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法律第百五十六号(昭三〇・八・一〇)

  ◎石炭鉱業合理化臨時措置法

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 石炭鉱業合理化計画(第三条―第六条)

 第三章 石炭鉱業整備事業団

  第一節 総則(第七条―第十三条)

  第二節 役員及び職員(第十四条―第二十四条)

  第三節 業務(第二十五条―第四十二条)

  第四節 鉱害賠償に関する裁定(第四十三条―第五十一条)

  第五節 監督(第五十二条・第五十三条)

 第四章 坑口の開設の制限(第五十四条―第五十七条)

 第五章 販売価格及び生産数量の制限(第五十八条―第六十八条)

 第六章 石炭鉱業審議会(第六十九条―第七十六条)

 第七章 雑則(第七十七条―第八十三条)

 第八章 罰則(第八十四条―第八十九条)

附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、石炭鉱業合理化計画に基いて、石炭鉱業を整備し、及び坑口の開設を制限することにより、石炭鉱業の合理化を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律で「鉱業権」、「採掘権」又は「租鉱権」とは、石炭を目的とする鉱業権、採掘権又は租鉱権をいい、「鉱業権者」、「採掘権者」又は「租鉱権者」とは、石炭を目的とする鉱業権、採掘権又は租鉱権を有する者をいい、「鉱区」又は「租鉱区」とは、石炭を目的とする鉱業権又は租鉱権の鉱区又は租鉱区をいう。

2 この法律で「鉱業施設」とは、石炭鉱業に使用する土地、工作物、機械その他の施設であつて、通商産業省令で定めるものをいう。

   第二章 石炭鉱業合理化計画

 (石炭鉱業合理化基本計画)

第三条 通商産業大臣は、石炭鉱業審議会の意見をきいて、石炭鉱業合理化基本計画を定めなければならない。

2 石炭鉱業合理化基本計画に定める事項は、次の通りとする。

 一 昭和三十四年度における石炭の生産数量、生産能率、生産費その他石炭鉱業の合理化の目標

 二 工事の種類、費用の額その他石炭鉱業の合理化のため実施すべき工事に関する事項

 三 石炭鉱業整備事業団が買収する採掘権の基準並びにその買収により減少すべき石炭の生産数量その他石炭鉱業の整備に関する事項

 四 その他石炭鉱業の合理化に関する重要事項

3 前項第三号の採掘権の基準は、買収する採掘権の鉱区における石炭の品位及び生産能率をもつて定めるものとする。

4 通商産業大臣は、第一項の規定により石炭鉱業合理化基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを告示しなければならない。

 (石炭鉱業合理化実施計画)

第四条 通商産業大臣は、毎年、石炭鉱業審議会の意見をきいて、石炭鉱業合理化基本計画の実施を図るため必要な石炭鉱業合理化実施計画を定めなければならない。

2 前条第四項の規定は、前項の場合に準用する。

 (計画の変更)

第五条 通商産業大臣は、石炭の生産条件その他経済事情の著しい変動のため特に必要があるときは、石炭鉱業審議会の意見をきいて、石炭鉱業合理化基本計画又は石炭鉱業合理化実施計画を変更しなければならない。

2 第三条第四項の規定は、前項の場合に準用する。

 (資金の確保)

第六条 政府は、石炭鉱業合理化実施計画に定める石炭鉱業の合理化のため実施すべき工事に必要な資金の確保に努めるものとする。

   第三章 石炭鉱業整備事業団

    第一節 総則

 (目的)

第七条 石炭鉱業整備事業団は、石炭鉱業の合理化のため、その整備に関する業務を行うことを目的とする。

 (法人格)

第八条 石炭鉱業整備事業団(以下「事業団」という。)は、法人とする。

 (事務所)

第九条 事業団は、主たる事務所を東京都に置く。

2 事業団は、通商産業大臣の認可を受けて、必要な地に従たる事務所を置くことができる。

 (事業年度)

