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法律第百四十七号(昭三四・四・二〇)

  ◎国税徴収法

 国税徴収法(明治三十年法律第二十一号)の全部を改正する。

目次

 第一章 総則(第一条―第七条)

 第二章 国税と他の債権との調整

  第一節 一般的優先の原則(第八条―第十一条)

  第二節 国税及び地方税の調整(第十二条―第十四条)

  第三節 国税と被担保債権との調整(第十五条―第二十二条)

  第四節 国税と仮登記又は譲渡担保に係る債権との調整(第二十三条―第二十五条)

  第五節 国税及び地方税等と私債権との競合の調整(第二十六条)

 第三章 納税義務

  第一節 納税義務の承継(第二十七条―第二十九条)

  第二節 連帯納税義務(第三十条・第三十一条)

  第三節 第二次納税義務(第三十二条―第三十九条)

  第四節 人格のない社団等の納税義務(第四十条・第四十一条)

 第四章 納税の請求

  第一節 納税の告知(第四十二条―第四十四条)

  第二節 督促(第四十五条・第四十六条)

 第五章 滞納処分

  第一節 財産の差押

   第一款 通則(第四十七条―第五十五条)

   第二款 動産又は有価証券の差押(第五十六条―第六十一条)

   第三款 債権の差押(第六十二条―第六十七条)

   第四款 不動産等の差押(第六十八条―第七十一条)

   第五款 無体財産権等の差押(第七十二条―第七十四条)

   第六款 差押禁止財産(第七十五条―第七十八条)

   第七款 差押の解除(第七十九条―第八十一条)

  第二節 交付要求(第八十二条―第八十八条)

  第三節 財産の換価

   第一款 通則(第八十九条―第九十三条)

   第二款 公売(第九十四条―第百八条)

   第三款 随意契約による売却(第百九条・第百十条)

   第四款 売却決定(第百十一条―第百十四条)

   第五款 代金納付及び権利移転(第百十五条―第百二十七条)

  第四節 換価代金等の配当(第百二十八条―第百三十五条)

  第五節 滞納処分費(第百三十六条―第百三十八条)

  第六節 雑則

   第一款 滞納処分の効力(第百三十九条・第百四十条)

   第二款 財産の調査(第百四十一条―第百四十七条)

 第六章 納税の猶予及び担保

  第一節 徴収猶予(第百四十八条―第百五十二条)

  第二節 滞納処分の停止(第百五十三条・第百五十四条)

  第三節 納税の猶予に伴う利子税額等の減免(第百五十五条)

  第四節 納税の猶予に伴う担保(第百五十六条・第百五十七条)

  第五節 保全担保及び保全差押(第百五十八条・第百五十九条)

  第六節 担保の処分(第百六十条)

 第七章 還付(第百六十一条―第百六十五条)

 第八章 再調査、審査及び訴訟(第百六十六条―第百七十三条)

 第九章 雑則(第百七十四条―第百八十六条)

 第十章 罰則(第百八十七条―第百八十九条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、国税の賦課、徴収及び還付に関する手続の執行について必要な事項を定め、私法秩序との調整を図りつつ、国民の納税義務の適正な実現を通じて国税収入を確保することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 一 国税 国が課する税のうち関税、とん税及び特別とん税以外のものをいう。

 二 地方税 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第一条第一項第十四号(用語)に規定する地方団体の徴収金(都、特別区及び全部事務組合のこれに相当する徴収金を含む。)をいう。

 三 附帯税額 利子税額、延滞加算税額、過少申告加算税額、過少納付加算税額、軽加算税額、無申告加算税額、源泉徴収加算税額及び重加算税額をいう。

 四 内国消費税 酒税、砂糖消費税、物品税、揮発油税、地方道路税及びトランプ類税(これらの税に係る延滞加算税額及び滞納処分費を含む。)をいう。

 五 公課 滞納処分の例により徴収することができる債権のうち国税及び地方税以外のものをいう。

 六 納税者 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)その他の国税に関する法律の規定に基いて国税(その滞納処分費を含む。第四十二条(納税の告知)、第四十五条(督促)及び第四十六条(延滞加算税額)を除き、以下同じ。)を納付する義務を負う者(第二次納税義務者及び保証人を含む。)をいう。

 七 第二次納税義務者 第三十三条から第三十九条まで(無限責任社員等の第二次納税義務)又は第四十一条第二項若しくは第三項(人格のない社団等に係る第二次納税義務)の規定により納税者の国税を納付する義務を負う者をいう。

 八 保証人 第百五十六条第一項第六号(保証人)又は酒税法(昭和二十八年法律第六号)その他の国税に関する法律の規定により、納税者の国税の納付について保証をした者をいう。

 九 滞納者 納税者でその納付すべき国税をその納付の期限までに納付しないものをいう。

 十 法定納期限 所得税法その他の国税に関する法律の規定による国税を納付すべき期限(修正申告、期限後申告、更正若しくは決定(内国消費税又は入場税に係るものを除く。)、延納、繰上徴収又は徴収に関する猶予に係る期限を除く。)をいい、附帯税額及び滞納処分費については、その徴収の基因となつた国税の当該期限をいう。

 十一 徴収職員 税務署長又は国税の徴収に関する事務につきその委任を受けた職員をいう。

 十二 強制換価手続 滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)、強制執行、担保権の実行としての競売、企業担保権の実行手続及び破産手続をいう。

 十三 執行機関 滞納処分を執行する行政機関その他の者(以下「行政機関等」という。)、裁判所、執行吏、強制管理人及び破産管財人をいう。

 (他の国税に関する法律との関係)

第三条 この法律に規定する事項で他の国税に関する法律に別段の定があるものは、その定めるところによる。

 (期間の計算及び期限の特例)

第四条 国税に関する法律に定める期間の計算については、民法(明治二十九年法律第八十九号)第百三十九条から第百四十三条まで(期間)に定めるところによる。

2 国税に関する法律に定める国税の申告、申請、納付又は徴収に関する期限(前項の規定の適用がある期限その他政令で定める期限を除く。)が民法第百四十二条(期間の満了の特例)に規定する休日に該当するときは、その国税に関する法律の規定にかかわらず、その休日の翌日をその期限とみなす。

 (書類の送達)

第五条 国税の賦課、徴収、還付又は再調査若しくは審査に関する書類は、郵便による送達又は交付送達により、その送達を受けるべき者の住所又は居所(事務所及び事業所を含む。以下同じ。)に送達する。ただし、納税管理人があるときは、国税の賦課、徴収(滞納処分を除く。)又は還付に関する書類については、その住所又は居所に送達する。

2 交付送達は、税務署所属の職員が、前項の規定により送達すべき場所において、その送達を受けるべき者に書類を交付して行う。ただし、その者に異議がないときは、その他の場所において交付することができる。

3 次の各号の一に掲げる場合には、交付送達は、前項の規定による交付に代え、当該各号に掲げる行為により行うことができる。

 一 送達すべき場所において書類の送達を受けるべき者に出会わない場合 その使用人その他の従業者又は同居の者で書類の受領について相当のわきまえのあるものに書類を交付すること。

 二 書類の送達を受けるべき者その他前号に規定する者が送達すべき場所にいない場合又はこれらの者が正当な理由がなく書類の受取を拒んだ場合 送達すべき場所に書類を差し置くこと。

4 通常の取扱による郵便によつて第一項に規定する書類を発送した場合には、その郵便物は、通常到達すべきであつた時に送達があつたものと推定する。

5 税務署長は、前項に規定する場合には、その書類の名称、その送達を受けるべき者の氏名、あて先及び発送の年月日を確認するに足りる記録を作成しておかなければならない。

 (公示送達)

第六条 税務署長は、前条の規定により送達すべき書類について、その送達を受けるべき者の住所及び居所が不明であり、又はこの法律の施行地にない場合には、その送達に代えて公示送達をすることができる。

2 公示送達は、税務署長が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付する旨をその税務署の掲示場に掲示して行う。

3 前項の場合において、掲示を始めた日から起算して七日を経過したときは、書類の送達があつたものとみなす。

 (納税管理人)

第七条 納税者は、納税地に住所及び居所を有しないときは、納税に関する事項を処理させるため、納税地に住所又は居所を有する者その他その納税につき便宜を有する者のうちから納税管理人を定めることができる。

2 納税者は、この法律の施行地に住所及び居所を有せず、又は有しないこととなるときは、前項の納税管理人を定めなければならない。

3 納税者は、前二項の規定により納税管理人を定めたときは、その納税地を所轄する税務署長に申告しなければならない。その納税管理人を変更したときも、また同様とする。

   第二章 国税と他の債権との調整

    第一節 一般的優先の原則

 (国税優先の原則)

第八条 国税は、納税者の総財産について、この章に別段の定がある場合を除き、すベての公課その他の債権に先だつて徴収する。

 (強制換価手続の費用の優先)

第九条 納税者の財産につき強制換価手続が行われた場合において、国税の交付要求をしたときは、その国税は、その手続により配当すべき金銭(以下この章において「換価代金」という。)につき、その手続に係る費用に次いで徴収する。

 (直接の滞納処分費の優先)

第十条 納税者の財産を国税の滞納処分により換価したときは、その滞納処分に係る滞納処分費は、次条、第十四条から第十七条まで(担保を徴した国税の優先等)及び第十九条から第二十一条まで(先取特権等の優先)の規定にかかわらず、その換価代金につき、他の国税、地方税その他の債権に先だつて徴収する。

 (強制換価の場合の内国消費税の優先)

第十一条 第四十四条(強制換価の場合の内国消費税の徴収)の規定により徴収する国税は、次条から第十七条まで(差押先着手による国税の優先等)及び第十九条から第二十一条まで(先取特権等の優先)の規定にかかわらず、その徴収の基因となつた移出又は販売に係る物品の換価代金につき、他の国税、地方税その他の債権に先だつて徴収する。

    第二節 国税及び地方税の調整

 (差押先着手による国税の優先)

第十二条 納税者の財産につき国税の滞納処分による差押をした場合において、他の国税又は地方税の交付要求があつたときは、その差押に係る国税は、その換価代金につき、その交付要求に係る他の国税又は地方税に先だつて徴収する。

2 納税者の財産につき国税又は地方税の滞納処分による差押があつた場合において、国税の交付要求をしたときは、その交付要求に係る国税は、その換価代金につき、その差押に係る国税又は地方税(第九条(強制換価手続の費用の優先)の規定の適用を受ける費用を除く。)に次いで徴収する。

 (交付要求先着手による国税の優先)

第十三条 納税者の財産につき強制換価手続が行われた場合において、国税及び地方税の交付要求があつたときは、その換価代金につき、先にされた交付要求に係る国税は、後にされた交付要求に係る国税又は地方税に先だつて徴収し、後にされた交付要求に係る国税は、先にされた交付要求に係る国税又は地方税に次いで徴収する。

 (担保を徴した国税の優先)

第十四条 国税につき徴した担保財産があるときは、前二条の規定にかかわらず、その国税は、その換価代金につき他の国税及び地方税に先だつて徴収する。

    第三節 国税と被担保債権との調整

 (法定納期限等以前に設定された質権の優先)

第十五条 納税者がその財産上に質権を設定している場合において、その質権が国税の法定納期限(次の各号に掲げる国税については、当該各号に掲げる日とし、当該国税に係る附帯税額及び滞納処分費については、その徴収の基因となつた国税に係る当該各号に掲げる日とする。以下「法定納期限等」という。)以前に設定されているものであるときは、その国税は、その換価代金につき、その質権により担保される債権に次いで徴収する。

 一 法定納期限後にその納付すべき額が確定した国税 その納税告知書を発した日(所得税、法人税、相続税、贈与税又は再評価税で申告により確定したものについては、その申告があつた日とし、所得税の予定申告に係る更正又は決定により確定したものについては、その通知書を発した日とする。)

 二 法定納期限前に第四十三条第三項(繰上徴収)の規定により告知がされた国税 その告知により指定された納期限

 三 所得税法第三章(予定納税及び予定申告)の規定により第二期において納付すべき所得税 第一期において納付すべき所得税の納期限(第一期において納付すべき所得税の額をこえる部分の所得税については、予定納税及び予定申告に係る更正若しくは決定の通知書を発した日又は予定納税額修正申告書の提出があつた日)

 四 相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)第三十五条第五項(申告書の提出期限前の決定)の規定による決定により確定した相続税 その納税告知書を発した日

 五 再評価税で確定した税額を二以上の納期において納付するもののうち最初の納期後の納期において納付する再評価税 その再評価税の最初の納期限

 六 第二十四条第二項(譲渡担保権者の物的納税責任)又は第百五十九条第三項(保全差押の金額の通知)の規定により告知し、又は通知した金額の国税 これらの規定による告知書又は通知書を発した日

 七 相続人(包括受遺者を含む。以下同じ。)の固有の財産から徴収する被相続人(包括遺贈者を含む。以下同じ。)の国税及び相続財産から徴収する相続人の固有の国税(相続のあつた日前にその納付すべき税額が確定したものに限る。) その相続(包括遺贈を含む。以下同じ。)があつた日

 八 合併により消滅した法人(以下「被合併法人」という。)に属していた財産から徴収する合併後存続する法人又は当該合併に係る他の被合併法人の固有の国税及び合併後存続する法人の固有の財産から徴収する被合併法人の国税(合併のあつた日前にその納付すべき税額が確定したものに限る。) その合併のあつた日

 九 第二次納税義務者又は保証人として納付すべき国税 第三十二条第一項(第二次納税義務者に対する納付通知)(第百六十条第四項(保証人からの徴収)において準用する場合を含む。)の納付通知書を発した日

2 前項の規定は、登記(登録を含む。以下同じ。)をすることができる質権以外の質権については、その質権者が、強制換価手続において、その執行機関に対し、その設定の事実を証明した場合に限り適用する。この場合において、有価証券を目的とする質権以外の質権については、その証明は、次に掲げる書類によつてしなければならない。

 一 公正証書

 二 登記所又は公証人役場において日附のある印章が押されている私署証書

 三 郵便法(昭和二十二年法律第百六十五号)第六十三条(内容証明)の規定により内容証明を受けた証書

3 前項各号の規定により証明された質権は、第一項の規定の適用については、民法施行法(明治三十一年法律第十一号)第五条(確定日附がある証書)の規定により確定日附があるものとされた日に設定されたものとみなす。

4 第一項の質権を有する者は、第二項の証明をしなかつたため国税におくれる金額の範囲内においては、第一項の規定により国税に優先する後順位の質権者に対して優先権を行うことができない。

 (法定納期限等以前に設定された抵当権の優先)

第十六条 納税者が国税の法定納期限等以前にその財産上に抵当権を設定しているときは、その国税は、その換価代金につき、その抵当権により担保される債権に次いで徴収する。

 (譲受前に設定された質権又は抵当権の優先)

第十七条 納税者が質権又は抵当権の設定されている財産を譲り受けたときは、国税は、その換価代金につき、その質権又は抵当権により担保される債権に次いで徴収する。

2 前項の規定は、登記をすることができる質権以外の質権については、その質権者が、強制換価手続において、その執行機関に対し、同項の譲受前にその質権が設定されている事実を証明した場合に限り適用する。この場合においては、第十五条第二項後段及び第三項(優先質権の証明)の規定を準用する。

 (質権及び抵当権の優先額の限度等)

第十八条 前三条の規定に基き国税に先だつ質権又は抵当権により担保される債権の元本の金額は、その質権者又は抵当権者がその国税に係る差押又は交付要求の通知を受けた時における債権額を限度とする。ただし、その国税に優先する他の債権を有する者の権利を害することとなるときは、この限りでない。

2 質権又は抵当権により担保される債権額を増加する登記がされた場合には、その登記がされた時において、その増加した債権額につき新たに質権又は抵当権が設定されたものとみなして、前三条の規定を適用する。

 (不動産保存の先取特権等の優先)

第十九条 次に掲げる先取特権が納税者の財産上にあるときは、国税は、その換価代金につき、その先取特権により担保される債権に次いで徴収する。

 一 不動産保存の先取特権

 二 不動産工事の先取特権

 三 商法(明治三十二年法律第四十八号)第八百十条(救助者の先取特権)若しくは第八百四十二条(船舶債権者の先取特権)又は国際海上物品運送法(昭和三十二年法律第百七十二号)第十九条(船舶先取特権)の先取特権

 四 国税に優先する債権のため又は国税のために動産を保存した者の先取特権

2 前項第三号及び第四号の規定は、その先取特権者が、強制換価手続において、その執行機関に対しその先取特権がある事実を証明した場合に限り適用する。

 (法定納期限等以前にある不動産賃貸の先取特権等の優先)

第二十条 次に掲げる先取特権が納税者の財産上に国税の法定納期限等以前からあるとき、又は納税者がその先取特権のある財産を譲り受けたときは、その国税は、その換価代金につき、その先取特権により担保される債権に次いで徴収する。

 一 不動産賃貸の先取特権その他質権と同一の順位又はこれらに優先する順位の動産に関する特別の先取特権(前条第一項第三号及び第四号に掲げる先取特権を除く。)

 二 不動産売買の先取特権

 三 借地法(大正十年法律第四十九号)第十三条(土地所有者等の先取特権)、罹災都市借地借家臨時処理法(昭和二十一年法律第十三号)第八条(賃貸人等の先取特権)又は接収不動産に関する借地借家臨時処理法(昭和三十一年法律第百三十八号)第七条(賃貸人等の先取特権)に規定する先取特権

 四 登記をした一般の先取特権

2 前条第二項の規定は、前項第一号に掲げる先取特権について準用する。

 (留置権の優先)

第二十一条 留置権が納税者の財産上にある場合において、その財産を滞納処分により換価したときは、その国税は、その換価代金につき、その留置権により担保されていた債権に次いで徴収する。この場合において、その債権は、質権、抵当権又は先取特権により担保される債権に先だつて配当するものとする。

2 前項の規定は、その留置権者が、滞納処分の手続において、その行政機関等に対し、その留置権がある事実を証明した場合に限り適用する。

 (担保権付財産が譲渡された場合の国税の徴収)

第二十二条 納税者が他に国税に充てるべき十分な財産がない場合において、その者がその国税の法定納期限等後に登記した質権又は抵当権を設定した財産を譲渡したときは、納税者の財産につき滞納処分を執行してもなおその国税に不足すると認められるときに限り、その国税は、その質権者又は抵当権者から、これらの者がその譲渡に係る財産の強制換価手続において、その質権又は抵当権によつて担保される債権につき配当を受けるべき金額のうちから徴収することができる。

2 前項の規定により徴収することができる金額は、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した額をこえることができない。

 一 前項の譲渡に係る財産の換価代金から同項に規定する債権が配当を受けるべき金額

 二 前号の財産を納税者の財産とみなし、その財産の換価代金につき前項の国税の交付要求があつたものとした場合に同項の債権が配当を受けるべき金額

3 税務署長は、第一項の規定により国税を徴収するため、同項の質権者又は抵当権者に代位してその質権又は抵当権を実行することができる。

4 税務署長は、第一項の規定により国税を徴収しようとするときは、その旨を質権者又は抵当権者に通知しなければならない。

5 税務署長は、第一項の譲渡に係る財産につき強制換価手続が行われた場合には、同項の規定により徴収することができる金額の国税につき、執行機関に対し、交付要求をすることができる。

    第四節 国税と仮登記又は譲渡担保に係る債権との調整

 (担保の目的でされた仮登記と国税)

