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法律第九十七号(昭三八・六・七)

  ◎石炭鉱害賠償担保等臨時措置法

目次

 第一章 総則(第一条―第三条)

 第二章 鉱害賠償の担保の積立て等(第四条―第十一条)

 第三章 鉱害賠償基金

  第一節 総則(第十二条―第十八条)

  第二節 役員及び職員(第十九条―第二十九条)

  第三節 業務(第三十条―第三十三条)

  第四節 財務及び会計(第三十四条―第四十二条)

  第五節 監督(第四十三条・第四十四条)

  第六節 補則(第四十五条)

 第四章 雑則(第四十六条・第四十七条)

 第五章 罰則(第四十八条―第五十四条)

 附則

    第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、石炭鉱業及び亜炭鉱業による鉱害の賠償を担保し、及び促進することにより、被害者の保護を図り、あわせて石炭鉱業及び亜炭鉱業の健全な発達に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「鉱業権」又は「租鉱権」とは、石炭又は亜炭を目的とする鉱業権又は租鉱権をいい、「鉱業権者」、「採掘権者」又は「租鉱権者」とは、石炭又は亜炭を目的とする鉱業権、採掘権又は租鉱権を有する者をいい、「鉱区」、「採掘鉱区」又は「租鉱区」とは、石炭又は亜炭を目的とする鉱業権、採掘権又は租鉱権の鉱区、採掘鉱区又は租鉱区をいう。

2 この法律において「鉱害」とは、石炭鉱業又は亜炭鉱業による鉱害をいう。

 (行為の効力の承継)

第三条 この法律の規定によつてした処分及び鉱業権者、租鉱権者又は関係人がこの法律の規定によつてした手続その他の行為は、これらの者の相続人その他の一般承継人に対しても、その効力を有する。

   第二章 鉱害賠償の担保の積立て等

 (積立て)

第四条 鉱業権者又は租鉱権者は、毎年度、その鉱区又は租鉱区について第四項又は第五項の規定により通商産業局長が算定する額の金銭(以下「鉱害賠償積立金」という。)の積立てをしなければならない。

2 前項の積立ては、通商産業省令で定めるところにより、鉱害賠償基金(以下「基金」という。)にしなければならない。

3 鉱害賠償積立金は、基金が管理する。

4 鉱業権者の鉱害賠償積立金の額は、当該鉱区に関する鉱害(この法律の施行前に行なわれた作業によるものを除く。以下この章において同じ。)であつて、第一号(当該年度開始前に鉱業権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。以下この条から第七条までにおいて同じ。)があつた場合にあつては、第二号)に掲げる鉱害に相当するもののうち、第三号から第五号まで(当該鉱区に租鉱権の設定があつた場合にあつては、第三号から第六号まで)に掲げる鉱害に相当するもの以外のもの(当該年度開始後に鉱業権の移転があつた場合における鉱業権者の承継人にあつては、その移転の日以後に発生することが予想される当該鉱区に関する鉱害(当該鉱区に租鉱権が設定されている場合にあつては、当該租鉱権者の当該年度の鉱害賠償積立金の額の算定の基礎となつた鉱害に相当するものを除く。))を基礎とし、通商産業大臣の定める基準に従い、その鉱害の賠償に要する費用の額の二分の一をこえない範囲内において通商産業局長が算定して通知する額とする。

 一 当該年度開始前に発生した鉱害及び当該年度開始後に発生することが予想される鉱害

 二 最近の鉱業権の移転の日以後当該年度開始前に発生した鉱害及び当該年度開始後に発生することが予想される鉱害

 三 鉱業権者の当該年度開始前の鉱害賠償積立金の額の算定の基礎となつた鉱害(次号及び第五号(当該鉱区に租鉱権の設定があつた場合にあつては、次号から第六号まで)に掲げる鉱害に相当するものを除く。)

 四 当該年度開始前に賠償債務が消滅した鉱害(当該鉱害に係る賠償請求権が時効により消滅したものを含み、次号(当該鉱区に租鉱権の設定があつた場合にあつては、次号及び第六号)に掲げる鉱害に相当するものを除く。)

 五 臨時石炭鉱害復旧法(昭和二十七年法律第二百九十五号)第二条第二項に規定する復旧工事(以下「復旧工事」という。)であつて当該年度開始前に完了したものにより復旧された鉱害(当該鉱区に租鉱権の設定があつた場合にあつては、次号に掲げる鉱害に相当するものを除く。)