第十条 事業団の事業年度は、毎年四月に始まり、翌年三月に終る。

 (登記)

第十一条 事業団は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。

2 前項の規定により登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

 (名称の使用制限)

第十二条 事業団でない者は、その名称中に石炭鉱業整備事業団という文字又はこれに類似する文字を用いてはならない。

 (民法の準用)

第十三条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)、第五十条(法人の住所)及び第五十四条(代表権の制限)の規定は、事業団に準用する。

    第二節 役員及び職員

 (役員)

第十四条 事業団に、役員として、理事長一人、理事六人以内及び監事二人以内を置く。

 (役員の職務及び権限)

第十五条 理事長は、事業団を代表し、その業務を総理する。

2 理事は、理事長が定めるところにより、理事長を補佐して事業団の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。

3 監事は、事業団の業務を監査する。

 (役員の任命及び任期)

第十六条 理事長及び監事は、通商産業大臣が任命する。

2 理事は、通商産業大臣の認可を受けて、理事長が任命する。

3 役員の任期は、三年とする。

4 役員は、再任されることができる。

 (役員の欠格条項)

第十七条 次の各号の一に該当する者は、役員となることができない。

 一 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた後、三年を経過しない者

 二 国家公務員(審議会、協議会等の委員その他これに準ずる地位にある者であつて、非常勤のものを除く。)

 三 政党の役員

 (役員の解任)

第十八条 通商産業大臣は、理事長又は監事が前条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。

2 理事長は、理事が前条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。

第十九条 通商産業大臣は、理事長若しくは監事が心身の故障のため職務を執行することができないと認めるとき、又は理事長若しくは監事に職務上の義務違反その他理事長若しくは監事たるに適しない非行があると認めるときは、これを解任することができる。

2 理事長は、理事が心身の故障のため職務を執行することができないと認めるとき、又は理事に職務上の義務違反その他理事たるに適しない非行があると認めるときは、通商産業大臣の認可を受けて、これを解任することができる。

 (役員の兼職禁止)

第二十条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、通商産業大臣の承認を受けたときは、この限りでない。

 (役員等の秘密保持義務)

第二十一条 事業団の役員若しくは職員又はこれらの職にあつた者は、その職務に関して知得した秘密を漏らし、又は盗用してはならない。

 (代表権の制限)

第二十二条 事業団と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合は、監事が事業団を代表する。

 (代理人の選任)

第二十三条 理事長は、理事又は事業団の職員のうちから、事業団の業務の一部に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。

 (役員等の地位)

第二十四条 事業団の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

    第三節 業務

 (業務の範囲)

第二十五条 事業団は、第七条の目的を達成するため、次の業務を行う。

 一 採掘権の買収及び保有

 二 鉱業施設の買収及び保有又は売渡

 三 採掘権又は鉱業施設の買収に伴い解雇された鉱山労働者に対する金銭の支払

 四 買収した採掘権の鉱区に関する鉱害の賠償

 五 納付金の徴収

 六 前各号の業務に附帯する業務

 七 前各号に掲げるもののほか、第七条の目的を達成するため必要な業務

2 事業団は、前項第七号に掲げる業務を行おうとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。

 (業務の方法)

第二十六条 事業団は、業務開始の際、業務の方法を定め、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

2 前項の業務の方法には、次の事項を定めておかなければならない。

 一 買収する採掘権及び鉱業施設の評価の基準

 二 買収代金の支払の時期及び方法

 三 採掘権又は鉱業施設の買収に伴い解雇された鉱山労働者に対する金銭の支払の時期及び方法

 四 納付金の徴収の時期及び方法

 五 買収した鉱業施設の売渡の方法

3 通商産業大臣は、第一項の認可をしようとするときは、石炭鉱業審議会の意見をきかなければならない。

4 通商産業大臣は、第一項の認可をしたときは、遅滞なく、その旨を告示しなければならない。

 (事業計画)

第二十七条 事業団は、毎事業年度開始前に、その事業年度の事業計画を作成し、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

