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法律第百三十九号(昭四五・一二・二五)

  ◎農用地の土壌の汚染防止等に関する法律

 (目的)

第一条 この法律は、農用地の土壌の特定有害物質による汚染の防止及び除去並びにその汚染に係る農用地の利用の合理化を図るために必要な措置を講ずることにより、人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、又は農作物等の生育が阻害されることを防止し、もつて国民の健康の保護及び生活環境の保全に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「農用地」とは、耕作の目的又は主として家畜の放牧の目的若しくは養畜の業務のための採草の目的に供される土地をいう。

2 この法律において「農作物等」とは、農作物及び農作物以外の飼料用植物をいう。

3 この法律において「特定有害物質」とは、カドミウム等その物質が農用地の土壌に含まれることに起因して人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、又は農作物等の生育が阻害されるおそれがある物質(放射性物質を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。

 (農用地土壌汚染対策地域の指定)

第三条 都道府県知事は、当該都道府県の区域内の一定の地域で、その地域内にある農用地の土壌及び当該農用地に生育する農作物等に含まれる特定有害物質の種類及び量等からみて、当該農用地の利用に起因して人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、若しくは当該農用地における農作物等の生育が阻害されると認められるもの又はそれらのおそれが著しいと認められるものとして政令で定める要件に該当するものを農用地土壌汚染対策地域(以下「対策地域」という。)として指定することができる。

2 農林大臣は、前項の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、土壌汚染対策審議会の意見をきかなければならない。

3 都道府県知事は、対策地域を指定しようとするときは、都道府県公害対策審議会及び関係市町村長の意見をきかなければならない。

4 都道府県知事は、対策地域を指定したときは、遅滞なく、農林省令で定めるところにより、その旨を公告するとともに、農林大臣に報告し、かつ、関係市町村長に通知しなければならない。

5 市町村長は、当該市町村の区域内の一定の地域で第一項の政令で定める要件に該当するものを対策地域として指定すべきことを都道府県知事に対し要請することができる。

 (対策地域の区域の変更等)

第四条 都道府県知事は、対策地域の指定の要件となつた事実の変更により必要が生じたときは、その指定に係る対策地域の区域を変更し、又はその指定を解除することができる。

2 前条第三項及び第四項の規定は、前項の規定による対策地域の区域の変更又は対策地域の指定の解除について準用する。

 (農用地土壌汚染対策計画)

第五条 都道府県知事は、対策地域を指定したときは、当該対策地域について、その区域内にある農用地の土壌の特定有害物質による汚染を防止し、若しくは除去し、又はその汚染に係る農用地(以下「汚染農用地」という。)の利用の合理化を図るため、遅滞なく、農用地土壌汚染対策計画(以下「対策計画」という。)を定めなければならない。

2 対策計画においては、農林省令で定めるところにより、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 対策地域の区域内にある農用地についてその土壌の特定有害物質による汚染の程度等を勘案して定める利用上の区分及びその区分ごとの当該農用地の利用に関する基本方針

 二 対策地域の区域内にある農用地に係る次に掲げる事業で必要なものに関する事項

  イ 農用地の土壌の特定有害物質による汚染を防止するためのかんがい排水施設その他の施設の新設、管理又は変更

  ロ 農用地の土壌の特定有害物質による汚染を除去するための客土その他の事業

  ハ 汚染農用地の利用の合理化を図るための地目変換その他の事業

 三 対策地域の区域内にある農用地の土壌の特定有害物質による汚染の状況の調査測定に関する事項

 四 その他必要な事項

3 前項第二号に掲げる事項に係る対策計画は、当該事業に係る農用地の土壌の特定有害物質による汚染の程度、当該事業に要する費用、当該事業の効果及び緊要度等を勘案し、第一項に規定する目的を達成するため必要かつ適切と認められるものでなければならない。

4 都道府県知事は、対策計画を定めようとするときは、農林大臣の承認を受けなければならない。

5 都道府県知事は、前項の承認の申請をしようとするときは、都道府県公害対策審議会及び関係市町村長の意見をきかなければならない。

6 都道府県知事は、対策計画を定めたときは、遅滞なく、その概要を公告するとともに、関係市町村長に通知しなければならない。

 (対策計画の変更)

第六条 都道府県知事は、対策地域の区域の変更により、又は対策地域の区域内にある農用地の土壌の特定有害物質により汚染の状況の変動等により必要が生じたときは、対策計画を変更することができる。

2 前条第三項から第六項までの規定は、前項の規定による対策計画の変更(農林省令で定める軽微な変更を除く。)について準用する。

 (排水基準設定等のための都道府県知事の措置)

第七条 都道府県知事は、対策地域を指定し、又はその区域を変更した場合において、当該対策地域の区域内にある農用地の土壌の特定有害物質による汚染の程度、当該対策地域に係る対策計画の内容等を総合的に勘案して、人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、又は農作物等の生育が阻害されることを防止するため必要があると認めるときは、水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第三条第三項若しくは大気汚染防止法(昭和四十三年法律第九十七号)第四条第一項の規定により、当該農用地に水が流入する公共用水域に排出される排出水に係る排水基準若しくは当該対策地域の全部若しくは一部を含む区域におけるばい煙発生施設において発生するばい煙に係る排出基準を定め、又はこれらの規定により定められた当該排水基準若しくは排出基準を変更するために必要な措置をとるものとする。

