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法律第六十六号(平六・六・二九)

  ◎商法及び有限会社法の一部を改正する法律

 (商法の一部改正)

第一条 商法(明治三十二年法律第四十八号)の一部を次のように改正する。

  第二百四条ノ三の次に次の一条を加える。

 第二百四条ノ三ノ二 第二百四条ノ二第三項ノ規定ニ依リ取締役会ガ会社ヲ譲渡ノ相手方ニ指定シタル場合ニ於テハ会社ガ前条第一項ノ請求ヲ為スニハ第三百四十三条ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ要ス

  前項ノ決議ハ第二百四条ノ二第三項ノ通知ノ日ヨリ三十日内ニ之ヲ為スコトヲ要ス

  第一項ノ決議ニ付テハ第二百四条ノ二第一項ノ株主ハ議決権ヲ行使スルコトヲ得ズ

  第一項ノ決議ニ付テハ前項ノ規定ニ依リテ行使スルコトヲ得ザル議決権ノ数ハ出席シタル株主ノ議決権ノ数ニ之ヲ算入セズ

  第一項ノ会社ガ前条第一項ノ請求ヲ為スニハ同条第二項ノ規定ニ依リ供託スベキ額ガ最終ノ貸借対照表上ノ純資産額ヨリ第二百九十三条ノ五第三項各号ノ金額及同条第一項ノ規定ニ依リ分配シタル金銭ノ額ノ合計額ヲ控除シタル額ヲ超エザルコトヲ要ス

  第一項ニ規定スル場合ニ於テハ前条第一項ノ期間ハ第一項ノ決議ノ日ヨリ之ヲ起算ス

  第一項ノ会社ガ前条第一項ノ請求ヲ為シタル場合ニ於テハ売買価格ハ第五項ノ規定ニ依リ算定シタル額ヲ超ユルコトヲ得ズ且買受クルコトヲ得べキ株式ノ数ハ第二百十条ノ三第一項ノ規定ニ依リ取得シタル株式ノ数ト併セテ発行済株式ノ総数ノ五分ノ一ヲ超ユルコトヲ得ズ

  第二百四条ノ二第四項ノ規定ハ第二項ノ期間内ニ第一項ノ決議ナカリシ場合ニ之ヲ準用ス

  第二百四条ノ四第一項及び第二項中「前条第一項」を「第二百四条ノ三第一項」に改め、同条第三項及び第五項中「前条第二項」を「第二百四条ノ三第二項」に改め、同条第六項中「場合」の下に「及前項ノ規定ニ依リ売買ガ成立セザリシモノト看做サレタル場合」を加え、同条第五項の次に次の一項を加える。

  前条第一項ノ会社ヨリ第二百四条ノ三第一項ノ請求アリタル場合ニ於テ裁判所ノ決定スル売買価格ガ前条第五項ノ規定ニ依リ算定シタル額ヲ超ユルトキハ売買ハ成立セザリシモノト看做ス

  第二百四条ノ五中「前二条」を「前三条」に改める。

  第二百十条に次の一号を加える。

  五 第二百四条ノ三第一項又ハ第二百四条ノ五ニ於テ準用スル同項ノ請求ヲ為シテ株式ヲ買受クルトキ

  第二百十条の次に次の三条を加える。

 第二百十条ノ二 会社ハ前条ノ規定ニ拘ラズ正当ノ理由アルトキハ使用人ニ株式ヲ譲渡ス為ニ発行済株式ノ総数ノ百分ノ三ヲ超エザル範囲内ニ於テ自己ノ株式ヲ取得スルコトヲ得

  前項ノ場合ニ於テ株式ヲ買受クルニハ左ノ事項ニ付定時総会ノ決議アルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ取締役ハ使用人ニ株式ヲ譲渡スコトヲ必要トスル理由ヲ開示スルコトヲ要ス

