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法律第四十八号(平一九・五・一六)

  ◎農山漁村の活性化のための定住等及 び地域間交流の促進に関する法律

 (目的)

第一条 この法律は、人口の減少、高齢化 の進展等により農山漁村の活力が低下していることにかんがみ、農山漁村における定住等及び農山漁村と都市との地域間交流を促進するための措置を講ずることにより、農山漁村 の活性化を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「定住等」と は、農山漁村における定住及び都市の住民がその住所のほか農山漁村に居所を有することをいう。

2 この法律において「地域間交流」と は、都市の住民の農林漁業の体験その他の農山漁村と都市との地域間交流をいう。

3 この法律において「農林地等」とは、 次に掲げる土地をいう。

 一 耕作の目的又は主として耕作若しく は養畜の事業のための採草若しくは家畜の放牧の目的に供される土地(以下「農用地」という。)

 二 木竹の集団的な生育に供される土地 (主として農用地又は住宅地若しくはこれに準ずる土地として使用される土地を除く。以下「林地」という。)

 三 第五条第七項に規定する活性化施設 の用に供される土地及び開発して同項に規定する活性化施設の用に供されることが適当な土地(前二号に掲げる土地を除く。)

 四 前三号に掲げる土地のほか、これら の土地との一体的な利用に供されることが適当な土地

 (地域)

第三条 この法律による措置は、次に掲げ る要件に該当する地域について講じられるものとする。

 一 農用地及び林地(以下「農林地」と いう。)が当該地域内の土地の相当部分を占めていることその他当該地域の土地利用の状況、農林漁業従事者数等からみて、農林漁業が重要な事業である地域であるこ と。

 二 当該地域において定住等及び地域間 交流を促進することが、当該地域を含む農山漁村の活性化にとって有効かつ適切であると認められること。

 三 既に市街地を形成している区域以外 の地域であること。

 (基本方針)

第四条 農林水産大臣は、定住等及び地域 間交流の促進による農山漁村の活性化に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。

2 基本方針においては、次に掲げる事項 を定めるものとする。

 一 定住等及び地域間交流の促進の意義 及び目標に関する事項

 二 定住等及び地域間交流の促進のため の措置を講ずべき地域の設定に関する基本的事項

 三 定住等及び地域間交流の促進のため の施策に関する基本的事項

 四 次条第一項に規定する活性化計画の 作成に関する基本的事項

 五 前各号に掲げるもののほか、定住等 及び地域間交流の促進に関する重要事項

3 農林水産大臣は、基本方針を定めよう とするときは、国土交通大臣その他関係行政機関の長に協議しなければならない。

4 農林水産大臣は、基本方針を定めたと きは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

5 前二項の規定は、基本方針の変更につ いて準用する。

 (活性化計画の作成等)

第五条 都道府県又は市町村は、単独で又 は共同して、基本方針に基づき、当該都道府県又は市町村の区域内の地域であって第三条各号に掲げる要件に該当すると認められるものについて、定住等及び地域間交流の促進に よる農山漁村の活性化に関する計画(以下「活性化計画」という。)を作成することができる。

2 活性化計画には、次に掲げる事項を記 載するものとする。

 一 活性化計画の区域

 二 活性化計画の目標

 三 前号の目標を達成するために必要な 次に掲げる事業に関する事項

  イ 定住等の促進に資する農林漁業の 振興を図るための生産基盤及び施設の整備に関する事業

  ロ 定住等を促進するための集落にお ける排水処理施設その他の生活環境施設の整備に関する事業

  ハ 農林漁業の体験のための施設その 他の地域間交流の拠点となる施設の整備に関する事業

  ニ その他農林水産省令で定める事 業

 四 前号の事業と一体となってその効果 を増大させるために必要な事業又は事務に関する事項

 五 前二号に掲げる事項に係る他の地方 公共団体との連携に関する事項

 六 計画期間

 七 その他農林水産省令で定める事 項

3 前項第三号及び第四号に掲げる事項に は、当該活性化計画を作成する都道府県又は市町村が実施する事業又は事務(以下「事業等」という。)に係るものを記載するほか、必要に応じ、定住等及び地域間交流の促進に 寄与する事業等を実施しようとする農林漁業者の組織する団体若しくは特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人又はこれらに準 ずる者として農林水産省令で定めるもの(都道府県が作成する活性化計画にあっては、当該都道府県と共同して活性化計画を作成する市町村以外の市町村を含む。以下「農林漁業 団体等」という。)が実施する事業等(活性化計画を作成する都道府県又は市町村が当該事業等に要する費用の一部を負担してその推進を図るものに限る。)に係るものを記載す ることができる。

