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法律第十一号(平七・二・二〇)

  ◎阪神・淡路大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律

   第一章 総則

 (趣旨)

第一条 この法律は、阪神・淡路大震災の被災者等の負担の軽減を図る等のため、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)その他の国税関係法律の特例を定めるものとする。

 (定義)

第二条 第二章において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 一 居住者 所得税法第二条第一項第三号に規定する居住者をいう。

 二 確定申告書 所得税法第二条第一項第三十七号に規定する確定申告書をいう。

 三 不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得 それぞれ所得税法第二編第二章第二節第一款に規定する不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得をいう。

 四 事業所得の金額 所得税法第二十七条第二項に規定する事業所得の金額をいう。

2 第四章において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 一 救援品 関税定率法(明治四十三年法律第五十四号)第十五条第一項第三号に規定する救じゅつのために寄贈された給与品をいう。

 二 保税地域 関税法(昭和二十九年法律第六十一号)第二十九条に規定する保税地域(同法第三十条第二号の規定により税関長が指定した場所を含む。)をいう。

 三 証明書類 関税法第百二条第一項に規定する証明書類をいう。

 四 保税蔵置場 関税法第四十二条第一項に規定する保税蔵置場をいう。

 五 保税工場 関税法第五十六条第一項に規定する保税工場をいう。

 六 保税展示場 関税法第六十二条の二第一項に規定する保税展示場をいう。

 七 製造工場 関税定率法第十三条第一項に規定する製造工場をいう。

   第二章 所得税法の特例

 (雑損控除の特例)

第三条 居住者又はその者と生計を一にする配偶者その他の親族で政令で定めるものの有する所得税法第七十二条第一項に規定する資産について阪神・淡路大震災により生じた損失の金額(当該震災に関連するその居住者によるやむを得ない支出で政令で定めるものの金額を含むものとし、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。)については、その居住者の選択により、平成六年において生じた同項に規定する損失の金額として、同法の規定を適用することができる。この場合において、同項の規定により控除された金額に係る当該阪神・淡路大震災により生じた損失の金額は、その居住者の平成七年分の所得税に係る同法の規定の適用については、同年において生じなかったものとみなす。

2 前項の規定は、平成六年分の確定申告書に同項の規定の適用を受けようとする旨の記載がない場合には、適用しない。ただし、当該申告書の提出がなかったこと又は当該記載がなかったことにつき税務署長においてやむを得ない事情があると認めるときは、この限りでない。

 (被災事業用資産の損失の必要経費算入に関する特例等)

第四条 居住者の有する棚卸資産(所得税法第二条第一項第十六号に規定する棚卸資産をいう。)について阪神・淡路大震災により生じた損失の金額(当該震災に関連するやむを得ない支出で政令で定めるものの金額を含む。)については、その者の選択により、平成六年において生じたものとして、その者の同年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができる。この場合において、当該事業所得の金額の計算上必要経費に算入された当該阪神・淡路大震災により生じた損失の金額は、その者の平成七年分の所得税に係る同法の規定の適用については、同年において生じなかったものとみなす。

2 居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業の用に供される固定資産(所得税法第二条第一項第十八号に規定する固定資産をいう。)その他これに準ずる資産で政令で定めるものについて阪神・淡路大震災により生じた損失の金額(当該震災に関連するやむを得ない支出で政令で定めるものの金額を含むものとし、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。)については、その者の選択により、平成六年において生じた同法第五十一条第一項に規定する損失の金額として、同法の規定を適用することができる。この場合において、同項の規定により必要経費に算入された当該阪神・淡路大震災により生じた損失の金額は、その者の平成七年分の所得税に係る同法の規定の適用については、同年において生じなかったものとみなす。

3 居住者の有する山林について阪神・淡路大震災により生じた損失の金額(当該震災に関連するやむを得ない支出で政令で定めるものの金額を含むものとし、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。)については、その者の選択により、平成六年において生じた所得税法第五十一条第三項に規定する損失の金額として、同法の規定を適用することができる。この場合において、同項の規定により必要経費に算入された当該阪神・淡路大震災により生じた損失の金額は、その者の平成七年分の所得税に係る同法の規定の適用については、同年において生じなかったものとみなす。

