり、且つ、当該物件の現状を著しく損傷しないときは、前条の規定にかかわらず承諾を得ないで、障害となる植物又はかき、さく等を伐除することができる。この場合においては、遅滞なく、その旨を所有者又は占有者に通知しなければならない。

 (損失の補償)

第十五条 前三条の規定による立入又は伐除により損失を生じたときは、国は、その所有者、占有者又は占用者に対して、相当の価格により、その損失を補償しなければならない。

2 前項の補償の額に不服がある者は、訴をもつて増額を請求することができる。

 (水路測量標及び測量船の保全)

第十六条 何人も、正当な理由がないのに、水路測量標を毀損し、移転し、その他水路測量標の効用を害する虞のある行為をしてはならない。

第十七条 海上保安庁又は第六条の規定により許可を受けた者の船舶は、水路測量又は海象観測を行う場合には、運輸省令で定める標識を掲げなければならない。

第十八条 船長は、船舶を、正当な理由がないのに前条の標識を掲げる船舶に著しく接近させて航行させてはならない。

 (水路関係事項の通報)

第十九条 港湾の修築、その他海岸線に重大な変化を生ずる工事をする者は、その旨を海上保安庁長官に通報しなければならない。

第二十条 船長は、水中に沈没物その他航海の障害となる虞のある物件があることを発見し、又は海上保安庁の刊行した水路図誌に記載されている事象と著しく異る事象を発見したときは、遅滞なく、その旨を海上保安庁長官に通報しなければならない。

   第三章 水路測量及び海象観測の成果

 (成果の公表)

第二十一条 海上保安庁長官は、水路測量又は海象観測を実施して成果を得たときは、これを公表しなければならない。

 (成果の提出)

第二十二条 第六条の規定により許可を受けた者が、水路測量を実施して成果を得たときは、遅滞なく、その写を海上保安庁長官に提出しなければならない。

第二十三条 海上保安庁以外の者は、その実施する海象観測により、海上保安庁の発行した水路図誌に記載されている事象と著しく異る事象を発見したときは、遅滞なく、その旨を海上保安庁長官に通報しなければならない。

 (水路図誌の保護)

第二十四条 海上保安庁以外の者が、海上保安庁の刊行した水路図誌を複製し、又はこれを使用して航海の用に供する刊行物を発行しようとするときは、海上保安庁長官の承認を受けなければならない。

第二十五条 海上保安庁の刊行した海図、水路誌又は燈台表に類似の刊行物を発行しようとする者は、海上保安庁長官の許可を受けなければならない。

2 海上保安庁長官は、前項の刊行物が海上の安全の確保に支障を及ぼすものでない限り、これを許可しなければならない。

   第四章 水路に関する業務の受託

 (水路に関する業務の受託)

第二十六条 海上保安庁は、その業務の遂行に支障のない限り、一般の委託により、水路測量及び海象観測並びにこれらに関連する図誌の作製、編修又は印刷を行うことができる。

   第五章 訴願

 (訴願)

第二十七条 この法律の規定により海上保安庁長官のした処分に対して不服がある者は、運輸大臣に訴願することができる。

   第六章 罰則

第二十八条 第十六条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。

第二十九条 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。

 一 第十二条の規定による立入を拒み、又は妨げた者

 二 第十八条の規定に違反した者

 三 第二十四条又は第二十五条の規定により承認又は許可を受けなければならない事項を承認又は許可を受けないでした者

第三十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条第三号の違反行為をしたときは、行為者を罰する外その法人又は人に対しても同条の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため当該業務に対し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。

   附 則

1 この法律は、公布の日から起算して九十日を経過した日から施行する。

2 水路測量標条例(明治二十三年法律第三十八号)は、廃止する。

3 この法律施行前にした水路測量標条例に違反する行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

4 この法律施行の際現に実施中の水路測量については、第六条の規定は、適用しない。

           (運輸・内閣総理大臣署名) 

 

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