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法律第四十一号(平二五・六・一二)

  ◎消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 特定事業者による消費税の転嫁の拒否等の行為の是正に関する特別措置(第三条−第七条)

 第三章 消費税の転嫁を阻害する表示の是正に関する特別措置(第八条・第九条)

 第四章 価格の表示に関する特別措置(第十条・第十一条)

 第五章 消費税の転嫁及び表示の方法の決定に係る共同行為に関する特別措置(第十二条・第十三条)

 第六章 雑則(第十四条−第二十条)

 第七章 罰則(第二十一条・第二十二条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、平成二十六年四月一日及び平成二十七年十月一日における消費税率(地方消費税率を含む。以下同じ。)の引上げ(以下「今次の消費税率引上げ」という。)に際し、消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)の転嫁を阻害する行為の是正、価格の表示並びに消費税の転嫁及び表示の方法の決定に係る共同行為に関する特別の措置を講ずることにより、消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「特定事業者」とは、次に掲げる事業者をいう。

 一 一般消費者が日常使用する商品の小売業を行う者(特定連鎖化事業(中小小売商業振興法(昭和四十八年法律第百一号)第十一条第一項に規定する特定連鎖化事業をいう。)を行う者を含む。)であって、その規模が大きいものとして公正取引委員会規則で定めるもの(以下「大規模小売事業者」という。)

 二 法人である事業者であって、次に掲げる事業者から継続して商品又は役務の供給を受けるもの(大規模小売事業者を除く。)

  イ 個人である事業者

  ロ 人格のない社団等(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものをいう。以下同じ。)である事業者

  ハ 資本金の額又は出資の総額が三億円以下である事業者

2 この法律において「特定供給事業者」とは、次に掲げる事業者をいう。

 一 事業者が大規模小売事業者に継続して商品又は役務を供給する場合における当該商品又は役務を供給する事業者

 二 前項第二号イからハまでに掲げる事業者が同号の特定事業者に継続して商品又は役務を供給する場合における当該同号イからハまでに掲げる事業者

3 この法律において「中小事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。

 一 資本金の額又は出資の総額が三億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であって、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第四号までに掲げる業種及び第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの

 二 資本金の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であって、卸売業(第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの

 三 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であって、サービス業(第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの

 四 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人であって、小売業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの

 五 資本金の額又は出資の総額がその業種ごとに政令で定める金額以下の会社並びに常時使用する従業員の数がその業種ごとに政令で定める数以下の会社及び個人であって、その政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むもの

   第二章 特定事業者による消費税の転嫁の拒否等の行為の是正に関する特別措置

 (特定事業者の遵守事項)

第三条 特定事業者は、平成二十六年四月一日以後に特定供給事業者から受ける商品又は役務の供給に関して、次に掲げる行為をしてはならない。

 一 商品若しくは役務の対価の額を減じ、又は商品若しくは役務の対価の額を当該商品若しくは役務と同種若しくは類似の商品若しくは役務に対し通常支払われる対価に比し低く定めることにより、特定供給事業者による消費税の転嫁を拒むこと。

 二 特定供給事業者による消費税の転嫁に応じることと引換えに、自己の指定する商品を購入させ、若しくは自己の指定する役務を利用させ、又は自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。

 三 商品又は役務の供給の対価に係る交渉において消費税を含まない価格を用いる旨の特定供給事業者からの申出を拒むこと。

 四 前三号に掲げる行為があるとして特定供給事業者が公正取引委員会、主務大臣又は中小企業庁長官に対しその事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすること。

 (指導又は助言)

第四条 公正取引委員会、主務大臣又は中小企業庁長官は、特定事業者に対し、前条の規定に違反する行為を防止し、又は是正するために必要な指導又は助言をするものとする。

 (主務大臣又は中小企業庁長官の請求)