 (収支予算)

第二十八条 事業団は、毎事業年度開始前に、その事業年度の収支予算を作成し、通商産業大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

 (財産目録等)

第二十九条 事業団は、毎事業年度経過後三月以内に、財産目録、貸借対照表及び損益計算書を作成し、通商産業大臣の承認を受けなければならない。

 (事業報告書)

第三十条 事業団は、毎事業年度経過後三月以内に、事業報告書を作成し、通商産業大臣に提出しなければならない。

 (買収の対象)

第三十一条 事業団が買収することができる採掘権は、次の各号に適合するものでなければならない。

 一 その採掘権の上に租鉱権が設定されていないこと。

 二 その売渡の申込の日前六月以内にその採掘権の鉱区において事業が休止されたことがないこと。

 三 その採掘権の鉱区における石炭の品位及び生産能率が石炭鉱業合理化基本計画に定める事業団が買収する採掘権の基準に適合すること。

第三十二条 事業団が買収することができる採掘権者の鉱業施設は、事業団が買収する採掘権に係るものでなければならない。

2 事業団が買収することができる租鉱権者の鉱業施設は、事業団が買収する採掘権の上に設定されていた租鉱権に係るものでなければならない。

 (鉱山労働者に対する金銭の支払)

第三十三条 事業団は、その買収した採掘権の鉱区又はその買収した鉱業施設に係る租鉱権の租鉱区における石炭の採掘及びこれに附属する選炭その他の業務にその買収の日前三月以上引き続き従事していた鉱山労働者であつて、その買収の日後二月以内に解雇されたものに対し、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第十二条の平均賃金の三十日分に相当する金額を支払わなければならない。

2 前項の規定による支払の義務は、二年を経過したときは、時効により消滅する。

 (賃金債務の代位弁済)

第三十四条 事業団は、民法第四百七十四条第一項ただし書及び第二項の規定にかかわらず、その買収した採掘権の鉱区又はその買収した鉱業施設の租鉱区における石炭の掘採及びこれに附属する選炭その他の業務に従事していた鉱山労働者に対しその採掘権者又は租鉱権者が負担する賃金(退職金を除く。)の支払の債務であつて、その買収の日までに弁済期の到来しているものを、その採掘権者又は租鉱権者に代つて弁済することができる。

 (鉱害賠償のための積立金)

第三十五条 事業団は、その買収した採掘権の鉱区に関する鉱害の賠償に要する費用にあてるため、通商産業大臣の認可を受けた方法に従い、積立をしなければならない。

 (納付金)

第三十六条 採掘権者又は租鉱権者は、事業団の業務に必要な費用にあてるため、毎年事業団に納付金を納付しなければならない。

2 前項の納付金の額は、石炭の数量一トンにつき二十円以内において通商産業大臣が定める金額にその採掘権者又は租鉱権者が前年中に掘採した石炭の数量を乗じて得た額とする。

3 政令で定める金融機関に対し借入金の債務を有している採掘権者又は租鉱権者についての納付金の額は、前項の規定にかかわらず、同項の規定による額に、その借入金の額に千分の三十五以内において政令で定める割合を乗じて得た額を加えた額とする。

4 前項に規定するもののほか、同項に規定する者についての納付金の額の算定に関し必要な事項は、政令で定める。

5 通商産業大臣は、第二項の金額を定めようとするときは、石炭鉱業審議会の意見をきかなければならない。

6 通商産業大臣は、第二項の金額を定めたときは、遅滞なく、これを告示しなければならない。

 (資金の借入)

第三十七条 事業団は、資金の借入をしようとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。

 (強制徴収)

第三十八条 事業団は、第三十六条第一項に規定する納付義務者が納期限までに同項の納付金を納付しないときは、期限を指定して、これを督促しなければならない。

2 事業団は、前項の規定により督促をするときは、納付義務者に対し、督促状を発する。この場合において、督促状により指定すべき期限は、督促状を発する日から起算して十日以上経過した日でなければならない。