 六 当該鉱区に設定された租鉱権の租鉱権者の当該年度開始前の鉱害賠償積立金の額の算定の基礎となつた鉱害及び当該年度の鉱害賠償積立金の額の算定の基礎となる鉱害(当該租鉱権の消滅(鉱区の減少による場合を除く。)があつた場合にあつては、その消滅の日以後に発生し、又は発生することが予想されるものを除く。)

5 租鉱権者の鉱害賠償積立金の額は、当該租鉱区に関する鉱害であつて、前項第一号に掲げる鉱害に相当するもののうち、租鉱権者の当該年度開始前の鉱害賠償積立金の額の算定の基礎となつた鉱害(同項第四号及び第五号に掲げる鉱害に相当するものを除く。)並びに同項第四号及び第五号に掲げる鉱害に相当するもの以外のもの(当該年度開始後に租鉱権の設定があつた場合における租鉱権者にあつては、その設定の日以後に発生することが予想される当該租鉱区に関する鉱害)を基礎とし、通商産業大臣の定める基準に従い、その鉱害の賠償に要する費用の額の二分の一をこえない範囲内において通商産業局長が算定して通知する額とする。

 (被害者の弁済を受ける権利)

第五条 鉱害に係る被害者は、鉱害賠償請求権に関し、当該鉱区又は租鉱区に係る鉱害賠償積立金であつて基金に積み立てられたもの(次条第一項から第三項までの規定により取りもどすことができる額に相当するものを除く。)につき、他の債権者に優先して弁済を受ける権利を有する。

2 前項の権利の実行に関する手続は、政令で定める。

 (取りもどし)

第六条 鉱業権者又は鉱業権の消滅若しくは移転により鉱業権者でなくなつた者は、その積み立てている鉱害賠償積立金の残額が、当該鉱区に関する鉱害であつて、第一号(鉱業権の移転により鉱業権者でなくなつた者にあつては、第二号)に掲げる鉱害に相当するもののうち、第三号及び第四号(当該鉱区に租鉱権の設定があつた場合にあつては、第三号から第五号まで)に掲げる鉱害に相当するもの以外のものを基礎とし、第四条第四項の規定による鉱害賠償積立金の額の算定の例により、通商産業局長が算定する金額をこえる場合は、そのこえる金額に相当する額の鉱害賠償積立金を取りもどすことができる。

 一 当該年度開始前(当該鉱業権が移転により取得されたものである場合にあつては、その取得の日以後当該年度開始前)に発生した鉱害及び当該年度開始後に発生することが予想される鉱害

 二 鉱業権者でなくなつた日の前日まで(当該鉱業権が移転により取得されたものである場合にあつては、その取得の日以後鉱業権者でなくなつた日の前日まで)に発生した鉱害

 三 当該年度開始前(鉱業権の移転により鉱業権者でなくなつた者にあつては、鉱業権者でなくなつた日の前日まで。以下次号において同じ。)に賠償債務が消滅した鉱害(当該鉱害に係る賠償請求権が時効により消滅したものを含み、次号(当該鉱区に租鉱権の設定があつた場合にあつては、次号及び第五号)に掲げる鉱害に相当するものを除く。)

 四 復旧工事であつて当該年度開始前に完了したものにより復旧された鉱害(当該鉱区に租鉱権の設定があつた場合にあつては、次号に掲げる鉱害に相当するものを除く。)

 五 第四条第四項第六号に掲げる鉱害

2 租鉱権者又は鉱業権の消滅若しくは鉱区の減少による租鉱権の消滅により租鉱権者でなくなつた者は、その積み立てている鉱害賠償積立金の残額が、当該租鉱区に関する鉱害であつて、第四条第四項第一号に掲げる鉱害に相当するもののうち、同項第四号及び第五号に掲げる鉱害に相当するもの以外のものを基礎とし、同条第五項の規定による鉱害賠償積立金の額の算定の例により、通商産業局長が算定する金額をこえる場合は、そのこえる金額に相当する額の鉱害賠償積立金を取りもどすことができる。

3 租鉱権の消滅(鉱業権の消滅又は鉱区の減少による場合を除く。以下同じ。)により租鉱権者でなくなつた者は、その積み立てている鉱害賠償積立金の残額が、当該租鉱区に関する鉱害であつて、その消滅の日までに発生したもののうち、第四条第四項第四号及び第五号に掲げる鉱害に相当するもの以外のものを基礎とし、同条第五項の規定による鉱害賠償積立金の額の算定の例により、通商産業局長が算定する金額をこえる場合は、そのこえる金額に相当する額の鉱害賠償積立金を取りもどすことができる。

