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法律第八十八号(平一八・六・二一)

  ◎農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律

 (目的)

第一条 この法律は、米穀、麦その他の重要な農産物に係る農業の担い手に対し、我が国における生産条件と外国における生産条件の格差から生ずる不利を補正するための交付金及び農業収入の減少がその農業経営に及ぼす影響を緩和するための交付金を交付する措置を講ずることにより、その農業経営の安定を図り、もって国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「対象農産物」とは、米穀、麦、大豆、てん菜、でん粉の製造の用に供するばれいしょその他の農産物であって、次の各号のいずれにも該当するものとして政令で定めるものをいう。

 一 国民に対する熱量の供給を図る上で特に重要なもの

 二 前号に該当する他の農産物と組み合わせた生産が広く行われているもの

2 この法律において「対象農業者」とは、次に掲げる要件に該当する者をいう。

 一 次のいずれかに該当するものであること。

  イ 農業経営基盤強化促進法(昭和五十五年法律第六十五号)第十二条の二第一項に規定する認定農業者であって、その耕作の業務の規模が対象農産物の効率的な生産を図る上で適切なものとして農林水産省令で定める基準に適合するもの

  ロ 農業経営基盤強化促進法第二十三条第四項に規定する特定農業団体その他の委託を受けて農作業を行う組織(地域における農地の利用の集積を確実に行うと見込まれること、農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第二条第七項に規定する農業生産法人となることが確実であると見込まれることその他の農林水産省令で定める要件を満たすものに限り、法人を除く。)であって、その耕作の業務の規模が対象農産物の効率的な生産を図る上で適切なものとして農林水産省令で定める基準に適合するもの

 二 環境と調和のとれた農業生産に関して農林水産省令で定める基準を遵守していること。

 三 その耕作の業務の対象となる農地のうちに、現に耕作の目的に供されておらず、かつ、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる農地として農林水産省令で定めるものがないこと。

 (生産条件に関する不利を補正するための交付金の交付)

第三条 政府は、毎年度、予算の範囲内において、特定対象農産物(対象農産物のうち、我が国における標準的な生産費が標準的な販売価格を超えると認められるものとして政令で定めるものをいう。以下同じ。)の我が国における生産条件と外国における生産条件の格差から生ずる不利を補正するため、対象農業者に対し、次に掲げる交付金を交付するものとする。

 一 当該年度の前年度以前の農林水産省令で定める期間における対象農業者の特定対象農産物の期間平均生産面積(当該期間におけるその者の特定対象農産物の生産量をそれぞれ農林水産省令で定めるところにより生産面積に換算したものを基準として、農林水産省令で定めるところにより算出した面積をいう。以下同じ。)に応じて交付する交付金

 二 当該年度において対象農業者が生産した特定対象農産物の品質及び生産量に応じて交付する交付金

2 前項第一号の交付金の金額は、対象農業者ごとに、特定対象農産物についての種類別の面積当たりの単価(以下「面積単価」という。)に、その者の当該特定対象農産物の種類別の期間平均生産面積をそれぞれ乗じて得た金額を合算した金額とする。

3 面積単価は、農林水産大臣が、対象農業者が生産した特定対象農産物の種類別の標準的な生産費、販売価格及び単位面積当たりの収穫量を考慮して定めるものとする。

4 第一項第二号の交付金の金額は、対象農業者ごとに、特定対象農産物についての種類別及び農林水産省令で定める品質の区分(以下「品質区分」という。)別の数量当たりの単価(以下「数量単価」という。)に、その者の当該年度における当該特定対象農産物の品質区分別の生産量として農林水産省令で定めるものをそれぞれ乗じて得た金額を合算した金額とする。

5 数量単価は、農林水産大臣が、対象農業者が生産した特定対象農産物の種類別の標準的な生産費、販売価格及び単位面積当たりの収穫量並びに特定対象農産物の種類別及び品質区分別の需要及び供給の動向を考慮して定めるものとする。

6 農林水産大臣は、面積単価又は数量単価(以下「面積単価等」という。)を定めるに当たっては、第一項各号の交付金の交付により特定対象農産物の生産に要する標準的な費用の額と特定対象農産物の販売による標準的な収入の額との差額の補てんを図ることを旨としなければならない。

7 農林水産大臣は、面積単価等を定めようとするときは、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない。

8 農林水産大臣は、面積単価等を定めたときは、遅滞なく、これを告示するものとする。

 (収入の減少が農業経営に及ぼす影響を緩和するための交付金の交付)

