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法律第九十九号(昭六三・一二・二三)

  ◎遊漁船業の適正化に関する法律

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 遊漁船業の届出等(第三条―第六条)

 第三章 遊漁船業の健全な発達を図るための措置

  第一節 全国遊漁船業協会(第七条―第十一条)

  第二節 適正営業規程(第十二条―第十五条)

  第三節 遊漁船業団体(第十六条―第十八条)

 第四章 雑則(第十九条―第二十二条)

 第五章 罰則(第二十三条―第二十七条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、遊漁船業を営む者の業務の適正な運営を確保するとともに、その組織する団体の適正な活動を促進し遊漁船業の健全な発達を図るため必要な措置を定めることにより、遊漁船の利用者の安全の確保及び利便の増進並びに漁場の安定的な利用関係の確保に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「遊漁船業」とは、船舶により乗客を漁場(海面及び農林水産大臣が定める内水面に属するものに限る。)に案内し、釣りその他の農林水産省令で定める方法により魚類その他の水産動植物を採捕させる事業をいう。

2 この法律において「遊漁船」とは、遊漁船業の用に供する船舶をいう。

   第二章 遊漁船業の届出等

 (遊漁船業の届出)

第三条 遊漁船業を営もうとする者は、あらかじめ、その営業所ごとに、農林水産省令で定めるところにより、当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事に、次に掲げる事項を記載した届出書を提出しなければならない。この場合において、当該届出書には、農林水産省令で定める書類を添付しなければならない。

 一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名

 二 営業所の名称及び所在地

 三 主たる漁場の位置

 四 遊漁船の名称及び主たる係留場所

 五 事故が発生した場合における連絡方法等に関する事項

 六 遊漁船の利用者(以下単に「利用者」という。)に生じた損害を賠償するための保険契約(これに類する共済に係る契約で農林水産省令で定めるものを含む。)を締結している場合にあつては、その旨

 七 その他農林水産省令で定める事項

2 前項の届出書を提出した者(以下「遊漁船業者」という。)は、当該届出書に係る営業所を廃止したとき、又は同項各号に掲げる事項に変更があつたときは、農林水産省令で定めるところにより、遅滞なく、同項の都道府県知事に、農林水産省令で定める事項を記載した届出書を提出しなければならない。この場合において、当該届出書には、農林水産省令で定める書類を添付しなければならない。

 (気象情報の収集等)

第四条 遊漁船業者は、遊漁船の出航前に、利用者の安全を確保するため必要な気象及び海象に関する情報を収集しなければならない。

2 遊漁船業者は、前項の情報から判断して利用者の安全の確保が困難であると認めるときは、遊漁船を出航させてはならない。

 (利用者名簿)

第五条 遊漁船業者は、農林水産省令で定めるところにより、営業所ごとに、利用者名簿を備え置き、これに利用者の氏名、住所その他農林水産省令で定める事項を記載しなければならない。

 (利用者の安全の確保のための措置)

第六条 前二条に規定するもののほか、利用者の安全を確保するため必要な限度において、農林水産省令で、事故が発生した場合における連絡体制の整備、利用者が遵守すべき事項の掲示その他の遊漁船業者が遵守すべき事項を定めることができる。

2 都道府県知事は、遊漁船業者が前項の農林水産省令で定める事項を遵守していないと認めるときは、当該遊漁船業者に対し、その是正のために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

   第三章 遊漁船業の健全な発達を図るための措置

    第一節 全国遊漁船業協会

 (指定等)

第七条 農林水産大臣は、利用者の利便の増進及び漁場の安定的な利用関係の確保の見地から遊漁船業の健全な発達を図ることを目的として設立された民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の法人であつて、次条第一項各号に掲げる業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申出により、全国に一を限つて、全国遊漁船業協会(以下「全国協会」という。)として指定することができる。

2 全国協会は、その名称中に全国遊漁船業協会という文字を用いなければならない。

3 農林水産大臣は、第一項の指定をしたときは、全国協会の名称及び事務所の所在地を官報で公示しなければならない。

4 全国協会は、その事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を農林水産大臣に届け出なければならない。