第五条 主務大臣又は中小企業庁長官は、第三条の規定に違反する行為があると認めるときは、公正取引委員会に対し、この法律の規定に従い適当な措置をとるべきことを求めることができる。ただし、次に掲げるときは、当該求めをするものとする。

 一 当該行為が多数の特定供給事業者に対して行われていると認められるとき。

 二 当該行為によって特定供給事業者が受ける不利益の程度が大きいと認められるとき。

 三 当該行為を行った事業者が第三条の規定に違反する行為を繰り返し行う蓋然性が高いと認められるとき。

 四 前三号に掲げるもののほか、消費税の円滑かつ適正な転嫁を阻害する重大な事実があると認められるとき。

 (勧告及び公表)

第六条 公正取引委員会は、特定事業者について第三条の規定に違反する行為があると認めるときは、その特定事業者に対し、速やかに消費税の適正な転嫁に応じることその他必要な措置をとるべきことを勧告するものとする。

2 公正取引委員会は、前項の規定による勧告をしたときは、その旨を公表するものとする。

 (勧告に係る違反行為についての私的独占禁止法の適用除外)

第七条 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「私的独占禁止法」という。)第二十条及び第二十条の六の規定は、公正取引委員会が前条第一項の規定による勧告をした場合において、特定事業者がその勧告に従ったときに限り、特定事業者のその勧告に係る第三条の規定に違反する行為については、適用しない。

   第三章 消費税の転嫁を阻害する表示の是正に関する特別措置

 (事業者の遵守事項)

第八条 事業者は、平成二十六年四月一日以後における自己の供給する商品又は役務の取引について、次に掲げる表示をしてはならない。

 一 取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示

 二 取引の相手方が負担すべき消費税に相当する額の全部又は一部を対価の額から減ずる旨の表示であって消費税との関連を明示しているもの

 三 消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示であって前号に掲げる表示に準ずるものとして内閣府令で定めるもの

 (準用)

第九条 第四条から第七条までの規定は、前条の規定に違反する行為について準用する。この場合において、第四条中「公正取引委員会」とあるのは「内閣総理大臣、公正取引委員会」と、「特定事業者」とあるのは「事業者」と、第五条(見出しを含む。)中「主務大臣」とあるのは「公正取引委員会、主務大臣」と、同条中「公正取引委員会」とあるのは「内閣総理大臣」と、同条ただし書中「次に」とあるのは「第三号及び第四号に」と、同条ただし書第四号中「前三号」とあるのは「前号」と、第六条第一項中「公正取引委員会」とあるのは「内閣総理大臣」と、「特定事業者」とあるのは「事業者」と、「消費税の適正な転嫁に応じる」とあるのは「その行為を取りやめる」と、同条第二項中「公正取引委員会」とあるのは「内閣総理大臣」と、第七条の見出し中「私的独占禁止法」とあるのは「不当景品類及び不当表示防止法」と、同条中「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「私的独占禁止法」という。)第二十条及び第二十条の六」とあるのは「不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第六条」と、「公正取引委員会」とあるのは「内閣総理大臣」と、「特定事業者」とあるのは「事業者」と読み替えるものとする。

   第四章 価格の表示に関する特別措置

 (総額表示義務に関する消費税法の特例)

第十条 事業者(消費税法(昭和六十三年法律第百八号)第六十三条に規定する事業者をいう。以下この条において同じ。)は、自己の供給する商品又は役務の価格を表示する場合において、今次の消費税率引上げに際し、消費税の円滑かつ適正な転嫁のため必要があるときは、現に表示する価格が税込価格(消費税を含めた価格をいう。以下この章において同じ。)であると誤認されないための措置を講じているときに限り、同法第六十三条の規定にかかわらず、税込価格を表示することを要しない。

2 前項の規定により税込価格を表示しない事業者は、できるだけ速やかに、税込価格を表示するよう努めなければならない。

3 事業者は、自己の供給する商品又は役務の税込価格を表示する場合において、消費税の円滑かつ適正な転嫁のため必要があるときは、税込価格に併せて、消費税を含まない価格又は消費税の額を表示するものとする。