4 前項の規定により活性化計画に農林漁 業団体等が実施する事業等に係る事項を記載しようとする都道府県又は市町村は、当該事項について、あらかじめ、当該農林漁業団体等の同意を得なければならない。

5 定住等及び地域間交流の促進に寄与す る事業等を実施しようとする農林漁業団体等は、当該事業等を実施しようとする地域をその区域に含む都道府県又は市町村に対し、当該事業等をその内容に含む活性化計画の案の 作成についての提案をすることができる。

6 前項の都道府県又は市町村は、同項の 提案を踏まえた活性化計画の案を作成する必要がないと判断したときは、その旨及びその理由を、当該提案をした農林漁業団体等に通知しなければならない。

7 活性化計画には、第二項各号に掲げる 事項のほか、当該活性化計画を作成する市町村が行う農林地所有権移転等促進事業(同項第三号に掲げる事業により整備される施設(以下「活性化施設」という。)の整備を図る ため行う農林地等についての所有権の移転又は地上権、賃借権若しくは使用貸借による権利の設定若しくは移転(以下「所有権の移転等」という。)及びこれと併せ行う当該所有 権の移転等を円滑に推進するために必要な農林地についての所有権の移転等を促進する事業をいう。以下同じ。)に関する次に掲げる事項を記載することができる。

 一 農林地所有権移転等促進事業の実施 に関する基本方針

 二 移転される所有権の移転の対価の算 定基準及び支払の方法

 三 設定され、又は移転される地上権、 賃借権又は使用貸借による権利の存続期間又は残存期間に関する基準並びに当該設定され、又は移転を受ける権利が地上権又は賃借権である場合における地代又は借賃の算定基準 及び支払の方法

 四 その他農林水産省令で定める事 項

8 前項の規定により活性化計画に農林地 所有権移転等促進事業に関する事項を記載しようとする市町村(都道府県と共同して当該活性化計画を作成する市町村を除く。)は、当該事項について、あらかじめ、都道府県知 事に協議し、その同意を得なければならない。

9 活性化計画は、過疎地域自立促進計 画、山村振興計画、農業振興地域整備計画その他法律の規定による地域振興に関する計画、地域森林計画その他法律の規定による森林の整備に関する計画並びに都市計画及び都市 計画法(昭和四十三年法律第百号)第十八条の二の市町村の都市計画に関する基本的な方針との調和が保たれ、かつ、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第四項の 基本構想に即したものでなければならない。

10 都道府県又は市町村は、活性化計画 を作成したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、都道府県にあっては関係市町村(都道府県と共同して当該活性化計画を作成した市町村を除く。)に、市町村(都道府県 と共同して当該活性化計画を作成した市町村を除く。)にあっては都道府県に、当該活性化計画の写しを送付しなければならない。

11 第四項から第六項まで、第八項及び 前項の規定は、活性化計画の変更について準用する。

 (交付金の交付等)

第六条 活性化計画を作成した都道府県又 は市町村は、次項の交付金を充てて当該活性化計画に基づく事業等の実施(農林漁業団体等が実施する事業等に要する費用の一部の負担を含む。同項において同じ。)をしようと するときは、当該活性化計画を農林水産大臣に提出しなければならない。

2 国は、前項の都道府県又は市町村に対 し、同項の規定により提出された活性化計画に基づく事業等の実施に要する経費に充てるため、農林水産省令で定めるところにより、予算の範囲内で、交付金を交付することがで きる。

3 前項の交付金を充てて行う事業に要す る費用については、土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)その他の法令の規定に基づく国の負担又は補助は、当該規定にかかわらず、行わないものとする。

4 前三項に定めるもののほか、第二項の 交付金の交付に関し必要な事項は、農林水産省令で定める。

 (所有権移転等促進計画の作成 等)