4 居住者の不動産所得若しくは雑所得を生ずべき業務の用に供され、又はこれらの所得の基因となる所得税法第五十一条第四項に規定する資産について阪神・淡路大震災により生じた損失の金額(当該震災に関連するやむを得ない支出で政令で定めるものの金額を含むものとし、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額及び第二項又は前条第一項に規定する資産に係る損失の金額を除く。)については、その者の選択により、平成六年において生じた同法第五十一条第四項に規定する損失の金額として、同法の規定を適用することができる。この場合において、同項の規定により必要経費に算入された金額に係る当該阪神・淡路大震災により生じた損失の金額は、その者の平成七年分の所得税に係る同法の規定の適用については、同年において生じなかったものとみなす。

5 前各項の規定は、平成六年分の所得税について所得税法第百四十条第一項の規定の適用を受ける場合には、適用しないものとし、同項の規定は、前各項の規定を適用することにより同年において同法第二条第一項第二十五号に規定する純損失の金額が生じることとなる場合における同年分の所得税については、適用しない。

6 第一項から第四項までの規定は、平成六年分の確定申告書にこれらの規定の適用を受けようとする旨及びこれらの規定により必要経費に算入される金額の記載がない場合には、適用しない。ただし、当該申告書の提出がなかったこと又は当該記載がなかったことにつき税務署長においてやむを得ない事情があると認めるときは、この限りでない。

 (非居住者への適用)

第五条 前二条の規定は、非居住者(所得税法第二条第一項第五号に規定する非居住者をいう。)に課する所得税の課税標準及び所得税の額を計算する場合について準用する。

 (政令への委任)

第六条 前三条に定めるもののほか、この章の規定の適用がある場合における所得税法その他の法令の規定に関する技術的読替えその他この章の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

   第三章 災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の特例

 (災害被害者に対する所得税の減免の特例等)

第七条 阪神・淡路大震災により住宅又は家財について甚大な被害を受けた者については、その者の選択により、当該被害を平成六年において受けたものとして、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(昭和二十二年法律第百七十五号)第二条の規定を適用することができる。この場合において、平成六年分の所得税について同条の規定の適用を受けた者に係る平成七年分の所得税についての同条の規定の適用については、当該震災による被害を同年において受けなかったものとみなす。

2 前項の規定の適用を受ける場合における災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律第三条の規定の適用その他同項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

   第四章 関税法等の特例

 (申請等の期限の延長等)

第八条 阪神・淡路大震災により相当な損害を受けた地域として大蔵大臣の指定する地域(以下この章において「指定地域」という。)に当該震災の発生の時に住所又は居所を有していた当該震災の被災者に係る関税法又は他の関税に関する法律に基づく申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収(以下この条において「申請等」という。)に関する期限で、平成七年一月十七日から大蔵大臣が当該震災の状況を勘案して別に定める日(以下この項及び第四項において「指定日」という。)までの間に到来するものについては、当該期限を指定日の翌日まで延長する。

2 前項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

3 税関長は、阪神・淡路大震災に起因するやむを得ない理由により、第一項の規定により延長された申請等に関する期限までにその申請等をすることができないと認める者があるときは、政令で定めるところにより、その理由のやんだ日から二月以内に限り、その者に係る当該延長された期限を延長することができる。

4 税関長は、阪神・淡路大震災に起因するやむを得ない理由により、平成七年一月十七日以後に到来する申請等(第一項に規定する被災者に係る申請等で指定日までにその期限の到来するものを除く。以下この項において同じ。)に関する期限までにその申請等をすることができないと認める者があるときは、政令で定めるところにより、その理由のやんだ日から二月以内に限り、その者に係る当該期限を延長することができる。

5 前各項の規定により関税を納付すべき期限を延長した場合には、その関税に係る延滞税のうちその延長をした期間に対応する部分の金額は、免除する。

 (手数料の還付、軽減又は免除)