4 第四条第一項の積立てをした者は、前三項の規定により鉱害賠償積立金を取りもどすことができる場合を除き、その鉱害賠償積立金を取りもどすことができない。

5 第一項から第三項までの規定により鉱害賠償積立金を取りもどそうとする者は、基金に対して払渡しの請求をしなければならない。

 (権利の承継等)

第七条 鉱業権の移転若しくは租鉱権の設定又は租鉱権の消滅があつた場合において、鉱業権の移転により鉱業権者となつた者若しくは租鉱権者又は租鉱権の消滅に係る鉱区の鉱業権者が、前条第一項又は第三項の規定により鉱業権の移転により鉱業権者でなくなつた者若しくは租鉱権の設定に係る鉱区の鉱業権者又は租鉱権の消滅により租鉱権者でなくなつた者が取りもどすことができる鉱害賠償積立金に関する権利を承継することにつきこれらの者の同意を得て、通商産業省令で定めるところにより通商産業局長に届出をしたときは、その鉱害賠償積立金は、その届出をした者が第四条第一項の規定により積立てをしたものとみなす。

第八条 鉱害賠償積立金に関する権利義務は、相続その他の一般承継があつたときは、鉱業権又は租鉱権とともに移転する。

 (鉱業権の取消し等)

第九条 通商産業局長は、第四条第一項の積立てをしなければならない採掘権者又は租鉱権者が鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)第六十三条第二項(同法第八十七条において準用する場合を含む。)の規定による施業案の認可又はその変更の認可の申請をした場合において、当該採掘権者又は租鉱権者がその積立てをしていないときは、当該採掘鉱区又は租鉱区について同項の認可をしてはならない。

2 通商産業局長は、第四条第一項の積立てをしなければならない鉱業権者又は租鉱権者がその積立てをしていないときは、当該鉱区又は租鉱区について、その事業の停止を命じ、又は鉱業権若しくは租鉱権を取り消すことができる。

3 鉱業法第四十条(命令の手続)の規定は、前項の規定による取消しに準用する。

 (鉱業法の適用除外)

第十条 鉱業法第六章第二節(担保の供託)の規定は、鉱業権者及び租鉱権者並びにこの法律の施行後に鉱業権者でなくなつた者及び租鉱権者でなくなつた者については、適用しない。

 (利息)

第十一条 基金は、通商産業省令で定めるところにより、鉱害賠償積立金に利息を付さなければならない。

   第三章 鉱害賠償基金

    第一節 総則

 (目的)

第十二条 基金は、鉱害の賠償を担保し、及び促進するため、鉱害の賠償のための担保の管理及び鉱害の賠償に必要な資金の貸付けその他の業務を行なうことを目的とする。

 (法人格)

第十三条 基金は、法人とする。

 (事務所)

第十四条 基金は、主たる事務所を東京都に置く。

2 基金は、通商産業大臣の認可を受けて、必要な地に従たる事務所を置くことができる。

 (資本金)

第十五条 基金の資本金は、三億円とし、政府がその全額を出資する。

 (登記)

第十六条 基金は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。

2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

 (名称の使用制限)

第十七条 基金でない者は、鉱害賠償基金という名称を用いてはならない。

 (民法の準用)

第十八条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、基金について準用する。

   第二節 役員及び職員

 (役員)

第十九条 基金に、役員として、理事長一人、理事二人以内及び監事一人を置く。

 (役員の職務及び権限)

第二十条 理事長は、基金を代表し、その業務を総理する。

2 理事は、理事長が定めるところにより、理事長を補佐して基金の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行なう。

3 監事は、基金の業務を監査する。

 (役員の任命及び任期)

第二十一条 理事長及び監事は、通商産業大臣が任命する。

2 理事は、通商産業大臣の認可を受けて、理事長が任命する。

3 役員の任期は、四年とする。

4 役員は、再任されることができる。

 (役員の欠格条項)

第二十二条 次の各号の一に該当する者は、役員となることができない。

 一 国務大臣、国会議員、地方公共団体の議会の議員又は地方公共団体の長

 二 政府又は地方公共団体の職員(非常勤の者を除く。)

 三 政党の役員

 (役員の解任)

