法律第八十五号(昭五九・一二・二五)
第一条 日本電信電話株式会社(以下「会社」という。)は、国内電気通信事業を経営することを目的とする株式会社とする。
2 政府は、常時、会社の発行済株式の総数の三分の一以上に当たる株式を保有していなければならない。
3 会社は、新株を発行しようとするときは、郵政大臣の認可を受けなければならない。転換社債又は新株引受権附社債を発行しようとするときも、同様とする。
第五条 政府の保有する会社の株式の処分は、その年度の予算をもつて国会の議決を経た限度数の範囲内でなければならない。
第六条 会社でない者は、その商号中に日本電信電話株式会社という文字を用いてはならない。
第八条 会社の社債権者は、会社の財産について他の債権者に先だつて自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2 前項の先取特権の順位は、民法(明治二十九年法律第八十九号)の規定による一般の先取特権に次ぐものとする。
第九条 会社の取締役及び監査役の選任及び解任の決議は、郵政大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
第十条 会社の定款の変更、利益の処分、合併及び解散の決議は、郵政大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
第十一条 会社は、毎営業年度の開始前に、その営業年度の事業計画を定め、郵政大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
第十二条 会社は、毎営業年度終了後三月以内に、その営業年度の貸借対照表、損益計算書及び営業報告書を郵政大臣に提出しなければならない。
第十三条 会社は、電気通信幹線路及びこれに準ずる重要な電気通信設備を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、郵政大臣の認可を受けなければならない。
2 郵政大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、監査役を指名して、特定の事項を監査させ、当該監査の結果を報告させることができる。
3 監査役は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、郵政大臣に意見を提出することができる。
第十五条 会社は、郵政大臣がこの法律の定めるところに従い監督する。
2 郵政大臣は、この法律を施行するため特に必要があると認めるときは、会社に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
第十六条 郵政大臣は、この法律を施行するため必要な限度において、会社からその業務に関する報告を徴することができる。
第十九条 前条各項の場合において、犯人が収受したわいろは、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
第二十条 第十八条各項に規定するわいろを供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。
第二十一条 第十八条の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第四条の例に従う。
第二十二条 次の各号に掲げる違反があつた場合においては、その違反行為をした会社の取締役又は監査役は、百万円以下の罰金に処する。
一 この法律により郵政大臣の認可を受けなければならない場合において、その認可を受けなかつたとき。
四 第十二条の規定に違反して、貸借対照表、損益計算書若しくは営業報告書を提出せず、又は不実の記載をしたこれらの書類を提出したとき。
六 第十六条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
第二十三条 第六条の規定に違反した者は、二十万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の罰金刑を科する。
第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、附則第十一条及び第十二条の規定は、昭和六十年四月一日から施行する。
第二条 政府は、会社の成立の日から五年以内に、この法律の施行の状況及びこの法律の施行後の諸事情の変化等を勘案して会社の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
第三条 郵政大臣は、設立委員を命じ、会社の設立に関して発起人の職務を行わせる。
2 設立委員は、定款を作成して、郵政大臣の認可を受けなければならない。
3 郵政大臣は、前項の認可をしようとするときは、大蔵大臣に協議しなければならない。
4 会社の設立に際して発行する株式に関する商法第百六十八条ノ二各号に掲げる事項は、定款で定めなければならない。
6 会社の設立に際して発行する株式の総数は、日本電信電話公社(以下「公社」という。)が引き受けるものとし、設立委員は、これを公社に割り当てるものとする。
7 前項の規定により割り当てられた株式による会社の設立に関する株式引受人としての権利は、政府が行使する。
8 公社は、会社の設立に際し、会社に対し、その財産の全部を出資するものとする。この場合においては、日本電信電話公社法(昭和二十七年法律第二百五十号)第六十八条の規定は、適用しない。
10 第八項の規定により公社が行う出資に係る給付は、附則第十一条の規定の施行の時に行われるものとし、会社は、商法第五十七条の規定にかかわらず、その時に成立する。
11 会社は、商法第百八十八条第一項の規定にかかわらず、会社の成立後遅滞なく、その設立の登記をしなければならない。
12 公社が出資によつて取得する会社の株式は、会社の成立の時に、政府に無償譲渡されるものとする。
13 商法第百六十七条、第百六十八条第二項及び第百八十一条の規定は、会社の設立については、適用しない。
第四条 公社は、会社の成立の時において解散するものとし、その一切の権利及び義務は、その時において会社が承継する。
3 第一項の規定により公社が解散した場合における解散の登記については、政令で定める。
2 前項の電信電話債券は、第七条及び第八条の規定の適用については、社債とみなす。
第六条 会社の成立の際現に公社の職員である者は、会社の成立の時に会社の職員となるものとする。
2 前項の規定により公社の職員が会社の職員となる場合においては、その者に対しては、国家公務員等退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)に基づく退職手当は、支給しない。
3 会社は、前項の規定の適用を受けた会社の職員の退職に際し、退職手当を支給しようとするときは、その者の公社の職員としての引き続いた在職期間を会社の職員としての在職期間とみなして取り扱うべきものとする。
第七条 第六条の規定は、この法律の施行の際現にその商号中に日本電信電話株式会社という文字を用いている者については、この法律の施行後六月間は、適用しない。
第八条 会社の成立する日の属する営業年度の事業計画については、第十一条中「毎営業年度の開始前に」とあるのは、「会社の成立後遅滞なく」とする。
第九条 会社の附則第三条第八項の規定により公社が行う出資に係る不動産又は自動車の取得に対しては、不動産取得税若しくは土地の取得に対して課する特別土地保有税又は自動車取得税を課することができない。
6 附則第三条第十一項の規定により会社が受ける設立の登記及び同条第八項の規定により公社が行う出資に係る財産の給付に伴い会社が受ける登記又は登録については、登録免許税を課さない。
8 前項に規定するもののほか、会社の設立に伴う会社に対する法人税に関する法令の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
第十条 附則第三条から前条までに規定するもののほか、会社の設立及び公社の解散に関し必要な事項は、政令で定める。
二 日本電信電話公社法施行法(昭和二十七年法律第二百五十一号)
第十二条 前条の規定の施行前に同条の規定による廃止前の日本電信電話公社法(以下「旧法」という。)の規定によりした処分、手続その他の行為は、この法律の相当規定によりした処分、手続その他の行為とみなす。
3 前条の規定の施行の日の前日までの期間について公社に勤務する職員に支給する給与についての旧法の規定の適用については、なお従前の例による。
5 旧法第六十九条に規定する現金出納職員又は旧法第七十条に規定する総裁により物品の管理をする職員として任命された者の前条の規定の施行前の事実に基づく弁償責任については、なお従前の例による。
6 旧法第七十三条に規定する公社の会計に係る会計検査院の検査については、なお従前の例による。
7 前条の規定の施行前に生じた事故に基づく公社の職員の業務上の災害又は通勤による災害に対する補償については、なお従前の例による。
8 前条の規定の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
9 前各項に規定するもののほか、日本電信電話公社法の廃止に伴い必要な経過措置は、政令で定める。
(大蔵・郵政・内閣総理大臣署名)