第二十三条 納税者を登記義務者(登録義務者を含む。)として、債務不履行を停止条件とする代物弁済の予約に基く権利移転の請求権の保全のための仮登記(仮登録を含む。以下同じ。)その他これに類する担保の目的でされている仮登記(質権、抵当権又は先取特権についてされたもの及び国税の法定納期限等以前にされているものを除く。以下「担保の目的でされている仮登記」という。)がある財産を差し押えた場合には、その処分後にその仮登記に基く本登記(本登録を含む。以下同じ。)がされたときにおいても、その滞納処分による差押の効力は、失われない。

2 税務署長は、前項の差押をしたときは、その旨を仮登記の権利者に通知しなければならない。

3 前項の通知に係る差押につき再調査の請求若しくは審査の請求又は訴の提起があつたときは、その請求又は訴訟の係属する間は、その財産の換価をすることができない。

 (譲渡担保権者の物的納税責任)

第二十四条 納税者が国税を滞納した場合において、その者が譲渡した財産でその譲渡により担保の目的となつているもの(以下「譲渡担保財産」という。)があるときは、その者の財産につき滞納処分を執行してもなお徴収すべき国税に不足すると認められるときに限り、譲渡担保財産から納税者の国税を徴収することができる。

2 税務署長は、前項の規定により徴収しようとするときは、譲渡担保財産の権利者(以下「譲渡担保権者」という。)に対し、徴収しようとする金額その他必要な事項を記載した書面により告知しなければならない。この場合においては、その者の住所又は居所の所在地を所轄する税務署長及び納税者に対しその旨を通知しなければならない。

3 前項の告知書を発した日から十日を経過した日までにその徴収しようとする金額が完納されていないときは、徴収職員は、譲渡担保権者を第二次納税義務者とみなして、その譲渡担保財産につき滞納処分を執行することができる。この場合においては、第三十二条第三項から第六項まで(第二次納税義務の通則)の規定を準用する。

4 譲渡担保財産を第一項の納税者の財産としてした差押は、同項の要件に該当する場合に限り、前項の規定による差押として滞納処分を続行することができる。この場合において、税務署長は、遅滞なく、第二項の告知及び通知をしなければならない。

5 第二項の規定による告知又は前項の規定の適用を受ける差押をした後、納税者の財産の譲渡により担保される債権が債務不履行その他弁済以外の理由により消滅した場合(譲渡担保財産につき買戻、再売買の予約その他これらに類する契約を締結している場合において、期限の経過その他その契約の履行以外の理由によりその契約が効力を失つたときを含む。)においても、なお譲渡担保財産として存続するものとみなして、第三項の規定を適用する。

6 第一項の規定は、国税の法定納期限等以前に、担保の目的でされた譲渡に係る権利の移転の登記がある場合又は譲渡担保権者が国税の法定納期限等以前に譲渡担保財産となつている事実を、その財産の売却決定の前日までに、証明した場合には、適用しない。この場合においては、第十五条第二項後段及び第三項(優先質権の証明)の規定を準用する。

7 第一項の規定の適用を受ける譲渡担保権者は、第十章(罰則)の規定の適用については、納税者とみなす。

 (譲渡担保財産の換価の特例等)

第二十五条 買戻の特約のある売買の登記、再売買の予約の請求権の保全のための仮登記その他これに類する登記(以下この条において「買戻権の登記等」という。)がされている譲渡担保財産でその買戻権の登記等の権利者が滞納者であるときは、その差し押えた買戻権の登記等に係る権利及び前条第三項の規定により差し押えたその買戻権の登記等のある譲渡担保財産を一括して換価することができる。

2 前条及び前項に規定するもののほか、譲渡担保財産からする納税者の国税の徴収に関し必要な事項は、政令で定める。

    第五節 国税及び地方税等と私債権との競合の調整

 (国税及び地方税等と私債権との競合の調整)

第二十六条 強制換価手続において国税が他の国税、地方税又は公課(以下この条において「地方税等」という。)及びその他の債権(以下この条において「私債権」という。)と競合する場合において、この章又は地方税法その他の法律の規定により、国税が地方税等に先だち、私債権がその地方税等におくれ、かつ、当該国税に先だつとき、又は国税が地方税等におくれ、私債権がその地方税等に先だち、かつ、当該国税におくれるときは、換価代金の配当については、次に定めるところによる。

 一 第九条(強制換価手続の費用の優先)又は第十条(直接の滞納処分費の優先)に規定する費用若しくは滞納処分費、第十一条(強制換価の場合の内国消費税の優先)に規定する国税(地方税法の規定によりこれに相当する優先権を有する地方税を含む。)、第二十一条(留置権の優先)の規定の適用を受ける債権、第五十九条第三項若しくは第四項(前払賃料の優先)(第七十一条第四項(自動車等についての準用規定)において準用する場合を含む。)の規定の適用を受ける債権又は第十九条(不動産保存の先取特権等の優先)の規定の適用を受ける債権があるときは、これらの順序に従い、それぞれこれらに充てる。

 二 国税及び地方税等並びに私債権(前号の規定の適用を受けるものを除く。)につき、法定納期限等(地方税又は公課のこれに相当する納期限等を含む。)又は設定、登記、譲渡若しくは成立の時期の古いものからそれぞれ順次にこの章又は地方税法その他の法律の規定を適用して国税及び地方税等並びに私債権に充てるべき金額の総額をそれぞれ定める。

 三 前号の規定により定めた国税及び地方税等に充てるべき金額の総額を第八条(国税優先の原則)若しくは第十二条から第十四条まで(差押先着手による国税の優先等)の規定又は地方税法その他の法律のこれらに相当する規定により、順次国税及び地方税等に充てる。

 四 第二号の規定により定めた私債権に充てるべき金額の総額を民法その他の法律の規定により順次私債権に充てる。

   第三章 納税義務

    第一節 納税義務の承継

 (相続による納税義務の承継)

第二十七条 相続があつた場合には、その相続人又は民法第九百五十一条(相続財産法人)の法人は、被相続人に課されるべき、又は被相続人が納付すべき国税(以下「被相続人の国税」という。)を納付しなければならない。ただし、限定承認をした相続人は、相続によつて得た財産を限度とする。

2 前項の場合において、相続人が二人以上あるときは、各相続人は、同項の規定により被相続人の国税を民法第九百条から第九百二条まで(法定相続分・代襲相続分・指定相続分)の規定によるその相続分によりあん分して計算した額を納付しなければならない。

3 前項の場合において、相続人のうちに相続によつて得た財産の価額が同項の規定により納付すべき国税の額をこえている者があるときは、その相続人は、そのこえる価額を限度として、他の相続人が同項の規定により納付すべき国税を納付する責に任ずる。

 (相続人からの徴収の手続)

第二十八条 納税者につき相続があつた場合において、その相続人が二人以上あるときは、これらの相続人は、そのうちから被相続人の国税の賦課、徴収(滞納処分を除く。)及び還付に関する書類を受領する代表者を指定することができる。この場合において、その指定をした相続人は、その旨を税務署長に届け出なければならない。

2 税務署長は、前項前段の場合において、すべての相続人又はその相続分のうちに明らかでないものがあり、かつ、相当の期間内に同項後段の届出がないときは、相続人の一人を指定し、その者を同項に規定する代表者とすることができる。この場合において、その指定をした税務署長は、その旨を相続人に通知しなければならない。

3 前二項に定めるもののほか、第一項に規定する代表者の指定に関し必要な事項は、政令で定める。

4 被相続人の国税につき、その者の死亡後その死亡を知らないでその者の名義でした賦課、徴収又は還付に関する処分で書類の送達を要するものは、その相続人の一人にその書類が送達された場合に限り、当該国税につきすべての相続人に対してされたものとみなす。

 (法人の合併による承継)

第二十九条 法人が合併した場合には、合併後存続する法人又は合併により設立した法人は、被合併法人に課されるべき、又は被合併法人が納付すべき国税を納付しなければならない。

    第二節 連帯納税義務

 (連帯納税義務の通則)

第三十条 国税の連帯納付義務については、民法第四百三十二条から第四百三十四条まで、第四百三十七条及び第四百三十九条から第四百四十四条まで(連帯債務の効力等)の規定を準用する。

 (共有物等に係る連帯納税義務)

第三十一条 共有物、共同事業又はこれらにより生じた財産に係る国税は、その納税者が連帯納付の義務を負う。

    第三節 第二次納税義務

 (第二次納税義務の通則)

第三十二条 税務署長は、納税者の国税を第二次納税義務者から徴収しようとするときは、その者に対し、政令で定めるところにより、徴収しようとする金額、納付の期限その他必要な事項を記載した納付通知書により告知しなければならない。この場合においては、その者の住所又は居所の所在地を所轄する税務署長に対しその旨を通知しなければならない。

2 第二次納税義務者がその国税を前項の納付の期限までに完納しないときは、税務署長は、次項において準用する第四十三条(繰上徴収)の規定により徴収する場合を除き、その期限後二十日以内に納付催告書を発して督促しなければならない。

3 第四十三条の規定は、第一項の場合について準用する。

4 第二次納税義務者の財産の換価は、第一項の納税者の財産を換価に付した後でなければ、行うことができない。

5 第二次納税義務者が第一項の告知、第二項の督促又はこれらに係る国税に関する滞納処分につき再調査の請求若しくは審査の請求をし、又は訴を提起したときは、その請求又は訴訟の係属する間は、その財産の換価をすることができない。

6 この節の規定は、第二次納税義務者から第一項の納税者に対してする求償権の行使を妨げない。

 (無限責任社員の第二次納税義務)

第三十三条 合名会社又は合資会社が国税を滞納した場合において、その財産につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められるときは、その社員(合資会社にあつては、無限責任社員)は、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。この場合において、その社員は、連帯してその責に任ずる。

 (清算人等の第二次納税義務)

第三十四条 法人が解散した場合において、その法人に課されるべき、又はその法人が納付すべき国税を納付しないで残余財産の分配又は引渡をしたときは、その法人に対し滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合に限り、清算人及び残余財産の分配又は引渡を受けた者(前条の規定の適用を受ける者を除く。以下この条において同じ。)は、その滞納に係る国税につき第二次納税義務を負う。ただし、清算人は分配又は引渡をした財産の価額の限度において、残余財産の分配又は引渡を受けた者はその受けた財産の価額の限度において、それぞれその責に任ずる。

 (同族会社の第二次納税義務)

第三十五条 滞納者がその者を判定の基礎となる株主又は社員として選定した場合に法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)第七条の二第一項(同族会社の定義)に規定する会社に該当する会社(以下「同族会社」という。)の株式又は出資を有する場合において、当該株式又は出資につき次に掲げる理由があり、かつ、その者の財産(当該会社の株式又は出資を除く。)につき滞納処分を執行してもなお徴収すべき国税に不足すると認められるときは、その有する当該会社の株式又は出資(当該滞納に係る国税の法定納期限の一年前までに取得したものを除く。)の価額の限度において、当該会社は、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。

 一 その株式又は出資を再度換価に付してもなお買受人がないこと。

 二 その株式若しくは出資の譲渡につき法律若しくは定款に制限があり、又は株券の発行がないため、これらを譲渡することにつき支障があること。

2 前項の同族会社の株式又は出資の価額は、第三十二条第一項(第二次納税義務者への告知)の納付通知書を発する時における当該会社の資産の総額から負債の総額を控除した額をその株式又は出資の数で除した額を基礎として計算した額による。

3 第一項の同族会社であるかどうかの判定は、第三十二条第一項の納付通知書を発する時の現況による。

 (実質課税額等の第二次納税義務)

第三十六条 滞納者の次の各号に掲げる国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められるときは、第一号に掲げる者にあつては同号に規定する収益が生じた財産(その財産の異動により取得した財産及びこれらの財産に基因して取得した財産(以下次条及び第三十八条(事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務)において「取得財産」という。)を含む。)、第二号に掲げる者にあつてはその受けた利益の額を限度として、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。

 一 所得税法第三条の二(実質課税の原則)若しくは第四十六条(営業所の所得の帰属の推定)又は法人税法第七条の三(実質課税の原則)の規定により課された国税 その国税の賦課の基因となつた収益が法律上帰属するとみられる者

 二 所得税法第六十七条(同族会社等の行為又は計算の否認)、法人税法第三十一条の三(同族会社等の行為又は計算の否認)又は相続税法第六十四条(同族会社の行為又は計算の否認)の規定により課された国税 これらの規定により否認された納税者の行為(否認された計算の基礎となつた行為を含む。)につき利益を受けたものとされる者

 (共同的な事業者の第二次納税義務)

第三十七条 次の各号に掲げる者が納税者の事業の遂行に欠くことができない重要な財産を有し、かつ、当該財産に関して生ずる所得が納税者の所得となつている場合において、その納税者がその供されている事業に係る国税を滞納し、その国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められるときは、当該各号に掲げる者は、当該財産(取得財産を含む。)を限度として、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。

 一 納税者が個人である場合 その者と生計を一にする配偶者その他の親族でその納税者の経営する事業から所得を受けているもの

 二 納税者がその事実のあつた時の現況において同族会社である場合 その判定の基礎となつた株主又は社員

 (事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務)

第三十八条 納税者がその親族その他納税者と特殊な関係のある個人又は同族会社で政令で定めるもの(以下「親族その他の特殊関係者」という。)に事業を譲渡し、かつ、その譲受人が同一とみられる場所において同一又は類似の事業を営んでいる場合において、その納税者が当該事業に係る国税を滞納し、その国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められるときは、その譲受人は、譲受財産(取得財産を含む。)を限度として、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。ただし、その譲渡が滞納に係る国税の法定納期限より一年以上前にされている場合は、この限りでない。

 (無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務)

第三十九条 滞納者の国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合において、その不足すると認められることが、当該国税の法定納期限の一年前の日以後に、滞納者がその財産につき行つた政令で定める無償又は著しく低い額の対価による譲渡(担保の目的でする譲渡を除く。)、債務の免除その他第三者に利益を与える処分に基因すると認められるときは、これらの処分により権利を取得し、又は義務を免かれた者は、これらの処分により受けた利益が現に存する限度(これらの者がその処分の時にその滞納者の親族その他の特殊関係者であるときは、これらの処分により受けた利益の限度)において、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。

    第四節 人格のない社団等の納税義務

 (人格のない社団等の納税義務)

第四十条 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定があるもの(以下「人格のない社団等」という。)は、法人とみなして、この法律の規定を適用する。

 (人格のない社団等の納税義務の承継等)

第四十一条 法人が人格のない社団等の財産に属する権利義務を包括して承継する場合(第二十九条(法人の合併による承継)の規定の適用がある場合を除く。)には、その法人は、その人格のない社団等に課されるべき、又はその人格のない社団等の納付すべき国税(その承継が権利義務の一部であるときは、その額にその承継の時における人格のない社団等の財産のうちにその法人が承継した財産の占める割合を乗じて計算した額の国税)を納付する義務を負う。

2 人格のない社団等が国税を滞納した場合において、これに属する財産(第三者が名義人となつているため、その者に法律上帰属するとみられる財産を除く。)につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められるときは、その第三者は、その法律上帰属するとみられる財産を限度として、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。

3 滞納者である人格のない社団等の財産の払戻又は分配をした場合(第三十四条(清算人等の第二次納税義務)の規定の適用がある場合を除く。)において、当該社団等(前項に規定する第三者を含む。)につき滞納処分を執行してもなお徴収すべき額に不足すると認められるときは、当該払戻又は分配を受けた者は、その受けた財産の価額を限度として、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。ただし、その払戻又は分配が滞納に係る国税の法定納期限より一年以上前にされている場合は、この限りでない。

   第四章 納税の請求

    第一節 納税の告知

 (納税の告知)

第四十二条 国税を徴収しようとするときは、税務署長は、納税者(第二次納税義務者及び保証人を除く。以下この節において同じ。)に対し、政令で定めるところにより、その納付すべき金額、納期限及び納付場所を指定して納税の告知をしなければならない。

 (繰上徴収)

第四十三条 税務署長は、次の各号の一に該当するときは、既に納税義務の確定した国税でその納期限においてその全額を徴収することができないと認められるものに限り、その納期限前においても、その繰上徴収をすることができる。

 一 納税者の財産につき強制換価手続が開始されたとき。

 二 納税者が限定承認をしたとき。

 三 法人である納税者が解散したとき。

 四 納税者が納税管理人を定めないでこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるとき。

 五 納税者が不正に国税の賦課若しくは徴収を免かれ、若しくは免かれようとし、又は国税の還付を受け、若しくは受けようとしたと認められたとき。

2 前項に規定する既に納税義務の確定した国税とは、次に掲げるものとする。

 一 納税の告知をした国税

 二 申告又は更正若しくは決定の通知に係る所得税(予定納税額の通知に係る所得税を含む。)、法人税、相続税、贈与税及び再評価税

 三 製造場から移出された内国消費税の課される物品(物品税法(昭和十五年法律第四十号)第一条(課税物件)に規定する第一種の物品を除く。)又は販売された当該第一種の物品に対する内国消費税

 四 入場税法(昭和二十九年法律第九十六号)第二条第一項(定義)に規定する興行場等への入場につき領収した入場料金に対する入場税

3 税務署長は、第一項の規定により繰上徴収をしようとするときは、その旨を納税者に告知しなければならない。この場合において、既に納税の告知をしているときは、納期限の変更を告知しなければならない。

 (強制換価の場合の内国消費税の徴収)

第四十四条 内国消費税の課される物品が強制換価手続により換価された場合において、酒税法その他の内国消費税に関する法律の規定によりその移出(前条第二項第三号に規定する第一種の物品については、販売)があつたとみなされるときは、その売却代金のうちからその内国消費税を徴収することができる。

2 税務署長は、前項の規定により内国消費税を徴収するときは、あらかじめ執行機関及び納税者に対し、同項の規定により徴収すべき税額その他必要な事項を通知しなければならない。

3 前項の通知があつた場合において、第一項の換価がされたときは、その執行機関に対する通知は交付要求として、その納税者に対する通知は納税の告知としてそれぞれされたものとみなす。

    第二節 督促

 (督促)

第四十五条 国税(延滞加算税額を除く。)がその納期限までに完納されないときは、税務署長は、次に掲げる場合を除き、その納期限後二十日以内に督促状を発しなければならない。

 一 第四十三条(繰上徴収)の規定により国税を徴収する場合

 二 所得税法第六十九条第三項(脱税額の即時徴収)その他の国税に関する法律の規定により、偽りその他不正の行為により免かれ、若しくは免かれようとし、又は還付を受けた国税その他の国税を直ちに徴収する場合

2 前項の規定により督促する場合において、その督促に係る国税の利子税額があるときは、その利子税額につき、あわせて督促しなければならない。

 (延滞加算税額)

第四十六条 督促状を発した場合において、その発した日から起算して十日を経過した日までに国税が完納されないときは、その日の翌日からその国税を納付する日までの日数に応じ、その滞納税額(附帯税額を除く。以下この条において同じ。)百円につき一日三銭の割合を乗じて計算した金額に相当する延滞加算税額をその滞納税額の属する税目の国税として滞納税額に加算して徴収する。

2 前項の場合において、滞納税額の一部が納付されたときは、その納付の日の翌日以後の期間に係る延滞加算税額の計算の基礎となる滞納税額は、その納付された税額を控除した金額とする。

3 第一項の延滞加算税額は、督促状を発した日から起算して十日を経過した日における滞納税額に対し百分の五の割合を乗じて計算した金額をこえることができない。

4 第一項の規定は、延滞加算税額の計算の基礎となる滞納税額が千円未満であるときは適用せず、また、その滞納税額に千円未満の端数があるときは、同項の規定の適用については、その端数を切り捨てた金額をその滞納税額とする。

