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法律第九十八号(平二三・八・一二)

  ◎東日本大震災における原子力発電所の事故による災害に対処するための避難住民に係る事務処理の特例及び住所移転者に係る措置に関する法律

 (趣旨)

第一条 この法律は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故による災害の影響により多数の住民がその属する市町村の区域外に避難し、又は住所を移転することを余儀なくされた事態に対処するため、避難住民に係る事務を避難先の地方公共団体において処理することとすることができる特例を設けるとともに、住所移転者に係る措置を定めるものとする。

 (定義)

第二条 この法律において「指定市町村」とは、次条第一項の規定により指定された市町村(特別区を含む。以下同じ。)をいう。

2 この法律において「指定都道府県」とは、指定市町村の区域を包括する都道府県をいう。

3 この法律において「避難住民」とは、指定市町村の住民基本台帳に記録されている者のうち、当該指定市町村の区域外に避難しているものをいう。

4 この法律において「住所移転者」とは、平成二十三年三月十一日において指定市町村の区域内に住所を有していた者のうち、当該指定市町村以外の市町村の住民基本台帳に記録されているものをいう。

5 この法律において「特定住所移転者」とは、住所移転者のうち、指定市町村の条例で定めるところにより、当該指定市町村の長に対し、第十一条第一項から第三項までに定める施策の対象となることを希望する旨の申出をしたものをいう。

 (指定市町村の指定等)

第三条 総務大臣は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故に関して原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)第十五条第三項又は第二十条第三項の規定により内閣総理大臣又は原子力災害対策本部長(同法第十七条第一項に規定する原子力災害対策本部長をいう。)が市町村長(特別区の区長を含む。)又は都道府県知事に対して行った次に掲げる指示の対象となった区域をその区域に含む市町村であって、その住民が当該市町村の区域外に避難することを余儀なくされているものを、指定市町村として指定することができる。

 一 原子力災害対策特別措置法第二十八条第二項の規定により読み替えて適用される災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第六十三条第一項の規定による警戒区域の設定を行うことの指示

 二 住民に対し避難のための立退き又は屋内への退避を行うことを求める指示、勧告、助言その他の行為を行うことの指示

 三 住民に対し緊急時の避難のための立退き又は屋内への退避の準備を行うことを求める指示、勧告、助言その他の行為を行うことの指示

 四 前三号に掲げるもののほか、これらに類するものとして政令で定める指示

2 総務大臣は、前項の規定による指定をしようとするときは、あらかじめ指定しようとする市町村を包括する都道府県の知事の意見を聴き、その意見を尊重しなければならない。

3 前項の規定により都道府県知事が総務大臣に意見を述べるに当たっては、あらかじめ当該市町村の長の意見を聴き、その意見を尊重しなければならない。

4 総務大臣は、第一項の規定による指定をしたときは、直ちにその旨を告示しなければならない。

5 前三項の規定は、指定市町村の指定の解除について準用する。

 (避難住民の届出等)

第四条 前条第四項の規定による指定市町村の告示の日(以下この条において「告示日」という。)において当該指定市町村の避難住民である者は、告示日から十四日以内に、総務省令で定めるところにより、当該指定市町村の長にその避難している場所(以下「避難場所」という。)を届け出なければならない。ただし、当該避難住民が、告示日前に当該指定市町村の長に当該届出に相当する行為をした場合であって、当該行為に係る避難場所が告示日における避難場所であるときは、この限りでない。

2 告示日後に新たに避難住民となった者は、避難住民となった日から十四日以内に、総務省令で定めるところにより、当該指定市町村の長にその避難場所を届け出なければならない。

3 前二項の規定による届出(第一項ただし書に規定する届出に相当する行為を含む。)をした避難住民は、避難場所を移したとき又は避難住民でなくなったときは、避難場所を移した日又は避難住民でなくなった日から十四日以内に、総務省令で定めるところにより、当該指定市町村の長にその旨を届け出なければならない。

4 指定市町村の長は、前三項の規定による届出を受けたときは、遅滞なく、当該届出に係る事項を指定都道府県の知事に通知するものとする。

 (避難住民に関する特定の事務の届出等)

第五条 指定市町村の長又は指定都道府県の知事は、法律又はこれに基づく政令により当該指定市町村又は指定都道府県が処理することとされている事務のうち避難住民に関するものであって、当該指定市町村又は指定都道府県が処理することが困難であるものがあるときは、総務大臣に(指定市町村の長にあっては、指定都道府県の知事を経由して総務大臣に)対し、当該事務の範囲を届け出ることができる。これを変更するときも、同様とする。

2 指定市町村の長又は指定都道府県の知事は、当該指定市町村又は指定都道府県の委員会又は委員の権限に属する事務について前項の規定による届出をしようとするときは、あらかじめ当該指定市町村又は指定都道府県の委員会又は委員の意見を聴かなければならない。

3 総務大臣は、第一項の規定による届出を受けたときは、当該届出をした指定市町村又は指定都道府県の名称及び当該届出に係る事務の範囲を告示するとともに、国の関係行政機関の長に通知しなければならない。

 (避難住民に係る事務処理の特例)

第六条 指定市町村の長又は指定都道府県の知事は、前条第三項の規定により告示された事務(以下「特例事務」という。)について、避難住民の避難場所をその区域に含む市町村又は都道府県であって法律又はこれに基づく政令により特例事務と同種の事務を処理することとされているもの(以下「避難先団体」という。)の長に当該避難住民の氏名、出生の年月日、男女の別、住所及び避難場所を通知することにより、当該避難先団体が処理することとすることができる。