第九条 税関長は、次に掲げる貨物に係る関税法第十九条、第三十三条(同法第三十六条において準用する場合を含む。)若しくは第六十九条第二項(同法第七十五条において準用する場合を含む。)の許可又は同法第九十八条第一項の承認(以下この条において「許可等」という。)を受けた者が同法第百条第一号又は第四号の規定により納付した手数料については、必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、当該手数料の額に相当する金額を還付することができる。

 一 救援品に該当する貨物であって、阪神・淡路大震災の被災者を支援するためのもの

 二 指定地域に所在する保税地域に阪神・淡路大震災の発生の時に置かれていた貨物であって、貨物の保全その他の理由により緊急に当該保税地域から出す必要があると税関長が認めたものその他これに準ずる貨物であると税関長が認めたもの

2 税関長は、前項各号に掲げる貨物に係る許可等を受ける者が関税法第百条第一号又は第四号の規定により納付する手数料については、当該許可等をする場合において必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、これを免除することができる。

第十条 税関長は、次に掲げる証明書類の交付を請求した者が関税法第百二条第二項の規定により納付した手数料については、必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、当該手数料の額に相当する金額を還付することができる。

 一 前条第一項第一号に掲げる貨物に係る証明書類

 二 指定地域に所在する保税地域に阪神・淡路大震災の発生の時に置かれていた貨物の当該震災による被害に係る証明書類

 三 証明書類又は税関長の行政処分を通知する書類で阪神・淡路大震災の被災者が当該震災の発生の前に交付を受けたものを当該震災において紛失し、焼失し、又は著しく損傷したことにより当該被災者において必要となった当該証明書類と同一の内容の証明書類又は当該行政処分についての証明書類

2 税関長は、前項各号に掲げる証明書類の交付を請求する者が関税法第百二条第二項の規定により納付すべき手数料については、当該交付をする場合において必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、これを免除することができる。

第十一条 税関長は、指定地域に所在する保税蔵置場、保税工場若しくは保税展示場又は製造工場(以下この条において「保税蔵置場等」という。)が阪神・淡路大震災により損傷したためその業務の遂行に支障が生じていると認めるときは、政令で定めるところにより、その生じている支障の程度に応じ、当該保税蔵置場等に係る関税法第四十二条第一項、第五十六条第一項若しくは第六十二条の二第一項の許可又は関税定率法第十三条第一項の承認を受けた者が関税法第百条第三号又は関税定率法第十三条第八項の規定により納付した手数料の額に相当する金額の全部若しくは一部を還付し、又はこれらの規定により納付すべき手数料を軽減し、若しくは免除することができる。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。

 (施行日前に確定申告書を提出した者等に係る更正の請求)

第二条 この法律の施行の日前に平成六年分の所得税につき第二条第一項第二号に規定する確定申告書を提出した者及び同日前に同年分の所得税につき国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第二十五条の規定による決定を受けた者は、当該確定申告書に記載された事項又は当該決定に係る事項(これらの事項につき同日前に所得税法第二条第一項第三十九号に規定する修正申告書の提出又は国税通則法第二十四条若しくは第二十六条の規定による更正があった場合には、その申告又は更正後の事項)につき第二章又は第三章の規定の適用により異動を生ずることとなったときは、その異動を生ずることとなった事項について、同日から起算して一年を経過する日までに、税務署長に対し、同法第二十三条第一項の更正の請求をすることができる。

 (平成六年分所得税の特別減税のための臨時措置法の一部改正)

第三条 平成六年分所得税の特別減税のための臨時措置法(平成六年法律第二十九号)の一部を次のように改正する。

  第二条第三号中「第十条の規定並びに」を「第十条の規定、」に改め、「)第二条の規定」の下に「並びに阪神・淡路大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(平成七年法律第十一号)第三条第一項、第五条及び第七条第一項の規定」を加える。

(大蔵・内閣総理大臣署名) 

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