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法律第九十六号 (昭五〇・一二・二七)

  ◎石油備蓄法

 (目的)

第一条 この法律は、石油の備蓄を確保するための措置を講ずることにより、我が国への石油の供給が不足する事態が生じた場合において石油の安定的な供給を確保し、もつて国民生活の安定と国民経済の円滑な運営に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「石油」とは、原油及び石油製品をいう。

2 この法律において「石油製品」とは、揮発油、燈油、軽油その他の炭化水素油であつて、通商産業省令で定めるものをいう。

3 この法律において「石油精製業者」とは、石油製品の製造(石油製品以外の物品の製造工程における技術的理由による石油製品の副生を除く。第十一条第一項において同じ。)の事業を行う者であつて、石油製品の生産量について通商産業省令で定める要件に該当するものをいう。

4 この法律において「石油販売業者」とは、石油の販売の事業を行う者(石油精製業者であるものを除く。)であつて、石油の販売量及び石油精製業者との取引関係について通商産業省令で定める要件に該当するものをいう。

5 この法律において「石油輸入業者」とは、石油の輸入の事業を行う者(石油精製業者又は石油販売業者であるものを除く。)であつて、石油の輸入量について通商産業省令で定める要件に該当するものをいう。

 (国の施策)

第三条 国は、我が国への石油の供給が不足する事態に備えて行う石油の保有(以下「石油の備蓄」という。)が、その事態が生じた場合における国民生活の安定と国民経済の円滑な運営の確保に欠くことのできないものであることにかんがみ、石油貯蔵施設についての保安の確保に配意しつつこの法律による石油の備蓄の円滑化を図るための施策を講ずるとともに、石油の備蓄の確保の必要性について国民の理解を深めるよう努めなければならない。

 (石油備蓄目標)

第四条 通商産業大臣は、毎年度、石油審議会の意見を聴いて、通商産業省令で定めるところにより、次年度以降の四年間についての石油の備蓄の目標(以下「石油備蓄目標」という。)を定めなければならない。

2 石油備蓄目標に定める事項は、次のとおりとする。

 一 石油の備蓄の数量に関する事項

 二 新たに設置すべき石油貯蔵施設に関する事項

3 通商産業大臣は、石油の需給事情その他の経済事情の著しい変動のため特に必要があると認めるときは、石油審議会の意見を聴いて、石油備蓄目標を変更するものとする。

4 通商産業大臣は、石油備蓄目標を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを告示するものとする。

 (石油備蓄実施計画)

第五条 石油精製業者、石油販売業者又は石油輸入業者(以下「石油精製業者等」という。)は、毎年度、通商産業省令で定めるところにより、次年度以降の四年間についての石油の備蓄に関する計画(以下「石油備蓄実施計画」という。)を作成し、これを通商産業大臣に届け出なければならない。これを変更したときも、同様とする。

2 石油備蓄実施計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

 一 石油の備蓄の数量に関する事項

 二 新たに設置しようとする石油貯蔵施設に関する事項

3 通商産業大臣は、第一項の規定による届出があつた場合において、石油備蓄目標を達成するため特に必要があると認めるときは、当該石油精製業者等に対し、その石油備蓄実施計画を変更すべきことを勧告することができる。

 (生産量等の届出)

第六条 石油精製業者等は、毎年、二月十五日までに、通商産業省令で定めるところにより、その前年の石油製品の生産量又は石油の販売量若しくは輸入量その他通商産業省令で定める事項を通商産業大臣に届け出なければならない。

 (基準備蓄量等)

第七条 通商産業大臣は、毎年、三月十五日までに、石油精製業者等に対し、基準備蓄量(その年の四月一日を初日とする年度において石油精製業者等が常時保有すべきものとして、石油精製業者等のその前年の石油製品の生産量又は石油の販売量若しくは輸入量を基礎として通商産業省令で定めるところにより算定される石油製品の数量をいう。以下同じ。)を通知するものとする。

2 石油精製業者等は、基準備蓄量(次条第一項若しくは第二項又は第九条第一項の規定による変更があつたときは、当該期間内においてはその変更後のものとする。第十条において同じ。)以上の石油製品を通商産業省令で定めるところにより常時保有しなければならない。

3 前項の場合において、石油精製業者等は、原油をもつて石油製品に代えることができる。この場合における原油の数量の石油製品の数量への換算の方式は、通商産業省令で定める。

4 第一項の通商産業省令は、算定されるべき基準備蓄量を合計した数量の通商産業省令で定めるところにより算定される当該前年の我が国の石油の消費量に対する割合がおおむね三百六十五分の七十から三百六十五分の九十までの範囲内にあるように定められるものとする。

第八条 通商産業大臣は、災害その他やむを得ない事由により、基準備蓄量に相当する数量の石油を前条第二項の通商産業省令で定めるところにより保有することが困難となつた石油精製業者等の申出があつたときは、期間を定めて、基準備蓄量を減少することができる。