第二十三条 通商産業大臣は、理事長又は監事が前条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。

2 理事長は、理事が前条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。

第二十四条 通商産業大臣は、理事長若しくは監事が心身の故障のため職務を執行することができないと認めるとき、又は理事長若しくは監事に職務上の義務違反その他理事長若しくは監事たるに適しない非行があると認めるときは、これを解任することができる。

2 理事長は、理事が心身の故障のため職務を執行することができないと認めるとき、又は理事に職務上の義務違反その他理事たるに適しない非行があると認めるときは、通商産業大臣の認可を受けて、これを解任することができる。

 (役員の兼職禁止)

第二十五条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。

 (代表権の制限)

第二十六条 基金と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合は、監事が基金を代表する。

 (代理人の選任)

第二十七条 理事長は、理事又は基金の職員のうちから、基金の従たる事務所の業務に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。

 (職員の任命)

第二十八条 基金の職員は、理事長が任命する。

 (役員等の地位)

第二十九条 基金の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

   第三節 業務

 (業務の範囲)

第三十条 基金は、第十二条の目的を達成するため、次の業務を行なう。

 一 鉱害の賠償のための担保の管理

 二 鉱害の賠償(復旧工事の施行を含む。)に必要な資金の貸付け

 三 前二号の業務に関連して必要な鉱害復旧事業団の業務の調整

 四 前各号の業務に附帯する業務

 (業務の委託)

第三十一条 基金は、通商産業大臣の認可を受けて、鉱害復旧事業団、石炭鉱業合理化事業団又は金融機関に対し、前項第一号又は第二号に掲げる業務(これらの業務に附帯するものを含む。)の一部を委託することができる。

2 前項の規定による通商産業大臣の認可があつた場合においては、同項に規定する者は、他の法律の規定にかかわらず、当該認可に係る業務を受託することができる。

3 第一項の規定により業務の委託を受けた金融機関の役員又は職員であつて当該委託業務に従事するものは、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

 (業務方法書)

第三十二条 基金は、業務開始の際、業務方法書を作成し、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

2 前項の業務方法書には、鉱害賠償積立金の出納及びその利息に関する事項その他の鉱害の賠償のための担保の管理に関する業務の方法、貸付金の利率、償還期限、すえおき期間、償還の方法、担保に関する事項その他の貸付けに関する業務の方法及び業務の委託の要領等を記載しなければならない。

 (貸付金の償還請求)

第三十三条 基金は、第三十条第二号に規定する資金の貸付けを行なつた場合において、当該貸付けを受けた者が次の各号の一に該当するときは、その者に対し、いつでも、貸付金の全部又は一部の償還を請求することができる。

 一 正当な理由がなくて貸付金の償還を怠つた場合

 二 貸付金を貸付けの目的以外の目的に使用した場合

 三 正当な理由がなくて貸付けの条件に違反した場合その他通商産業省令で定める場合

   第四節 財務及び会計

 (事業年度)

第三十四条 基金の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。

 (予算等の認可)

第三十五条 基金は、毎事業年度、予算、事業計画及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

 (財務諸表)

第三十六条 基金は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に通商産業大臣に提出し、その承認を受けなければならない。

2 基金は、前項の規定により財務諸表を通商産業大臣に提出するときは、これに予算の区分に従い作成した当該事業年度の決算報告書並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見書を添附しなければならない。

 (利益及び損失の処理)

第三十七条 基金は、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。

2 基金は、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。

 (借入金及び鉱害賠償基金債券)

第三十八条 基金は、通商産業大臣の認可を受けて、長期借入金若しくは短期借入金をし、又は鉱害賠償基金債券(以下「債券」という。)を発行することができる。

2 前項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができない金額に限り、通商産業大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。

3 前項ただし書の規定により借り換えた短期借入金は、一年以内に償還しなければならない。

4 基金は、通商産業大臣の認可を受けて、債券の発行、償還、利子の支払その他の債券に関する事務の全部又は一部を銀行又は信託会社に委託することができる。

5 商法(明治三十二年法律第四十八号)第三百九条から第三百十一条まで(受託会社の権限及び義務)の規定は、前項の規定により委託を受けた銀行又は信託会社について準用する。

6 第一項、第四項及び前項に規定するもののほか、債券に関し必要な事項は、政令で定める。

 (準備金)

第三十九条 基金は、積み立てられた鉱害賠償積立金の残額と附則第十条第一項の規定により取りもどした金銭及び国債並びに同条第二項又は第三項の規定により納付された金銭及び国債の残額との合計額に通商産業省令で定める率を乗じて得た金額以上の額の金銭を準備金として資金運用部に預託しておかなければならない。