第七条 第五条第七項各号に掲げる事項が 記載された活性化計画を作成した市町村は、農林地所有権移転等促進事業を行おうとするときは、農林水産省令で定めるところにより、農業委員会の決定を経て、所有権移転等促 進計画を定めるものとする。

2 所有権移転等促進計画においては、次 に掲げる事項を定めるものとする。

 一 所有権の移転等を受ける者の氏名又 は名称及び住所

 二 前号に規定する者が所有権の移転等 を受ける土地の所在、地番、地目及び面積

 三 第一号に規定する者に前号に規定す る土地について所有権の移転等を行う者の氏名又は名称及び住所

 四 第一号に規定する者が移転を受ける 所有権の移転の後における土地の利用目的並びに当該所有権の移転の時期並びに移転の対価及びその支払の方法

 五 第一号に規定する者が設定又は移転 を受ける地上権、賃借権又は使用貸借による権利の種類、内容(土地の利用目的を含む。)、始期又は移転の時期、存続期間又は残存期間並びに当該設定又は移転を受ける権利が 地上権又は賃借権である場合にあっては地代又は借賃及びその支払の方法

 六 その他農林水産省令で定める事 項

3 所有権移転等促進計画は、次に掲げる 要件に該当するものでなければならない。

 一 所有権移転等促進計画の内容が活性 化計画に適合するものであること。

 二 前項第二号に規定する土地ごとに、 同項第一号に規定する者並びに当該土地について所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権、使用貸借による権利又はその他の使用及び収益を目的とする権利を有する者のすべて の同意が得られていること。

 三 前項第四号又は第五号に規定する土 地の利用目的が、当該土地に係る農業振興地域整備計画、都市計画その他の土地利用に関する計画に適合すると認められ、かつ、当該土地の位置及び規模並びに周辺の土地利用の 状況からみて、当該土地を当該利用目的に供することが適当であると認められること。

 四 所有権移転等促進計画の内容が、活 性化計画の区域内にある土地の農林業上の利用と他の利用との調整に留意して活性化施設の用に供する土地を確保するとともに、当該土地の周辺の地域における農用地の集団化そ の他農業構造の改善に資するように定められていること。

 五 前項第二号に規定する土地ごとに、 次に掲げる要件に該当するものであること。

  イ 当該土地が農用地であり、かつ、 当該土地に係る前項第四号又は第五号に規定する土地の利用目的が農用地の用に供するためのものである場合にあっては、農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第三条第二 項の規定により同条第一項の許可をすることができない場合に該当しないこと。

  ロ 当該土地が農用地であり、かつ、 当該土地に係る所有権の移転等の内容が農地法第五条第一項本文に規定する場合に該当する場合にあっては、同条第二項の規定により同条第一項の許可をすることができない場合 に該当しないこと。

  ハ 当該土地が農用地以外の土地であ る場合にあっては、前項第一号に規定する者が、所有権の移転等が行われた後において、当該土地を同項第四号又は第五号に規定する土地の利用目的に即して適正かつ確実に利用 することができると認められること。

4 市町村は、第一項の規定により所有権 移転等促進計画を定めようとする場合において、第二項第二号に規定する土地の全部又は一部が農用地(当該農用地に係る所有権の移転等の内容が農地法第五条第一項本文に規定 する場合に該当するものに限る。)であるときは、当該所有権移転等促進計画について、農林水産省令で定めるところにより、あらかじめ、都道府県知事の承認を受けなければな らない。

5 都道府県知事は、前項の規定により所 有権移転等促進計画について承認をしようとするときは、あらかじめ、都道府県農業会議の意見を聴かなければならない。

 (所有権移転等促進計画の公 告)

第八条 市町村は、所有権移転等促進計画 を定めたときは、農林水産省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を公告しなければならない。

2 市町村は、前項の規定による公告をし ようとするときは、農林水産省令で定めるところにより、あらかじめ、その旨を都道府県知事に通知しなければならない。ただし、前条第四項の承認を受けた所有権移転等促進計 画について前項の規定による公告を行う場合については、この限りでない。

 (公告の効果)

第九条 前条第一項の規定による公告があ ったときは、その公告があった所有権移転等促進計画の定めるところによって所有権が移転し、又は地上権、賃借権若しくは使用貸借による権利が設定され、若しくは移転す る。

 (登記の特例)