5 農林水産大臣は、前項の規定による届出があつたときは、その旨を官報で公示しなければならない。

 (業務)

第八条 全国協会は、次の各号に掲げる業務を行うものとする。

 一 第十二条第一項に規定する適正営業規程を作成すること。

 二 第十二条第一項に規定する適正営業規程に関し遊漁船業者の登録を行うこと。

 三 遊漁船業に関する情報又は資料を収集し、及び提供すること。

 四 遊漁船業に関する調査研究を行うこと。

 五 前各号の業務に附帯する業務

2 全国協会は、農林水産大臣の承認を受けて、前項第二号の業務に関し手数料を徴収することができる。

3 全国協会は、農林水産省令で定めるところにより、農林水産大臣の承認を受けて、第一項第二号の業務のうち登録の受付け、登録に必要な調査その他農林水産省令で定める業務を、営利を目的としない法人であつて、第十六条に規定する遊漁船業団体を直接又は間接の構成員とするものに委託することができる。

 (事業計画の届出等)

第九条 全国協会は、毎事業年度、農林水産省令で定めるところにより、事業計画及び収支予算を農林水産大臣に届け出なければならない。

2 全国協会は、農林水産省令で定めるところにより、毎事業年度終了後、農林水産大臣に対し事業状況等を報告しなければならない。

 (改善命令)

第十条 農林水産大臣は、全国協会の財産の状況又はその業務の運営に関し改善が必要であると認めるときは、全国協会に対し、その改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

 (指定の取消し)

第十一条 農林水産大臣は、全国協会が前条の規定による命令に違反したときは、第七条第一項の指定を取り消すことができる。

2 農林水産大臣は、前項の規定により第七条第一項の指定を取り消したときは、その旨を官報で公示しなければならない。

    第二節 適正営業規程

 (認可)

第十二条 全国協会は、利用者の利便の増進及び漁場の安定的な利用関係の確保の見地から遊漁船業の健全な発達を図るため、遊漁船業に係る営業方法に関し少なくとも次の各号に掲げる事項を内容とする規程(以下「適正営業規程」という。)を定め、農林水産大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

 一 役務の内容に関する事項

 二 漁場の適正な利用に関する事項

 三 損害賠償の実施の確保に関する事項

2 農林水産大臣は、前項の適正営業規程が次の各号に適合すると認めるときでなければ、これを認可してはならない。

 一 利用者の利便の増進に資するものであること。

 二 漁場の安定的な利用関係が阻害されるおそれがないこと。

 三 遊漁船業の健全な経営が阻害されるおそれがないこと。

3 農林水産大臣は、第一項の認可をしたときは、農林水産省令で定めるところにより、その旨を官報で公示しなければならない。

 (変更命令)

第十三条 農林水産大臣は、前条第一項の認可を受けた適正営業規程の内容が同条第二項各号の一に適合しなくなつたと認めるときは、全国協会に対し、これを変更すべきことを命ずることができる。

 (準用)

第十四条 第十一条第一項の規定は、全国協会が前条の規定による命令に違反した場合について準用する。

2 第十一条第二項の規定は、前項において準用する同条第一項の規定による指定の取消しについて準用する。

 (適正営業規程に係る遊漁船業者の登録)

第十五条 全国協会は、遊漁船業者から第十二条第一項の認可を受けた適正営業規程に従つて営業を行おうとする旨の申出があつたときは、農林水産省令で定めるところにより、その者について登録を行うことができる。

2 前項の登録を受けた者は、第三条第一項の届出書に係る営業所及び遊漁船ごとに、その見やすい場所に、全国協会が農林水産大臣の承認を得て定める様式の標識を掲示するものとする。

3 農林水産大臣は、前項の標識について承認を与えたときは、農林水産省令で定めるところにより、その旨を官報で公示しなければならない。

4 第一項の登録を受けていない者は、第二項の標識又はこれに類似する標識を掲げてはならない。

5 第一項の登録の取消しその他登録に関し必要な事項及び第二項の標識に関し必要な事項は、農林水産省令で定める。

    第三節 遊漁船業団体

 (指定)