2 前項の規定により預託している金銭に対し基金が有する権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、国税滞納処分(その例による処分を含む。)による差押えの場合は、この限りでない。

 (余裕金の運用)

第四十条 基金は、次の方法によるほか、業務上の余裕金を運用してはならない。

 一 国債その他通商産業大臣の指定する有価証券の保有

 二 資金運用部への預託

 三 銀行への預金又は郵便貯金

 四 信託会社又は信託業務を行なう銀行への金銭信託

 (給与及び退職手当の支給の基準)

第四十一条 基金は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、通商産業大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

 (通商産業省令への委任)

第四十二条 この法律及びこれに基づく命令に規定するもののほか、基金の財務及び会計に関し必要な事項は、通商産業省令で定める。

   第五節 監督

 (監督)

第四十三条 基金は、通商産業大臣が監督する。

2 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、基金に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。

 (報告及び検査)

第四十四条 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、基金若しくは第三十一条第一項の規定により業務の委託を受けた者(以下「受託者」という。)に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に基金若しくは受託者の事務所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。ただし、受託者に対しては、当該委託業務の範囲内に限る。

2 前項の規定により職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

   第六節 補則

 (大蔵大臣との協議)

第四十五条 通商産業大臣は、次の場合には、大蔵大臣と協議しなければならない。

 一 第三十一条第一項、第三十二条第一項、第三十五条又は第三十八条第一項若しくは第二項ただし書の認可(第三十一条第一項の認可にあつては、金融機関に対し委託する場合におけるものに限る。)をしようとするとき。

 二 第四十二条の通商産業省令を定めようとするとき。

 三 第三十六条第一項又は第四十一条の承認をしようとするとき。

 四 第四十条第一号の規定による指定をしようとするとき。

   第四章 雑則

 (報告及び検査)

第四十六条 通商産業局長は、第四条第四項若しくは第五項若しくは第六条第一項から第三項まで又は附則第十条第三項に規定する算定を行なうため必要があると認めるときは、鉱業権者若しくは租鉱権者若しくは鉱業権者若しくは租鉱権者であつた者に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員にその事務所若しくは事業所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。

2 通商産業局長は、第四条第四項若しくは第五項又は第六条第一項から第三項までに規定する算定を行なうため必要があると認めるときは、土地若しくは建物その他の物件の所有者若しくは占有者又は被害者に対し、必要な報告をさせることができる。

3 第四十四条第二項及び第三項の規定は、第一項の規定による立入検査に準用する。

 (審査請求等についての鉱業法の準用)

第四十七条 鉱業法第百七十一条から第百七十七条まで(聴聞手続等)の規定は、この法律又はこれに基づく命令の規定による通商産業局長の処分についての審査請求に、同法第百八十条(審査請求と訴訟との関係)の規定は、これらの処分の取消しの訴えに準用する。

   第五章 罰則

第四十八条 第九条第二項の規定による命令に違反して事業を停止しなかつた者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。

第四十九条 第四十四条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした基金又は受託者の役員又は職員は、三万円以下の罰金に処する。

第五十条 第四十六条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三万円以下の罰金に処する。

第五十一条 第四十六条第二項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、一万円以下の罰金に処する。

第五十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第四十八条又は前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

第五十三条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした基金の役員又は職員は、三万円以下の過料に処する。

 一 この法律の規定により通商産業大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。

 二 第十六条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。

 三 第三十条に規定する業務以外の業務を行なつたとき。

 四 第三十九条第一項の規定に違反して同項に規定する準備金を預託しておかなかつたとき。

 五 第四十条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。

 六 第四十三条第二項の規定による通商産業大臣の命令に違反したとき。

第五十四条 第十七条の規定に違反して鉱害賠償基金という名称を用いた者は、一万円以下の過料に処する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して三月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第三条及び第四条の規定は、公布の日から施行する。

 (廃止)

第二条 この法律は、昭和四十七年七月三十一日までに廃止するものとする。

 (基金の設立)

第三条 通商産業大臣は、基金の理事長又は監事となるべき者を指名する。

2 前項の規定により指名された理事長又は監事となるべき者は、基金の成立の時において、この法律の規定によりそれぞれ理事長又は監事に任命されたものとする。

第四条 通商産業大臣は、設立委員を命じて、基金の設立に関する事務を処理させる。

2 設立委員は、基金の設立の準備を完了したときは、遅滞なく、政府に対し、出資金の払込みを請求しなければならない。

3 設立委員は、出資金の払込みがあつた日において、その事務を前条第一項の規定により指名された理事長となるべき者に引き継がなければならない。

第五条 附則第三条第一項の規定により指名された理事長となるべき者は、前条第三項の規定による事務の引継ぎを受けたときは、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。