第四条 政府は、毎年度、予算の範囲内において、当該年度の前年度における対象農産物に係る収入の額として農林水産省令で定めるところにより対象農業者ごとに算出した額(以下「前年度収入額」という。)が、対象農産物に係る標準的な収入の額として農林水産省令で定めるところにより対象農業者ごとに算出した額(以下「標準的収入額」という。)を下回った場合には、これによる対象農業者の農業経営に及ぼす影響を緩和するため、対象農業者(収入の減少がその経営に及ぼす影響を緩和するための積立金であってその額その他の事項が農林水産省令で定める基準に適合するものを積み立てているものに限る。)に対し、交付金を交付するものとする。

2 前項の交付金の金額は、対象農業者ごとに、標準的収入額と前年度収入額との差額、当該差額の発生がその農業経営に及ぼす影響及び収入の減少に備えて行われる取組の状況を考慮して農林水産省令で定めるところにより算定した金額とする。

3 農林水産大臣は、前項の農林水産省令を制定し、又は改正しようとするときは、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない。

 (交付金の交付の申請等)

第五条 第三条第一項各号又は前条第一項の交付金の交付を受けようとする者は、農林水産省令で定めるところにより、農林水産大臣に交付の申請をしなければならない。

2 前項に定めるもののほか、第三条第一項各号又は前条第一項の交付金の交付に関し必要な事項は、農林水産省令で定める。

 (交付金の返還)

第六条 偽りその他不正の手段により第三条第一項各号又は第四条第一項の交付金の交付を受けた者があるときは、農林水産大臣は、その者に対してその交付を受けた交付金の全部又は一部の返還を命ずることができる。

2 前項の規定により返還を命ぜられた金額を納付しない者があるときは、農林水産大臣は、期限を指定してこれを督促しなければならない。

3 前項の規定による督促を受けた者がその指定期限までに第一項の規定により返還を命ぜられた金額を納付しないときは、農林水産大臣は、国税滞納処分の例によりこれを処分することができる。

4 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

 (報告及び検査)

第七条 農林水産大臣は、この法律の施行に必要な限度において、第三条第一項各号若しくは第四条第一項の交付金の交付を受け、若しくは受けようとする者若しくはこれらの者からその生産した農産物の加工若しくは販売の委託を受け若しくは当該農産物の売渡しを受けた者に対し、必要な事項の報告を求め、又はその職員に、これらの者の事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定により職員が立入検査をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 (罰則)

第八条 偽りその他不正の手段により第三条第一項各号又は第四条第一項の交付金の交付を受けた者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。ただし、刑法(明治四十年法律第四十五号)に正条があるときは、刑法による。

第九条 第七条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三十万円以下の罰金に処する。

第十条 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

2 法人でない団体について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為につき法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成十九年四月一日から施行する。ただし、次条並びに附則第三条及び第七条の規定は、公布の日から施行し、第四条第一項の規定は、平成十九年度以後の対象農産物に係る収入について適用する。

 (面積単価等に関する経過措置)

第二条 農林水産大臣は、この法律の施行前においても、第三条第三項及び第五項から第八項までの規定の例により、面積単価等を定め、これを告示することができる。

2 前項の規定により定められた面積単価等は、この法律の施行の日において第三条第三項又は第五項の規定により定められたものとみなす。

 (施行のために必要な準備)

第三条 農林水産大臣は、第四条第二項の農林水産省令を制定しようとするときは、この法律の施行前においても、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴くことができる。

 (大豆交付金暫定措置法の廃止)

第四条 大豆交付金暫定措置法(昭和三十六年法律第二百一号)は、廃止する。

 (大豆交付金暫定措置法の廃止に伴う経過措置)

第五条 平成十八年以前の生産に係る大豆に係る前条の規定による廃止前の大豆交付金暫定措置法の規定による交付金(次条において「大豆交付金」という。)の交付については、なお従前の例による。

 (大豆交付金暫定措置法の廃止に伴う罰則に関する経過措置)

第六条 附則第四条の規定の施行前にした行為及び前条の規定によりなお従前の例によることとされる大豆交付金の交付に係る附則第四条の規定の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

 (政令への委任)

第七条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関して必要な経過措置は、政令で定める。

 (農林水産省設置法の一部改正)

第八条 農林水産省設置法(平成十一年法律第九十八号)の一部を次のように改正する。

  第二十一条第一項第一号中「第十四号」の下に「、第二十五号(農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律(平成十八年法律第八十八号)の規定による交付金の交付に係るものに限る。)」を加える。

 (食料・農業・農村基本法の一部改正)

第九条 食料・農業・農村基本法(平成十一年法律第百六号)の一部を次のように改正する。

  第四十条第三項中「及び食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(平成十二年法律第百十六号)」を「、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(平成十二年法律第百十六号)及び農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律(平成十八年法律第▼▼▼号)」に改める。

(財務・農林水産・内閣総理大臣署名) 

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