  一 決議後最初ノ決算期ニ関スル定時総会ノ終結ノ時迄ニ買受クベキ株式ノ種類、総数及取得価額ノ総額

  二 買受クベキ株式ガ取引所ノ相場アル株式及取引所ノ相場ニ準ズル相場アル株式ニ非ザルモノナルトキハ其ノ売主

  第一項ノ場合ニ於テハ買受クルコトヲ得べキ株式ノ総数ハ発行済株式ノ総数ノ百分ノ三ヲ超ユルコトヲ得ズ且其ノ株式ノ取得価額ノ総額ハ貸借対照表上ノ純資産額ヨリ第二百九十条第一項各号ノ金額及定時総会ニ於テ利益ヨリ配当シ若ハ支払フモノト定メ又ハ資本ニ組入レタル額ノ合計額ヲ控除シタル額ヲ超ユルコトヲ得ズ

  第一項ノ場合ニ於テ株式ヲ買受クルコトヲ得べキ期間ハ第二項第一号ニ定ムル時迄トス

  第二項第二号ニ定ムルトキハ同項ノ決議ハ第三百四十三条ノ規定ニ依リ之ヲ為スコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ第二百四条ノ三ノ二第三項及第四項ノ規定ヲ準用ス

  第二項ノ場合ニ於ケル議案ノ要領ハ第二百三十二条ニ定ムル通知ニ之ヲ記載スルコトヲ要ス同項第二号ニ掲グル事項ニ関スル議案ノ要領ヲ記載スルトキハ次項ノ規定ニ依ル請求アリ得べキコトヲモ記載スルコトヲ要ス

  株主ハ第二項第二号ニ掲グル事項ニ関スル議案ノ要領ガ記載サレタル前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ取締役ニ対シ会日ヨリ五日前ニ書面ヲ以テ其ノ事項ニ係ル議案ヲ売主ニ自己ヲモ加へタルモノト為スベキコトヲ請求スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第二百五十六条ノ三第六項ノ規定ヲ準用ス

  第一項ノ場合ニ於テ株式ヲ買受クルニハ其ノ株式ガ取引所ノ相場アル株式ナルトキハ取引所ニ於テスル取引ニ、取引所ノ相場ニ準ズル相場アル株式ナルトキハ取引所ニ於テスル取引ニ準ズル取引ニ依ルコトヲ要ス

 第二百十条ノ三 株式ノ譲渡ニ付取締役会ノ承認ヲ要スル旨ノ定款ノ定アル場合ニ於テハ会社ハ第二百十条ノ規定ニ拘ラズ株主ノ相続人ヨリ其ノ相続ニ因リ得タル株式ヲ相続ノ開始後一年内ニ買受クル為ニスルトキハ自己ノ株式ヲ取得スルコトヲ得但シ其ノ株式ノ数ハ同条第五号ニ掲グル場合ニ於テ取得シタル株式ノ数ト併セテ発行済株式ノ総数ノ五分ノ一ヲ超ユルコトヲ得ズ

  前項ノ場合ニ於テ売買価格ガ第二百四条ノ三ノ二第五項ノ規定ニ依リ算定シタル額ヲ超ユルトキハ其ノ株式ヲ買受クルコトヲ得ズ

  第一項ノ規定ニ依リ株式ヲ買受クルニハ第三百四十三条ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ第二百四条ノ三ノ二第三項及第四項ノ規定ヲ準用ス

 第二百十条ノ四 取締役ハ其ノ営業年度ノ終ニ於テ貸借対照表上ノ純資産額ガ第二百九十条第一項各号ノ金額ノ合計額ヲ下ル虞アルトキハ第二百四条ノ三第一項若ハ第二百四条ノ五ニ於テ準用スル同項、第二百十条ノ二第二項又ハ前条第一項ノ規定ニ依リ株式ヲ買受クルコトヲ得ズ

  営業年度ノ終ニ於テ前項ノ純資産額ガ同項ノ合計額ヨリ第二百十条第五号ニ掲グルトキニ又ハ第二百十条ノ二第一項若ハ前条第一項ノ規定ニ依リ取得シテ有スル株式ノ時価ノ合計額ヲ控除シタル額ヲ下リタル場合ニ於テハ前項ニ規定スル規定ニ依リ買受ヲ為シタル取締役ハ会社ニ対シ連帯シテ其ノ差額、若シ其ノ営業年度ニ於テ同項ニ規定スル規定ニ依リ買受ケタル株式ノ取得価額ノ総額ヨリ其ノ株式中既ニ処分シタル株式ノ価額ノ総額及其ノ取得シテ有スル株式ノ時価ノ合計額ヲ控除シタル残額ガ其ノ差額ヨリ少ナキトキハ其ノ残額ニ付賠償ノ責ニ任ズ但シ取締役ガ前項ノ虞ナキモノト認ムルニ付注意ヲ怠ラザリシコトヲ証明シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ

  第二百六十六条第二項第三項及第五項ノ規定ハ前項ノ取締役ノ責任ニ之ヲ準用ス

  第二百十一条中「前条第一号」を「第二百十条第一号」に、「第二号乃至第四号」を「同条第二号乃至第五号及第二百十条ノ三第一項」に、「為ス」を「為シ第二百十条ノ二第一項ノ場合ニ於テハ株式ヲ買受ケタル時ヨリ六月内ニ使用人ニ株式ヲ譲渡ス」に改める。

  第二百十二条の次に次の一条を加える。

 第二百十二条ノ二 会社ハ前条第一項ノ規定ニ依ルノ外定時総会ノ決議ヲ以テ株式ヲ買受ケテ之ヲ消却スルコトヲ得

  前項ノ決議ハ第二百十条ノ二第二項各号ニ掲グル事項ニ付之ヲ為スコトヲ要ス

  第一項ノ場合ニ於テ買受クルコトヲ得べキ株式ノ取得価額ノ総額ハ貸借対照表上ノ純資産額ヨリ第二百九十条第一項各号ノ金額及定時総会ニ於テ利益ヨリ配当シ若ハ支払フモノト定メ又ハ資本ニ組入レタル額ノ合計額ヲ控除シタル額ヲ超ユルコトヲ得ズ

  第二百十条ノ二第四項乃至第八項ノ規定ハ第一項ノ規定ニ依リ株式ヲ買受クル場合又ハ同項ノ決議ニ之ヲ準用ス但シ同条第八項ノ規定ノ準用ニ付テハ株式ノ買取ヲ公告シテ為ス取引ニ依ルトキハ此ノ限ニ在ラズ

  取締役ハ其ノ営業年度ノ終ニ於テ貸借対照表上ノ純資産額ガ第二百九十条第一項各号ノ金額ノ合計額ヲ下ル虞アルトキハ第一項ノ規定ニ依リ株式ヲ買受クルコトヲ得ズ

  営業年度ノ終ニ於テ前項ノ純資産額ガ同項ノ合計額ヨリ第二百十条第五号ニ掲グルトキニ又ハ第二百十条ノ二第一項若ハ第二百十条ノ三第一項ノ規定ニ依リ取得シテ有スル株式ノ時価ノ合計額ヲ控除シタル額ヲ下リタル場合ニ於テハ第一項ノ規定ニ依リ買受ヲ為シタル取締役ハ会社ニ対シ連帯シテ其ノ差額、若シ其ノ営業年度ニ於テ同項ノ規定ニ依リ買受ケタル株式ノ取得価額ノ総額ガ其ノ差額ヨリ少ナキトキハ其ノ総額ニ付賠償ノ責ニ任ズ

  第二百十条ノ四第二項但書及第二百六十六条第二項第三項第五項ノ規定ハ前項ノ取締役ノ責任ニ之ヲ準用ス

  第二百九十条第一項に次の一号を加える。

  五 第二百十条第五号ニ掲グル場合ニ於テ又ハ第二百十条ノ二第一項若ハ第二百十条ノ三第一項ノ規定ニ依リ取得シテ有スル株式ニ付貸借対照表ノ資産ノ部ニ計上シタル金額ノ合計額

  第二百九十三条ただし書中「妨ゲズ」の下に「且会社ノ有スル自己ノ株式ニ付テハ利益又ハ利息ノ配当ハ之ヲ為サズ」を加える。

  第二百九十三条ノ五第三項第四号中「額」の下に「及第二百十条ノ二第二項又ハ第二百十二条ノ二第一項ノ決議ニ依リ定メタル株式ノ取得価額ノ総額ノ合計額」を加え、同号を同項第五号とし、同項第三号の次に次の一号を加える。