第十六条 都道府県知事は、農林水産省令で定めるところにより、遊漁船業者を直接又は間接の構成員とする営利を目的としない法人であつて、次条各号に掲げる業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申出により、同条各号に掲げる業務を行う者(以下「遊業船業団体」という。)として指定することができる。

 (業務)

第十七条 遊漁船業団体は、次の各号に掲げる業務を行うものとする。

 一 遊漁船業の適正な運営を確保するための構成員に対する指導を行うこと。

 二 漁業の適正な利用を推進すること。

 三 遊漁船業に関する利用者の苦情を処理すること。

 四 前三号の業務に附帯する業務

 (準用)

第十八条 第十条及び第十一条第一項の規定は、遊漁船業団体について準用する。この場合において、第十条中「農林水産大臣」とあるのは「都道府県知事」と、第十一条第一項中「農林水産大臣」とあるのは「都道府県知事」と、「第七条第一項」とあるのは「第十六条」と読み替えるものとする。

   第四章 雑則

 (報告及び立入検査)

第十九条 農林水産大臣は全国協会に対して、都道府県知事は当該都道府県の区域内において遊漁船業を営む者又は遊漁船業団体に対して、この法律を施行するため必要があると認めるときは、その業務に関し報告をさせ、又はその職員をしてこれらの者の事務所、営業所若しくは遊漁船に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 (聴聞)

第二十条 農林水産大臣が第十一条第一項(第十四条第一項において準用する場合を含む。)の規定による指定の取消しをしようとするとき又は都道府県知事が第六条第二項の規定による命令若しくは第十八条において準用する第十一条第一項の規定による指定の取消しをしようとするときは、農林水産省令で定めるところにより、あらかじめ、期日及び場所を指定して、公開による聴聞を行わなければならない。

2 前項の聴聞に際しては、当該処分に係る者又はその代理人に対し、意見を述べ、及び証拠を提出する機会を与えなければならない。

 (政府の援助)

第二十一条 政府は、利用者の安全の確保及び利便の増進並びに漁場の安定的な利用関係の確保の見地から遊漁船業の健全な発達を図るため必要な援助に努めるものとする。

 (省令への委任)

第二十二条 この法律に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、農林水産省令で定める。

   第五章 罰則

第二十三条 次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

 一 第三条第一項の規定に違反して届出書若しくは添付書類を提出せず、又は同項の届出書若しくは添付書類に虚偽の記載をして提出した者

 二 第六条第二項の規定による命令に違反した者

 三 第十九条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

第二十四条 次の各号の一に該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。

 一 第三条第二項の規定に違反して届出書若しくは添付書類を提出せず、又は同項の届出書若しくは添付書類に虚偽の記載をして提出した者

 二 第五条の規定に違反して利用者名簿を備え置かず、又はこれに記載すべき事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をした者

第二十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、各本条の刑を科する。

第二十六条 次の場合には、全国協会の理事は、五十万円以下の過料に処する。

 一 第十条又は第十三条の規定による命令に違反したとき。

 二 第十二条第一項の認可を受けないで適正営業規程を実施したとき。

第二十七条 次の場合には、全国協会の理事は、三十万円以下の過料に処する。

 一 第七条第四項又は第九条第一項の規定に違反して届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。

 二 第八条第二項の規定に違反して手数料を徴収したとき。

 三 第八条第三項の規定に違反して業務の委託をしたとき。

 四 第九条第二項の規定に違反して報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。

 五 第十五条第二項の標識の様式を農林水産大臣の承認を得ないで定めたとき。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (経過措置)

2 この法律の施行の際現に遊漁船業を営んでいる者は、この法律の施行の日から二月を経過する日までの間は、第三条第一項の規定による届出をしないで、遊漁船業を営むことができる。

 (農林水産省設置法の一部改正)

3 農林水産省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。

  第四条第百四十一号の次に次の一号を加える。

  百四十一の二 遊漁船業の適正化に関する法律(昭和六十三年法律第九十九号)の施行に関すること。

(農林水産・内閣総理大臣署名) 

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