5 第一項から前項まで又は次項の規定により計算した延滞加算税額の金額が三百円未満であるときは、延滞加算税額は、徴収しない。

6 第一項の延滞加算税額の計算の基礎となる滞納税額(滞納税額の一部の納付があつたときは、その納付前における滞納税額の全額)が十万円未満であるときは、同項の延滞加算税額は、同項から第四項までの規定にかかわらず、その延滞加算税額の計算の基礎となる滞納税額及び期間に応じ政令で定める簡易延滞加算税額表に掲げる金額による。

7 前項の簡易延滞加算税額表に掲げる金額は、第一項から第五項までの規定により計算した延滞加算税額の範囲内で定める。

8 第一項の延滞加算税額を徴収すべき場合において、滞納者の納付した国税が督促状を発した日から起算して十日を経過した日における滞納税額に達するまでは、その納付した国税は、まずその滞納税額に充てられたものとする。

9 第百五十五条(利子税額等の減免)の規定の適用がある場合のほか、公示送達の方法により督促をした場合又は国税を滞納したことについて税務署長がやむを得ない理由があると認める場合には、第一項の延滞加算税額の全部又は一部を免除することができる。

   第五章 滞納処分

    第一節 財産の差押

     第一款 通則

 (差押の要件)

第四十七条 次の各号の一に該当するときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押えなければならない。

 一 滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して十日を経過した日までにその督促に係る国税(延滞加算税額を含む。)を完納しないとき。

 二 第四十五条第一項各号(督促状の発付を要しない場合)に掲げる場合において、納税者が納税の告知の期限までにその国税を完納しないとき。

2 国税の納期限後前項第一号に規定する十日を経過した日までに、督促を受けた滞納者につき第四十三条第一項各号(繰上徴収)の一に該当する事実が生じたときは、徴収職員は、直ちにその財産を差し押えることができる。

3 第二次納税義務者又は保証人について第一項の規定を適用する場合には、同項中「督促状」とあるのは「納付催告書」と、「納税の告知」とあるのは「納付通知書による告知」とする。

 (超過差押及び無益な差押の禁止)

第四十八条 国税を徴収するために必要な財産以外の財産は、差し押えることができない。

2 差し押えることができる財産の価額がその差押に係る滞納処分費及び徴収すべき国税に先だつ他の国税、地方税その他の債権の金額の合計額をこえる見込がないときは、その財産は、差し押えることができない。

 (差押財産の選択に当つての第三者の権利の尊重)

第四十九条 徴収職員は、滞納者の財産を差し押えるに当つては、滞納処分の執行に支障がない限り、その財産につき第三者が有する権利を害さないように努めなければならない。

 (第三者の権利の目的となつている財産の差押換)

第五十条 質権、抵当権、先取特権(第十九条第一項各号(不動産保存の先取特権等)又は第二十条第一項各号(不動産賃貸の先取特権等)に掲げる先取特権に限る。この項を除き、以下同じ。)、留置権、賃借権その他第三者の権利(これらの先取特権以外の先取特権を除く。以下同じ。)の目的となつている財産が差し押えられた場合には、その第三者は、税務署長に対し、滞納者が他に換価の容易な財産で他の第三者の権利の目的となつていないものを有し、かつ、その財産によりその滞納者の国税の全額を徴収することができることを理由として、その財産の公売公告の日(随意契約による売却をする場合には、その売却の日)までに、その差押換を請求することができる。

2 税務署長は、前項の請求があつた場合において、その請求を相当と認めるときは、その差押換をしなければならないものとし、その請求を相当と認めないときは、その旨をその第三者に通知しなければならない。

3 前項の通知があつた場合において、その通知を受けた第三者が、その通知を受けた日から起算して七日を経過した日までに、第一項の規定により差し押えるべきことを請求した財産の換価をすべきことを申し立てたときは、その財産が換価の著しく困難なものであり、又は他の第三者の権利の目的となつているものであるときを除き、これを差し押え、かつ、換価に付した後でなければ、同項に規定する第三者の権利の目的となつている財産を換価することができない。

4 税務署長は、前項の場合において、同項の申立があつた日から二月以内にその申立に係る財産を差し押え、かつ、換価に付さないときは、第一項に規定する第三者の権利の目的となつている財産の差押を解除しなければならない。ただし、第三十二条第四項又は第五項(第二次納税義務者の財産の換価の制限)その他の国税に関する法律の規定で換価をすることができないこととするものの適用があるときは、この限りでない。

5 第二項又は前項の差押は、第百四十九条第一項(徴収猶予の効果)その他の法律の規定で新たに滞納処分の執行をすることができないこととするものにかかわらず、することができる。

 (相続があつた場合の差押)

第五十一条 徴収職員は、被相続人の国税につきその相続人の財産を差し押える場合には、滞納処分の執行に支障がない限り、まず相続財産を差し押えるように努めなければならない。

2 被相続人の国税につき相続人の固有財産が差し押えられた場合には、その相続人は、税務署長に対し、他に換価が容易な相続財産で第三者の権利の目的となつていないものを有しており、かつ、その財産により当該国税の全額を徴収することができることを理由として、その差押換を請求することができる。

3 税務署長は、前項の請求があつた場合において、その請求を相当と認めるときは、その差押換をしなければならないものとし、その請求を相当と認めないときは、その旨を当該相続人に通知しなければならない。この場合においては、前条第五項の規定を準用する。

 (果実に対する差押の効力)

第五十二条 差押の効力は、差し押えた財産(以下「差押財産」という。)から生ずる天然果実に及ぶ。ただし、滞納者又は第三者が差押財産の使用又は収益をすることができる場合には、その財産から生ずる天然果実(その財産の換価による権利の移転の時までに収取されない天然果実を除く。)については、この限りでない。

2 差押の効力は、差押財産から生ずる法定果実に及ばない。ただし、債権を差し押えた場合における差押後の利息については、この限りでない。

 (保険に付されている財産に対する差押の効力)

第五十三条 差押財産が損害保険に付され、又は中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)第九条の七の二第一項第一号(火災共済協同組合の火災共済事業)に規定する共済その他法律の規定による共済でこれに類するものの目的となつているときは、その差押の効力は、保険金又は共済金の支払を受ける権利に及ぶ。ただし、財産を差し押えた旨を保険者又は共済事業者に通知しなければ、その差押をもつてこれらの者に対抗することができない。

2 徴収職員が差押に係る前項の保険金又は共済金の支払を受けた場合において、その財産がその保険又は共済に係る事故が生じた時に先取特権、質権又は抵当権の目的となつていたときは、その先取特権者、質権者又は抵当権者は、民法第三百四条第一項ただし書(先取特権の物上代位)その他これらの権利の行使のためその保険金又は共済金の支払を受ける権利をその支払前に差し押えることを必要とする規定の適用については、その支払前にその差押をしたものとみなす。

 (差押調書)

第五十四条 徴収職員は、滞納者の財産を差し押えたときは、差押調書を作成し、その財産が次に掲げる財産であるときは、その謄本を滞納者に交付しなければならない。

 一 動産(第七十条(船舶又は航空機の差押)又は第七十一条(自動車又は建設機械の差押)の規定の適用を受ける財産及び無記名債権を除く。以下同じ。)又は有価証券

 二 債権(電話加入権、賃借権その他取り立てることができない債権を除く。以下この章において同じ。)

 三 第七十三条(電話加入権等の差押)の規定の適用を受ける財産

 (質権者等に対する差押の通知)

第五十五条 次の各号に掲げる財産を差し押えたときは、税務署長は、当該各号に掲げる者のうち知れている者に対し、その旨その他必要な事項を通知しなければならない。

 一 質権、抵当権、先取特権、留置権、賃借権その他の第三者の権利の目的となつている財産 これらの権利を有する者

 二 仮登記がある財産 仮登記の権利者

 三 仮差押又は仮処分がされている財産 仮差押又は仮処分をした執行裁判所、執行吏又は強制管理人

     第二款 動産又は有価証券の差押

 (差押の手続及び効力発生時期等)

第五十六条 動産又は有価証券の差押は、徴収職員がその財産を占有して行う。

2 前項の差押の効力は、徴収職員がその財産を占有した時に生ずる。

3 徴収職員が金銭を差し押えたときは、その限度において、滞納者から差押に係る国税を徴収したものとみなす。

 (有価証券に係る債権の取立)

第五十七条 有価証券を差し押えたときは、徴収職員は、その有価証券に係る金銭債権の取立をすることができる。

2 徴収職員が前項の規定により金銭を取り立てたときは、その限度において、滞納者から差押に係る国税を徴収したものとみなす。

 (第三者が占有する動産等の差押手続)

第五十八条 滞納者の動産又は有価証券でその親族その他の特殊関係者以外の第三者が占有しているものは、その第三者が引渡を拒むときは、差し押えることができない。

2 前項の動産又は有価証券がある場合において、同項の第三者がその引渡を拒むときは、滞納者が他に換価が容易であり、かつ、その滞納に係る国税の全額を徴収することができる財産を有しないと認められるときに限り、税務署長は、同項の第三者に対し、期限を指定して、当該動産又は有価証券を徴収職員に引き渡すべきことを書面により命ずることができる。この場合において、その命令をした税務署長は、その旨を滞納者に通知しなければならない。

3 前項の命令に係る動産若しくは有価証券が徴収職員に引き渡されたとき、又は同項の命令を受けた第三者が指定された期限までに徴収職員にその引渡をしないときは、徴収職員は、第一項の規定にかかわらず、その動産又は有価証券を差し押えることができる。

 (引渡命令を受けた第三者等の権利の保護)

第五十九条 前条第二項の規定により動産の引渡を命ぜられた第三者が、滞納者との契約による賃借権、使用貸借権その他動産の使用又は収益をする権利に基きその命令に係る動産を占有している場合において、その引渡をすることにより占有の目的を達することができなくなるときは、その第三者は、その占有の基礎となつている契約を解除することができる。この場合において、その第三者は、当該契約の解除により滞納者に対して取得する損害賠償請求権については、その動産の売却代金の残余のうちから配当を受けることができる。

2 徴収職員は、前条第二項の規定により動産の引渡を命ぜられた第三者の請求がある場合には、その第三者が前項前段の規定により契約を解除したときを除き、その動産の占有の基礎となつている契約の期間内(その期限がその動産を差し押えた日から三月を経過した日より遅いときは、その日まで)は、その第三者にその使用又は収益をさせなければならない。

3 前条第二項の規定により動産の引渡を命ぜられた第三者が賃貸借契約に基きこれを占有している場合において、第一項前段の規定によりその契約を解除し、かつ、前条第二項の命令があつた時前にその後の期間分の借賃を支払つているときは、その第三者は、税務署長に対し、その動産の売却代金のうちから、その借賃に相当する金額で同条第三項の規定による差押の日後の期間に係るもの(その金額が三月分に相当する金額をこえるときは、当該金額)の配当を請求することができる。この場合において、その請求があつた金額は、第八条(国税優先の原則)の規定にかかわらず、その滞納処分に係る滞納処分費に次ぎ、かつ、その動産上の留置権により担保されていた債権に次ぐものとして、配当することができる。

4 前三項の規定は、前条第一項に規定する動産の引渡を拒まなかつた同項に規定する第三者について準用する。

 (差し押えた動産等の保管)

第六十条 徴収職員は、必要があると認めるときは、差し押えた動産又は有価証券を滞納者又はその財産を占有する第三者に保管させることができる。ただし、その第三者に保管させる場合には、その運搬が困難であるときを除き、その者の同意を受けなければならない。

2 前項の規定により滞納者又は第三者に保管させたときは、第五十六条第二項(動産等の差押の効力発生時期)の規定にかかわらず、封印、公示書その他差押を明白にする方法により差し押えた旨を表示した時に、差押の効力が生ずる。

 (差し押えた動産の使用収益)

第六十一条  徴収職員は、前条第一項の規定により滞納者に差し押えた動産を保管させる場合において、国税の徴収上支障がないと認めるときは、その使用又は収益を許可することができる。

2 前項の規定は、差し押えた動産につき使用又は収益をする権利を有する第三者にその動産を保管させる場合について準用する。

     第三款 債権の差押

 (差押の手続及び効力発生時期)

第六十二条 債権の差押は、第三債務者に対する債権差押通知書の送達により行う。

2 徴収職員は、債権を差し押えるときは、債務者に対しその履行を、滞納者に対し債権の取立その他の処分を禁じなければならない。

3 第一項の差押の効力は、債権差押通知書が第三債務者に送達された時に生ずる。

4 税務署長は、債権でその移転につき登録を要するものを差し押えたときは、差押の登録を関係機関に嘱託しなければならない。

 (差し押える債権の範囲)

第六十三条 徴収職員は、債権を差し押えるときは、その全額を差し押えなければならない。ただし、その全額を差し押える必要がないと認めるときは、その一部を差し押えることができる。

 (抵当権等により担保される債権の差押)

第六十四条 抵当権又は登記することができる質権若しくは先取特権によつて担保される債権を差し押えたときは、税務署長は、その債権の差押の登記を関係機関に嘱託することができる。この場合において、その嘱託をした税務署長は、その抵当権若しくは質権の設定者又は先取特権がある財産の権利者(第三債務者を除く。)に差し押えた旨を通知しなければならない。、

 (債権証書の取上げ)

第六十五条 徴収職員は、債権の差押のため必要があるときは、その債権に関する証書を取り上げることができる。この場合においては、第五十六条第一項(動産等の差押手続)及び第五十八条(第三者が占有する動産等の差押手続)の規定を準用する。

 (継続的な収入に対する差押の効力)

第六十六条 給料、年金その他これらに類する債権で継続的に収入することができるものの差押の効力は、徴収すべき国税の額を限度として、差押後に収入すべき金額に及ぶ。

 (差し押えた債権の取立)

第六十七条 徴収職員は、差し押えた債権の取立をすることができる。

2 徴収職員は、前項の規定により取り立てたものが金銭以外のものであるときは、これを差し押えなければならない。

3 徴収職員が第一項の規定により金銭を取り立てたときは、その限度において、滞納者から差押に係る国税を徴収したものとみなす。

4 第百五十七条第一項から第三項まで(納付委託)の規定は、第一項の取立をする場合において、第三債務者が徴収職員に対し、その債権の弁済の委託をしようとするときに準用する。ただし、その証券の取り立てるべき期限が差し押えた債権の弁済期後となるときは、第三債務者は、滞納者の承認を受けなければならない。

     第四款 不動産等の差押

 (不動産の差押の手続及び効力発生時期)

第六十八条 不動産(地上権その他不動産を目的とする物権(所有権を除く。)、工場財団、鉱業権その他不動産とみなされ、又は不動産に関する規定の準用がある財産並びに鉄道財団、軌道財団及び運河財団を含む。以下同じ。)の差押は、滞納者に対する差押書の送達により行う。

2 前項の差押の効力は、その差押書が滞納者に送達された時に生ずる。

3 税務署長は、不動産を差し押えたときは、差押の登記を関係機関に嘱託しなければならない。

4 前項の差押の登記が差押書の送達前にされた場合には、第二項の規定にかかわらず、その差押の登記がされた時に差押の効力が生ずる。

5 鉱業権の差押の効力は、第二項及び前項の規定にかかわらず、差押の登録がされた時に生ずる。

 (差押不動産の使用収益)

第六十九条 滞納者は、差し押えられた不動産につき、通常の用法に従い、使用又は収益をすることができる。ただし、税務署長は、不動産の価値が著しく減耗する行為がされると認められるときに限り、その使用又は収益を制限することができる。

2 前項の規定は、差し押えられた不動産につき使用又は収益をする権利を有する第三者について準用する。

 (船舶又は航空機の差押)

第七十条 登記される船舶(以下「船舶」という。)又は航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)の規定により登録を受けた飛行機若しくは回転翼航空機(以下「航空機」という。)の差押については、第六十八条第一項から第四項まで(不動産の差押の手続及び効力発生時期)の規定を準用する。

2 税務署長は、滞納処分のため必要があるときは、船舶又は航空機を一時停泊させることができる。ただし、発航の準備が終つた船舶又は航空機については、この限りでない。

3 税務署長は、滞納処分のため必要があるときは、船舶又は航空機の監守及び保存のため必要な処分をすることができる。

4 前項の処分が差押書の送達前にされた場合には、第一項において準用する第六十八条第二項の規定にかかわらず、その処分をした時に差押の効力が生ずる。

5 税務署長は、停泊中の船舶若しくは航空機を差し押えた場合又は第二項の規定により船舶若しくは航空機を停泊させた場合において、営業上の必要その他相当の理由があるときは、滞納者並びにこれらにつき交付要求をした者及び抵当権その他の権利を有する者の申立により、航行を許可することができる。

 (自動車又は建設機械の差押)

第七十一条 道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)の規定により登録を受けた自動車(以下「自動車」という。)又は建設機械抵当法(昭和二十九年法律第九十七号)の規定により登記を受けた建設機械(以下「建設機械」という。)の差押については、第六十八条第一項から第四項まで(不動産の差押の手続及び効力発生時期)の規定を準用する。

2 前条第三項及び第四項の規定は、自動車又は建設機械の差押について準用する。

3 税務署長は、自動車又は建設機械を差し押えた場合には、滞納者に対し、これらの引渡を命じ、徴収職員にこれらの占有をさせることができる。

4 第五十六条第一項(動産等の差押手続)、第五十八条(第三者が占有する動産等の差押手続)及び第五十九条(引渡命令を受けた第三者等の権利の保護)の規定は、前項の規定により徴収職員に自動車又は建設機械を占有させる場合について準用する。

5 徴収職員は、第三項の規定により占有する自動車又は建設機械を滞納者又はこれらを占有する第三者に保管させることができる。この場合においては、封印その他の公示方法によりその自動車又は建設機械が徴収職員の占有に係る旨を明らかにしなければならないものとし、また、次項の規定により自動車の運行又は建設機械の使用を許可する場合を除き、これらの運行又は使用をさせないための適当な措置を講じなければならない。

6 徴収職員は、第三項又は前項の規定により占有し、又は保管させた自動車又は建設機械につき営業上の必要その他相当の理由があるときは、滞納者並びにこれらにつき交付要求をした者及び抵当権その他の権利を有する者の申立により、その運行又は使用を許可することができる。

     第五款 無体財産権等の差押

 (特許権等の差押の手続及び効力発生時期)

第七十二条 前三款の規定の適用を受けない財産(以下「無体財産権等」という。)のうち特許権、著作権その他第三債務者又はこれに準ずる者(以下「第三債務者等」という。)がない財産の差押は、滞納者に対する差押書の送達により行う。

2 前項の差押の効力は、その差押書が滞納者に送達された時に生ずる。

3 税務署長は、無体財産権等でその権利の移転につき登記を要するものを差し押えたときは、差押の登記を関係機関に嘱託しなければならない。

4 前項の差押の登記が差押書の送達前にされた場合には、第一項の規定にかかわらず、その差押の登記がされた時に差押の効力が生ずる。

 (電話加入権等の差押の手続及び効力発生時期)

第七十三条 無体財産権等のうち電話加入権、合名会社の社員の持分その他第三債務者等がある財産の差押は、第三債務者等に対する差押通知書の送達により行う。

2 前項の差押の効力は、その差押通知書が第三債務者等に送達された時に生ずる。

3 前条第三項及び第四項の規定は、第一項に規定する財産でその権利の移転につき登記を要するものの差押について準用する。この場合において、同条第四項中「差押書」とあるのは、「差押通知書」と読み替えるものとする。