  四 最終ノ決算期ニ於テ第二百十条第五号ニ掲グル場合ニ於テ又ハ第二百十条ノ二第一項若ハ第二百十条ノ三第一項ノ規定ニ依リ取得シテ有スル株式ニ付貸借対照表ノ資産ノ部ニ計上シタル金額ノ合計額

  第二百九十三条ノ五第五項中「合計額」を「合計額ヨリ第二百十条第五号ニ掲グルトキニ又ハ第二百十条ノ二第一項若ハ第二百十条ノ三第一項ノ規定に依リ取得シテ有スル株式ノ時価ノ合計額ヲ控除シタル額」に改める。

  第四百九十八条第一項第十一号の次に次の一号を加える。

  十一ノ二 第二百十条ノ二第七項又ハ第二百十二条ノ二第四項ニ於テ準用スル第二百十条ノ二第七項ノ規定ニ依ル請求アリタル場合ニ於テ其ノ請求ニ係ル事項ヲ議案ト為サザルトキ

  第四百九十八条第一項第十三号中「第二百十二条第一項」の下に「又ハ第二百十二条ノ二第一項」を加える。

 (有限会社法の一部改正)

第二条 有限会社法(昭和十三年法律第七十四号)の一部を次のように改正する。

  第十九条第六項中「前項」を「前二項」に改め、同条第五項の次に次の一項を加える。

  前項ノ規定ニ依リ社員総会ガ会社ヲ譲渡ノ相手方ニ指定シタル場合ニ於テハ会社ガ同項ニ於テ準用スル商法第二百四条ノ三第一項ノ請求ヲ為スニハ第四十八条ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ商法第二百四条ノ三ノ二第三項第五項及第七項ノ規定ヲ準用ス

  第二十四条第一項中「乃至第二百十一条ノ二及第二百十二条第一項」を「、第二百十条ノ三第一項第二項、第二百十条ノ四第一項第二項、第二百十一条、第二百十一条ノ二、第二百十二条第一項及第二百十二条ノ二第一項第三項第五項第六号」に改め、同項の次に次の五項を加える。

  前項ニ於テ準用スル商法第二百十条ノ三第一項ノ規定ニ依リ持分ヲ買受クルニハ第四十八条ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ商法第二百四条ノ三ノ二第三項ノ規定ヲ準用ス

  第三十条ノ二第二項及第三項ノ規定ハ第一項ニ於テ準用スル商法第二百十条ノ四第二項ノ取締役ノ責任ニ之ヲ準用ス

  第一項ニ於テ準用スル商法第二百十二条ノ二第一項ノ決議ハ第四十八条ノ規定ニ依リ之ヲ為スコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ商法第二百四条ノ三ノ二第三項及第二百十条ノ二第二項前段第六項前段ノ規定ヲ準用ス

  商法第二百十条ノ二第四項ノ規定ハ第一項ニ於テ準用スル商法第二百十二条ノ二第一項ノ規定ニ依リ持分ヲ買受クル場合ニ之ヲ準用ス

  第三十条ノ二第二項第三項及商法第二百十条ノ四第二項但書ノ規定ハ第一項ニ於テ準用スル商法第二百十二条ノ二第六項ノ取締役ノ責任ニ之ヲ準用ス

  第四十四条に次のただし書を加える。

   但シ会社ノ有スル自己ノ持分ニ付テハ利益ノ配当ハ之ヲ為サズ

  第八十五条第一項第八号中「第二百十二条第一項」の下に「又ハ第二百十二条ノ二第一項」を加える。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (経過措置)

2 改正後の商法及び有限会社法の規定(罰則を除く。)は、次項に定めるものを除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、改正前のこれらの法律によって生じた効力を妨げない。

3 改正後の商法第二百十条第五号、第二百十条ノ三第一項及び第二項並びに第二百十二条ノ二第一項及び第三項(これらの規定を改正後の有限会社法第二十四条第一項において準用する場合を含む。)並びに改正後の商法第二百十条ノ二第一項の規定は、この法律の施行前に株主総会又は社員総会の招集の手続が開始された場合における自己の株式又は持分の取得については、適用しない。

 (罰則の適用に関する経過措置)

4 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

(法務・内閣総理大臣署名) 

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