 (特別地区の指定等)

第八条 都道府県知事は、対策地域の区域内にある農用地のうちに、その土壌及び当該農用地に生育する農作物等に含まれる特定有害物質の種類及び量等からみて、当該農用地の利用に起因して人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産されると認められる農用地があるときは、当該農用地において作付けをすることが適当でない農作物又は当該農用地に生育する農作物以外の植物で家畜の飼料の用に供することが適当でないもの(以下「指定農作物等」と総称する。)の範囲を定めて、当該農用地の区域を特別地区として指定することができる。

2 都道府県知事は、前項の規定により特別地区を指定したときは、遅滞なく、農林省令で定めるところにより、その旨を公告するとともに、農林大臣に報告し、かつ、関係市町村長に通知しなければならない。

3 市町村長は、当該市町村の区域内にある農用地で第一項に規定する農用地に該当するものを特別地区として指定すべきことを都道府県知事に対し要請することができる。

 (特別地区の区域の変更等)

第九条 都道府県知事は、特別地区の指定の要件となつた事実の変更により必要が生じたときは、その指定に係る特別地区の区域若しくはその区域に係る指定農作物等の範囲を変更し、又は当該特別地区の指定を解除することができる。

2 前条第二項の規定は、前項の規定による特別地区の区域若しくは指定農作物等の範囲の変更又は特別地区の指定の解除について準用する。

 (農作物等の作付け等に関する勧告)

第十条 都道府県知事は、特別地区の区域内にある農用地において当該農用地に係る指定農作物等の作付けをし、若しくはしようとし、又は当該農用地に生育している当該指定農作物等を家畜の飼料の用に供し、若しくは供しようとしている者がある場合には、その者に対し、当該農用地において当該指定農作物等の作付けをしないよう、又は当該農用地に生育している当該指定農作物等を家畜の飼料の用に供しないよう勧告することができる。

 (農用地の土壌の汚染の防止に関する措置の要請)

第十一条 農林大臣は、農用地の土壌が工場又は事業場から排出される排出水、ばい煙等に含まれる特定有害物質により汚染されることを防止するため特に必要があると認めるときは、水質汚濁防止法、大気汚染防止法、鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)その他の法令の規定に基づきその防止のために必要な措置をとるべきことを、関係行政機関の長に対し要請し、又は関係地方公共団体の長に勧告するものとする。

 (農用地の土壌の汚染に関する調査測定等)

第十二条 都道府県知事は、当該都道府県の区域内の農用地の土壌の特定有害物質による汚染の状況に関し、調査測定を実施し、その結果を公表するものとする。

 (土壌汚染対策審議会)

第十三条 農林省に、土壌汚染対策審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、この法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理するほか、農林大臣の諮問に応じ、農用地の土壌の特定有害物質による汚染の防止及び除去並びにその汚染に係る農用地の利用の合理化に関する重要事項を調査審議する。

3 審議会は、前項に規定する重要事項に関し、農林大臣に意見を述べることができる。

第十四条 審議会は、委員二十人以内で組織する。

2 委員は、学識経験を有する者及び農林省その他の関係行政機関の職員のうちから農林大臣が任命する。

3 委員は、非常勤とする。

4 前三項に規定するもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

 (立入調査等)

第十五条 農林大臣又は都道府県知事は、農用地の土壌の特定有害物質による汚染の状況を調査測定するため必要があるときは、その必要の限度において、その職員に、農用地に立ち入り、土壌若しくは農作物等につき調査測定させ、又は調査測定のため必要な最少量に限り土壌若しくは農作物等を無償で集取させることができる。

2 前項の規定により立ち入ろうとする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。

 (関係行政機関等の協力)

第十六条 農林大臣は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対し、必要な資料又は情報の提供、意見の開陳その他の協力を求めることができる。

2 都道府県知事は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対し、必要な資料の提供その他の協力を求め、又は農用地の土壌の特定有害物質による汚染の防止に関し意見を述べることができる。

 (国及び都道府県の援助)

第十七条 国及び都道府県は、対策計画の達成のために必要な助成、指導その他の援助を行なうように努めるものとする。

 (研究の推進等)

第十八条 国及び都道府県は、農用地の土壌の特定有害物質による汚染の防止及び除去に関する技術並びにその汚染が農作物等に及ぼす影響について研究を推進し、その成果の普及に努めるものとする。

 (罰則)

第十九条 第十五条第一項の規定による調査測定又は集取を拒み、妨げ、又は忌避した者は、三万円以下の罰金に処する。

2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同項の刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して六月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (農林省設置法の一部改正)

2 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。

  第九条第一項第十四号の次に次の一号を加える。

  十四の二 農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(昭和四十五年法律第百三十九号)の施行に関する事務を処理すること。

  第三十四条第一項の表中特殊地域農業振興対策審議会の項の次に次のように加える。

土壌汚染対策審議会

農用地の土壌の汚染防止等に関する法律によりその権限に属させた事項を行なうこと。

(農林・内閣総理大臣署名) 

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