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法律第百三十八号(昭二八・八・一)

  ◎中小企業金融公庫法

目次

 第一章 総則(第一条―第八条)

 第二章 役員及び職員(第九条―第十八条)

 第三章 業務(第十九条―第二十二条)

 第四章 会計(第二十三条―第二十九条)

 第五章 監督(第三十条―第三十二条)

 第六章 補則(第三十三条―第三十五条)

 第七章 罰則(第三十六条―第三十八条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 中小企業金融公庫は、中小企業者の行う事業の振興に必要な長期資金であつて、一般の金融機関が融通することを困難とするものを融通することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「中小企業者」とは、左に掲げるものをいう。

 一 資本の額又は出資の総額が一千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人(商業又はサービス業を主たる事業とする事業者については三十人、鉱業を主たる事業とする事業者については千人)以下の会社及び個人であつて、政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行うもの

 二 中小企業等協同組合、農業協同組合、農業協同組合連合会、水産業協同組合、森林組合及び森林組合連合会であつて、特定事業を行うもの又はその構成員の三分の二以上が特定事業を行う者であるもの

 三 医業を主たる事業とする法人であつて、常時使用する従業員の数が三百人以下のもの(前二号に掲げるものを除く。)

 四 調整組合及び調整組合連合会

 (法人格)

第三条 中小企業金融公庫(以下「公庫」という。)は、法人とする。

 (事務所)

第四条 公庫は、主たる事務所を東京都に置く。

2 公庫は、主務大臣の認可を受けて、必要な地に従たる事務所を置くことができる。

 (資本金)

第五条 公庫の資本金は、政府の一般会計からの出資金百三十億円と第三十三条第六項の規定により政府の産業投資特別会計から出資があつたものとされた金額との合計額とする。

 (登記)

第六条 公庫は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。

2 前項の規定により登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

 (名称の使用制限)

第七条 公庫でない者は、中小企業金融公庫という名称又はこれに類する名称を用いてはならない。

 (民法の準用)

第八条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)、第五十条(法人の住所)及び第五十四条(代表権の制限)の規定は、公庫に準用する。

   第二章 役員及び職員

 (役員)

第九条 公庫に、役員として、総裁一人、理事四人以内及び監事二人以内を置く。

 (役員の職権及び権限)

第十条 総裁は、公庫を代表し、その業務を総理する。

2 理事は、総裁が定めるところにより、総裁を補佐して公庫の業務を掌理し、総裁に事故があるときはその職務を代理し、総裁が欠員のときはその職務を行う。

3 監事は、公庫の業務を監査する。

 (役員の任命)

第十一条 総裁及び監事は、主務大臣が内閣の承認を得て任命する。

2 理事は、総裁が主務大臣の認可を受けて任命する。

 (役員の任期)

第十二条 総裁、理事及び監事の任期は、四年とする。

2 総裁、理事及び監事は、再任されることができる。

 (役員の欠格条項)

第十三条 左の各号の一に該当する者は、総裁、理事又は監事となることができない。

 一 国務大臣、国会議員、政府職員(審議会、協議会等の委員その他これに準ずる地位にある者であつて、非常勤のものを除く。)又は地方公共団体の議会の議員

 二 政党の役員

 (役員の兼職禁止)

第十四条 総裁、理事及び監事は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。

 (代表権の制限)

第十五条 公庫と総裁との利益が相反する事項については、総裁は、代表権を有しない。この場合は、監事が公庫を代表する。

 (代理人の選任)

第十六条 総裁は、理事又は公庫の職員のうちから、公庫の業務の一部に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。

 (役員及び職員の地位)

第十七条 公庫の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

 (退職手当)

第十八条 公庫は、役員及び職員に対する退職手当の支給の基準を設けようとするときは、あらかじめ主務大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

   第三章 業務

 (業務の範囲)

第十九条 公庫は、第一条に掲げる目的を達成するため、中小企業者に対する貸付の業務を行う。

2 公庫は、前項に掲げる業務の外、第三十三条第一項の規定により承継した権利義務の処理に関する業務を行うことができる。

 (業務の委託等)

第二十条 公庫は、主務大臣の認可を受けて、金融機関に対し、その業務の一部を委託することができる。

2 前項の規定により業務の委託を受けた金融機関(以下「受託者」という。)の役員又は職員であつて、当該委託業務に従事する者は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

 (業務の方法)

第二十一条 公庫は、業務開始の際、業務の方法を定め、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

2 前項の業務の方法には、左の事項を定めておかなければならない。

 一 貸付金の使途、貸付の相手方、利率、償還期限、据置期間、貸付金額の限度、償還の方法、担保に関する事項等貸付に関する業務の方法

 二 業務委託の基準

 (事業計画及び資金計画)

第二十二条 公庫は、四半期ごとに、事業計画及び資金計画を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

   第四章 会計

 (予算及び決算)