第三十九条 前条第一項の規定による督促を受けた者がその指定の期限までに納付金及び次条の延滞金を納付しないときは、市町村(特別区のある地においては、特別区。以下同じ。)は、事業団の請求により、地方税の滞納処分の例により、これを処分する。この場合は、事業団は、その徴収金額の百分の四を市町村に交付しなければならない。

2 市町村が前項の請求を受けた日から一月以内にその処分に着手せず、又は三月以内にこれを終了しないときは、事業団は、地方税の滞納処分の例により、通商産業大臣の認可を受けて、その処分をすることができる。

3 前二項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぎ、他の公課に先だつものとし、その時効については、地方税の例による。

第四十条 事業団は、第三十八条第一項の規定により督促をしたときは、納付金の額百円につき一日六銭の割合で、納期限の翌日からその完納又は財産差押の前日までの日数により計算した延滞金を徴収する。ただし、通商産業省令で定める場合は、この限りでない。

 (資料の提出の請求)

第四十一条 事業団は、第二十五条第一項第五号に掲げる業務を行うため必要があるときは、鉱業権者又は租鉱権者に対し、資料の提出を求めることができる。

2 前項の規定により資料の提出を求められた者は、遅滞なく、これを提出しなければならない。

 (鉱業法の適用除外)

第四十二条 鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)第六十二条(事業着手の義務)の規定は、事業団については、適用しない。

    第四節 鉱害賠償に関する裁定

 (裁定の申請)

第四十三条 採掘権者又は租鉱権者が事業団に対し第三十一条又は第三十二条に規定する採掘権又は鉱業施設の売渡の申込をした場合において、その採掘権の鉱区又はその鉱業施設に係る租鉱権の租鉱区に関する鉱害の賠償に関して争議が生じたときは、賠償義務者又は被害者は、通商産業省令で定める手続に従い、通商産業局長の裁定を申請することができる。ただし、その鉱害の賠償に関し、確定判決があつたとき、又は訴訟が係属し、若しくは調停手続が行われているときは、この限りでない

第四十四条 事業団が保有する採掘権の鉱区に関する鉱害の賠償に関して争議が生じたときは、事業団又は被害者は、通商産業省令で定める手続に従い、通商産業局長の裁定を申請することができる。

2 前条ただし書の規定は、前項の場合に準用する。

 (申請の却下)

第四十五条 通商産業局長は、第四十三条の規定による裁定の申請があつた場合において、申請に係る事案が同条ただし書の場合に該当するに至つたとき、又は採掘権若しくは鉱業施設の売渡の申込が取り消され、若しくはその効力を失い、若しくは事業団がその申込を拒絶したときは、その申請を却下しなければならない。

2 通商産業局長は、前条第一項の規定による裁定の申請があつた場合において、申請に係る事案が同条第二項において準用する第四十三条ただし書の場合に該当するに至つたときは、その申請を却下しなければならない。

第四十六条 通商産業局長は、前条に定める場合を除くほか、第四十三条又は第四十四条第一項の規定による裁定の申請があつた場合において、申請に係る事案について裁定前になお当事者間の協議により解決を図ることが適当であると認めるときは、その申請を却下することができる。

 (聴聞)

第四十七条 通商産業局長は、第四十三条又は第四十四条第一項の規定による裁定の申請があつたときは、その申請書の副本を他の当事者に交付するとともに、当事者の出頭を求めて、公開による聴聞を行わなければならない。

2 通商産業局長は、前項の聴聞をしようとするときは、その期日の一週間前までに、事案の要旨並びに聴聞の期日及び場所を当事者に通知し、かつ、これを公示しなければならない。

3 聴聞に際しては、当事者及び利害関係人に対し、その事案について、証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。

 (裁定)

第四十八条 通商産業局長は、聴聞の結果に基き、地方鉱業協議会の意見をきいて裁定を行う。

2 前項の裁定は、文書をもつて行い、かつ、理由を附さなければならない。

3 通商産業局長は、第一項の裁定をしたときは、裁定書の謄本を当事者に交付しなければならない。

 (裁定の効果)