4 第六十五条(債権証書の取上げ)及び第六十七条(差し押えた債権の取立)の規定は、第一項に規定する財産について準用する。

 (差し押えた持分の払戻の請求)

第七十四条 税務署長は、中小企業等協同組合法に基く企業組合、信用金庫その他の法人で組合員、会員その他の持分を有する構成員が任意に(脱退につき予告その他一定の手続を要する場合には、これをした後任意に)脱退することができるもの(合名会社及び合資会社を除く。以下この条において「組合等」という。)の組合員、会員その他の構成員である滞納者の持分を差し押えた場合において、当該持分につき次に掲げる理由があり、かつ、その持分以外の財産につき滞納処分を執行してもなお徴収すべき国税に不足すると認められるときは、その組合等に対し、その持分の一部の払戻(組合等による譲受が認められている持分については、譲受)を請求することができる。

 一 その持分を再度換価に付してもなお買受人がないこと。

 二 その持分の譲渡につき法律又は定款に制限があるため、譲渡することができないこと。

2 前項に規定する請求は、三十日(組合等からの脱退につき、法律又は定款の定により、これと異なる一定期間前に組合等に予告することを必要とするものにあつては、その期間)前に組合等にその予告をした後でなければ、行うことができない。

     第六款 差押禁止財産

 (一般の差押禁止財産)

第七十五条 次に掲げる財産は、差し押えることができない。

 一 滞納者及びその者と生計を一にする配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係にある者を含む。)その他の親族(以下「生計を一にする親族」という。)の生活に欠くことができない衣服、寝具、台所用具、畳及び建具

 二 滞納者及びその者と生計を一にする親族の生活に必要な三月間の食料及び燃料

 三 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物

 四 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物

 五 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)

 六 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの

 七 仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物

 八 滞納者に必要な系譜、日記及びこれに類する書類

 九 滞納者又はその親族が受けた勲章その他名誉の章票

 十 滞納者又はその者と生計を一にする親族の学習に必要な書籍及び器具

 十一 発明又は著作に係るもので、まだ公表していないもの

 十二 滞納者又はその者と生計を一にする親族に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物

 十三 建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品

2 前項第一号(畳及び建具に係る部分に限る。)及び第十三号の規定は、これらの規定に規定する財産をその建物その他の工作物とともに差し押えるときは、適用しない。

 (給与の差押禁止)

第七十六条 給料、賃金、俸給、歳費、退職年金及びこれらの性質を有する給与に係る債権(以下「給料等」という。)については、次に掲げる金額の合計額に達するまでの部分の金額は、差し押えることができない。この場合において、滞納者が同一の期間につき二以上の給料等の支払を受けるときは、その合計額につき、第四号又は第五号に掲げる金額に係る限度を計算するものとする。

 一 所得税法第三十八条(給与所得についての源泉徴収)、第四十条(年末調整)又は第四十一条第一項(非居住者等の所得の源泉徴収)の規定によりその給料等につき徴収される所得税に相当する金額

 二 地方税法第四十一条第一項(個人の道府県民税の賦課徴収)又は第三百二十一条の三(個人の市町村民税の特別徴収)の規定によりその給料等につき特別徴収の方法によつて徴収される道府県民税及び市町村民税に相当する金額

 三 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第七十八条第一項(報酬からの保険料の控除)その他の法律又は条例の規定によりその給料等から控除される社会保険料(所得税法第八条第六項各号(社会保険料の範囲)に掲げるものをいう。)に相当する金額

 四 滞納者(その者と生計を一にする親族を含む。)に対し、これらの者が所得を有しないものとして、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第十二条(生活扶助)に規定する生活扶助の給付を行うこととした場合におけるその扶助の基準となる金額で給料等の支給の基礎となつた期間に応ずるものに、その百分の二十に相当する金額を加算した金額を下らない範囲で政令で定める金額

 五 その給料等の金額から前各号に掲げる金額の合計額を控除した金額の百分の二十に相当する金額(その金額が前号に掲げる金額の二倍に相当する金額をこえるときは、当該金額)

2 給料等に基き支払を受けた金銭は、前項第四号及び第五号に掲げる金額の合計額に、その給料等の支給の基礎となつた期間の日数のうちに差押の日から次の支払日までの日数の占める割合を乗じて計算した金額を限度として、差し押えることができない。

3 賞与及びその性質を有する給与に係る債権については、その支払を受けるべき時における給料等とみなして、第一項の規定を適用する。この場合において、同項第四号又は第五号に掲げる金額に係る限度の計算については、その支給の基礎となつた期間が一月であるものとみなす。

4 退職手当及びその性質を有する給与に係る債権(以下「退職手当等」という。)については、次に掲げる金額の合計額に達するまでの部分の金額は、差し押えることができない。

 一 所得税法第三十八条の二(退職所得についての源泉徴収)又は第四十一条第一項の規定によりその退職手当等につき徴収される所得税に相当する金額

 二 第一項第二号及び第三号中「給料等」とあるのを「退職手当等」として、これらの規定を適用して算定した金額

 三 第一項第四号に掲げる金額で同号に規定する期間を一月として算定したものの三倍に相当する金額

 四 退職手当等の支給の基礎となつた期間が五年をこえる場合には、そのこえる年数一年につき前号に掲げる金額の百分の二十に相当する金額

5 第一項、第二項及び前項の規定は、滞納者の承諾があるときは適用しない。、

 (社会保険制度に基く給付の差押禁止)

第七十七条 社会保険制度に基き支給される退職年金、老齢年金、普通恩給、休業手当金及びこれらの性質を有する給付に係る債権は給料等と、退職一時金、一時恩給及びこれらの性質を有する給付に係る債権は退職手当等とそれぞれみなして、前条の規定を適用する。

2 前項に規定する社会保険制度とは、次に掲げる法律又は条例に基く保険、共済又は恩給に関する制度その他政令で定めるこれらに類する制度をいう。

 一 厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)

 二 船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)

 三 国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)

 四 恩給法(大正十二年法律第四十八号)(他の法律において準用する場合を含む。)

 五 国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)

 六 公共企業体職員等共済組合法(昭和三十一年法律第百三十四号)

 七 市町村職員共済組合法(昭和二十九年法律第二百四号)

 八 私立学校教職員共済組合法(昭和二十八年法律第二百四十五号)

 九 農林漁業団体職員共済組合法(昭和三十三年法律第九十九号)

 十 国会議員互助年金法(昭和三十三年法律第七十号)

 十一 地方公務員の共済制度又は退職年金制度に関する条例

 (条件付差押禁止財産)

第七十八条 次に掲げる財産(第七十五条第三号から第五号まで(農業等に欠くことができない財産)に掲げる財産を除く。)は、滞納者がその国税の全額を徴収することができる財産で、換価が困難でなく、かつ、第三者の権利の目的となつていないものを提供したときは、その選択により、差押をしないものとする。

 一 農業に必要な機械、器具、家畜類、飼料、種子その他の農産物、肥料、農地及び採草放牧地

 二 漁業に必要な漁網その他の漁具、えさ、稚魚その他の水産物及び漁船

 三 職業又は事業(前二号に規定する事業を除く。)の継続に必要な機械、器具その他の備品及び原材料その他たな卸をすべき資産

     第七款 差押の解除

 (差押の解除の要件)

第七十九条 徴収職員は、次の各号の一に該当するときは、差押を解除しなければならない。

 一 納付、充当、賦課の取消その他の理由により差押に係る国税の全額が消滅したとき。

 二 差押財産の価額がその差押に係る滞納処分費及び差押に係る国税に先だつ他の国税、地方税その他の債権の合計額をこえる見込がなくなつたとき。

2 徴収職員は、次の各号の一に該当するときは、差押財産の全部又は一部について、その差押を解除することができる。

 一 差押に係る国税の一部の納付、充当、賦課の一都の取消、差押財産の値上りその他の理由により、その価額が差押に係る国税及びこれに先だつ他の国税、地方税その他の債権の合計額を著しく超過すると認められるに至つたとき。

 二 滞納者が他に差し押えることができる適当な財産を提供した場合において、その財産を差し押えたとき。

 (差押の解除の手続)

第八十条 差押の解除は、その旨を滞納者に通知することによつて行う。ただし、債権及び第三債務者等のある無体財産権等の差押の解除は、その旨を第三債務者等に通知することによつて行う。

2 徴収職員は、次の各号に掲げる財産の差押を解除したときは、当該各号に掲げる手続をしなければならない。ただし、第一号に規定する除去は、滞納者又はその財産を占有する第三者に行わせることができる。

 一 動産又は有価証券 その引渡及び封印、公示書その他差押を明白にするために用いた物の除去

 二 債権又は第三債務者等がある無体財産権等 滞納者への通知

3 税務署長は、不動産その他差押の登記をした財産の差押を解除したときは、その登記のまつ消を関係機関に嘱託しなければならない。

4 第二項第一号の動産又は有価証券の引渡は、滞納者に対し、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に掲げる場所において行わなければならない。ただし、差押の時に滞納者以外の第三者が占有していたものについては、滞納者に対し引渡をすべき旨の第三者の申出がない限り、その第三者に引き渡さなければならない。

 一 前条第一項各号又は同条第二項第一号の規定に該当する場合のうち、賦課の取消その他国の責に帰すべき理由による場合 差押の時に存在した場所

 二 その他の場合 差押を解除した時に存在する場所

5 第二項第一号及び前項の規定は、債権又は自動車若しくは建設機械の差押を解除した場合において、第六十五条(債権証書の取上げ)(第七十三条第四項(権利証書の取上げ)の規定により準用する場合を含む。)の規定により取り上げた証書又は第七十一条第三項(差し押えた自動車等の占有)の規定により徴収職員が占有した自動車若しくは建設機械があるときについて準用する。

 (質権者等への差押解除の通知)

第八十一条 税務署長は、差押を解除した場合において、第五十五条各号(質権者等に対する差押の通知)に掲げる者のうち知れている者及び交付要求をしている者があるときは、これらの者にその旨その他必要な事項を通知しなければならない。

    第二節 交付要求

 (交付要求の手続)

第八十二条 滞納者の財産につき強制換価手続が行われた場合には、税務署長は、執行機関に対し、滞納に係る国税につき、交付要求書により交付要求をしなければならない。

2 税務署長は、交付要求をしたときは、その旨を滞納者に通知しなければならない。

3 第五十五条(質権者等に対する差押の通知)の規定は、交付要求をした場合について準用する。

 (交付要求の制限)

第八十三条 税務署長は、滞納者が他に換価の容易な財産で第三者の権利の目的となつていないものを有しており、かつ、その財産によりその国税の全額を徴収することができると認められるときは、交付要求をしないものとする。

 (交付要求の解除)

第八十四条 税務署長は、納付、充当、賦課の取消その他の理由により交付要求に係る国税が消滅したときは、その交付要求を解除しなければならない。

2 交付要求の解除は、その旨をその交付要求に係る執行機関に通知することによつて行う。

3 第五十五条(質権者等に対する差押の通知)及び第八十二条第二項(交付要求の通知)の規定は、交付要求を解除した場合について準用する。

 (交付要求の解除の請求)

第八十五条 強制換価手続により配当を受けることができる債権者は、交付要求があつたときは、税務署長に対し、次の各号のいずれにも該当することを理由として、その交付要求を解除すべきことを請求することができる。

 一 その交付要求により自己の債権の全部又は一部の弁済を受けることができないこと。

 二 滞納者が他に換価の容易な財産で第三者の権利の目的となつていないものを有しており、かつ、その財産によりその交付要求に係る国税の全額を徴収することができること。

2 税務署長は、前項の請求があつた場合において、その請求を相当と認めるときは、交付要求を解除しなければならないものとし、その請求を相当と認めないときは、その旨をその請求をした者に通知しなければならない。

 (参加差押の手続)

第八十六条 税務署長は、第四十七条(差押の要件)の規定により差押をすることができる場合において、滞納者の財産で次に掲げるものにつき既に滞納処分による差押がされているときは、当該財産についての交付要求は、第八十二条第一項(交付要求の手続)の交付要求書に代えて参加差押書を滞納処分をした行政機関等に交付してすることができる。

 一 動産及び有価証券

 二 不動産、船舶、航空機、自動車及び建設機械

 三 電話加入権

2 税務署長は、前項の交付要求(以下「参加差押」という。)をしたときは、参加差押通知書により滞納者に通知しなければならない。この場合において、参加差押をした財産が電話加入権であるときは、あわせて第三債務者にその旨を通知しなければならない。

3 税務署長は、第一項第二号に掲げる財産につき参加差押をしたときは、参加差押の登記を関係機関に嘱託しなければならない。

4 第五十五条(質権者等に対する差押の通知)の規定は、参加差押をした場合について準用する。

 (参加差押の効力)

第八十七条 参加差押をした場合において、その参加差押に係る財産につきされていた滞納処分による差押が解除されたときは、その参加差押(二以上の参加差押があるときは、そのうち最も先にされたもの)は、次の各号に掲げる財産の区分に応じ、当該各号に掲げる時にさかのぼつて差押の効力を生ずる。

 一 動産及び有価証券 参加差押書が滞納処分による差押をした行政機関等に交付された時

 二 不動産、船舶、航空機、自動車及び建設機械 参加差押通知書が滞納者に送達された時(参加差押の登記がその送達前にされた場合には、その登記がされた時)

 三 電話加入権 参加差押通知書が第三債務者に送達された時

2 税務署長は、差し押えた動産又は有価証券につき参加差押書の交付を受けた場合において、その動産又は有価証券の差押を解除すべきときは、その動産又は有価証券を前項の規定により差押の効力を生ずべき参加差押をした行政機関等に引き渡さなければならない。差し押えた自動車又は建設機械で第七十一条第三項(差し押えた自動事等の占有)の規定により徴収職員が占有しているものについても、また同様とする。

3 参加差押をした税務署長は、その参加差押に係る滞納処分による差押財産が相当期間内に換価に付されないときは、すみやかにその換価をすべきことをその滞納処分をした行政機関等に催告することができる。

 (参加差押の制限、解除等)

第八十八条 第八十三条から第八十五条まで(交付要求の制限、解除等)の規定は、参加差押について準用する。

2 税務署長は、参加差押の登記をした財産の参加差押を解除したときは、その登記のまつ消を関係機関に嘱託しなければならない。

3 税務署長は、電話加入権の参加差押を解除したときは、その旨を第三債務者に通知しなければならない。

4 前二条及び前三項に定めるもののほか、参加差押に関する手続について必要な事項は、政令で定める。

    第三節 財産の換価

     第一款 通則

 (換価する財産の範囲)

第八十九条 差押財産(金銭、債権及び第五十七条(有価証券に係る債権の取立)の規定により債権の取立をする有価証券を除く。以下この節において同じ。)は、この節の定めるところにより換価しなければならない。

2 差し押えた債権のうち、その全部又は一部の弁済期限が取立をしようとする時から六月以内に到来しないもの及び取立をすることが著しく困難であると認められるものは、この節の定めるところにより換価することができる。

 (換価の制限)

第九十条 果実は成熟した後、蚕は繭となつた後でなければ、換価をすることができない。

2 前項の規定は、生産工程中における仕掛品(栽培品その他これらに類するものを含む。)で、完成品となり、又は一定の生産過程に達するのでなければ、その価額が著しく低くて通常の取引に適しないものについて準用する。

 (自動車等の換価前の占有)

第九十一条 自動車又は建設機械の換価は、徴収職員が第七十一条第三項(差し押えた自動車等の占有)の規定によりこれらを占有した後に行うものとする。ただし、換価に支障がないと認められるときは、この限りでない。

 (買受人の制限)

第九十二条 滞納者は、換価の目的となつた自己の財産を、直接であると間接であるとを問わず、買い受けることができない。国税の賦課又は徴収に関する事務に従事する職員は、換価の目的となつた財産について、また同様とする。

 (修理等の処分)

第九十三条 税務署長は、差押財産を換価する場合において、必要があると認めるときは、滞納者の同意を得て、その財産につき修理その他その価額を増加する処分をすることができる。

     第二款 公売

 (公売)

第九十四条 税務署長は、差押財産を換価するときは、これを公売に付さなければならない。

2 公売は、入札又はせり売の方法により行わなければならない。

 (公売公告)

第九十五条 税務署長は、差押財産を公売に付するときは、公売の日の少なくとも十日前までに、次に掲げる事項を公告しなければならない。ただし、公売に付する財産(以下「公売財産」という。)が不相応の保存費を要し、又はその価額を著しく減少するおそれがあると認めるときは、この期間を短縮することができる。

 一 公売財産の名称、数量、性質及び所在

 二 公売の方法

 三 公売の日時及び場所

 四 売却決定の日時及び場所

 五 公売保証金を納付させるときは、その金額

 六 買受代金の納付の期限

 七 公売財産の買受人について一定の資格その他の要件を必要とするときは、その旨

 八 公売財産上に質権、抵当権、先取特権、留置権その他その財産の売却代金から配当を受けることができる権利を有する者は、売却決定の日の前日までにその内容を申し出るべき旨

 九 前各号に掲げる事項のほか、公売に関し重要と認められる事項

2 前項の公告は、税務署の掲示場その他税務署内の公衆の見やすい場所に掲示して行う。ただし、他の適当な場所に掲示する方法、官報又は時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲げる方法その他の方法をあわせて用いることを妨げない。

 (公売の通知)

第九十六条 税務署長は、前条の公告をしたときは、同条第一項各号(第八号を除く。)に掲げる事項及び公売に係る国税の額を滞納者及び次に掲げる者のうち知れている者に通知しなければならない。

 一 公売財産につき交付要求をした者

 二 公売財産上に質権、抵当権、先取特権、留置権、地上権、賃借権その他の権利を有する者

2 税務署長は、前項の通知をするときは、公売財産の売却代金から配当を受けることができる者のうち知れている者に対し、その配当を受けることができる国税、地方税その他の債権につき第百三十条第一項(債権現在額申立書の提出)に規定する債権現在額申立書をその財産の売却決定をする日の前日までに提出すべき旨の催告をあわせてしなければならない。

 (公売の場所)

第九十七条 公売は、公売財産の所在する市町村(特別区を含む。以下同じ。)において行うものとする。ただし、税務署長が必要と認めるときは、他の場所で行うことができる。

 (見積価額の決定)

第九十八条 税務署長は、公売財産の見積価額を決定しなければならない。この場合において、必要と認めるときは、鑑定人にその評価を委託し、その評価額を参考とすることができる。

 (見積価額の公告等)

第九十九条 税務署長は、公売財産のうち次の各号に掲げる財産を公売に付するときは、当該各号に掲げる日までに見積価額を公告しなければならない。

 一 不動産、船舶及び航空機 公売の日から三日前の日

 二 せり売の方法又は第百五条第一項(複数落札入札制)に規定する方法により公売する財産(前号に掲げる財産を除く。) 公売の日の前日

 三 その他の財産で税務署長が公告を必要と認めるもの 公売の日の前日

2 税務署長は、見積価額を公告しない財産を公売するときは、その見積価額を記載した書面を封筒に入れ、封をして、公売をする場所に置かなければならない。

3 第九十五条第二項(公売公告の方法)の規定は、第一項の公告について準用する。ただし、税務署長は、公売財産が動産であるときに限り、その財産に見積価額を記載した用紙をはりつけて、この公告に代えることができる。