 (不当景品類及び不当表示防止法の適用除外)

第十一条 前条第三項の場合において、税込価格が明瞭に表示されているときは、当該消費税を含まない価格の表示については、不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第四条第一項の規定は、適用しない。

   第五章 消費税の転嫁及び表示の方法の決定に係る共同行為に関する特別措置

 (届出に係る共同行為についての私的独占禁止法の適用除外)

第十二条 私的独占禁止法の規定は、事業者が消費税を取引の相手方に円滑かつ適正に転嫁するため、事業者又は事業者団体が、公正取引委員会規則で定めるところにより、公正取引委員会に届出をしてする平成二十六年四月一日から平成二十九年三月三十一日までの間における商品又は役務の供給に係る次に掲げる共同行為(事業者団体がその直接又は間接の構成事業者に当該共同行為をさせる行為を含む。以下この条において同じ。)については、適用しない。ただし、不公正な取引方法を用いるとき、事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにするとき、又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を維持し若しくは引き上げることとなるときは、この限りでない。

 一 事業者又は構成事業者が供給する商品又は役務に係る消費税の転嫁の方法の決定に係る共同行為(その共同行為に参加している事業者の三分の二以上が中小事業者である場合又はその共同行為に係る事業者団体が、その構成事業者の三分の二以上が中小事業者であり若しくはその直接若しくは間接の構成員である事業者団体のそれぞれの構成事業者の三分の二以上が中小事業者であるものである場合に限る。)

 二 事業者又は構成事業者が供給する商品又は役務に係る消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為

 (法律の規定に基づいて設立された組合の事業に関する特例等)

第十三条 法律の規定に基づいて設立された組合(組合の連合会を含む。以下同じ。)であって政令で定めるものは、当該法律の規定にかかわらず、当該組合の事業として前条に規定する共同行為をすることができる。この場合において、当該法律の規定の適用に関し必要な技術的読替えは、政令で定める。

2 公正取引委員会は、前項前段の政令で定める組合に係る前条の届出を受理したときは、遅滞なく、当該組合を所管する大臣に通知しなければならない。

   第六章 雑則

 (国等の講ずる措置)

第十四条 国は、今次の消費税率引上げに際し、事業者が行う消費税の円滑かつ適正な転嫁に資するよう、国民に対し、今次の消費税率引上げの趣旨、転嫁を通じて消費者に負担を求めるという消費税の性格及び政府の消費税の円滑かつ適正な転嫁に関する取組について、徹底した広報を行うものとする。

2 国は、今次の消費税率引上げに際し、この法律に違反する行為の防止及び是正を徹底するため、この法律に違反する行為に関する情報の収集、当該情報を国等に通報した者の保護等に関し万全の措置を講ずるものとする。

3 国及び都道府県は、今次の消費税率引上げに際し、この法律に違反する行為の防止及び是正を徹底するため、国民に対する広報、この法律に違反する行為に関する情報の収集、事業者に対する指導又は助言等を行うための万全の態勢を整備するものとする。

 (報告及び検査)

第十五条 公正取引委員会、主務大臣又は中小企業庁長官は、第三条の規定に違反する行為を是正するために必要があると認めるときは、特定事業者若しくは特定供給事業者に対しその取引に関する報告をさせ、又はその職員に特定事業者若しくは特定供給事業者の事務所若しくは事業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

2 内閣総理大臣、公正取引委員会、主務大臣又は中小企業庁長官は、第八条の規定に違反する行為を是正するために必要があると認めるときは、事業者に対しその表示に関する報告をさせ、又はその職員に事業者の事務所若しくは事業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

3 前二項の規定により職員が立ち入るときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

4 第一項及び第二項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (情報の提供)