第六条 基金は、前条の規定による設立の登記をすることによつて成立する。

 (経過規定)

第七条 この法律の施行の際現に鉱害賠償基金という名称を用いている者については、第十七条の規定は、この法律の施行後六月間は、適用しない。

第八条 基金の最初の事業年度は、第三十四条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和三十九年三月三十一日に終わるものとする。

第九条 基金の最初の事業年度の予算、事業計画及び資金計画については、第三十五条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「基金の成立後遅滞なく」とする。

第十条 基金は、政令で定めるところにより、この法律の施行の際現に鉱業法第百十七条第一項の規定により供託されている金銭(金銭に代えて供託されている国債並びに鉱業法施行法(昭和二十五年法律第二百九十号)第三十七条の規定により同項の規定により供託されたものとみなされた金銭及び国債を含む。)及びその利息を取りもどすことができる。

2 鉱業権者若しくは租鉱権者又は鉱業権者若しくは租鉱権者であつた者は、鉱業法第百十七条第一項の規定により供託すべき金銭であつてこの法律の施行の日の前日までに供託していないものがあるときは、通商産業省令で定めるところにより、同項の規定による供託に代えてその額に相当する額の金銭を基金に納付しなければならない。この場合において、納付すべき金銭は、その金額に相当する国債をもつて代えることができる。

3 鉱業権者若しくは租鉱権者又は鉱業権者若しくは租鉱権者であつた者は、当該鉱区又は租鉱区に関する損害の賠償を担保するため、通商産業省令で定めるところにより、昭和三十八年一月一日からこの法律の施行の日の前日までに掘採した石炭又は亜炭の数量一トンにつき二十円をこえない範囲内において通商産業局長が鉱区又は租鉱区ごとに算定する額の金銭を基金に納付しなければならない。

4 第一項の規定により取りもどし、又は第二項若しくは前項の規定により鉱業権者若しくは租鉱権者若しくは鉱業権者若しくは租鉱権者であつた者から納付された金銭及び国債は、基金が管理する。

第十一条 鉱業法第五十五条第五号(鉱業権の取消し)、第五十六条及び第八十三条第二項において準用する第四十条(命令の手続)、第八十三条第一項第四号(租鉱権の取消し)並びに第百二十条(事業の停止)の規定は、前条第二項又は第三項の規定により金銭を納付しなければならない者に、同法第百十八条(被害者の権利)、第百十九条(取りもどし)及び第百二十一条(権利の移転)の規定は、前条第四項の規定により基金が管理する金銭及び国債に準用する。

2 鉱業法第九条(権利義務の承継)及び第十条(行為の効力の承継)の規定は、前条第二項及び第三項並びに前項において準用する同法の規定に規定する鉱業権者又は租鉱権者の権利義務並びにこれらの規定によつてした手続その他の行為に準用する。

第十二条 供託法(明治三十二年法律第十五号)第三条及び第四条ただし書(利息等)の規定は、附則第十条第一項又は第二項若しくは第三項の規定により基金が取りもどし、又は基金に納付された金銭又は国債に準用する。

第十三条 附則第十一条第一項において鉱業法第百二十条を準用する場合の違反については、同法第百九十二条及び第百九十四条(罰則)の規定を準用する。

 (登録税法の一部改正)

第十四条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第十九条第七号中「鉱害復旧事業団」の下に「、鉱害賠償基金」を、「臨時石炭鉱害復旧法」の下に「、石炭鉱害賠償担保等臨時措置法」を加える。

 (印紙税法の一部改正)

第十五条 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。

  第五条第六号ノ十一中「鉱害復旧事業団」の下に「又ハ鉱害賠償基金」を加える。

 (所得税法の一部改正)

第十六条 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第三条第一項第十号中「鉱害復旧事業団」の下に「、鉱害賠償基金」を加える。

 (法人税法の一部改正)

第十七条 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。

  第四条第二号中「海外経済協力基金」の下に「、鉱害賠償基金」を加える。

 (地方税法の一部改正)

第十八条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第七十二条の四第一項第二号中「海外経済協力基金」の下に「、鉱害賠償基金」を加える。

(法務・大蔵・通商産業・自治・内閣総理大臣署名) 

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