第四十九条 第四十三条又は第四十四条第一項の裁定があつたときは、鉱害の賠償に関し、当事者間の合意が成立したものとみなす。

 (裁定の失効)

第五十条 第四十三条の裁定があつた場合において、採掘権又は鉱業施設の売渡の申込が取り消され、若しくはその効力を失い、又は事業団がその申込を拒絶したときは、裁定は、その効力を失う。

 (訴訟)

第五十一条 第四十三条又は第四十四条第一項の裁定のうち、鉱害の賠償の額に不服のある者は、その裁定書の謄本の交付を受けた日から三十日以内に、訴をもつてその額の増減を請求することができる。

2 前項の訴においては、賠償義務者又は被害者をもつて被告とする。

    第五節 監督

 (監督)

第五十二条 事業団は、通商産業大臣が監督する。

2 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業団に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。

 (報告及び検査)

第五十三条 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業団に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、事業団の事務所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

   第四章 坑口の開設の制限

 (開設の工事の許可)

第五十四条 この法律の施行の日から三年間は、鉱業権者又は租鉱権者は、坑口(石炭の掘採のために使用する坑口であつて、通商産業省令で定める構造のものをいう。以下同じ。)の開設(引き続き六月以上使用しなかつた坑口を使用することを含む。以下同じ。)の工事をしようとするときは、通商産業大臣の許可を受けなければならない。

 (許可の基準等)

第五十五条 通商産業大臣は、前条の許可の申請があつた場合において、その申請に係る坑口を使用して石炭を掘採しようとする鉱区又は租鉱区の石炭の鉱量、品位その他の自然条件及びその鉱区又は租鉱区の立地条件上その坑口を使用して採掘する石炭の生産能率が石炭鉱業合理化基本計画に定める石炭鉱業の合理化の目標たる生産能率を著しくこえることとなると認めるときでなければ、許可をしてはならない。ただし、通商産業省令で定める種類の坑口であつて、現に存する石炭坑における石炭の生産条件を著しく改善することとなるものであるときは、この限りでない。

2 通商産業大臣は、前条の規定による処分をしようとするときは、石炭鉱業審議会の意見をきかなければならない。

 (鉱業権等の取消等)

第五十六条 通商産業大臣は、鉱業権者又は租鉱権者が第五十四条の許可を受けないで坑口の開設の工事をしたとき、又は不正な手段により同条の許可を受けたときは、通商産業省令で定める方法によりその坑口を閉鎖すべきことを命じ、又はその坑口を石炭の掘採のために使用すべき鉱区若しくは租鉱区の鉱業権若しくは租鉱権を取り消すことができる。

2 鉱業法第四十条(命令の手続)の規定は、前項の規定による取消に準用する。

 (鉱業法の適用除外)

第五十七条 この法律の施行の日から三年間は、鉱業法第六十二条及び第八十六条(事業着手の義務)の規定は、鉱業権者及び租鉱権者については、適用しない。

   第五章 販売価格及び生産数量の制限

 (販売価格の標準額)

第五十八条 通商産業大臣は、毎年、通商産業省令で定めるところにより、石炭鉱業審議会の意見をきき、石炭の生産費を基準とし、石炭の輸入価格、石炭以外の燃料の価格その他の経済事情を参酌して、鉱業権者又は租鉱権者の石炭の販売価格の標準額を定めなければならない。

2 通商産業大臣は、前項の規定により石炭の販売価格の標準額を定めたときは、遅滞なく、これを告示しなければならない。

第五十九条 通商産業大臣は、石炭の生産費又は経済事情の著しい変動のため特に必要があるときは、石炭鉱業審議会の意見をきいて、前条第一項の規定により定めた石炭の販売価格の標準額(以下「標準炭価」という。)を変更しなければならない。

2 前条第二項の規定は、前項の場合に準用する。

 (販売価格の引下の勧告)

