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法律第三十四号(昭五九・五・一八)

  ◎地力増進法

 (目的)

第一条 この法律は、地力の増進を図るための基本的な指針の策定及び地力増進地域の制度について定めるとともに、土壌改良資材の品質に関する表示の適正化のための措置を講ずることにより、農業生産力の増進と農業経営の安定を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律で「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいう。

2 この法律で「地力」とは、土壌の性質に由来する農地の生産力をいう。

 (地力増進基本指針)

第三条 農林水産大臣は、地力の増進を図るための農業者及びその組織する団体(以下「農業者等」という。)に対する基本的な指針(以下「地力増進基本指針」という。)を定めなければならない。

2 地力増進基本指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 土壌の性質の基本的な改善目標

 二 土壌の性質を改善するための資材の施用に関する基本的な事項

 三 前号に掲げるもののほか、耕うん整地その他地力の増進に必要な営農に関する基本的な事項

 四 その他地力の増進に関する重要事項

3 農林水産大臣は、地力増進基本指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

 (地力増進地域の指定等)

第四条 都道府県知事は、次に掲げる基準に適合すると認められる地域を地力増進地域として指定することができる。

 一 その地域の農地がおおむね不良農地(土壌の性質が不良であると認められる農地をいう。以下同じ。)から成り、かつ、その地域の農地の面積が農林水産省令で定める面積以上であること。

 二 その地域内の不良農地について営農上の方法により地力を増進することが技術的及び経済的に可能であること。

2 都道府県知事は、事項の規定による指定をしようとするときは、あらかじめ、関係市町村の意見を聴かなければならない。

3 都道府県知事は、第一項の規定による指定をしたときは、遅滞なく、その旨を公表しなければならない。

4 前二項の規定は、地力増進地域の指定の解除について準用する。

 (対策調査)

第五条 都道府県は、農林水産省令で定める基準に従い、地力増進地域について、地力の増進を図る上で必要な事項を明らかにするための調査(以下「対策調査」という。)を行うものとする。

 (地力増進対策指針)

第六条 都道府県知事は、対策調査の結果に基づき、地力増進地域について、地力の増進を図るための農業者等に対する指針(以下「地力増進対策指針」という。)を定めなければならない。

2 地力増進対策指針には、次に掲げる事項を定めるものとし、その内容は、地力増進基本指針の内容に即するものでなければならない。

 一 土壌の性質

 二 土壌の性質の改善目標

 三 土壌の性質を改善するための資材の施用に関する事項

 四 前号に掲げるもののほか、耕うん整地その他地力の増進に必要な営農に関する事項

 五 その他地力の増進を図るために必要な事項

3 都道府県知事は、地力増進対策指針を定めようとするときは、あらかじめ、関係市町村及び関係農業者の組織する団体の意見を聴かなければならない。

4 都道府県知事は、地力増進対策指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

5 前二項の規定は、地力増進対策指針の変更について準用する。

 (助言、指導等)

第七条 都道府県は、地力増進対策指針に即し、地力増進地域の農業者等に対し、地力の増進を図るために必要な助言及び指導を行うものとする。

2 都道府県知事は、地力増進地域の農業者が地力増進対策指針に即した営農を行わないため、地力の増進が著しく阻害されていると認められるときは、当該農業者に対し、当該地力増進対策指針に即した営農を行うよう勧告することができる。

 (改善状況調査)

第八条 都道府県は、地力増進対策指針に即した地力の増進を図るため必要があると認められる場合又は農業者等から請求を受けた場合(農林水産省令で定める基準に適合すると認められる場合に限る。)において、農林水産省令で定める基準に従い、地力増進地域の農地の土壌の性質の改善状況についての調査(以下「改善状況調査」という。)を行うものとする。

 (立入調査)

第九条 都道府県知事は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、その職員に、農地に立ち入り、土壌又は農作物につき調査させることができる。この場合において、その職員は、あらかじめ、当該農地の占有者に通知しなければならない。

2 前項の規定により農地に立ち入ろうとする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

 (援助)

第十条 国は、都道府県に対し、対策調査、地力増進対策指針の策定、改善状況調査その他地力の増進に関する施策の実施に必要な指導、助成その他の援助を行うよう努めるものとする。

 (土壌改良資材の表示の基準)