第二十三条 公庫の予算及び決算に関しては、公庫の予算及び決算に関する法律(昭和二十六年法律第九十九号)の定めるところによる。

 (国庫納付金)

第二十四条 公庫は、毎事業年度の損益計算上利益金を生じたときは、これを翌事業年度の五月三十一日までに国庫に納付しなければならない。

2 前項の規定による国庫納付金は、同項に規定する日の属する会計年度の前年度の政府の歳入とする。

3 第一項の利益金の計算の方法並びに同項の規定による国庫納付金の納付の手続及びその帰属する会計については、政令で定める。

 (借入金)

第二十五条 公庫は、主務大臣の認可を受けて、政府から資金の借入をすることができる。

2 政府は、公庫に対して資金の貸付をすることができる。

3 前項の貸付金については、利息を免除し、又は通常の条件より公庫に有利な条件を附することができる。

4 第一項に規定する場合を除く外、公庫は、資金の借入をしてはならない。

 (余裕金の運用等)

第二十六条 公庫は、左の方法による外、業務上の余裕金を運用してはならない。

 一 国債の保有

 二 資金運用部への預託

2 公庫は、業務に係る現金を国庫以外に預託してはならない。

 (資金の交付)

第二十七条 公庫は、業務を行うため必要があるときは、受託者に対し貸付に必要な資金を交付することができる。

 (会計帳簿)

第二十八条 公庫は、主務大臣が定めるところにより、業務の性質及び内容並びに事業の運営及び経理の状況を適切に示すため必要な帳簿を備えなければならない。

 (会計検査院の検査)

第二十九条 会計検査院は、必要があると認めるときは、受託者につき、当該委託業務に係る会計を検査することができる。

   第五章 監督

 (監督)

第三十条 公庫は、主務大臣が監督する。但し、公庫を当事者又は参加人とする訴訟については、法務大臣が監督する。

2 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、公庫に対して業務に関し監督上必要な命令をすることができる。

 (役員の解任)

第三十一条 主務大臣は、公庫の役員が第十三条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。

2 主務大臣は、公庫の役員が左の各号の一に該当するに至つたときは、これを解任することができる。

 一 この法律又はこの法律に基く命令に違反したとき。

 二 刑事事件により有罪判決の言渡を受けたとき。

 三 破産の宣告を受けたとき。

 四 心身の故障により職務を執ることができないとき。

3 主務大臣は、総裁又は監事を前項第一号又は第四号の規定により解任しようとするときは、内閣の承認を得なければならない。

 (報告及び検査)

第三十二条 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、公庫若しくは受託者に対して報告をさせ、又はその職員に公庫若しくは受託者の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿書類その他必要な物件を検査させることができる。但し、受託者に対しては、当該委託業務の範囲内に限る。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人に呈示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

   第六章 補則

 (日本開発銀行からの中小企業者に対する貸付に係る債権等の承継)

第三十三条 日本開発銀行が政府の米国対日援助見返資金特別会計及び復興金融公庫から承継した中小企業者に対する貸付に係る債権並びに日本開発銀行の中小企業者に対する貸付に係る債権であつて、政令で定めるもの並びにこれらに附随する権利義務は、政令で定めるところにより、公庫が承継するものとする。

2 日本開発銀行が政府の米国対日援助見返資金特別会計から承継した中小企業者に対する貸付に係る債権及びこれに附随する権利義務を、前項の規定により公庫が承継したときは、日本開発銀行法(昭和二十六年法律第百八号)第四十九条の二第二項の規定による政府の貸付金のうち、公庫が承継した債権のその承継の日における帳簿価額の合計額に相当する金額が、その承継の日において日本開発銀行から政府の産業投資特別会計に返済されたものとし、その返済されたものとされた貸付金の額に相当する金額が、その承継の日において同特別会計から公庫に対し貸し付けられたものとする。

3 日本開発銀行が復興金融金庫から承継した中小企業者に対する貸付に係る債権及び日本開発銀行が昭和二十八年三月三十一日までに行つた中小企業者に対する貸付に係る債権並びにこれらに附随する権利義務を、第一項の規定により公庫が承継したときは、その承継した債権のその承継の日における帳簿価額の合計額に相当する金額が、その承継の日において日本開発銀行から公庫に対し貸し付けられたものとする。

4 公庫は、毎事業年度、第二項の政府の貸付金及び前項の日本開発銀行の貸付金に対し、政令で定めるところにより、利息を支払わなければならない。

5 公庫は、日本開発銀行が昭和二十八年四月一日以後に行つた中小企業者に対する貸付に係る債権及びこれに附随する権利義務を、第一項の規定により承継したときは、その承継した債権のその承継の日における帳簿価額の合計額に相当する金額を、政令で定めるところにより、日本開発銀行に支払わなけばならない。