2 前項の通知を受けた避難先団体は、当該通知に係る避難住民(次条第一項の通知に係る避難住民を除く。)に関する特例事務を処理するものとする。

3 前二項の規定は、特例事務のうち、避難住民の避難の状況その他の事情を勘案して特定の避難先団体においては処理することを要しないと認めるものについて、指定市町村の長又は指定都道府県の知事が当該避難先団体の長に対してその旨を通知した場合における当該特例事務については、適用しない。

4 前項の通知を受けた避難先団体の長は、直ちに当該通知をした指定市町村又は指定都道府県の名称及び当該通知を受けた特例事務を告示しなければならない。

 (避難住民に関する変更の通知等)

第七条 指定市町村の長又は指定都道府県の知事は、前条第一項の通知に係る避難住民が当該避難先団体の区域内の場所を避難場所とする避難住民でなくなったことを知ったときは、直ちにその旨を当該避難先団体の長に通知しなければならない。

2 前項に規定する場合のほか、指定市町村の長又は指定都道府県の知事は、前条第一項の通知に係る避難住民に関し通知された事項に変更があったこと又は誤りがあることを知ったときは、直ちにその旨を当該避難先団体の長に通知しなければならない。

3 指定市町村の長は、前条第一項又は前二項の通知をしようとする場合において、避難先団体が市町村であるときは、指定都道府県の知事及び避難先団体を包括する都道府県の知事を経由して行うものとし、避難先団体が都道府県であるときは、指定都道府県の知事を経由して行うものとする。

4 指定都道府県の知事は、前条第一項又は第一項若しくは第二項の通知をしようとする場合において、避難先団体が市町村であるときは、避難先団体を包括する都道府県の知事を経由して行うものとする。

 (避難住民に係る事務処理の特例に係る法令の規定の適用)

第八条 第六条第二項の規定により特例事務を避難先団体が処理する場合においては、当該避難先団体が特例事務と同種の事務を処理する場合に適用される法令の規定が適用されるものとする。

 (避難住民に係る事務処理の特例に係る費用の負担)

第九条 第六条第二項の規定により避難先団体が処理することとされた事務に要する経費は、指定市町村又は指定都道府県において経費を負担する事務として総務大臣が国の関係行政機関の長と協議して告示で定める事務に要する経費を除き、当該避難先団体が負担する。

2 国は、前項の規定により避難先団体が負担する経費について、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 (避難住民に対する役務の提供に関する努力義務)

第十条 第六条第一項の通知を受けた避難先団体は、その住民に対して行っている役務の提供であって法律又はこれに基づく政令により当該避難先団体が処理することとされている事務に係るもの以外のものを、同項の通知に係る避難住民に対しても行うよう努めるものとする。

2 国は、第六条第一項の通知を受けた避難先団体が同項の通知に係る避難住民に対して前項に規定する役務の提供を行った場合には、当該役務の提供に要する経費について、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

 (特定住所移転者に係る施策等)

第十一条 指定市町村及び指定都道府県は、特定住所移転者に対し、当該指定市町村又は指定都道府県に関する情報であって当該特定住所移転者との関係の維持に資するものを提供するものとする。

2 指定市町村及び指定都道府県は、特定住所移転者の指定市町村の区域への訪問の事業その他特定住所移転者と指定市町村の住民との交流を促進するための事業の推進に努めるものとする。

3 前二項に定めるもののほか、指定市町村及び指定都道府県は、特定住所移転者との関係の維持に資する施策を講ずるよう努めるものとする。

4 国は、指定市町村及び指定都道府県が前三項に定める施策を実施するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

 (住所移転者協議会)

第十二条 指定市町村は、条例で定めるところにより、住所移転者協議会を置くことができる。

2 住所移転者協議会の構成員は、特定住所移転者のうちから、指定市町村の長が選任する。

3 住所移転者協議会の構成員の任期は、条例で定める期間とする。

4 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百三条の二第一項の規定にかかわらず、住所移転者協議会の構成員には報酬を支給しないこととすることができる。

5 住所移転者協議会は、前条第一項から第三項までに定める施策に関する事項のうち、指定市町村の長その他の機関により諮問されたもの又は必要と認めるものについて、審議し、指定市町村の長その他の機関に意見を述べることができる。

6 指定市町村の長その他の機関は、前項の意見を勘案し、必要があると認めるときは、適切な措置を講じなければならない。

7 前各項に定めるもののほか、住所移転者協議会の構成員の定数その他の住所移転者協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、条例で定める。

 (政令への委任)

第十三条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のために必要な事項は、政令で定める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。

 (経過措置)

第二条 この法律の施行の日から住民基本台帳法の一部を改正する法律(平成二十一年法律第七十七号)附則第一条第一号に掲げる規定の施行の日の前日までの間におけるこの法律の規定の適用については、第二条第三項及び第四項中「住民基本台帳に記録されている」とあるのは、「住民基本台帳に記録され、又は外国人登録原票(外国人登録法(昭和二十七年法律第百二十五号)第四条第一項に規定する外国人登録原票をいう。)に登録されている」とする。

 (東日本大震災に係る避難者に対する役務の提供に関する措置)

第三条 国は、この法律に定めるもののほか、東日本大震災(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う原子力発電所の事故による災害をいう。)の影響によりその属する市町村の区域外に避難することを余儀なくされている住民に対し、その要因が解消されるまでの間、地方公共団体が適切に役務を提供することができるようにするため、この法律の規定に基づく避難住民に係る措置に準じて、必要な措置を講ずるものとする。

(総務・財務・内閣総理大臣署名) 

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