4 税務署長は、第一項の場合において、公売財産上に賃借権(不動産又は船舶に係るものに限る。)又は地上権があるときは、あわせてその存続期限、借賃又は地代その他これらの権利の内容を公告しなければならない。

 (公売保証金)

第百条 公売財産の入札又はせり売に係る買受の申込(以下「入札等」という。)をしようとする者は、税務署長が公売財産の見積価額の百分の十以上の額により定める公売保証金を現金(国税の納付に使用することができる小切手のうち銀行の振出に係るもの及びその支払保証のあるものを含む。以下第百十五条第三項(買受代金の納付の期限)において同じ。)で納付しなければならない。ただし、税務署長は、公売財産の見積価額が五万円以下である場合又は買受代金を売却決定の日に納付させるときは、その納付を要しないものとすることができる。

2 公売財産の入札等をしようとする者(以下「入札者等」という。)は、前項ただし書の規定の適用を受ける場合を除き、公売保証金を納付した後でなければ、入札等をすることができない。

3 公売財産の買受人は、その納付した公売保証金を買受代金に充てることができる。ただし、第百十五条第四項(売却決定の取消)の規定により売却決定が取り消されたときは、その公売に係る国税に充て、なお残余があるときは、これを滞納者に交付しなければならない。

4 税務署長は、次の各号に掲げる場合には、遅滞なく、当該各号に規定する公売保証金をその納付した者に返還しなければならない。

 一 第百四条(最高価申込者の決定)又は第百五条(複数落札入札制による最高価申込者の決定)の規定により最高価申込者を定めた場合において、他の人礼者等の納付した公売保証金があるとき。

 二 第百十四条(買受申込等の取消)の規定により最高価申込者又は買受人がその入札等又は買受を取り消した場合において、その者の納付した公売保証金があるとき。

 三 第百十七条(国税の完納による売却決定の取消)の規定により売却決定が取り消された場合において、買受人の納付した公売保証金があるとき。

 (入札及び開札)

第百一条 入札をしようとする者は、その住所又は居所、氏名(法人にあつては、名称。以下同じ。)、公売財産の名称、入札価額その他必要な事項を記載した入札書に封をして、これを徴収職員に差し出さなければならない。

2 入札者は、その提出した入札書の引換、変更又は取消をすることができない。

3 開札をするときは、徴収職員は、入札者を開札に立ち会わせなければならない。ただし、入札者が立ち会わないときは、税務署所属の他の職員を開札に立ち会わせなければならない。

 (再度入札)

第百二条 税務署長は、入札の方法により差押財産を公売する場合において、入札者がないとき、又は入札価額が見積価額に達しないときは、直ちに再度入札をすることができる。この場合においては、見積価額を変更することができない。

 (せり売)

第百三条 せり売の方法により差押財産を公売するときは、徴収職員は、その財産を指定して、買受の申込を催告しなければならない。

2 徴収職員は、せり売人を選び、差押財産のせり売を取り扱わせることができる。

3 前条の規定は、差押財産のせり売について準用する。

 (最高価申込者の決定)

第百四条 徴収職員は、見積価額以上の入札者等のうち最高の価額による入札者等を最高価申込者として定めなければならない。

2 前項の場合において、最高の価額の入札者等が二人以上あるときは、更に入札等をさせて定め、なおその入札等の価額が同じときは、くじで定める。

 (複数落札入札制による最高価申込者の決定)

第百五条 税務署長は、種類及び価額が同じ財産を一時に多量に入札の方法により公売する場合において、必要があると認めるときは、その財産の数量の範囲内において入札をしようとする者の希望する数量及び単価を入札させ、見積価額以上の単価の入札者のうち、入札価額の高い入札者から順次その財産の数量に達するまでの入札者を最高価申込者とする方法(以下「複数落札入札制」という。)によることができる。この場合において、最高価申込者となるべき最後の順位の入札者が二人以上あるときは、入札数量の多いものを先順位の入札者とし、入札数量が同じときは、くじで先順位の入札者を定める。

2 複数落札入札制による場合において、最高価申込者のうち最後の順位の入札者の入札数量が他の最高価申込者の入札数量とあわせて公売財産の数量をこえるときは、そのこえる入札数量については、入札がなかつたものとする。

3 税務署長は、複数落札入札制による最高価申込者に対して売却決定をした場合において、買受人のうちに買受代金をその納付の期限までに納付しない者があるときは、開札に引き続き売却決定を行い、かつ、直ちに代金を納付させるときに限り、その者に売却決定をした数量の範囲内において、まず、前項の規定により入札がなかつたものとされた入札数量(買受代金を納付しない買受人の同項の規定により入札がなかつたものとされた入札数量を除く。)につき入札があつたものとし、次に、第一項後段の規定により最高価申込者とならなかつた者を最高価申込者とすることができる。この場合においては、同項後段及び前項の規定を準用する。

 (入札又はせり売の終了の告知等)

第百六条 徴収職員は、最高価申込者を定めたときは、直ちにその氏名及び価額(複数落札入札制による場合には、数量及び単価。以下次項において同じ。)を呼び上げた後、入札又はせり売の終了を告知しなければならない。

2 前項の場合において、公売した財産が不動産、船舶、航空機、自動車、建設機械、債権又は無体財産権等(以下「不動産等」という。)であるときは、税務署長は、最高価申込者の氏名、その価額並びに売却決定をする日時及び場所を滞納者及び第九十六条第一項各号(公売の通知)に掲げる者(以下「利害関係人」という。)のうち知れている者に通知するとともに、これらの事項を公告しなければならない。

3 第九十五条第二項(公売公告の方法)の規定は、前項の公告について準用する。

 (再公売)

第百七条 税務署長は、公売に付しても入札者等がないとき、入札等の価額が見積価額に達しないとき、又は次条第二項若しくは第百十五条第四項(売却決定の取消)の規定により売却決定を取り消したときは、更に公売に付するものとする。

2 税務署長は、前項の規定により公売に付する場合において、必要があると認めるときは、公売財産の見積価額の変更、第九十五条第一項本文(公売公告)の期間の短縮その他公売の条件の変更をすることができる。

3 第九十六条(公売の通知)の規定は、第一項の規定による公売が直前の公売期日から十日以内に行われるときは、適用しない。

4 第一項の規定により公売に付する場合における第九十九条第一項第一号(見積価額の公告の日)の規定の適用については、同号中「公売の日から三日前の日」とあるのは、「公売の日の前日」とする。

 (公売実施の適正化のための措置)

第百八条 税務署長は、次に掲げる者に該当すると認められる事実がある者については、その事実があつた後二年間、公売の場所に入ることを制限し、若しくはその場所から退場させ、又は入札等をさせないことができる。その事実があつた後二年を経過しない者を使用人その他の従業者として使用する者及びこれらの者を入札等の代理人とする者についても、また同様とする。

 一 入札等をしようとする者の公売への参加若しくは入札等、最高価申込者の決定又は買受人の買受代金の納付を妨げた者

 二 公売に際して不当に価額を引き下げる目的をもつて連合した者

 三 偽りの名義で買受申込をした者

 四 正当な理由がなく、買受代金の納付の期限までにその代金を納付しない買受人

 五 故意に公売財産を損傷し、その価額を減少させた者

 六 前各号に掲げる者のほか、公売又は随意契約による売却の実施を妨げる行為をした者

2 前項の規定に該当する者の入札等又はその者を最高価申込者とする決定については、税務署長は、その入札等がなかつたものとし、又はその決定を取り消すことができるものとする。

3 前項の場合において、同項の処分を受けた者の納付した公売保証金があるときは、その公売保証金は、国庫に帰属する。この場合において、第百条第四項(公売保証金の返還)の規定は、適用しない。

4 税務署長は、第一項の規定の適用に関し必要があると認めるときは、入札者等の身分に関する証明を求めることができる。

     第三款 随意契約による売却

 (随意契約による売却)

第百九条 次の各号の一に該当するときは、税務署長は、差押財産を、公売に代えて、随意契約により売却することができる。

 一 法令の規定により、公売財産を買い受けることができる者が一人であるとき、その財産の最高価額が定められている場合において、その価額により売却するとき、その他公売に付することが公益上適当でないと認められるとき。

 二 取引所の相場がある財産をその日の相場で売却するとき。

 三 公売に付しても入札等がないとき、入札等の価額が見積価額に達しないとき、又は第百十五条第四項(売却決定の取消)の規定により売却決定を取り消したとき。

2 第九十八条(見積価額の決定)の規定は、前項第一号又は第三号の規定により売却する場合について準用する。この場合において、同号の規定により売却するときは、その見積価額は、その直前の公売における見積価額を下つてはならない。

3 税務署長は、第一項第三号の規定により売却する差押財産が動産であるときは、あらかじめ公告した価額により売却することができる。

4 第九十六条(公売の通知)及び第百七条第三項(公売通知等の例外)の規定は、差押財産を随意契約により売却する場合について、第百六条第二項及び第三項(最高価申込者の通知等)の規定は、随意契約により買受人となるべき者を決定した場合について準用する。この場合において、第九十六条第一項中「前条の公告をしたときは」とあるのは「随意契約により売却をする日の七日前までに」と、「通知し」とあるのは「通知書を発し」と読み替えるものとする。

 (国による買入れ)

第百十条 国は、前条第一項第三号の規定に該当する場合において、必要があるときは、同条第二項の規定による見積価額でその財産を買い入れることができる。

     第四款 売却決定

 (動産等の売却決定)

第百十一条 税務署長は、動産又は有価証券を換価に付するときは、公売をする日(随意契約により売却する場合には、その売却する日。以下「公売期日等」という。)において、最高価申込者(随意契約により売却する場合における買受人となるべき者を含む。以下同じ。)に対して売却決定を行う。

 (動産等の売却決定の取消)

第百十二条 換価をした動産又は有価証券に係る売却決定の取消は、これをもつて買受代金を納付した善意の買受人に対抗することができない。

2 前項の規定により買受人に対抗することができないことにより損害が生じた者がある場合には、その生じたことについてその者に故意又は過失があるときを除き、国は、その通常生ずべき損失の額を賠償する責に任ずる。この場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、その者に対する求償権の行使を妨げない。

 (不動産等の売却決定)

第百十三条 税務署長は、不動産等を換価に付するときは、公売期日等から起算して七日を経過した日(以下「売却決定期日」という。)において最高価申込者に対して売却決定を行う。

 (買受申込等の取消)

第百十四条 換価に付した財産(以下「換価財産」という。)について最高価申込者の決定又は売却決定をした場合において、第百六十六条第三項ただし書(再調査の請求がされた場合の処分の停止)(第百六十七条第四項(審査の請求についての準用規定)において準用する場合を含む。)若しくは第百七十一条第三項本文(再調査の請求等がされた場合の不動産等についての処分の停止)の規定又は行政事件訴訟特例法(昭和二十三年法律第八十一号)第十条第二項(執行停止命令)の規定による命令により滞納処分の続行を停止したときは、その停止している間は、その最高価申込者又は買受人は、その入札等又は買受を取り消すことができる。

     第五款 代金納付及び権利移転

 (買受代金の納付の期限等)

第百十五条 換価財産の買受代金の納付の期限は、売却決定の日とする。

2 税務署長は、必要があると認めるときは、前項の期限を延長することができる。ただし、その期間は、十日をこえることができない。

3 買受人は、買受代金を第一項の期限までに現金で納付しなければならない。

4 税務署長は、買受人が買受代金を第一項の期限までに納付しないときは、その売却決定を取り消すことができる。

 (買受代金の納付の効果)

第百十六条 買受人は、買受代金を納付した時に換価財産を取得する。

2 徴収職員が買受代金を受領したときは、その限度において、滞納者から換価に係る国税を徴収したものとみなす。

 (国税の完納による売却決定の取消)

第百十七条 税務署長は、換価財産に係る国税の完納の事実が買受人の買受代金の納付前に証明されたときは、その売却決定を取り消さなければならない。

 (売却決定通知書の交付)

第百十八条 税務署長は、換価財産(有価証券を除く。)の買受人がその買受代金を納付したときは、売却決定通知書を買受人に交付しなければならない。ただし、動産については、その交付をしないことができる。

 (動産等の引渡)

第百十九条 税務署長は、換価した動産、有価証券又は自動車若しくは建設機械(徴収職員が占有したものに限る。)の買受人が買受代金を納付したときは、その財産を買受人に引き渡さなければならない。

2 税務署長は、前項の場合において、その財産を滞納者又は第三者に保管させているときは、売却決定通知書を買受人に交付する方法によりその財産の引渡をすることができる。この場合において、その引渡をした税務署長は、その旨を滞納者又は第三者に通知しなければならない。

 (有価証券の裏書等)

第百二十条 税務署長は、換価した有価証券を買受人に引き渡す場合において、その証券に係る権利の移転につき滞納者に裏書、名義変更又は流通回復の手続をさせる必要があるときは、期限を指定して、これらの手続をさせなければならない。

2 税務署長は、前項の場合において、滞納者がその期限までに同項の手続をしないときは、滞納者に代つてその手続をすることができる。

 (権利移転の登記の嘱託)

第百二十一条 税務署長は、換価財産で権利の移転につき登記を要するものについては、不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)その他の法令に別段の定がある場合を除き、その買受代金を納付した買受人の請求により、その権利の移転の登記を関係機関に嘱託しなければならない。

 (債権等の権利移転の手続)

第百二十二条 税務署長は、換価した債権又は第七十三条第一項(電話加入権等の差押手続)に規定する財産の買受人がその買受代金を納付したときは、売却決定通知書を第三債務者等に交付しなければならない。

2 前項の場合において、第六十五条(債権証書の取上げ)(第七十三条第四項(権利証書の取上げ)において準用する場合を含む。)の規定により取り上げた証書があるときは、これを買受人に引き渡さなければならない。

 (権利移転に伴う費用の負担)

第百二十三条 第百二十条第二項(有価証券の裏書等の代位)の規定による手続に関する費用及び第百二十一条(権利移転の登記の嘱託)の規定による嘱託に係る登記の登録税その他の費用は、買受人の負担とする。

 (担保権の消滅又は引受)

第百二十四条 換価財産上の質権、抵当権、先取特権、留置権並びに担保の目的でされている仮登記により保全される請求権及び第二十三条第一項(仮登記のある財産の差押の効力)の規定の適用を受ける本登記に係る権利で同条第二項の通知に係るものは、その買受人が買受代金を納付した時に消滅する。第二十四条(譲渡担保権者の物的納税責任)の規定により譲渡担保財産に対し滞納処分を執行した場合において、滞納者がした再売買の予約の仮登記があるときは、その仮登記により保全される請求権についても、また同様とする。

2 税務署長は、不動産、船舶、航空機、自動車又は建設機械を換価する場合において、次の各号のいずれにも該当するときは、その財産上の質権、抵当権又は先取特権(登記がされているものに限る。以下この条において同じ。)に関する負担を買受人に引き受けさせることができる。この場合において、その引受があつた質権、抵当権又は先取特権については、前項の規定は、適用しない。

 一 差押に係る国税がその質権、抵当権又は先取特権により担保される債権に次いで徴収するものであるとき。

 二 その質権、抵当権又は先取特権により担保される債権の弁済期限がその財産の売却決定期日から六月以内に到来しないとき。

 三 その質権、抵当権又は先取特権を有する者から申出があつたとき。

 (換価に伴い消滅する権利の登記のまつ消の嘱託)

第百二十五条 税務署長は、第百二十一条(権利移転の登記の嘱託)の規定により権利の移転の登記を嘱託する場合において、換価に伴い消滅する権利に係る登記があるときは、あわせてそのまつ消を関係機関に嘱託しなければならない。

 (担保責任)

第百二十六条 民法第五百六十八条(強制競売における担保責任)の規定は、差押財産の換価の場合について準用する。

 (法定地上権等の設定)

第百二十七条 土地及びその上にある建物又は立木(以下この条において「建物等」という。)が滞納者の所有に属する場合において、その土地又は建物等の差押があり、その換価によりこれらの所有者を異にするに至つたときは、その建物等につき、地上権が設定されたものとみなす。

2 前項の規定は、地上権及びその目的となる土地の上にある建物等が滞納者に属する場合について準用する。この場合において、同項中「地上権が設定された」とあるのは、「地上権の存続期間内において土地の賃貸借をした」と読み替えるものとする。

3 前二項の場合において、その権利の存続期間及び地代は、当事者の請求により裁判所が定める。

    第四節 換価代金等の配当

 (配当すべき金銭)

第百二十八条 税務署長は、次に掲げる金銭をこの節の定めるところにより配当しなければならない。

 一 差押財産の売却代金

 二 有価証券、債権又は無体財産権等の差押により第三債務者等から給付を受けた金銭

 三 差し押えた金銭

 四 交付要求により交付を受けた金銭

 (配当の原則)

第百二十九条 前条第一号又は第二号に掲げる金銭(以下「換価代金等」という。)は、次に掲げる国税その他の債権に配当する。

 一 差押に係る国税

 二 交付要求を受けた国税、地方税及び公課

 三 差押財産に係る質権、抵当権、先取特権又は留置権により担保される債権

 四 第五十九条第一項後段、第三項又は第四項(第三者の損害賠償請求権等への配当)(これらの規定を第七十一条第四項(自動車等についての準用規定)において準用する場合を含む。)の規定の適用を受ける損害賠償請求権又は借賃に係る債権

2 前条第三号又は第四号に掲げる金銭は、それぞれ差押又は交付要求に係る国税に充てる。

3 前二項の規定により配当した金銭に残余があるときは、その残余の金銭は、滞納者(担保の目的でされている仮登記の権利者を含む。以下第百三十一条(配当計算書)において同じ。)に交付する。

4 換価代金等が第一項各号に掲げる国税その他の債権の総額に不足するときは、税務署長は、第二章(国税と他の債権との調整)、第五十九条第一項後段、第三項及び第四項(これらの規定を第七十一条第四項において準用する場合を含む。)並びに民法その他の法律の規定により配当すべき順位及び金額を定めて配当しなければならない。

5 第一項又は第二項の規定により国税に配当された金銭を国税(附帯税額を除く。以下この項において同じ。)及びその利子税額又は延滞加算税額に充てるべきときは、その金銭は、まずその国税に充てなければならない。

 (債権額の確認方法)

第百三十条 前条第一項第二号に掲げる国税、地方税又は公課を徴収する者及び同項第三号又は第四号に掲げる債権を有する者は、売却決定の日の前日までに債権現在額申立書を税務署長に提出しなければならない。

2 税務署長は、前項の債権現在額申立書を調査して前条第一項各号に掲げる国税その他の債権を確認するものとする。この場合において、次に掲げる債権を有する者が債権現在額申立書を提出しないときは、税務署長の調査によりその額を確認するものとする。

 一 登記がされた質権、抵当権又は先取特権により担保される債権

 二 登記することができない質権若しくは先取特権又は留置権により担保される債権で知れているもの

 三 前条第一項第四号に掲げる債権で知れているもの

3 前条第一項第三号に掲げる債権のうち前項第一号及び第二号に掲げる債権以外の債権を有する者が売却決定の時までに債権現在額申立書を提出しないときは、その者は、配当を受けることができない。

 (配当計算書)

第百三十一条 税務署長は、第百二十九条(配当の原則)の規定により配当しようとするときは、政令で定めるところにより、配当を受ける債権、前条第二項の規定により税務署長が確認した金額その他必要な事項を記載した配当計算書を作成し、換価財産の買受代金の納付の日から三日以内に、次に掲げる者に対する交付のため、その謄本を発送しなければならない。