第十一条 農林水産大臣は、植物の栽培に資するため土壌の性質に変化をもたらすことを目的として土地に施される物(肥料取締法(昭和二十五年法律第百二十七号)第二条第一項に規定する肥料にあつては、植物の栄養に供すること又は植物の栽培に資するため土壌に化学的変化をもたらすことと併せて土壌に化学的変化以外の変化をもたらすことを目的として土地に施される物に限る。以下「土壌改良資材」という。)のうち、その消費者が購入に際し品質を識別することが著しく困難であり、かつ、地力の増進上その品質を識別することが特に必要であるためその品質に関する表示の適正化を図る必要があるものとして政令で定める種類のものについて、その種類ごとに、次に掲げる事項につき表示の基準となるべき事項を定め、これを告示するものとする。

 一 原料、用途、施用方法その他品質に関し表示すべき事項

 二 表示の方法その他前号に掲げる事項の表示に際して土壌改良資材を業として製造(配合、加工及び採取を含む。)する者(以下「製造業者」という。)又は土壌改良資材を業として販売する者(以下「販売業者」という。)が遵守すべき事項

2 都道府県知事は、土壌改良資材の種類を示して、前項の表示の基準となるべき事項を定めるべき旨を農林水産大臣に申し出ることができる。

 (指示等)

第十二条 農林水産大臣は、前条第一項の規定により告示された同項第一号に掲げる事項(以下「表示事項」という。)を表示せず、又は同項の規定により告示された同項第二号に掲げる事項(以下「遵守事項」という。)を遵守しない製造業者又は販売業者があるときは、当該製造業者又は販売業者に対して、表示事項を表示し、又は遵守事項を遵守すべき旨の指示をすることができる。

2 農林水産大臣は、前項の指示に従わない製造業者又は販売業者があるときは、その旨を公表することができる。

 (表示に関する命令)

第十三条 農林水産大臣は、第十一条第一項の規定により表示の基準となるべき事項が定められた種類の土壌改良資材の品質に関する表示の適正化を図るため特に必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、農林水産省令で、製造業者又は販売業者に対し、当該土壌改良資材に係る表示事項について表示をする場合には、当該表示事項に係る遵守事項に従つてすべきことを命ずることができる。

第十四条 農林水産大臣は、第十一条第一項の規定により表示の基準となるべき事項が定められた種類の土壌改良資材について、表示事項が表示されていないものが広く販売されており、これを放置しては土壌改良資材の消費者の利益を著しく害すると認めるときは、政令で定めるところにより、農林水産省令で、製造業者又は販売業者に対し、当該土壌改良資材に係る表示事項を表示したものでなければ販売し、又は販売のために陳列してはならないことを命ずることができる。

2 農林水産大臣は、前項の規定による命令をする場合には、当該表示事項に関し、現に前条の規定による命令をしている場合を除き、あわせて同条の規定による命令をしなければならない。

 (命令の変更又は取消し)

第十五条 農林水産大臣は、前二条の規定による命令をした後において、その命令をする要件となつた事実が変更し、又は消滅したと認めるときは、その命令を変更し、又は取り消さなければならない。

 (報告及び立入検査)

第十六条 農林水産大臣は、この法律の施行に必要な限度において、製造業者若しくは販売業者から報告を徴し、又はその職員に、これらの者の工場、事業場、店舗、営業所、事務所若しくは倉庫に立ち入り、土壌改良資材、その原料、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (協議)

第十七条 農林水産大臣は、第十一条第一項の規定により表示の基準となるべき事項を定め、又は第十三条若しくは第十四条第一項の規定による命令をし、若しくは第十五条の規定による命令の変更若しくは取消しをしようとするときは、当該表示の基準となるべき事項又は当該命令に係る土壌改良資材の製造の事業を所管する大臣(農林水産大臣を除く。)に協議しなければならない。

 (経過措置)

第十八条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

 (罰則)

第十九条 第十三条又は第十四条第一項の規定による命令に違反した者は、二十万円以下の罰金に処する。

第二十条 第十六条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、十万円以下の罰金に処する。

 (両罰規定)

第二十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。

   附 則

1 この法律は、昭和五十九年九月一日から施行する。ただし、第十一条から第二十一条までの規定は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

2 耕土培養法(昭和二十七年法律第二百三十五号)は、廃止する。

(農林水産・内閣総理大臣署名) 

 

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