2 通商産業大臣は、我が国への石油の供給が不足する事態等が生じた場合において、石油の安定的な供給を確保するため特に必要があると認めるときは、期間を定めて、基準備蓄量を減少するものとする。

3 通商産業大臣は、前二項の規定により基準備蓄量を減少したときは、当該石油精製業者等に対し、その旨を通知するものとする。

第九条 石油精製業者等は、他の石油精製業者等がその基準備蓄量を増加する場合に限り、通商産業省令で定めるところにより、通商産業大臣の承認を受けて、自己の基準備蓄量についてその増加された数量に相当する数量を減少することができる。

2 通商産業省令で定める取引関係にある二以上の石油精製業者等は、通商産業省令で定めるところにより、通商産業大臣に申し出て、その旨の確認を受けることができる。

 (勧告及び命令)

第十条 通商産業大臣は、石油精製業者等の石油保有量(石油精製業者等が第七条第二項の通商産業省令で定めるところにより保有する石油製品の数量とその石油精製業者等がその通商産業省令で定めるところにより保有する原油の数量を同条第三項の通商産業省令で定める方式で石油製品の数量に換算した数量とを合計した数量をいう。以下この条において同じ。)が基準備蓄量に達していない場合において、その達していないことについて正当な理由がないと認めるときは、その石油精製業者等に対し、期限を定めて、第七条第二項の規定に従つて石油を保有すべきことを勧告することができる。ただし、その石油精製業者等が前条第二項の規定による確認を受けている場合において、その石油精製業者等及びその石油精製業者等とともにその確認を受けている他の石油精製業者等の石油保有量を合計した数量がこれらの者の基準備蓄量を合計した数量以上であるときは、この限りでない。

2 通商産業大臣は、前項本文に規定する場合において、石油保有量が基準備蓄量に達していない程度又は石油保有量が基準備蓄量に達していない期間が通商産業省令で定める基準に該当すると認めるときは、当該石油精製業者等に対し、期限を定めて、第七条第二項の規定に従つて石油を保有すべきことを命ずることができる。

3 第一項ただし書の規定は、前項の場合に準用する。

 (地位の承継等)

第十一条 石油精製業者等が石油製品の製造若しくは石油の販売若しくは輸入の事業(以下この項において単に「事業」という。)の全部を譲渡し、又は石油精製業者等について相続若しくは合併があつたときは、事業の全部を譲り受けた者又は相続人(相続人が二人以上ある場合において、その全員の同意により事業を承継すべき相続人を選定したときは、その者)若しくは合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人は、その石油精製業者等のこの法律の規定による地位を承継する。

2 前項の規定により石油精製業者等の地位を承継した者は、遅滞なく、その事実を証する書面を添えて、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。

3 第一項の規定により石油精製業者等の地位を承継した者についての第六条の規定の適用に関する技術的読替えについては、通商産業省令で必要な規定を設けることができる。

 (帳簿の記載)

第十二条 石油精製業者等は、通商産業省令で定めるところにより、帳簿を備え、保有する石油の数量その他通商産業省令で定める事項を記載し、これを保存しなければならない。

 (報告徴収及び立入検査)

第十三条 通商産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、石油精製業者等に対し、その業務に関し報告させ、又はその職員に、石油精製業者等の事務所、工場その他の事業場に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (適用除外期間)

第十四条 石油需給適正化法(昭和四十八年法律第百二十二号)第二十条第一項に規定する期間においては、第四条から前条までの規定は、適用しない。

2 前項に規定する期間の経過後における第四条から前条までの規定の適用に関する経過措置に関する事項については、政令で必要な規定を設けることができる。

3 第一項の規定は、同項に規定する期間の開始前にした行為に対する罰則の適用について影響を及ぼすものと解釈してはならない。

 (罰則)

第十五条 第十条第二項の規定による命令に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。

第十六条 次の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。

 一 第五条第一項又は第六条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者

 二 第十二条の規定に違反して、帳簿を備えず、帳簿に記載をせず、若しくは虚偽の記載をし、又は帳簿を保存しなかつた者

 三 第十三条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

第十七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。

第十八条 第十一条第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、三万円以下の過料に処する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して四月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第十条及び第十二条の規定は、昭和五十一年十月一日から施行する。

 (経過措置)

第二条 昭和五十年の石油製品の生産量又は石油の販売量若しくは輸入量その他通商産業省令で定める事項についての第六条の規定の適用については、同条中「毎年、二月十五日」とあるのは、「昭和五十一年五月十五日」とする。

2 昭和五十一年度の基準備蓄量についての第七条第一項の規定の適用については、同項中「毎年、三月十五日」とあるのは、「昭和五十一年六月十五日」とする。

(通商産業・内閣総理大臣署名) 

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