 一 債権現在額申立書を提出した者

 二 前条第二項後段の規定により金額を確認した債権を有する者

 三 滞納者

 (換価代金等の交付期日)

第百三十二条 税務署長は、前条の規定により配当計算書の謄本を交付するときは、その謄本に換価代金等の交付期日を附記して告知しなければならない。

2 前項の換価代金等の交付期日は、配当計算書の謄本を交付のため発送した日から起算して七日を経過した日としなければならない。ただし、第百二十九条第一項第三号又は第四号(配当を受ける債権)に掲げる債権を有する者で前条第一号又は第二号に掲げる者に該当するものがない場合には、その期間は、短縮することができる。

 (換価代金等の交付)

第百三十三条 税務署長は、換価代金等の交付期日に配当計算書に従つて換価代金等を交付するものとする。

2 換価代金等の交付期日までに配当計算書に関する異議の申立があつた場合における前項の換価代金等の交付は、次に定めるところによる。

 一 その異議が配当計算書に記載された国税、地方税又は公課の配当金額に対するものであるときは、その行政機関等の申出に従い、配当計算書を更正し、又は直ちに交付するものとする。

 二 その異議が配当計算書に記載された国税、地方税又は公課の配当金額を変更させないものである場合において、その異議に関係を有する者及び滞納者がその異議を正当と認めたとき、又はその他の方法で合意したときは、配当計算書を更正して交付するものとする。

 三 その異議が配当計算書に記載された国税、地方税又は公課の配当金額を変更させるその他の債権の配当金額に関するものである場合において、その異議に関係を有する者及び滞納者がその異議を正当と認めたとき、又はその他の方法で合意したときは、配当計算書を更正して交付するものとし、その合意がなかつたときは、その異議を参酌して配当計算書を更正して交付し、又は異議につき相当の理由がないと認めるときは、直ちに国税、地方税又は公課の金額を交付するものとする。

3 前項の規定により換価代金等を交付することができない場合、換価代金等を配当すべき債権が停止条件附である場合又は換価代金等が担保の目的でされている仮登記がある財産に係るものである場合(その仮登記に基く本登記が換価の時までにされている場合を除く。)における換価代金等の交付については、政令で定めるところによる。

 (換価代金等の供託)

第百三十四条 換価代金等を配当すべき債権の弁済期が到来していないときは、その債権者に交付すべき金額は、供託しなければならない。

2 税務署長は、前項の規定により供託したときは、その旨を同項の債権者に通知しなければならない。

 (売却決定の取消に伴う措置)

第百三十五条 税務署長は、売却決定を取り消したときは、次に掲げる手続をしなければならない。ただし、第百十二条第一項(動産等の売却決定の取消)の規定により、その取消をもつて買受人に対抗することができないときは、この限りでない。

 一 徴収職員が受領した換価代金等の買受人への返還

 二 第百二十一条(権利移転の登記の嘱託)その他の法令の規定により嘱託した換価に係る権利の移転の登記のまつ消の嘱託

 三 第百二十五条(換価に伴い消滅する権利の登記のまつ消の嘱託)その他の法令の規定による嘱託で換価に係るものによりまつ消された質権、抵当権その他の権利の登記の回復の登記の嘱託

2 前項第三号の規定により嘱託した回復の登記に係る質権者、抵当権者又は先取特権者に対し換価代金等から配当した金額がある場合において、これらの者がその金額を返還しないときは、税務署長は、その金額を限度として、これらの者に代位することができる。この場合において、配当した金額がその質権、抵当権又は先取特権により担保される債権の一部であるときは、税務署長は、その代位した債権者の承諾を要しないで、その代位に係る権利を行使し、かつ、その債権者に優先して弁済を受けることができる。

    第五節 滞納処分費

 (滞納処分費の範囲)

第百三十六条  滞納処分費は、国税の滞納処分による財産の差押、交付要求、差押財産の保管、運搬、換価及び第九十三条(修理等の処分)の規定による処分、差し押えた有価証券、債権及び無体財産権等の取立並びに配当に関する費用とする。

 (滞納処分費の配当等の順位)

第百三十七条 滞納処分費については、その徴収の基因となつた国税に先だつて配当し、又は充当する。

 (滞納処分費の納入の告知)

第百三十八条 国税が完納された場合において、滞納処分費につき滞納者の財産を差し押えようとするときは、税務署長は、政令で定めるところにより、滞納者に対し、納入の告知をしなければならない。

    第六節 雑則

     第一款 滞納処分の効力

 (相続等があつた場合の滞納処分の効力)

第百三十九条 滞納者の財産について滞納処分を執行した後、滞納者が死亡し、又は滞納者である法人が合併により消滅したときは、その財産につき滞納処分を続行することができる。

2 滞納者の死亡後その国税につき滞納者の名義の財産に対してした差押は、当該国税につきその財産を有する相続人に対してされたものとみなす。ただし、徴収職員がその死亡を知つていたときは、この限りでない。

 (仮差押等がされた財産に対する滞納処分の効力)

第百四十条 滞納処分は、仮差押又は仮処分によりその執行を妨げられない。

     第二款 財産の調査

 (質問及び検査)

第百四十一条 徴収職員は、滞納処分のため滞納者の財産を調査する必要があるときは、その必要と認められる範囲内において、次に掲げる者に質問し、又はその者の財産に関する帳簿若しくは書類を検査することができる。

 一 滞納者

 二 滞納者の財産を占有する第三者及びこれを占有していると認めるに足りる相当の理由がある第三者

 三 滞納者に対し債権若しくは債務があり、又は滞納者から財産を取得したと認めるに足りる相当の理由がある者

 四 滞納者が株主又は出資者である法人

 (捜索の権限及び方法)

第百四十二条 徴収職員は、滞納処分のため必要があるときは、滞納者の物又は住居その他の場所につき捜索することができる。

2 徴収職員は、滞納処分のため必要がある場合には、次の各号の一に該当するときに限り、第三者の物又は住居その他の場所につき捜索することができる。

 一 滞納者の財産を所持する第三者がその引渡をしないとき。

 二 滞納者の親族その他の特殊関係者が滞納者の財産を所持すると認めるに足りる相当の理由がある場合において、その引渡をしないとき。

3 徴収職員は、前二項の捜索に際し必要があるときは、滞納者若しくは第三者に戸若しくは金庫その他の容器の類を開かせ、又は自らこれらを開くため必要な処分をすることができる。

 (捜索の時間制限)

第百四十三条 捜索は、日没後から日出前まではすることができない。ただし、日没前に着手した捜索は、日没後まで継続することができる。

2 旅館、飲食店その他夜間でも公衆が出入することができる場所については、滞納処分の執行のためやむを得ない必要があると認めるに足りる相当の理由があるときは、前項本文の規定にかかわらず、日没後でも、公開した時間内は、捜索することができる。

 (捜索の立会人)

第百四十四条 徴収職員は、捜索をするときは、その捜索を受ける滞納者若しくは第三者又はその同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものを立ち会わせなければならない。この場合において、これらの者が不在であるとき、又は立会に応じないときは、成年に達した者二人以上又は市町村の吏員若しくは警察官を立ち会わせなければならない。

 (出入禁止)

第百四十五条 徴収職員は、捜索、差押又は差押財産の搬出をする場合において、これらの処分の執行のため支障があると認められるときは、これらの処分をする間は、次に掲げる者を除き、その場所に出入することを禁止することができる。

 一 滞納者

 二 差押に係る財産を保管する第三者及び第百四十二条第二項(第三者に対する捜索)の規定により捜索を受けた第三者

 三 前二号に掲げる者の同居の親族

 四 滞納者の国税に関する申告、申請その他の事項につき滞納者を代理する権限を有する者

 (捜索調書の作成)

第百四十六条 徴収職員は、捜索したときは、捜索調書を作成しなければならない。

2 徴収職員は、捜索調書を作成した場合には、その謄本を捜索を受けた滞納者又は第三者及びこれらの者以外の立会人があるときはその立会人に交付しなければならない。

3 前二項の規定は、第五十四条(差押調書)の規定により差押調書を作成する場合には、適用しない。この場合においては、差押調書の謄本を前項の第三者及び立会人に交付しなければならない。

 (身分証明書の呈示等)

第百四十七条 徴収職員は、この款の規定により質問、検査又は捜索をするときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。

2 この款の規定による質問、検査又は捜索の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

   第六章 納税の猶予及び担保

    第一節 徴収猶予

 (徴収猶予の要件等)

第百四十八条 税務署長は、納税者が次の各号の一に該当する場合において、その該当する事実に基き、その国税を金銭で一時に納付することができないと認めるときは、その納付することができないと認められる金額を限度として、その者の申請に基き、一年以内の期間を限り、その徴収を猶予することができる。この場合においては、その金額を適宜分割して納付すべき期限を定めることを妨げない。

 一 納税者がその財産につき震災、風水害、火災、その他の災害を受け、又は盗難にかかつたとき。

 二 納税者又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したとき。

 三 納税者がその事業を廃止し、又は休止したとき。

 四 納税者がその事業につき著しい損失を受けたとき。

 五 前各号の一に該当する事実に類する事実があつたとき。

2 税務署長は、納税者につき、国税の法定納期限から一年を経過した後、その納付すべき額が確定した場合において、その納付すべき国税を金銭で一時に納付することができない理由があると認めるときは、その納付することができないと認められる金額を限度として、その国税の納期限内にされたその者の申請に基き、その納期限から一年以内の期間を限り、その徴収を猶予することができる。この場合においては、前項後段の規定を準用する。

3 税務署長は、前二項の規定により徴収を猶予した場合において、その猶予した期間内にその猶予した金額を納付することができないやむを得ない理由があると認めるときは、納税者の申請により、その期間を延長することができる。ただし、その期間は、既にその者につき前二項の規定により徴収を猶予した期間とあわせて二年をこえることができない。

4 税務署長は、第一項又は第二項の規定により徴収を猶予したとき、又は前項の規定によりその期間を延長したときは、その旨を納税者に通知しなければならない。第一項又は第二項の申請につき徴収の猶予を認めないときも、また同様とする。

 (徴収猶予の効果)

第百四十九条 税務署長は、前条の規定により徴収を猶予した期間内は、その猶予に係る国税について新たに督促及び滞納処分(交付要求を除く。)をすることができない。

2 税務署長は、前条の規定により徴収を猶予した場合において、その猶予に係る国税につき差し押えた財産があるときは、その猶予を受けた者の申請により、その差押を解除することができる。

3 税務署長は、前条の規定により徴収を猶予した場合において、その猶予に係る国税につき差し押えた財産のうちに果実を生ずるもの又は有価証券、債権若しくは無体財産権等があるときは、第一項の規定にかかわらず、その取得した果実又は第三債務者等から給付を受けた財産のうち金銭をその猶予に係る国税に充てることができる。

4 前項の場合において、同項の果実又は財産が金銭以外の財産であるときは、第一項の規定にかかわらず、その財産につき滞納処分を執行し、その換価代金等を猶予に係る国税に充てることができる。

 (徴収猶予の取消)

第百五十条 第百四十八条(徴収猶予)の規定により徴収の猶予を受けた者が次の各号の一に該当するときは、税務署長は、その徴収の猶予を取り消し、その猶予に係る国税を一時に徴収することができる。

 一 第百四十八条第一項後段の規定により分割して納付することを認めた国税をその期限までに納付しないとき。

 二 第百五十六条第三項(担保の変更等)の規定による担保の提供又は変更その他担保を確保するため必要な行為に関する税務署長の求に応じないとき。

 三 徴収の猶予を受けた者の財産の状況その他の事情の変化によりその猶予を継続することが適当でないと認められるとき。

 四 第四十三条第一項各号(繰上徴収)の一に該当する事実がある場合において、その徴収を猶予した期限までにその猶予に係る国税の全額を徴収することができないと認められるとき。

2 税務署長は、前項の規定により徴収の猶予を取り消す場合には、第四十三条第一項各号の一に該当する事実があるときを除き、あらかじめ、徴収の猶予を受けた者の弁明を聞かなければならない。ただし、その者が正当な理由がなくその弁明をしないときは、この限りでない。

3 税務署長は、前二項の規定により徴収の猶予を取り消したときは、その旨をその納税者に通知しなければならない。

4 第百六十六条第三項(再調査の請求に基く徴収猶予)(第百六十七条第四項(審査の請求に基く徴収猶予)において準用する場合を含む。)又は所得税法その他の国税に関する法律の規定による徴収の猶予については、前三項(再調査の請求又は審査の請求があつた場合における徴収の猶予については、第二項を除く。)の規定を準用する。

 (換価の猶予の要件等)

第百五十一条 税務署長は、滞納者が次の各号の一に該当すると認められる場合(第百四十八条第一項(災害等による徴収の猶予)の規定に該当する場合を除く。)において、その者が納税について誠実な意思を有すると認められるときは、その納付すべき国税につき滞納処分による財産の換価を猶予することができる。ただし、その猶予の期間は、一年をこえることができない。

 一 その財産の換価を直ちにすることによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあるとき。

 二 その財産の換価を猶予することが、直ちにその換価をすることに比して、滞納に係る国税及び最近において納付すべきこととなる国税の徴収上有利であるとき。

2 税務署長は、前項の換価の猶予をする場合において、必要があると認めるときは、差押により滞納者の事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがある財産の差押を猶予し、又は解除することができる。

3 第百四十八条第一項後段、第三項及び第四項前段(徴収猶予の場合の分割納付等)並びに第百四十九条第三項及び第四項(果実等による徴収)の規定は、第一項の換価の猶予について準用する。

 (換価の猶予の取消)

第百五十二条 換価の猶予を受けた者が次の各号の一に該当するときは、税務署長は、その猶予を取り消し、その猶予に係る国税を一時に徴収することができる。

 一 第百五十条第一項第一号又は第二号(徴収猶予の取消の理由)の規定に該当する事実があるとき。

 二 前条第一項の規定に該当しないこととなつたとき。

 三 第四十三条第一項各号(繰上徴収)の一に該当する事実があるとき。

2 第百五十条第三項(徴収猶予の取消の通知)の規定は、前項の規定により換価の猶予を取り消した場合について準用する。

    第二節 滞納処分の停止

 (滞納処分の停止の要件等)

第百五十三条 税務署長は、滞納者につき次の各号の一に該当する事実があると認めるときは、滞納処分の執行を停止することができる。

 一 滞納処分を執行することができる財産がないとき。

 二 滞納処分を執行することによつてその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき。

 三 その所在及び滞納処分を執行することができる財産がともに不明であるとき。

2 税務署長は、前項の規定により滞納処分の執行を停止したときは、その旨を滞納者に通知しなければならない。

3 税務署長は、第一項第二号の規定により滞納処分の執行を停止した場合において、その停止に係る国税について差し押えた財産があるときは、その差押を解除しなければならない。

4 第一項の規定により滞納処分の執行を停止した国税を納付する義務は、その執行の停止が三年間継続したときは、消滅する。

5 第一項第一号の規定により滞納処分の執行を停止した場合において、その国税が限定承認に係るものであるとき、その他その国税を徴収することができないことが明らかであるときは、税務署長は、前項の規定にかかわらず、その国税を納付する義務を直ちに消滅させることができる。

 (滞納処分の停止の取消)

第百五十四条 税務署長は、前条第一項各号の規定により滞納処分の執行を停止した後三年以内に、その停止に係る滞納者につき同項各号に該当する事実がないと認めるときは、その執行の停止を取り消さなければならない。

2 税務署長は、前項の規定により滞納処分の執行の停止を取り消したときは、その旨を滞納者に通知しなければならない。

    第三節 納税の猶予に伴う利子税額等の減免

 (利子税額等の減免)

第百五十五条 第百四十八条第一項第一号、第二号若しくは第五号(同項第一号又は第二号に該当する事実に類する事実に係る部分に限る。)(災害等による徴収の猶予)又は第百五十三条第一項(滞納処分の停止の要件)の規定により徴収を猶予し、又は滞納処分の執行を停止した場合には、その猶予又は停止をした国税に係る利子税額又は延滞加算税額のうちその猶予又は停止をした期間に対応する部分の金額は、免除する。ただし、第百五十条第一項(徴収猶予の取消)又は前条第一項の規定による取消の基因となるべき事実が生じた場合には、その生じた日以後の期間に対応する部分の金額については、税務署長は、その免除をしないことができる。

2 第百四十八条第一項第三号、第四号若しくは第五号(前項本文に規定する部分を除く。)(事業の廃止等による徴収の猶予)又は第百五十一条(換価の猶予)の規定により徴収又は換価を猶予した場合において、納税者が次の各号の一に該当するときは、税務署長は、その猶予した国税に係る利子税額又は延滞加算税額につき、猶予した期間に対応する部分の金額でその納付が困難と認められるものを限度として免除することができる。

 一 納税者の財産の状況が著しく不良で、納期又は弁済期の到来した地方税若しくは公課又は債務について軽減又は免除をしなければ、その事業の継続又は生活の維持が著しく困難になると認められる場合において、その軽減又は免除がされたとき。

 二 納税者の事業又は生活の状況によりその利子税額又は延滞加算税額の納付を困難とするやむを得ない理由があると認められるとき。

3 第一項の規定は、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(昭和二十二年法律第百七十五号)第九条(徴収猶予)の規定により徴収を猶予した場合について準用する。

    第四節 納税の猶予に伴う担保

 (担保の徴取)

第百五十六条 税務署長は、第百四十八条(徴収猶予)又は第百五十一条(換価の猶予)の猶予をする場合には、その猶予に係る金額に相当する担保で次に掲げるものを徴さなければならない。ただし、その猶予に係る金額が五万円以下である場合又は担保を徴することができない特別の事情がある場合は、この限りでない。

 一 国債及び地方債

 二 税務署長が確実と認める社債(特別の法律により設立された法人が発行する債券を含む。)その他の有価証券

 三 土地

 四 保険に附した建物、立木、船舶、航空機、自動車及び建設機械

 五 鉄道財団、工場財団、鉱業財団、軌道財団、運河財団、漁業財団、港湾運送事業財団及び道路交通事業財団

 六 税務署長が確実と認める保証人の保証

2 税務署長は、前項の規定により担保を徴する場合において、その猶予に係る国税につき差し押えた財産があるときは、その担保の額は、その猶予をする金額からその財産の価額を控除した額を限度とする。

3 税務署長は、第一項の規定により担保を徴した場合において、担保財産の価額若しくは保証人の資力の減少その他の理由により猶予に係る金額の納付を担保することができないと認めるとき、又は第百四十九条第二項(徴収猶予による差押の解除)若しくは第百五十一条第二項(換価の猶予による差押の解除)の規定により差押を解除したときは、納税者に対し増担保の提供、保証人の変更その他の担保を確保するため必要な行為を求めることができる。

4 前三項に定めるもののほか、担保の提供について必要な事項は、政令で定める。

 (納付委託)

第百五十七条 第百四十八条(徴収猶予)又は第百五十一条(換価の猶予)の猶予を受けた納税者がその猶予に係る国税を納付するため、国税の納付に使用することができる証券以外の有価証券を提供して、その証券の取立とその取り立てた金銭による当該国税の納付を委託しようとする場合には、徴収職員は、その証券が最近において、確実に取り立てることができるものであると認められるときに限り、その委託を受けることができる。この場合において、その証券の取立につき費用を要するときは、その委託をしようとする者は、その費用の額に相当する金額をあわせて提供しなければならない。