第十六条 内閣総理大臣、公正取引委員会、主務大臣及び中小企業庁長官は、第三条又は第八条の規定に違反する行為の防止又は是正のため、相互に情報又は資料を提供することができる。

2 内閣総理大臣、公正取引委員会、主務大臣又は中小企業庁長官は、第三条又は第八条の規定に違反する行為の防止又は是正のために必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、情報又は資料の提供その他必要な協力を求めることができる。

 (公正取引委員会等への通知)

第十七条 国の行政機関の長又は地方公共団体の長は、第三条又は第八条の規定に違反する行為があると疑うに足りる事実があるときは、内閣総理大臣、公正取引委員会、主務大臣又は中小企業庁長官に対し、その事実を通知するものとする。

 (主務大臣等)

第十八条 この法律における主務大臣は、事業者の事業を所管する大臣又は国家公安委員会(以下「大臣等」という。)とする。ただし、次の各号に掲げる事項については、当該各号に定める大臣等とする。

 一 第四条に規定する指導又は助言及び第五条に規定する措置の求めに関する事項 特定事業者の事業を所管する大臣等

 二 第十五条第一項に規定する報告の命令及び検査に関する事項(特定事業者に対するものに限る。) 特定事業者の事業を所管する大臣等

 三 第十五条第一項に規定する報告の命令及び検査に関する事項(特定供給事業者に対するものに限る。) 特定供給事業者の事業を所管する大臣等

2 この法律による主務大臣の権限であって、前項の規定により内閣総理大臣の権限とされるもの(金融庁の所掌に係るものに限り、政令で定めるものを除く。)は、金融庁長官に委任する。

3 内閣総理大臣は、この法律による権限(消費者庁の所掌に係るものに限り、政令で定めるものを除く。)を消費者庁長官に委任する。

 (都道府県が処理する事務)

第十九条 この法律による主務大臣の権限及び前条第二項の規定により金融庁長官に委任された権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事その他の都道府県の執行機関が行うこととすることができる。

 (権限の委任)

第二十条 この法律による主務大臣の権限は、政令で定めるところにより、地方支分部局の長に委任することができる。

2 金融庁長官は、政令で定めるところにより、第十八条第二項の規定により委任された権限の一部を財務局長又は財務支局長に委任することができる。

   第七章 罰則

第二十一条 第十五条第一項若しくは第二項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、五十万円以下の罰金に処する。

第二十二条 法人(人格のない社団等を含む。以下この項において同じ。)の代表者(人格のない社団等の管理人を含む。)又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同条の刑を科する。

2 人格のない社団等について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人がその訴訟行為につきその人格のない社団等を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成二十四年法律第六十八号)の施行の日前の政令で定める日から施行する。ただし、第十四条第三項及び附則第三条の規定は、同日前の政令で定める日から施行する。

 (この法律の失効)

第二条 この法律は、平成二十九年三月三十一日限り、その効力を失う。

2 前項に規定する日までにした第三条又は第八条の規定に違反する行為については、第四条から第七条まで(これらの規定を第九条において読み替えて準用する場合を含む。)及び第十五条から第二十条までの規定は、同項の規定にかかわらず、同日後も、なおその効力を有する。

3 第一項に規定する日までにした行為及び前項の規定によりなおその効力を有することとされる場合における同日後にした行為に対する罰則の適用については、この法律は、第一項の規定にかかわらず、同日後も、なおその効力を有する。

4 前二項に規定するもののほか、この法律の失効に伴い必要な経過措置は、政令で定める。

 (内閣府設置法の一部改正)

第三条 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

  附則第二条第二項の表平成三十三年三月三十一日の項の前に次のように加える。

平成二十九年三月三十一日

社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成二十四年法律第六十八号)第七条第一号ホ(1)の相談に関すること。

(内閣総理・総務・法務・財務・文部科学・厚生労働・農林水産・経済産業・国土交通・環境大臣署名)

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