第十条 第八条第一項の規定による公告が あった所有権移転等促進計画に係る土地の登記については、政令で、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)の特例を定めることができる。

 (市民農園整備促進法の特例)

第十一条 第五条第三項の規定により活性 化計画にその実施する市民農園(市民農園整備促進法(平成二年法律第四十四号)第二条第二項に規定する市民農園をいう。)の整備に関する事業が記載された農林漁業団体等 は、同法第七条第一項の認定の申請に係る事項が当該事業に係るものであるときは、同項及び同条第二項(これらの規定に基づく命令の規定を含む。)の規定にかかわらず、当該 申請に係る記載事項の一部を省略する手続その他の農林水産省令・国土交通省令で定める簡略化された手続によることができる。

 (国等の援助等)

第十二条 国及び地方公共団体は、活性化 計画に基づく事業等を実施する者に対し、当該事業等の確実かつ効果的な実施に関し必要な助言、指導その他の援助を行うよう努めなければならない。

2 前項に定めるもののほか、農林水産大 臣、関係行政機関の長、関係地方公共団体及び関係農林漁業団体等は、活性化計画の円滑な実施が促進されるよう、相互に連携を図りながら協力しなければならない。

 (農地法等による処分についての配 慮)

第十三条 国の行政機関の長又は都道府県 知事は、活性化計画の区域内の土地を当該活性化計画に定める活性化施設の用に供するため、農地法その他の法律の規定による許可その他の処分を求められたときは、当該活性化 施設の設置の促進が図られるよう適切な配慮をするものとする。

 (国有林野の活用等)

第十四条 国は、活性化計画の実施を促進 するため、国有林野の活用について適切な配慮をするものとする。

2 活性化計画を作成した都道府県又は市 町村は、当該活性化計画の達成のため必要があるときは、関係森林管理局長に対し、技術的援助その他の必要な協力を求めることができる。

 (事務の区分)

第十五条 第七条第四項の規定により都道 府県が処理することとされている事務は、地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算し て三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (検討)

第二条 政府は、この法律の施行後七年以 内に、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 (地方自治法の一部改正)

第三条 地方自治法の一部を次のように改 正する。

  別表第一に次のように加え る。

農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律(平成十九年法律第四十八号)

第七条第四項の規定により都道府県が処理することとされている事務

 (農業委員会等に関する法律の一部改 正)

第四条 農業委員会等に関する法律(昭和 二十六年法律第八十八号)の一部を次のように改正する。

  第六条第一項第一号中「(昭和五十五 年法律第六十五号)及び」を「(昭和五十五年法律第六十五号)、」に改め、「(平成五年法律第七十二号)」の下に「及び農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促 進に関する法律(平成十九年法律第四十八号)」を加える。

 (農地法の一部改正)

第五条 農地法の一部を次のように改正す る。

  第三条第一項第四号の五の次に次の一 号を加える。

  四の六 農山漁村の活性化のための定 住等及び地域間交流の促進に関する法律(平成十九年法律第四十八号)第八条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて同法第五条第七項の 権利が設定され、又は移転される場合

  第四条第一項第三号の三の次に次の一 号を加える。

  三の四 農山漁村の活性化のための定 住等及び地域間交流の促進に関する法律第八条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて設定され、又は移転された同法第五条第七項の権利 に係る農地を当該所有権移転等促進計画に定める利用目的に供する場合

  第五条第一項第一号の三の次に次の一 号を加える。

  一の四 農地又は採草放牧地を農山漁 村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律第八条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画に定める利用目的に供するため当該所有権移転等促進 計画の定めるところによつて同法第五条第七項の権利が設定され、又は移転される場合

 (農業振興地域の整備に関する法律の一 部改正)

第六条 農業振興地域の整備に関する法律 (昭和四十四年法律第五十八号)の一部を次のように改正する。

  第十五条の二第一項第三号の三の次に 次の一号を加える。

  三の四 農山漁村の活性化のための定 住等及び地域間交流の促進に関する法律(平成十九年法律第四十八号)第八条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて設定され、又は移転 された同法第五条第七項の権利に係る土地を当該所有権移転等促進計画に定める利用目的に供するために行う行為

(総務・農林水産臨時代理・国土交通・内閣総理大臣署名)  

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