2 徴収職員は、前項の委託を受けたときは、納付受託証書を納税者に交付しなければならない。

3 徴収職員は、第一項の委託を受けた場合において、必要があるときは、確実と認める金融機関にその取立及び納付の再委託をすることができる。

4 第一項の委託があつた場合において、その委託に係る有価証券の提供により第百五十六条第一項各号(徴収猶予等の担保)に掲げる担保の提供の必要がないと認められるに至つたときは、その認められる限度において当該担保の提供があつたものとすることができる。

    第五節 保全担保及び保全差押

 (保全担保)

第百五十八条 納税者が内国消費税又は入場税を滞納した場合において、その後その者に課すべきこれらの国税の徴収を確保することができないと認められるときは、税務署長は、その国税の担保として、金額及び期限を指定して、その者に第百五十六条第一項各号(徴収猶予等の担保)に掲げるものの提供を命ずることができる。

2 前項の規定により指定する金額は、その提供を命ずる月の前月分の当該国税の額の三倍に相当する金額(その金額が前年におけるその提供を命ずる月に対応する月分及びその後二月分の当該国税の金額に満たないときは、その額)を限度とする。

3 第百五十六条第三項及び第四項(増担保の提供等)の規定は、第一項の規定による担保について準用する。

4 税務署長は、第一項の規定により同項に規定する国税(酒税、入場税及びトランプ類税を除く。)の担保の提供を命じた場合において、納税者がその指定された期限までにその命ぜられた担保を提供しないときは、その国税に関し、その者の財産で抵当権の目的となるものにつき、同項の規定により指定した金額を限度として抵当権を設定することを書面で納税者に通知することができる。

5 前項の通知があつたときは、その通知を受けた納税者は、同項の抵当権を設定したものとみなす。この場合において、税務署長は、抵当権の設定の登記を関係機関に嘱託しなければならない。

6 税務署長は、第一項の規定による担保の提供又は前項の規定による抵当権の設定(以下「担保の提供等」という。)があつた場合において、第一項の命令に係る国税の滞納がない期間が継続して三月に達したときは、その担保を解除しなければならない。

7 税務署長は、担保の提供等があつた納税者の資力その他の事情の変化により担保の提供等の必要がなくなつたと認めるときは、前項の規定にかかわらず、直ちにその解除をすることができる。

 (保全差押)

第百五十九条 納税義務があると認められる者が不正に国税を免かれ、又は国税の還付を受けたことの嫌疑に基き、国税犯則取締法(明治三十三年法律第六十七号)の規定による差押若しくは領置又は刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による押収、領置若しくは逮捕を受けた場合において、その処分に係る国税の納付すべき額の確定(申告、更正又は決定による確定をいう。以下この条において同じ。)後においては当該国税の徴収を確保することができないと認められるときは、税務署長は、当該国税の納付すべき額の確定前に、その確定すると見込まれる国税の金額のうちその徴収を確保するためあらかじめ滞納処分を執行することを要すると認める金額(以下この条において「保全差押金額」という。)を決定し、その金額を限度として、その者の財産を直ちに差し押えることができる。

2 税務署長は、前項の規定による差押をしようとするときは、あらかじめ、その所属する国税局長の承認を受けなければならない。

3 税務署長は、第一項の規定による差押をするときは、同項の規定により決定した保全差押金額を同項に規定する納税義務があると認められる者に書面で通知しなければならない。

4 前項の通知をした場合において、その納税義務があると認められる者がその通知に係る保全差押金額に相当する担保として第百五十六条第一項各号(徴収猶予等の担保)に掲げるもの又は金銭を提供してその差押をしないことを求めたときは、税務署長は、その差押をすることができない。

5 税務署長は、次の各号の一に該当するときは、第一項の規定による差押を解除しなければならない。

 一 第一項の規定による差押を受けた者が前項に規定する担保を提供して、その差押の解除を請求したとき。

 二 第三項の通知をした日から六月を経過した日までに、その差押に係る国税の納付すべき額が確定しないとき。

6 税務署長は、第一項の規定による差押を受けた者につき、その資力その他の事情の変化により、その差押の必要がなくなつたと認められることとなつたときは、その差押を解除することができる。

7 第一項の規定による差押又は第四項に規定する担保の提出があつた場合において、その差押又は担保の提供に係る国税の納付すべき額が確定したときは、その差押又は担保の提供は、その国税を徴収するためにされたものとみなす。

8 第百五十六条第二項から第四項まで(担保の提供手続等)の規定は、第四項に規定する担保について準用する。

9 第一項の規定により差し押えた財産は、その差押に係る国税の納付すべき額が確定した後でなければ、換価することができない。

10 第一項の場合において、差し押えるべき財産に不足があると認められるときは、税務署長は、差押に代えて交付要求をすることができる。この場合においては、その交付要求であることを明らかにしなければならない。

11 税務署長は、第一項の規定により差し押えた金銭(有価証券、債権又は無体財産権等の差押により第三債務者等から給付を受けた金銭を含む。)がある場合において、その差押に係る国税の納付すべき額が確定していないときは、これを供託しなければならない。

12 第一項に規定する国税の納付すべき額として確定した金額が保全差押金額に満たない場合において、その差押を受けた者がその差押により損害を受けたときは、国は、その損害を賠償する責に任ずる。この場合において、その額は、その差押により通常生ずベき損失の額とする。

    第六節 担保の処分

 (担保の処分)

第百六十条 税務署長は、第百四十八条(徴収猶予)又は第百五十一条(換価の猶予)の猶予を受けた者がその猶予に係る国税をその猶予の期限までに納付せず、又は第百五十条第一項(徴収猶予の取消)(同条第四項において準用する場合を含む。)若しくは第百五十二条第一項(換価の猶予の取消)の規定により徴収する場合において、その国税について徴した担保があるときは、滞納処分の例によりその担保財産を処分して、その徴収すべき国税及びその処分費に充て、又は保証人にその国税を納付させる。

2 前項の場合において、税務署長は、担保財産の処分の代金が同項の国税及びその処分費に充ててなお不足があると認めるときは、滞納者の他の財産について滞納処分を執行し、また、保証人がその納付すべき金額を完納しないときは、まず滞納者に対して滞納処分を執行し、なお不足があるとき、又は不足があると認めるときは、保証人に対して滞納処分を執行する。

3 前二項の規定は、第百五十八条(保全担保)又は前条第四項の担保の提供があつた場合において、その担保に係る国税を徴収するときについて準用する。この場合において、その担保が金銭であるときは、直ちにその国税に充てる。

4 第三十二条(第二次納税義務の通則)の規定は、第一項又は第二項(これらの規定を前項において準用する場合を含む。)の規定により保証人から国税を徴収する場合について準用する。

   第七章 還付

 (過誤納金の還付)

第百六十一条 税務署長、国税局長又は税関長(以下この章において「税務署長等」という。)は、過誤納に係る国税(以下「過誤納金」という。)があるときは、政令で定めるところにより、遅滞なく、金銭で還付しなければならない。

 (過誤納金の充当)

第百六十二条 税務署長等は、前条の規定により還付すべき場合において、その還付を受けるべき者につき納付すべきこととなつた国税があるときは、同条の規定にかかわらず、過誤納金をその国税に充当しなければならない。この場合においては、第百二十九条第五項(本税額の優先充当)の規定を準用する。

2 前項の規定による充当は、政令で定める充当をするに適することとなつた時にさかのぼつてその効力を生ずる。

3 税務署長等は、第一項の規定による充当をしたときは、その旨を納税者に通知しなければならない。

 (国税の予納額の還付の特例)

第百六十三条 納税者は、その申出により次に掲げる国税として納付した金額があるときは、その還付を請求することができない。

 一 納付すべき額が確定しているが、その納期が到来していない国税

 二 最近において納付すべき額の確定が確実であると認められる国税

2 前項各号に掲げる国税として納付された国税の全部又は一部につき国税に関する法律の改正その他の理由によりその納付の必要がないこととなつたときは、その時において過誤納金が納付されたものとみなして、前二条の規定を適用する。

 (還付加算金)

第百六十四条 税務署長等は、過誤納金を第百六十一条(過誤納金の還付)又は第百六十二条第一項(過誤納金の充当)の規定により還付し、又は充当する場合には、その過誤納金が納付された日の翌日から税務署長等が還付のため支払決定をした日又は充当をした日(同日前に充当をするに適することとなつた日があるときは、同日)までの期間に応じ、その金額百円につき一日三銭の割合を乗じて計算した金額(以下「還付加算金」という。)をその還付又は充当をすべき金額に加算しなければならない。

2 前項の場合において、次の各号の一に該当するときは、当該各号に掲げる期間を同項に規定する期間から控除しなければならない。

 一 税務署長等が過誤納金があることを納税者に通知した場合において、その通知書を発した日から三十日を経過する日までにその過誤納金の還付を請求しないとき。 その日の翌日から還付の請求があつた日までの期間

 二 過誤納金の返還請求権につき民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第五百九十四条(差押命令)の規定による差押がされた場合において、同法第六百条第一項(移付命令)の命令がないとき。 その差押がされた日の翌日からその差押の取消又は移付命令があつた日までの期間

 三 過誤納金の返還請求権につき仮差押がされたとき。 その仮差押がされている期間

3 第一項の規定は、還付加算金の計算の基礎となる過誤納金の額が千円未満であるときは、適用せず、また、その額に千円未満の端数があるときは、同項の規定の適用については、その端数を切り捨てた金額をその過誤納金の額とする。

4 前三項の規定により計算した還付加算金の額が三百円未満であるときは、その還付加算金は、加算せず、その額に十円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てた金額を還付加算金の額とする。

5 二以上の納期又は二回以上の分割納付に係る国税につき過誤納を生じた場合には、その過誤納金の額に相当する国税に達するまで、納付の日の順序に従い最後に納付された金額から順次さかのぼつて求めた金額の過誤納がそれぞれの納付の日に生じたものとみなして、第一項の規定を適用する。

6 適法に納付された国税が、その適法な納付に影響を及ぼすことなくその納付すべき額を変更する法律の規定に基き過納となつたときは、その過納額に相当する国税は、その過納となつた日に納付があつたものとみなして、第一項の規定を適用する。

 (国税に関する還付金の充当等)

第百六十五条 第百二十九条第五項(本税額の優先充当)並びに第百六十二条第二項及び第三項(過誤納金の充当及び通知)の規定は、所得税法第三十一条(確定申告等による還付)その他の国税に関する法律の規定による還付金の充当について準用する。

2 前条第二項第二号及び第三号(還付加算金の計算上の控除)の規定は、前項に規定する還付金でその還付につき加算する金額があるもののその加算する金額の計算について準用する。

   第八章 再調査、審査及び訴訟

 (再調査)

第百六十六条 国税の賦課若しくは徴収に関する処分又は滞納処分に関して異議がある者は、その処分に係る通知を受けた日(その通知がないときは、その処分があつたことを知つた日。以下次条第一項において同じ。)から一月以内に、政令で定めるところにより、不服の理由を記載した書面で、その処分をした税務署長(その処分をした者が税務署長以外の職員であるときは、その職員の所属する税務署の税務署長)に対し、再調査の請求をすることができる。ただし、その処分に係る調査が国税庁若しくは国税局の職員によつてされた旨の記載がある書面により税務署長からその通知を受けた処分又は税務署以外の行政機関の職員によつてされたその処分に関して異議がある者については、この限りでない。

2 国税庁長官又は税務署長は、通信、交通その他の状況によりやむを得ない理由があると認めるときは、政令で定めるところにより、再調査の請求の期限を延長することができる。

3 再調査の請求は、その請求の目的となつた処分に係る国税の徴収若しくは滞納処分の続行を妨げず、又その処分の効力に影響を及ぼさない。ただし、税務署長は、相当の理由があると認めるときは、その国税の全部若しくは一部の徴収を猶予し、又は滞納処分の続行を停止することができる。

4 税務署長は、再調査の請求があつた場合において、その請求の方式又は手続に欠陥があるときは、相当の期間を定めて、その欠陥を補正させることができる。

5 税務署長は、再調査の請求があつた場合において、次の各号の一に該当するときは、当該各号に掲げる決定をし、その理由を附記した書面で、その旨をその請求をした者に通知しなければならない。

 一 再調査の請求が第一項の期間経過後にされたとき、又は前項の規定により欠陥の補正を求めた場合において、その欠陥が補正されなかつたとき。 その請求を却下する決定

 二 再調査の請求の全部についてその理由がないと認めるとき。 その請求を棄却する決定

 三 再調査の請求の全部又は一部についてその理由があると認めるとき。 再調査の請求の目的となつた処分の全部又は一部を取り消す決定

 (審査)

第百六十七条 前条第一項ただし書の規定に該当する者は、同項ただし書に規定する処分に係る通知を受けた日から一月以内に、政令で定めるところにより、不服の理由を記載した書面で、国税庁長官、国税局長又は税関長に対し、審査の請求をすることができる。

2 前条第五項の規定による決定(以下「再調査の決定」という。)を受けた者でその決定に異議があるものは、同項の規定による通知を受けた日から一月以内に、政令で定めるところにより、不服の理由を記載した書面で、その通知をした税務署長の管轄区域を所轄する国税局長に対し、審査の請求をすることができる。この場合においては、その再調査の目的となつた処分に対する審査の請求があわせてされたものとみなす。

3 再調査の請求があつた場合において、次の各号の一に該当するときは、当該各号に掲げる日において、当該各号に規定する税務署長の管轄区域を所轄する国税局長に対し、審査の請求があつたものとみなす。

 一 税務署長が再調査の請求を審査の請求として取り扱うことを適当と認め、かつ、再調査の請求をした者がこれに同意したとき。 その同意があつた日

 二 税務署長に対し再調査の請求をした日から三月以内に前条第五項の規定による通知がされないとき(再調査の請求をした者がその期間内に別段の申出をしたときを除く。)。 その期間を経過した日

4 前条第二項から第四項までの規定は、審査の請求について準用する。

5 国税庁長官、国税局長又は税関長は、審査の請求があつた場合において、次の各号の一に該当するときは、当該各号に掲げる決定をし、その理由を附記した書面で、その旨をその請求をした者に通知しなければならない。この場合において、第二項後段の規定により再調査の目的となつた処分に対する審査の請求があわせてされたものとみなされるときは、第二号又は第三号に掲げる決定は、それぞれの請求についてしなければならない。

 一 審査の請求が第一項又は第二項の期間経過後にされたとき、又は前項において準用する前条第四項の規定により欠陥の補正を求めた場合において、その欠陥が補正されなかつたとき。 その請求を却下する決定

 二 審査の請求の全部についてその理由がないと認めるとき。 その請求を棄却する決定

 三 審査の請求の全部又は一部について理由があると認めるとき。 審査の請求の目的となつた処分の全部又は一部を取り消す決定

6 国税局長が前条第五項第一号の規定による再調査の決定に対する審査の請求について前項第二号に掲げる決定をしたときは、同項後段の規定にかかわらず、第二項後段の規定によりあわせてされたものとみなされた再調査の目的となつた処分に対する審査の請求は、棄却されたものとみなす。

7 国税庁長官又は国税局長は、前条第一項に規定する事項について第五項第二号又は第三号の規定による決定をする場合には、国税庁又は国税局に所属する協議団の協議を経なければならない。

8 前項の協議団に関し必要な事項は、政令で定める。

 (訴願法の不適用)

第百六十八条 再調査の請求又は審査の請求の目的となる処分に関する事件については、訴願法(明治二十三年法律第百五号)の規定は、適用しない。

 (訴訟)

第百六十九条 再調査の請求又は審査の請求の目的となる処分の取消又は変更を求める訴は、第百六十七条第五項の規定による決定(以下「審査の決定」という。)を経た後でなければ、提起することができない。ただし、次の各号の一に該当するときは、再調査の決定又は審査の決定を経ないで訴を提起することができる。

 一 再調査の請求があつた日から六月を経過して、なお再調査の決定の通知がないとき。

 二 審査の請求があつた日から三月を経過したとき。

 三 再調査の決定若しくは審査の決定を経ることにより著しい損害を生ずるおそれがあることその他正当な理由があるとき。

2 再調査の請求若しくは審査の請求の目的となる処分又は審査の決定の取消又は変更を求める訴は、前項第二号又は第三号の規定に該当する場合を除き、審査の決定に係る通知を受けた日から三月(同項第一号の規定による訴の提起については、再調査の請求があつた日から九月)以内に提起しなければならない。

3 前項の期間は、不変期間とする。

4 第二項に規定する訴が提起された場合には、国税庁又は国税局の職員は、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律(昭和二十二年法律第百九十四号) 第五条第一項の規定の適用については、当事者又は参加人となつた税務署長、国税局長又は税関長の所部の職員とみなす。

5 第一項ただし書の規定により訴が提起された場合においても、再調査の請求又は審査の請求がされているときは、これらの請求に対して決定をすることを妨げない。

 (証拠申出の順序)

第百七十条 前条第二項に規定する訴においては、裁判所が相手方当事者となつた国税庁長官、国税局長、税関長、税務署長その他の行政機関の長の主張を合理的と認めたときは、その訴を提起した者がまず証拠の申出をし、その後に相手方当事者が証拠の申出をするものとする。

2 相手方当事者は、前項の規定にかかわらず、随時証拠の申出をすることができる。

 (滞納処分に関する再調査の請求等の期限の特例)

第百七十一条 滞納処分について次の各号に掲げる処分に関し欠陥があること(第一号に掲げる処分については、これに関する通知が到達しないことを含む。)を理由としてする再調査の請求(第百六十六条第一項又は第二項(再調査の請求の期限)の規定により再調査の請求をすることができる期間を経過したものを除く。)は、これらの規定にかかわらず、当該各号に掲げる期限まででなければ、することができない。

 一 督促 差押に係る通知を受けた日(その通知がないときは、その差押があつたことを知つた日)から一月を経過した日

 二 不動産等についての差押 その公売期日等

 三 不動産等についての第九十五条(公売公告)の公告(第百九条第四項(随意契約による売却)において準用する第九十六条(公売の通知)の通知を含む。)から売却決定までの処分 換価財産の買受代金の納付の期限

 四 換価代金等の配当 換価代金等の交付期日

2 前項の規定は、第百六十七条第一項(始審的審査の請求)の規定による審査の請求又は第百六十九条第一項第三号(訴の提起の特例)の規定による訴の提起について準用する。この場合において、前項中「第百六十六条第一項又は第二項(再調査の請求の期限)の規定により再調査の請求をする」とあるのは、当該訴については、「行政事件訴訟特例法第五条第一項又は第三項(出訴期間)の規定により訴を提起する」と読み替えるものとする。

3 第一項第三号に掲げる処分に関し欠陥があることを理由として滞納処分について再調査の請求(その決定に対する審査の請求を含む。)又は前項に規定する審査の請求があつたときは、滞納処分は、続行することができない。ただし、税務署長、国税局長又は税関長がこれらの請求につき理由がないと認めるときは、この限りでない。

 (差押動産等の搬出及び換価の制限)

第百七十二条 第五十八条第二項(滞納者の動産等を占有する第三者に対する引渡命令)に規定する引渡命令を受けた第三者が、その命令に係る財産が滞納者の所有に属していないことを理由として、その命令につき再調査の請求又は審査の請求をしたときは、その請求の係属する間は、当該財産の搬出又は換価をすることができない。

 (不動産の売却決定等の取消の制限)