第六十条 通商産業大臣は、鉱業権者又は租鉱権者の石炭の販売価格が標準炭価を著しくこえると認めるときは、その鉱業権者又は租鉱権者に対し、販売価格を引き下げるべきことを勧告することができる。

2 通商産業大臣は、前項の規定による勧告をしたときは、その旨を公表することができる。

第六十一条 通商産業大臣は、販売業者の石炭の販売価格が標準炭価に適正な利潤及び諸掛の額を加えた額を著しくこえると認めるときは、その販売業者に対し、販売価格を引き下げるべきことを勧告することができる。

2 前条第二項の規定は、前項の規定による勧告をした場合に準用する。

 (生産数量の制限に関する指示)

第六十二条 通商産業大臣は、石炭の需給が著しく均衡を失した場合において、石炭の販売価格が標準炭価を著しく下り、鉱業権者及び租鉱権者の相当部分の事業の継続が困難となるに至るおそれがあるため、石炭鉱業合理化基本計画の実施に重大な支障を生じ、又は生ずるおそれがあると認めるときは、鉱業権者又は租鉱権者に対し、石炭の生産数量の制限に係る共同行為を実施すべきことを指示することができる。

2 前項の規定による指示は、共同行為をすべき期間及び共同行為の内容を定めて、告示により行う。

 (販売価格の制限に関する指示)

第六十三条 通商産業大臣は、前条第一項の規定による指示に基く生産数量の制限に係る共同行為のみをもつてしては同項に規定する事態を克服することが著しく困難であると認めるときは、鉱業権者又は租鉱権者に対し、同項の規定による指示をするとともに、販売価格の制限に係る共同行為をすべきことを指示することができる。

2 前項の規定による指示は、共同行為をすべき期間及び販売価格の最低額その他の共同行為の内容を定めて、告示により行う。

 (共同行為の期間及び内容)

第六十四条 第六十二条第二項又は前条第二項の共同行為をすべき期間は、六月以内とする。

2 第六十二条第二項又は前条第二項の共同行為の内容は、次の各号に適合するものでなければならない。

 一 第六十二条第一項に規定する事態を克服するため必要な程度をこえないこと。

 二 一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと。

 (指示の変更等)

第六十五条 通商産業大臣は、第六十二条第一項又は第六十三条第一項の規定による指示に係る共同行為の内容が前条第二項各号に適合するものでなくなつたと認めるときは、その指示を変更し、又は取り消さなければならない。

 (共同行為の届出)

第六十六条 鉱業権者又は租鉱権者は、第六十二条第一項又は第六十三条第一項の規定による指示(前条の規定による変更があつたときは、その変更後のもの。以下同じ。)に従い共同行為をしたときは、遅滞なく、通商産業省令で定める事項を通商産業大臣に届け出なければならない。これを変更し、又は廃止したときも、同様とする。

 (私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外)

第六十七条 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定は、鉱業権者又は租鉱権者が第六十二条第一項又は第六十三条第一項の規定による指示に従つてする共同行為については、適用しない。ただし、不公正な取引方法を用いるときは、この限りでない。

 (公正取引委員会との関係)

第六十八条 通商産業大臣は、第六十二条第一項又は第六十三条第一項の規定による指示をしようとするときは、公正取引委員会に協議しなければならない。

2 通商産業大臣は、第六十五条の規定による処分をしたとき、又は第六十六条の規定による届出を受理したときは、遅滞なく、その旨を公正取引委員会に通知しなければならない。

   第六章 石炭鉱業審議会

 (設置)

第六十九条 通商産業省に、石炭鉱業審議会を置く。

 (権限)

第七十条 石炭鉱業審議会(以下「審議会」という)は、この法律によりその権限に属させられた事項を調査審議するほか、通商産業大臣の諮問に応じ、石炭鉱業の合理化に関する重要事項を調査審議する。

 (組織)