6 第二項の規定による政府の貸付金は、政令で定めるものを除く外、政令で定めるところにより、政令で定める時期において返済されたものとなるものとし、その返済されたものとされた政府の貸付金の額に相当する金額が、当該時期において政府の産業投資特別会計から公庫に対し出資されたものとする。

 (商工組合中央金庫に対する貸付)

第三十四条 政府の一般会計が昭和二十七年十二月二十六日に行つた商工組合中央金庫に対する貸付金は、公庫の成立の日において返済されたものとなるものとし、その貸付金の額に相当する金額が、その成立の日において一般会計から公庫に出資されたものとする。

2 前項の規定により政府の一般会計から出資があつたものとされた金額は、公庫の成立の日において公庫から商工組合中央金庫に対し貸し付けられたものとする。

3 商工組合中央金庫は、前項の貸付金に対し、政令で定めるところにより、利息を支払わなければならない。

4 商工組合中央金庫は、公庫の成立の日から二年をこえない期間内において政令で定める日までに、第二項の貸付金を返済しなければならない。

 (主務大臣)

第三十五条 この法律における主務大臣は、通商産業大臣及び大蔵大臣とする。

   第七章 罰則

第三十六条 第三十二条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合においては、その行為をした公庫の役員若しくは職員又は受託者の役員若しくは職員を三万円以下の罰金に処する。

第三十七条 左の場合においては、その違反行為をした公庫の役員又は職員を三万円以下の過料に処する。

 一 この法律により主務大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。

 二 第六条第一項の規定に違反して登記をすることを怠り、又は不実の登記をしたとき。

 三 第十九条に規定する業務以外の業務を行つたとき。

 四 第二十六条の規定に違反して業務上の余裕金を運用し、又は現金を国庫以外に預託したとき。

 五 第三十条第二項の規定による主務大臣の命令に違反したとき。

第三十八条 第七条の規定に違反して中小企業金融公庫という名称又はこれに類する名称を用いた者は、一万円以下の過料に処する。

   附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。

2 主務大臣は、設立委員を命じて、公庫の設立に関する事務を処理させる。

3 設立委員は、設立の準備を完了した上、遅滞なく、政府に対し資本金の払込の請求をしなければならない。

4 資本金の払込があつた日(資本金が分割して払い込まれる場合においては、第一回の払込のあつた日)において、設立委員は、その事務を公庫の総裁に引き継がなければならない。

5 総裁は、前項の事務の引継を受けた日において、設立の登記をしなければならない。

6 公庫は、設立の登記をすることによつて成立する。

7 米国対日援助見返資金特別会計法(昭和二十四年法律第四十号)が廃止されるまでの間は、第五条中「産業投資特別会計」とあるのは「米国対日援助見返資金特別会計」と、第三十三条第二項中「政府の産業投資特別会計」とあるのは「同特別会計」と、同条第六項中「産業投資特別会計」とあるのは「米国対日援助見返資金特別会計」と読み替えるものとする。

8 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第十九条中第二号ノ五及び第二号ノ六をそれぞれ第二号ノ六及び第二号ノ七とし、第二号ノ四の次に次の一号を加える。

  二ノ五 中小企業金融公庫自己ノ為ニスル登記又ハ登録

9 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。

   第五条中第五号ノ四を第五号ノ五とし、第五号ノ三の次に次の一号を加える。

  五ノ四 中小企業金融公庫ノ発スル証書、帳簿

10 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第三条第五号中「及び農林漁業金融公庫」を「、農林漁業金融公庫及び中小企業金融公庫」に改める。

11 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。

  第四条第二号中「農林漁業金融公庫、」の下に「中小企業金融公庫、」を加える。

12 中小企業庁設置法(昭和二十三年法律第八十三号)の一部を次のように改正する。

  第三条第一項中第五号の次に次の一号を加える。

  五の二 中小企業金融公庫に関すること。

13 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。

  第十二条第一項第三号中「国民金融公庫」の下に「、中小企業金融公庫」を加え、同条第二項中「第二号から第五号まで及び第七号から第九号まで」を「第二号から第九号まで」に改める。

14 国庫出納金等端数計算法(昭和二十五年法律第六十一号)の一部を次のように改正する。

  第一条第一項中「農林漁業金融公庫、」の下に「中小企業金融公庫、」を加える。

15 予算執行職員等の責任に関する法律(昭和二十五年法律第百七十二号)の一部を次のように改正する。

  第九条第一項中「農林漁業金融公庫、」の下に「中小企業金融公庫、」を加える。

16 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第七百四十三条第三号中「農林漁業金融公庫、」の下に「中小企業金融公庫、」を加える。

17 公庫の予算及び決算に関する法律の一部を次のように改正する。

  第一条中「及び農林漁業金融公庫」を「、農林漁業金融公庫及び中小企業金融公庫」に改める。

(内閣総理・法務・大蔵・厚生・農林・通商産業大臣署名) 

 

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