第百七十三条 第百七十一条第一項第三号(公売等に関する再調査の請求等の期限の特例)に掲げる処分に欠陥があることを理由として滞納処分に関する再調査の請求又は審査の請求があつた場合において、その処分は違法ではあるが、次に掲げる場合に該当するときは、税務署長、国税局長又は税関長は、その請求を棄却することができる。

 一 その請求に係る処分に続いて行われるべき処分(以下この号において「後行処分」という。)が既に行われている場合において、その請求に係る処分の違法が軽微なものであり、その後行処分に影響を及ぼさせることが適当でないと認められるとき。

 二 換価した財産が公共の用に供されている場合その他の場合で、その請求に係る処分を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認められるとき。

2 前項の規定による請求の棄却の決定には、処分が違法であること及び請求を棄却する理由を明示しなければならない。

3 第一項の規定は、国に対する損害賠償の請求を妨げない。

   第九章 雑則

 (国税の消滅時効)

第百七十四条 国税の徴収を目的とする国の権利(以下この章において「国税の徴収権」という。)は、これを行使することができる日から五年を経過したときは、時効により消滅する。

2 前項の場合には、時効の援用を要せず、また、その利益を放棄することができないものとする。

3 国税の徴収権の時効については、この章に別段の定があるものを除き、民法の規定を準用する。

 (時効の中断及び停止)

第百七十五条 国税の徴収権の時効は、次の各号に掲げる処分に係る国税については、その処分の効力が生じた時に中断し、当該各号に掲げる期間を経過した時から更に進行する。

 一 納税に関する告知 その告知に指定された納付に関する期限までの期間

 二 督促 督促状又は督促のため納付催告書を発した日から起算して十日を経過した日(同日前に第四十七条第二項(繰上差押)の規定による差押がされた場合には、そのされた日)までの期間

 三 交付要求 その交付要求がされている期間(第八十二条第二項(交付要求の通知)の規定による通知がされていない期間があるときは、その期間を除く。)

2 前項第三号の規定により時効が中断された場合には、その交付要求に係る強制換価手続が取り消されたときにおいても、その時効中断の効力は、失われない。

3 国税の徴収権の時効は、徴収の猶予、換価の猶予又は延納に係る国税につき、その猶予又は延納がされている期間内は、進行しない。

 (還付金の消滅時効)

第百七十六条 国税の過誤納により生ずる国に対する請求権及び所得税法第三十一条(確定申告等による還付)その他の国税に関する法律の規定による還付金に係る国に対する請求権(以下第百八十条(国税に関する相殺)において「還付金に係る債権」という。)は、その請求をすることができる日から五年を経過したときは、時効により消滅する。

2 第百七十四条第二項及び第三項(国税の消滅時効の絶対的効力等)の規定は、前項の場合について準用する。

 (第三者の納付及びその代位)

第百七十七条 国税は、その納税者のために第三者が納付することができる。

2 国税の納付について正当な利益を有する第三者又は納税者の同意を得た第三者が納税者に代つてこれを納付した場合において、その国税につき第百五十六条(担保の徴取)又は相続税法第三十八条(延納の担保)の規定による担保として抵当権が設定されていたときは、これらの者は、その納付により、その抵当権につき国に代位することができる。

3 前項の場合において第三者が納税者の国税の一部を納付したときは、その残余の国税は、同項の規定により代位した第三者の債権に先だつて徴収する。

 (債権者の代位及び詐害行為の取消)

第百七十八条 民法第四百二十三条(債権者の代位)及び第四百二十四条(詐害行為の取消)の規定は、国税の徴収に関し準用する。

 (供託)

第百七十九条 民法第四百九十四条(供託による免責)並びに第四百九十五条第一項及び第三項(供託の方法)の規定は、この法律の規定により債権者、納税者その他の者に金銭を交付すべき場合について準用する。

 (国税に関する相殺)

第百八十条 国税と国に対する債権で金銭の給付を目的とするものとは、法律の別段の規定によらなければ、相殺することができない。還付金に係る債権と国に対する債務で金銭の給付を目的とするものとについても、また同様とする。

 (納税証明書の交付等)

第百八十一条 税務署長は、国税と競合する債権に係る担保権の設定その他の目的で、国税の納付すべき額その他国税に関する事項のうち政令で定めるものについての証明書の交付を請求する者があるときは、その者に関するものに限り、政令で定めるところにより、これを交付しなければならない。

2 前項の証明書の交付を請求する者は、政令で定めるところにより、証明書の枚数を基準として定められる手数料を納付しなければならない。

 (税務署長又は国税局長による徴収)

第百八十二条 国税の徴収は、納税者の納税地を所轄する税務署長が行う。ただし、滞納処分は、この法律の定めるところにより、その税務署所属の徴収職員に執行させることができる。

2 国税局長は、必要があると認めるときは、その管轄区域内の地域を所轄する税務署長からその徴収する国税について徴収の引継を受けることができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

3 前二項の税務署長又は国税局長は、差し押えるべき財産又は差し押えた財産がその管轄区域外にあるとき(国税局長については、その管轄区域内の地域を所轄する税務署長の管轄区域内にあるときを含む。)は、当該税務署長又は国税局長は、その財産の所在地を所轄する税務署長又は国税局長に滞納処分の引継をすることができる。

4 前二項の規定により徴収の引継又は滞納処分の引継があつたときは、引継を受けた税務署長又は国税局長は、遅滞なく、その旨を納税者に通知するものとする。

 (税関長による徴収)

第百八十三条 保税地域からの引取に係る内国消費税の徴収は、前条第一項の規定にかかわらず、その引取の場所を所轄する税関長が行う。この場合においては、前条第一項ただし書の規定を準用する。

2 前項の税関長は、差し押えるべき財産又は差し押えた財産がその管轄区域外にあるときは、その財産の所在地を所轄する税関長に滞納処分の引継をすることができる。

3 第一項の税関長は、差し押えるべき財産又は差し押えた財産が滞納処分を著しく困難とする地域にあるときは、これらの財産の所在地を所轄する税務署長又は国税局長に滞納処分の引継をすることができる。

4 前条第四項の規定は、前二項の規定により滞納処分の引継があつた場合について準用する。

 (更生手続等が開始した場合の徴収の引継)

第百八十四条 株式会社について更生手続又は企業担保権の実行手続の開始があつた場合には、当該会社の国税を徴収することができる税務署長、国税局長又は税関長は、当該会社の本店(外国に本店を有する株式会社については、この法律の施行地内にある主たる営業所。以下同じ。)の所在地を所轄する税務署長、国税局長又は税関長に対し、その徴収することができる国税の徴収の引継をすることができる。ただし、更生事件がその本店以外の営業所又は財産の所在地を管轄する地方裁判所に移送されたときは、その地方裁判所の所在地を所轄する税務署長、国税局長又は税関長に徴収の引継をすることができる。

2 第百八十二条第四項(徴収の引継の通知)の規定は、前項の規定により徴収の引継があつた場合について準用する。

 (国税局長又は税関長が徴収する場合の読替規定)

第百八十五条 第百八十二条第二項若しくは第三項(徴収の引継等)、第百八十三条第三項(滞納処分の引継)若しくは前条第一項の規定により国税局長が徴収の引継若しくは滞納処分の引継を受けた場合又は第百八十三条第一項若しくは第二項(税関長による徴収)若しくは前条第一項の規定により税関長が徴収する場合におけるこの法律(第百五十九条第二項(保全差押の承認)、第七章(還付)及び第八章(再調査、審査及び訴訟)を除く。)の規定の適用については、「税務署長」又は「税務署」とあるのは、それぞれ「国税局長」若しくは「国税局」又は「税関長」若しくは「税関」とする。

 (政令への委任)

第百八十六条 この法律に定めるもののほか、督促状、差押調書、交付要求書その他この法律の規定により作成する書類に記載すべき事項、この法律の規定により利害関係人その他の者に通知すべき事項及びこの法律の実施のための手続その他その執行に関し必要な事項は、政令で定める。

   第十章 罰則

第百八十七条 納税者が滞納処分の執行を免かれる目的でその財産を隠蔽し、損壊し、国の不利益に処分し、又はその財産に係る負担を偽つて増加する行為をしたときは、その者は、三年以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

2 納税者の財産を占有する第三者が納税者に滞納処分の執行を免かれさせる目的で前項の行為をしたときも、また同項と同様とする。

3 情を知つて前二項の行為につき納税者又はその財産を占有する第三者の相手方となつた者は、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第百八十八条 次の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。

 一 第百四十一条(質問及び検査)の規定による徴収職員の質問に対して答弁をせず、又は偽りの陳述をした者

 二 第百四十一条の規定による帳簿若しくは書類の検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又はその帳簿若しくは書類で偽りの記載をしたものを呈示した者

第百八十九条 法人の代表者(人格のない社団等の管理人を含む。)又は法人若しくは人の代理人、使用人、その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して前二条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対し各本条の罰金刑を科する。

2 人格のない社団等について前項の規定の適用がある場合においては、その代表者又は管理人がその訴訟行為につき当該人格のない社団等を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して九月をこえない範囲内で政令で定める日から施行する。ただし、附則第三条(施行日前の申告期限等の特例)、附則第九条第一項(施行日前の延滞加算税額の特例)、附則第十四条(施行日前に期限が到来する徴収猶予の期限の延長の特例)並びに附則第十五条第一項及び第二項(施行日前の公売等の猶予及び利子税額等の免除の特例)の規定は、公布の日から施行する。

 (旧法に基く処分又は手続の効力)

第二条 この法律の施行前に改正前の国税徴収法(以下「旧法」という。)の規定又はこれに基き若しくはこれを実施するための命令の規定によつてした通知、告知、督促、滞納処分、徴収猶予、担保の徴取、滞納処分の執行の停止又は申告、申請、証明、納付委託、再調査の請求若しくは審査の請求その他の処分又は手続は、この附則に別段の定があるものを除き、この法律の相当規定によつてした相当の処分又は手続とみなす。

 (施行日前の申告期限等の特例)

第三条 昭和三十四年五月一日からこの法律の施行の日の前日までの間において、国税に関する法律に定める国税の申告、申請、納付又は徴収に関する期限(政令で定める期限を除く。)が民法第百四十二条(期間の満了の特例)に規定する休日に該当するときは、その国税に関する法律の規定にかかわらず、その休日の翌日を当該期限とみなす。

 (書類の送達に関する経過措置)

第四条 第五条第四項及び第五項(書類の送達)の規定は、この法律の施行後に発送する書類について適用し、この法律の施行前に発送した書類については、なお従前の例による。

2 この法律の施行前に旧法第四条ノ十(公示送達)の規定により公示送達を開始した書類の送達については、なお従前の例による。

 (国税と他の債権との調整等に関する経過措置)

第五条 第十一条(強制換価の場合の内国消費税の優先)及び第四十四条(強制換価の場合の内国消費税の徴収)の規定は、内国消費税の課される物品がこの法律の施行後に強制換価手続により換価される場合について適用する。

2 第十三条(交付要求先着手による国税の優先)、第十五条から第十七条まで(法定納期限等以前に設定された質権及び抵当権の優先)、第十九条から第二十一条まで(特定の先取特権及び留置権の優先)及び第二十六条(国税及び地方税等と私債権との競合の調整)の規定は、この法律の施行後に強制換価手続による配当手続が開始される場合について適用し、この法律の施行前に当該配当手続が開始されている場合における国税と他の債権との調整については、なお従前の例による。

3 第二十二条から第二十五条まで(担保権付財産が譲渡された場合の国税の徴収・国税と仮登記又は譲渡担保に係る債権との調整)の規定は、この法律の施行後に納税者が譲渡し、又は仮登記をした財産について適用する。

4 第二十四条(譲渡担保権者の物的納税責任)の規定は、手形その他政令で定める財産については、当分の間、適用しない。

 (相続があつた場合の納税義務及び徴収の手続に関する経過措置)

第六条 第二十七条(相続による納税義務の承継)の規定は、この法律の施行後に相続があつた場合について適用し、この法律の施行前に相続があつた場合における被相続人の納税義務の承継については、なお従前の例による。

2 第二十八条第四項(納税者の死亡後にした処分の効力)の規定は、この法律の施行後に同項に規定する処分がされた場合について適用する。

 (第二次納税義務に関する経過措置)

第七条 第三十二条第一項(第二次納税義務の告知等)、第三十五条から第三十九条まで(同族会社等の第二次納税義務)並びに第四十一条第二項及び第三項(人格のない社団等に係る第二次納税義務)の規定は、この法律の施行後に滞納となつた国税について適用し、この法律の施行前に滞納となつている国税に係る第二次納税義務の額及びこれを課する手続については、なお従前の例による。

 (督促に関する経過措置)

第八条 この法律の施行の際に滞納となつている国税で旧法第九条第一項(督促)の規定による督促がされていないものについては、第四十五条第一項(督促)中「納期限後」とあるのは、「この法律の施行後」として、同条の規定を適用する。

 (延滞加算税額に関する経過措置)

第九条 昭和三十四年五月一日からこの法律の施行の日の前日までの間に旧法第九条第三項(延滞加算税額)の規定により徴収する延滞加算税額については、その全額が三百円未満であるときは、同条第三項及び第七項の規定にかかわらず、これを徴収しない。

2 この法律の施行前にした督促に係る延滞加算税額の計算については、前項に定めるものを除き、なお従前の例による。

 (差押に関する経過措置)

第十条 この法律の施行前に旧法第九条第一項(督促)の規定により発した督促状の指定の期限がこの法律の施行の日から起算して十日を経過した日(この法律の施行の日において第四十七条第一項第二号(督促を要しない差押)に掲げる場合に該当するときは、同日)後であるときは、第四十七条第一項の規定にかかわらず、その督促状に係る国税については、その指定の期限を経過しなければ、差押をすることができない。

2 第六十条第二項(差押動産等を保管させた場合の差押の効力)の規定は、この法律の施行後にされる差押について適用し、この法律の施行前にされた差押については、なお従前の例による。

 (滞納処分の利害関係人への通知等に関する経過措置)

第十一条 この法律の施行前に旧法の規定に基き差押、公売公告又は滞納処分若しくは徴収の引継があつた場合において、第五十五条各号(差押の通知をする質権者等)又は第九十六条第一項各号(公売の通知をする利害関係人)に掲げる者のうち知れている者及び滞納者でその差押、公売又は当該引継に関しこれらの規定又は第百八十二条第四項(徴収の引継の通知)(第百八十三条第四項(税関長による徴収)又は第百八十四条第二項(更生手続等の開始した場合の徴収の引継)において準用する場合を含む。)の規定による通知又は催告に相当する通知又は催告を受けていないものがあるときは、税務署長、国税局長又は税関長(以下「税務署長等」という。)は、この法律の施行後遅滞なく、これらの規定による通知又は催告をしなければならない。

 (換価及び配当に関する経過措置)

第十二条 この法律の施行前に旧法第二十四条(公売)の規定による公売に関し徴した加入保証金及び契約保証金があるときは、これらを第百条第一項(公売保証金)の規定により納付された公売保証金とみなす。

2 第百十三条から第百十五条まで(不動産等の売却決定・買受申込等の取消・買受代金の納付期限等)、第百三十条から第百三十三条まで(債権額の確認方法・配当計算書・換価代金等の交付期日・換価代金等の交付)及び第百三十五条(売却決定の取消に伴う措置)の規定は、公売期日等がこの法律の施行後である場合について適用し、滞納処分による財産の公売又は売却の日がこの法律の施行前である場合におけるその公売若しくは売却又は配当に関する手続については、なお従前の例による。

3 第百二十七条(法定地上権等の設定)の規定は、この法律の施行後に換価に付する建物又は立木について適用する。

4 第百二十四条第一項後段(担保権の消滅)の規定は、担保の目的でされている仮登記により担保される債権については、この法律の施行後に納税者がした仮登記に係るものについて適用する。

 (財産の調査に関する経過措置)

第十三条 第百四十六条第一項及び第二項(捜索調書の作成)の規定は、この法律の施行後に滞納処分のため捜索する場合について適用する。

 (施行日前に期限が到来する徴収猶予の期限の延長の特例)

第十四条 この法律の公布の日からこの法律の施行の日の前日までの間に旧法第七条第一項又は第二項(徴収猶予)の規定による徴収猶予の期限が到来する国税についてその納税者がその猶予を受けた期間内にその猶予を受けた国税の納付を困難とするやむを得ない理由があると認められるときは、税務署長等は、既にその者につき徴収を猶予した期間と通じて二年以内に限り、その期限を延長することができる。

2 前項の規定による徴収の猶予は、旧法第七条第一項又は第二項の規定による徴収の猶予とみなす。

 (施行日前の公売等の猶予及び利子税額等の免除の特例等)

第十五条 この法律の公布の日からこの法律の施行の日の前日までの間に滞納者で次の各号の一に該当するもの(旧法第十二条ノ二(滞納処分の執行猶予)の規定の適用を受ける者を除く。)が納税につき誠実な意思を有すると認められるときは、税務署長等は、その者の納付すべき国税につき滞換処分による財産の公売又は売却を猶予することができるものとし、その者につき旧法第八条後段(利子税額の免除)に規定する事由があるときは、その猶予した国税に係る利子税額及び延滞加算税額を免除することができる。

 一 その財産の換価を直ちにすることによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあるとき。

 二 その財産の換価を猶予することが、直ちにその換価をすることに比し、滞納に係る国税及び最近において納付すべきこととなる国税の徴収上有利であるとき。

2 前項の規定による猶予は、旧法第十二条ノ二の規定による滞納処分の執行猶予とみなす。

3 この法律の施行前に旧法第十二条ノ二の規定によつてした滞納処分の執行の猶予は、第百五十一条(換価の猶予)の規定による換価の猶予とみなす。

 (還付金に関する経過措置)

第十六条 この法律の施行前に過誤納金その他の国税に関する還付金に係る請求権につき第百六十四条第二項第二号又は第三号(差押等がされた場合の還付加算金の計算上の控除期間)に規定する差押又は仮差押がされているときは、この法律の施行の日にその差押又は仮差押がされたものとして、これらの規定を適用する。

2 第百六十二条第二項(充当の効力)(第百六十五条第一項(国税に関する還付金の充当)において準用する場合を含む。)の規定は、この法律の施行後に同項に規定する充当をするに適することとなつた過誤納金その他の国税に関する還付金について適用する。

 (第三者の取戻請求に関する経過措置)

第十七条 この法律の施行前に旧法第十四条(取戻請求)の規定によつてした申出は、第百六十六条第一項(再調査の請求)又は第百六十七条第一項(始審的審査の請求)の規定によつてした再調査の請求又は審査の請求とみなす。

 (滞納処分に関する再調査の請求等の期限の特例に関する経過措置)

第十八条 第百七十一条(滞納処分に関する再調査の請求等の期限の特例)の規定は、この法律の施行前にした同条第一項各号に掲げる処分に相当する処分については、同項中「当該各号に掲げる期限」とあるのは、この法律の施行の際現にされているものにあつては「当該各号に掲げる期限又はこの法律の施行の日から一月を経過する日のうちいずれか遅い日」とし、その他のものにあつては「国税徴収法(明治三十年法律第二十一号)第三章ノ二の規定により再調査の請求をすることができる日」として適用する。

 (第三者の納付による代位に関する経過措置)

第十九条 第百七十七条第二項(第三者の納付による代位)の規定は、この法律の施行後に第三者が納付した国税について適用する。

 (罰則に関する経過措置)

第二十条 この法律の施行前にした行為及びこの附則の規定により従前の例によることとされるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

(大蔵・内閣総理大臣署名) 

 

 

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