第七十一条 審議会は、委員三十人以内で組織する。

2 専門の事項を調査させるため、審議会に、専門委員を置くことができる。

第七十二条 委員及び専門委員は、関係行政機関の職員及び石炭鉱業に関し学識経験のある者のうちから、通商産業大臣が任命する。

2 通商産業大臣は、委員のうち一人を会長として指名し、会務を総理させる。

 (任期)

第七十三条 学識経験のある者のうちから任命された委員の任期は、一年とする。

 (勤務)

第七十四条 会長、委員及び専門委員は、非常勤とする。

 (部会)

第七十五条 審議会に、部会を置くことができる。

2 部会に部会長を置き、会長の指名する委員がこれに当る。

3 部会に属すべき委員は、会長が指名する。

4 審議会は、その定めるところにより、部会の決議をもつて審議会の決議とすることができる。

 (省令への委任)

第七十六条 この章に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、通商産業省令で定める。

   第七章 雑則

 (坑口に関する届出)

第七十七条 鉱業権者又は租鉱権者は、坑口の使用を停止し、又は廃止したときは、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。

 (業務又は経理に関する勧告)

第七十八条 通商産業大臣は、石炭鉱業の合理化のため特に必要があると認めるときは、採掘権者又は租鉱権者に対し、業務又は経理の改善に関する勧告をすることができる。

 (報告の徴収)

第七十九条 通商産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、鉱業権者若しくは租鉱権者に対し、その業務若しくは経理の状況に関し報告をさせ、又は石炭の販売業者に対し、石炭の販売価格その他取引の状況に関し報告をさせることができる。

 (立入検査)

第八十条 通商産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、鉱業権者若しくは租鉱権者又は石炭の販売業者の事業場、倉庫、事務所又は営業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

2 第五十三条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による立入検査に準用する。

 (異議の申立)

第八十一条 この法律の規定による通商産業大臣の処分に対し不服のある者は、その旨を記載した書面をもつて、通商産業大臣に異議の申立をすることができる。

第八十二条 通商産業大臣は、異議の申立を受理したときは、異議の申立をした者に対し、相当な期間をおいて予告をした上、公開による聴聞を行わなければならない。

2 前項の予告においては、期日、場所及び事案の内容を示さなければならない。

3 聴聞に際しては、異議の申立をした者及び利害関係人に対し、その事案について証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。

第八十三条 通商産業大臣は、前条の聴聞を行つた後、文書をもつて決定をし、その写を異議の申立をした者に送付しなければならない。

   第八章 罰則

第八十四条 第五十四条の規定による通商産業大臣の許可を受けないで坑口の開設の工事をした者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

第八十五条 第二十一条の規定に違反して、その職務に関して知得した秘密を漏らし、又は盗用した者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。

第八十六条 次の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。

 一 第六十六条又は第七十七条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者

 二 第七十九条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

 三 第八十条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

第八十七条 次の各号の一に該当する者は、一万円以下の罰金に処する。

 一 第十二条の規定に違反した者

 二 第四十一条第一項の規定による資料を提出せず、又は虚偽の資料を提出した者

第八十八条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第八十四条、第八十六条又は前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

第八十九条 次の各号に掲げる違反があつた場合においては、その行為をした事業団の役員又は職員を一万円以下の過料に処する。

 一 第十一条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。

 二 第二十五条第一項に規定する業務以外の業務を行つたとき。

 三 第五十三条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して二月をこえない範囲内で政令で定める日から施行する。

 (廃止)

第二条 この法律は、施行の日から五年以内に廃止するものとする。

 (坑口に関する届出)

第三条 この法律の施行の際現に抗口を有し、又は坑口の開設の工事をしている鉱業権者又は租鉱権者は、この法律の施行の日から三十日以内に、通商産業省令で定める事項を通商産業大臣に届け出なければならない。

 (事業団の設立)

第四条 通商産業大臣は、第十六条第一項の例により、事業団の理事長又は監事となるべき者を指名する。

2 前項の規定により指名された理事長又は監事となるべき者は、事業団の成立の時において、この法律の規定によりそれぞれ理事長又は監事に任命されたものとする。

第五条 通商産業大臣は、設立委員を命じて、事業団の設立に関する事務を処理させる。

第六条 設立委員は、設立の準備を完了したときは、その事務を附則第四条第一項の規定により指名された理事長となるべき者に引き継がなければならない。

第七条 附則第四条第一項の規定により指名された理事長となるべき者は、前条の事務の引継を受けた日において政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。

第八条 事業団は、設立の登記をすることによつて成立する。

第九条 事業団の設立の日の属する事業年度の事業計画及び収支予算については、第二十七条及び第二十八条の規定中「毎事業年度開始前に」とあるのは、「事業団の成立後遅滞なく」と読み替えるものとする。

 (罰則)

第十条 附則第三条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、三万円以下の罰金に処する。

2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の刑を科する。

 (登録税法の改正)

第十一条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第十九条中「及第十四号乃至第十七号」を「、第十四号乃至第十七号及第二十五号」に改め、同条第七号中「鉱害復旧事業団、」の下に「石炭鉱業整備事業団、」を、「臨時石炭鉱害復旧法、」の下に「石炭鉱業合理化臨時措置法、」を加え、同条に次の一号を加える。

  二十五 石炭鉱業整備事業団ガ石炭鉱業合理化臨時措置法第二十五条第一号又ハ第二号ノ業務トシテ買収スル採掘権又ハ鉱業施設ニ関スル権利ノ取得ニ関スル登記又ハ登録

 (印紙税法の改正)

第十二条 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。

 第五条第六号ノ十一の次に次の一号を加える。

 六ノ十二 石炭鉱業整備事業団ノ石炭鉱業合理化臨時措置法第二十五条第一項第一号又ハ第二号ノ業務トシテ行フ採掘権又ハ鉱業施設ノ買収ニ関シ発スル証書、帳簿

 (所得税法の改正)

第十三条 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

 第三条第一項第十号中「鉱害復旧事業団」の下に「、石炭鉱業整備事業団」を加える。

 (法人税法の改正)

第十四条 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。

 第五条第一項第七号中「鉱害復旧事業団」の下に「及び石炭鉱業整備事業団」を加える。

 (地方税法の改正)

第十五条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

 第七十二条の五第一項第七号中「鉱害復旧事業団」の下に「及び石炭鉱業整備事業団」を加える。

 第七十三条の五の見出し中「場合」を「場合等」に改め、同条に次の一項を加える。

2 道府県は、石炭鉱業整備事業団が石炭鉱業合理化臨時措置法(昭和三十年法律第百五十六号)第二十五条第一項第二号の業務として鉱業施設を買収した場合における不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができない。

 第百七十九条中「及び日本国有鉄道」を「、日本国有鉄道及び石炭鉱業整備事業団」に改める。

 第百八十条第二項中「前項」を「第一項」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。

2 石炭鉱業合理化臨時措置法第五十四条の許可が拒否されたことにより石炭を掘採することができない採掘鉱区についての鉱区税の税率は、前項の規定にかかわらず、同項に規定する税率の二分の一とする。

 第三百四十八条第二項中第二号の二を第二号の三とし、第二号の次に次の一号を加える。

 二の二 石炭鉱業整備事業団が石炭鉱業を整備するため買収して保有する固定資産で政令で定めるもの

 (通商産業省設置法の改正)

第十六条 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。

  第二十五条第一項の表中

石油及び可燃性天然ガス資源開発審議会

石油及び可燃性天然ガス資源の開発に関する重要事項を調査審議すること。

 を

石油及び可燃性天然ガス資源開発審議会

石油及び可燃性天然ガス資源の開発に関する重要事項を調査審議すること。

 
 

石炭鉱業審議会

石炭鉱業の合理化に関する重要事項を調査審議すること。

 に改める。

(内閣総理・法務・大蔵・通商産業・労働大臣署名) 

衆議院
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